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第五十九話 五月七日(火)少女は花嫁修業を始めたかった

お久しぶりです。ちょっと推し活を始めて気が付いたらこんなに経ってました。

こういう日常系(?)のスッキリした終え方が分からないです。

関係が大きく変わったGWが明ける翌日。窓から差し込む柔らかな陽射しに起こされて、ユウは気持ちの良い目覚めを迎えた。


「んー!この調子なら大丈夫そうかな」


ユウは大きく伸びをして、身体の調子を確認した。まだ少し怠さの残る身体で立ち上がり、軽く屈伸をする。

そしてカーテンを開けて外の様子を見れば、空模様は快晴で雲一つ無い青空が広がっている。


「今日は暑くなりそうだなぁ……」


気温が上がることを想像してげんなりしながらも、身だしなみを整えて階下へ降りていく。洗面所へ向かったユウは顔を洗い、歯磨きを終えた後はリビングに向かう。

ユウは誰もいないリビングを抜け、キッチンに入って弁当の準備を始めた。程なくしてリビングの扉が開いて入って来た人物に声を掛けた。


「おはよう、お母さん」


「あら、早いのね。体調は大丈夫なの?」


「うん。普通に動くぐらいなら全然平気」


「それなら良かったわ」


サユリは安心したように息をつくと、朝食を作るべく冷蔵庫に手を伸ばす。ユウはその背に向けて口を開いた。


「ねぇ、母さん?ちょっといい?」


「いいわよ。どうしたの?」


「……僕に、花嫁修業をお願いします」


恥じらいながらもハッキリとユウは告げた。真っ赤な顔で胸元をギュッと握りしめる姿に、サユリは思わず娘を見つめる。キョトンとした表情を浮かべるも、すぐに嬉しそうな笑顔に変わった。


「もちろん、任せてちょうだい!」


力強く答えたサユリはウキウキした様子で朝食の材料を取り出し始めた。


「でも、とっくに家事は出来るし…もしかして教えることない?」


二人して調理に取り掛かって少し、一品目を作り終えたサユリがポツリと呟いた。

思わずユウが聞き返したが、帰ってくる言葉は変わらなかった。


「炊事洗濯諸々普段からやってるし、教えられることって他にあるかしら?帳簿の付け方?税金関係は花嫁修業ではないだろうし…」


「帳簿も前に教えてもらったよ」


「ならもう私が教えることはないわ。修了おめでとう!」


「えぇ……」


教わることは既に教えていると言われ、少し前の決意は何だったのだろうと困惑するユウ。控えめな拍手を送ったサユリは、固まるユウを余所に出来上がった朝食を運んだ。

配膳を終えたサユリが改めてユウの姿を見る。急に母親に凝視されたユウは立ち止まって様子を見ていると、サユリは不思議そうに呟いた。


「なんで男だった頃から花嫁修業してたのかしらね?」


「……なんでだろうね」


首を傾げて疑問を飛ばしてくるサユリに、ユウは投げやりに言葉を返した。


***


早めの朝食を食べ終えて登校の準備を済ませてリヒトの家に来たユウは、アイカにも花嫁修業として教わることは無いか聞いてみた。


「…花嫁修業ね。もう十分じゃない?」


「えぇ、アイカさんまで……」


「私だってユウちゃんに色々と教えたいわよ?けど、ユウちゃんに教えられるのはもう言ってると思うのよね」


「うぐっ……母さんと同じこと言ってる」


ぐうの音もでずに黙り込むユウ。俯き気味の彼女の頭をそっとアイカが撫でる。


「そんなに焦らなくても大丈夫よ。貴方はもう準備が出来てるんだから、その時を待てばいいの」


優しく不安の種を取り除くようにアイカはゆっくりと伝える。目の前の小さな体を軽く抱きしめてその背を撫でる。


「今のままで大丈夫。貴方はもう十分頑張っているもの」


「………はい。ありがとうございます」


はにかんだユウの顔を見て憂いが無くなったアイカは、抱きしめていたその身体を回して背中側から支えるように肩に手を置いた。


「そんなわけだから、リヒトはちゃんとユウちゃんを甘やかして休ませること。いいわね?」


黙々と食卓で朝食をとっていたリヒトに向けてそう言い放ったアイカは返事を聞かずに食器を片付け始めた。

リヒトは片付く食器には目もくれず、ジッとユウを見つめたまま先ほどから喋る気配がない。お互いに見つめ合って数分、リヒトが立ち上がった。


「ユウ。支度してくるから待っててくれ。すぐ戻る」


それだけ言うとリヒトは自室へと向かっていった。ユウは言われた通りに大人しく待つことにしてその背を見送った。


「ねぇ、ユウちゃん?」


「何ですか?」


洗い物を終えたアイカがユウに声を掛けた。ユウが振り返ると、彼女はニッコリと微笑んで言った。


「式はいつ頃にするのかしら?卒業してすぐ?」


「――ッ、少なくとも社会に出て生活が安定してからですよ」


突然降られた話題の内容にユウは一瞬言葉に詰まってしまった。連想的にあの日の夜の事を思い出してしまい、顔が赤く染まったのがユウ自身も分かった。

同衾した日かしら、と鋭い直感を働かせつつもアイカは触れずに話を進めた。


「なら婚約指輪でいいからしときなさい。男避けに使えるから」


「もうリヒトと約束してます。イニシャル入ったやつの方がいいですか?」


「えぇ、そうよ。絶対にしといてちょうだい」


「分かりました」


力強く念押しされてユウは少し気圧されながらも了承した。その後は他愛のない話をしていると、リヒトが下りてきた。


「お待たせ」


「あ、リヒト。アイカさんが婚約指輪を扱ってる良い店知ってるって」


「学校向かいながら聞くよ」


アイカに見送られた二人は玄関を出て通学路を歩く。ユウは隣にいる婚約者の手を握った。


「昔やってたアニメみたいに、教室で『婚約しました!』って宣言したらどうなるかな」


「やめとけ。俺らの被害がでかすぎる」


「冗談だけど、僕は多分前以上にくっつくかもしれないからよろしく」


「お前から来なくても俺が甘やかすからよろしく」


照れくさそうに笑い合う二人に、朝の柔らかな陽射しが降り注いだ。


***


二人仲良く教室に入ると、まだ時間に余裕があるからかまばらな人数のクラスメイトが点在していた。


「おはよう!今日も熱いね!」


「おはよう。カナ、大分焼けたね」


席に荷物を置いていると、後ろから声を掛けられた。連休前に比べ、彼女の肌は全体的に焼けて褐色に近づいていた。


「やっぱ連休は部活時間が長くなるからね」


「確かここのテニスコートって日当たり良かったよね」


「そうそう!もう連休中の練習日は全部お日様ギラギラしてたの!」


「…うわっ!焼けてるなあ!」


「「遅っ」」


マイペースに荷物を仕舞ってたリヒトがようやくカナを見たらしく、数分遅れで反応した。思わず二人揃ってツッコミを入れると、少し離れた位置で吹き出す声が聞こえた。

音の方を見れば、リサが口元を押さえて震えていた。


「ご、ゴメン……。ぷふっ、ちょっとツボに入った……」


「……朝から元気だね」


「ええ。ユウも元気そうね」


そう言ってリサは笑顔を浮かべた。その表情を見て、ユウは自分の頬が緩むのを感じた。


「うん。体はともかく気持ちは最高潮に高ぶってるよ!」


「そう。ユウがそこまで言うなんて何かあったのかしら」


ニッと笑って返せば、リサは呆れた様に笑う。しかし、ユウの発言に引っかかった彼女の顔からみるみるうちに笑みが消えた。


「もしかして、貴方――」


そっと耳打ちで囁かれた内容にユウは笑みを深めた。反応を見たリサは薄らと頬に赤みがさす。


「―――」


耳元に口を寄せて囁いたユウの言葉を聞いた瞬間、彼女は顔を真っ赤にして固まってしまった。その様子に気付いたリヒトが首を傾げる。


「ユウ、何言ったんだ?」


「んー……バレちゃったから、ちょっとね?」


悪戯っぽくユウが言うと、リヒトは納得したように苦笑いをしてそれ以上追及しなかった。しかし、僅かに耳が赤くなってるのを見逃さなかったリサは机に突っ伏して動かなくなった。


「皆して何の話してるの?」


「内緒だよ」


「リサには教えたのに?」


「リサが自分で気付いたから教えたんだよ」


ユウが言うと、話について来ていなかったカナが不機嫌そうな顔になった。ユウは彼女の純粋さに思わずクスリと笑いが零れる。


「ほら、そろそろ先生来るぞ」


「そうだね」


「はぁい」


リヒトが促すと、ユウは素直に従って自分の席に着いた。カナは返事こそしたが、不満げな表情で席に戻った。

書き方とか変わっているのだろうか…

あっという間に季節が逆転してるのはご愛敬。

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