第五十二話 五月四日(土)少女は他校との練習試合に臨んだ
ちょっと区切り悪いので少し短いけど、投稿します。
彼に一時間べったりとくっついて充電した翌日。ユウは万全の調子で家を出ると、リヒトが外で待っていた。
「よう。おはよう」
「おはよう、リヒト。今日は早いね」
「おう。昨晩はぐっすりだったからな」
「私も。お陰で元気いっぱいだよ」
「そりゃよかった」
二人は軽く微笑み合うと、一緒に学校に向かった。
学校に辿り着くと、そのまま第一体育館へ向かった。慌ただしそうにしている女バスの顧問の姿を見かけたユウは気になって声を掛けた。
「どうしたんですか?何かありました?」
「あっ、佐倉さん!今日の相手側のコーチが予定より早く着くみたいでね、その対応に回れる人手が足りないのよ」
「わかりました。僕が対応します。後どのくらいですか?」
「ありがとう!後五分ちょっとで来るみたいだからお願いね」
顧問はユウに感謝の言葉を伝えると、急いでその場を離れた。
「それじゃあ着替えるのは後にして正門に行こうか」
「俺に手伝えることはあるか?」
「なら誘導係お願いしていい?背が高い方が見えやすいんだよね」
「おけ」
リヒトに誘導灯を渡して共に正門に向かった。数分後、顧問が言っていた通り黒のワゴン車が入って来た。一度止まってもらい、窓越しに顔を見せたのはスーツ姿の若い男性であった。
「おはようございます。落葉高校のコーチの方ですか?」
「そうですね。初めまして、坂下です。今日はよろしくお願い致します」
「こちらこそ。駐車場はあちらを曲がった先にありますので誘導員の指示に従ってください」
「ありがとうございます。では、失礼します」
男性は丁寧に頭を下げると車を走らせ、無事に学校内に入ったのを確認してユウも駐車場へ向かった。
そちらに着くと、車から降りてくる姿が見えて駆け寄った。
「改めて今日はよろしくお願いします。会場に案内させていただきますね」
「よろしく頼むよ。他に落葉の人は来ていないのかい?」
「どうやら先方の連絡と違った時刻をお伝えしていたようで、落葉高校の方は後三十分後になります」
「そうなのかい!?それはご迷惑をおかけしたようで申し訳ない」
坂下はスマホを確認すると、連絡が入っていたようで気まずそうにしていた。
「幸いこちらの準備は出来ていますので大丈夫ですよ。設置する機材がありましたらお手伝いします」
「本当にありがとう。お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「わかりました!リヒト、運搬お願い」
近くにいたリヒトを呼んで機材を持ってもらう。数キロある機材の入った鞄を両肩に掛けて平然とするリヒトに坂下が驚愕した表情を見せていた。
「凄いな君は……。よし、案内お願いします!」
「はい!こちらになります。着いて来て下さい」
ユウは坂下の先導をして第一体育館まで案内した。
到着すると、既にバスケ部員は半数以上来ており、ユウ達に気付いた女バス部長が駆け寄ってきた。
「おはようございます。いきなりですけど、機材の設置得意な方っていますか?」
「佐倉さん程ではないけど何人かいるわ。呼んでくる」
「お願いします。……それではコーチはこちらへ」
「助かるよ。それにしてもこういった対応に慣れてるね」
「自分は生徒会に所属していますので多少経験あるんです」
落葉高校の待機所に案内を終えたユウは笑顔を見せると、リヒトと機材を設置する人員が来るまで坂下と雑談で場を持たせていた。
「佐倉さん、連れてきました。後は引き継ぐから二人とも着替えてきていいわよ」
「わかりました。お願いします」
ユウ達はすれ違うマネージャーの面々に挨拶してから更衣室へと向かった。二人は制服からジャージへと着替えてコートに向かうと、丁度女バスの顧問に遭遇した。
「あっ、佐倉さんありがとね。お陰様で助かったわ」
「お役に立てたなら何よりです。坂下コーチの機材の設置は終わりましたか?」
「ええ、問題なく。そろそろ相手方も着くころかしら」
「僕たちはここでお出迎えですか?」
「そうね。少し待っててくれればすぐに会えると思うわ。……あっ、来たみたい」
顧問が向けた視線の先に目を向けてみると、そこには白を基調としたユニフォームに身を包んだ選手たちの姿があった。
「こんにちは。本日はよろしくお願いします」
「こちらこそ。控室に案内しますので、準備を始めましょうか。我々は第二を使いますので落葉の皆さんはここを使ってください。二十分後にここ集合でよろしいですか」
「それで構いません。ありがとうございます」
コーチ陣が軽く話している中、ユウは選手達の方に目を向けた。
(……あの人、リヒト見て驚いてる。僕は見たことないけど、中学のリヒトとやった事あるのかな)
チームの中心にいるような人物が驚愕して、周囲に心配されている様子を眺める。リヒトは向けられた視線に気づかず、ただ不思議そうにユウを見ていた。
「それでは、また二十分後に。何かあれば遠慮せず声をかけてください」
「ありがとうございます」
坂下に頭を下げてから去って行った。その後、ユウ達は第二体育館に移動して準備を進めた。
時間通りに準備を終えて第一体育館へ戻ると、落葉高校の選手たちが既に整列していた。
「すみません、遅くなりました」
「いえ、我々も今来たところなので気にしないでください」
互いに頭を下げると、早速とばかりに両校の顧問が指示を出した。
「今日は男女ともに試合を行う予定です。総当たり戦で、一戦ごとにメンバーを変えて行きます。事前に打ち合わせた通り組み合わせ表に従って試合してください」
「コートは全部で四コート、それぞれに番号を振ってあるのでよく確認してください。それでは五分後に一試合目を開始します」
各校の監督がそれぞれ配置についていく。ユウ達もそれぞれのコートに入っていった。
「では、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
挨拶を終えると、それぞれベンチに戻っていき、第一試合の選手たちもコートに入り始めた。
コートに入ったユウは相手側のベンチに目を向けると、見覚えのある人がいた。
(本田さんは落葉に行ったんだ。てっきり推薦受けたと思ってたけど違ったんだ)
彼女の実力を思うと初手ベンチスタートに違和感を覚えるが、集合の合図が掛かりユウは思考を中断してコート中央に向かった。
次話は三日以内に投稿します(戒め)
多分今は筆が進むので出来るはず。




