第五十六話 五月五日(日)少女はお昼の食材の買い出しに出かけた
すいません。筆が進む進まない関係なく、書く時間がありませんでした。
ユウは父からのお願いを思い出したので麦茶を一口飲んでから訊いてみる。
「ところで父さん。お昼を作るのはいいけど、何かリクエストある?」
「……そうだな。久しぶりにカレーを食べたいかな」
「悪いけど、ルーもインスタントも今切らしてるわよ。買いに行く?」
「ならせっかくならスパイスカレーお願い出来る?前に作って貰ったやつ」
「えぇー、あれ作るの大変だったんだけど……」
「頼む。あの時のカレーが一番美味しいかったんだ」
「俺も食べてみたいな。ユウ、駄目か?」
「うぐっ」
ユージに褒められリヒトにねだられたユウは言葉に詰まると、照れくさそうに頭を掻いた。その様子を見たサユリが嬉しそうに胸の前で手を合わせると、声を上げる。
「あら!それじゃあ買いに行きましょうか!」
「母さんまで……」
「ユウ、頼む!俺に出来ることなら何でもするから!」
身体ごと向き直ってユウに頭を下げるリヒトにたじろぐユウは、彼の言葉に惹かれて受諾した。
「……わかった。でも、期待はしないでね」
「「やった!」」
リヒトとユージが喜びの声を上げ、サユリは二人の様子にクスリと笑みを零す。頭を上げて喜びを露わにしているリヒトの腕を軽く引いたユウは、彼の耳元でそっと囁く。
「何でもしてくれるんだよね?」
「ん?ああ、約束する」
「それじゃ、楽しみにしてるね」
「……はい?」
ユウの言葉にリヒトは首を傾げると、何故か頬に手を添えられて蕩けるように笑う彼女が顔を覗き込んでくる。その瞳の奥に熱を感じたリヒトは戸惑いながら視線を彷徨わせると、彼女はそっと滾る気持ちを落ち着かせて体を離した。
そんな彼らの様子を見ていたユージとサユリは顔を見合わせると、揃って肩をすくめる。
「リヒト君、頑張ってね!」
「いや、何の事ですか?」
「その、なんだ……ユウ、程々にな」
「全力で取り組ませていただきます」
リヒトは彼女の態度に少しだけ不安を覚えつつも、今は置いておくことにした。
ユウとリヒトの二人は昼食の調達に向かう為、準備をして家を出る。近所のスーパーに向かう途中通り道にある中学校が見えた。
「なんかここ最近の出来事が濃すぎて懐かしく感じるなぁ……」
「そりゃそうだ。ここまで連日何かあることなんか滅多に無いぞ」
「確かに。そういえばリヒト、カズヤとの約束覚えてる?」
「ん?……ああ、そういえばいつか四人で会おうって話のやつ?」
「そうそう。今度の土曜日なら空いてるって連絡来たんだ」
「おっけ。了解」
「……リヒトってメイとの接点少ないよね」
「そうだな。カズヤの周りにちょろちょろしてたのは見てたけど、出くわすタイミング無かったな」
「まあリヒトとは別のグループで集まってたからね」
「なるほどな……おっ着いた」
話しているうちに目的地であるスーパーに到着すると、店内に入る。そして買い物カゴを手に取ると野菜コーナーから回り始める。
「とりあえずカレーに必要な材料を買い集めよう。まずはニンジンとジャガイモと玉ねぎと……」
「肉は?」
「牛肉が安いみたいだからそれにしよう。スパイスはコーナーが離れてるから最後ね」
「了解」
必要な食材を集め終えると会計を済ませる為にレジへ向かう。会計を終えて店を出てすぐ、思わぬ人物と出会った。
「あれ、ミユキだ!久しぶりだね」
「……ん?どちら様?」
「どうも、生徒会で一緒だった佐倉ユウです」
「佐倉?……えっ!?ユウ君なの?」
「えっと、知り合い?」
リヒトが恐る恐る訊ねると、彼を見たミユキは驚いた。
「ユウ君の幼馴染だ!つまり本当にユウ君!?」
「うん。久しぶり」
「えー!!こんなに可愛くなったんだね!!」
「ありがとう!ミユキも綺麗になったね!」
ユウとミユキが和気あいあいと話している横でリヒトは一人取り残されていた。その表情は困惑気味であり、どうしていいのか分からず立ち尽くしていた。
「ああ、ごめんね。中学の生徒会で一緒だった神田ミユキさん。こっちは幼馴染で彼氏の海原リヒト」
「あー、うん。海原君のことはたくさん聞いてるよ」
「初めまして。……生徒会でユウが話す内容は大体俺の事ってマジなんだ」
「ああ、もう知ってた?そうなんだよね。今もユウ君はべったりだね」
「えへへ~そうかな?」
(うわ、可愛い……)
ユウの照れた仕草にミユキは内心で呟き、頬に手を当てて身悶える。
「にしてもユウ君はいつの間にか女の子になって幼馴染捕まえてるし、びっくりしたよ」
「僕もだよ。まさか男の子から女になるなんて思ってなかったもん」
「あの時のユウは過去一で混乱してたな……」
リヒトはぼやくように言うと、ミユキは苦笑するしかなかった。
少しの間談笑していた三人だったが、ミユキがふと時計を見て慌てだした。
「やばっ、もうこんな時間!?」
「どうかした?」
「早く帰らないとお母さんに怒られる……」
「あはは……それじゃ、私達も行くね。また今度ゆっくり話そうね」
「うん。バイバーイ」
手を振って別れるミユキを見送った後、二人も帰路に着くのであった。
家に帰って来ると早速調理に取り掛かる。野菜の皮むきや下準備などは手早く済ませて、ユウは記憶を頼りにスパイスを配合してルーを作っていった。
「さてと、これで終わりっと。分量がバラバラだから味が変わってないといいんだけど」
「俺としては美味しければそれで十分です」
「一応父さんのリクエストは前に作ったやつだから、出来るだけ近づけたいっていう僕のこだわりかな」
「なるほどねぇ……」
「よし、出来た!」
完成したカレーを前にユウは満足そうに微笑みながら眺めていた。
そして二人は出来上がった料理を皿に移し替えるとテーブルで待つユージの前に皿を置いた。
「おお、あの時のカレーだ!このレトルトにはないスパイスの香りが懐かしいな」
「良かったぁ……そう言ってもらえると安心できるよ」
「ユウはこだわってるけど、作って貰っているだけでありがたいからな」
「それはただ単に僕が拘りたかっただけだから。同じ味を作るっていう課題に挑戦したかっただけ」
「なるほどな……」
「ユウちゃん、配膳終わったから座って頂戴」
「では、食べますか」
「「「「いただきまーす」」」」
四人が席に着くと、同時に挨拶をして食べ始めた。カレーを口に運ぶとユウは顔をほころばせ、リヒトも同じ様に笑顔を見せた。
そしてあっという間に完食すると、満腹感と幸福感に包まれた。
「いやー、やっぱりカレーはうまいな」
「だね。ご飯が進む進む」
「お代わりいるかしら?」
「欲しいです!おかわりお願いします!!」
リヒトの元気の良い返事にサユリは嬉しそうにする。そしてすぐに炊飯器からご飯をよそってリヒトに差し出す。リヒトは受け取ると再びカレーを食べ始めるのだった。
昼食を終え、片づけが終わるとリビングで寛いでいた。ユージはソファーに座ってスマホを操作しており、サユリはキッチンで食器の洗い物をしている。
「ねえリヒト。部屋に行かない?」
「ん?いいぞ」
「えへへ、ありがと」
「……おい待て。お前まさか……」
嫌な予感を感じたリヒトは引き止めようとしたが既に遅く、ユウは彼の腕を掴み二階へと上がっていく。
「……大丈夫。まだしないから。夜まで我慢する」
「今日のお前の感情振り切れてないか?」
「勿論!部屋でちゃんと説明するから」
「ならいいんだが……」
リヒトは嬉々と腕を引く彼女に連れられて、不安げに彼女の部屋へと足を踏み入れた。
最近は疲労がヤバくて気づいたら時間が飛んでるんですよね。
椅子に座ったまま気づいたら一時間二時間眠ってしまい、書く時間が皆無という…




