第四十六話 四月二十九日(月)少女は友人から頼まれた
サブタイトルが難しい…。この書き方だとダブりそう。
帰宅後にリヒトに連絡したら数分で家まで来て元気にケーキを受け取っていった翌日。ユウは朝からずっとそわそわしていた。
(リヒトの事だから美味しいって言ってくれると思うんだけどなぁ……久々だったしちょっと心配だなぁ……)
そんなことを考えているうちに支度を終えたユウが家を出れば、いつもの様にリヒトが待っていた。
「おはよう。ユウ」
「おはよ。じゃあ行こっか」
「ああ」
そのまま歩き出したユウ達だったが、途中でリヒトが思い出したように立ち止まった。
「そういえば昨日のケーキなんだが、凄く美味かった!」
「良かった。カレンも感想頂戴って言ってたけど、どうする?」
「どうするって?教室じゃ駄目なのか?」
「聞き耳立てたクラスメイトがリヒトに絡んでくるよ。女子の手作りを貰ったとか格好の的じゃない?」
「あー、それに関しちゃもう開き直ってるから平気」
「ならいいんだけど」
「ユウを彼女に持った時点でもう絡まれてるし」
「……そういえば手作り弁当渡してる時点であれか」
そんな会話をしながら歩いていると学校に到着していた。校門を通り抜けて下駄箱に着くと、リヒトは自分の靴から上履きへ履き替えた。そして上がってすぐ、正面から声をかけられた。
「おはようございます!」
「おはよう、カレン。ここで会うなんて珍しいね」
「おはよう藤堂。もしかして感想待ち?」
「うっ……その通りです。鋭すぎませんか?」
「いや、顔に書いてあるから丸わかりだよ」
「え!?本当ですか!?」
慌てて両手で頬を触るカレンを見て、ユウとリヒトは思わず吹き出した。
「冗談だって。でも感想欲しいんでしょ?」
「は、はい!なので聞かせて頂けるとありがたいです」
「分かった。教室に向かいがてら話すよ」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに微笑むカレンに釣られてユウとリヒトの顔にも笑顔が浮かぶと、三人はそのまま教室へと向かった。
「それで、味の方はいかがでしたでしょうか」
「美味かったよ。母さんも喜んで食べてたし、美味しかったって感想も預かってるよ」
「嬉しいです!ちなみに、どれが一番良かったとかありますか?」
「俺はあの星型してたやつ。味が好みだった」
「……凄いですね。愛の成せる業でしょうか」
カレンはリヒトの答えを聞いて、羨ましそうな視線を向けた。しかし、ユウにはそれが何を言いたいのか分かったので苦笑した。
「どっちかっていうと幼馴染だからかな。一緒だったから出来たことだし」
「それでも、ですよ。私もユウ達のような素敵な関係の方が出来るでしょうか……」
「カレンみたいに可愛くて優しい子なら皆放っとかないと思うけど」
「えっ、可愛いって……そんな、照れますよ」
ユウの褒め言葉に対して恥ずかしそうにするカレンだが、ふとその表情に影が差す。
「友達も私の家に気後れして離れていくんです。いつも最後は……」
「少なくとも僕やリサは離れる気はないよ。カレンが離れてっていうなら別だけどね?」
「わ、私はそんなこと言いません!」
ユウの言葉に慌てて否定すると、今度はリヒトが口を開いた。
「いつかユウみたいに、藤堂を見てくれる人が現れるさ」
「二人とも……。ありがとうございます」
二人の励ましを受けて、カレンは声を震わせて感謝を伝えた。
***
昼休みになり、ユウ達は教室で昼食を取っていた。
「そういえば、今度の土曜って二人は試合があるんだっけ?」
「ああ、バスケの公開試合な。体育館二つ使っての男女合同らしいけど」
「あたしは部活あるから見に行けないな~。リサは?」
「予定は空けておいたわ。カメラでも用意する?」
「そこまでしなくていいよ」
「残念ね。スマホで撮るわ」
本当に残念そうに言うリサを横目に、ユウは弁当を食べ終えた。
「ごちそうさま。じゃあ僕は歩いてくるね」
「俺も行くわ」
「あら、どこかへ行くの?」
「ちょっと図書室でも見てこようかなって。蔵書してるタイトルだけでも記憶しときたいし」
「俺はノベル目当て。借りれるみたいだし」
「そう。じゃあ私が案内するわよ」
「え、いいの?」
こうして三人はカナとタイチと別れて図書室へと向かった。
賑やかな廊下を進み図書室に入ると、静寂に包まれた空間に紙の匂いが立ち込めていた。
「おぉ……やっぱり凄いね。流石に今日で全部は覚えられないかもなぁ」
「数日に分けるか放課後に来なさい。それにしても、相変わらず本が好きねぇ」
「そりゃあ本は知識になるし面白いじゃん」
「リサ、案内よろ」
そのままカウンターを通り過ぎて陳列された本棚を前に、ユウは二人と別行動をとった。
「……さて、変わった本はあるかな?」
ユウが端から順に本の背表紙を観察し始めた。その様子を見たリサは小さくため息をつくと、リヒトをノベルコーナーに案内した。
「ここね。あくまで学校だからそこまで多くはないわよ」
「サンキューな。逆に学校で読めるもので変わったのを見つけてみたい」
それからしばらくして、二人がユウと合流すると既に午後の授業開始十分前になっていた。
「もうこんな時間か。そろそろ戻ろうぜ」
「うん、そうだね」
「リサも行こうぜ」
「私はこの本借りるから先に行ってて頂戴」
リサを残して先にリヒトとユウが図書室を出ると、自分たちの教室へと戻る道中でカズヤと出くわした。
「おぉ!!リヒト、久しぶりだな!」
「ん?カズヤか!何だかんだで会うのは久しぶりだな」
「お互いユウを通して現状は聞いてたからな」
「そういやそうか」
リヒトが苦笑しながら納得していると、一歩離れた位置にいるカズヤは二人を眺めた。
「にしても……こうして二人が並ぶとしっくりくるな」
「そうか?そう見えるなら嬉しい限りだ」
「久しぶりに話したいけど、そろそろ授業も始まるしな。休日に予定組もうぜ」
「ならメイも呼んでね」
「おう!あいつもユウに会いたがってたしな。んじゃ後で連絡するわ」
カズヤはそう言って手を振ると、自分の教室の方へ去っていった。
「メイってあいつに猛アタックしてたあいつか?」
「そうだよ。それより早く戻らないと遅刻するよ」
「それもそうだな」
そして二人も合流したリサと一緒に教室に戻った。
***
放課後、バスケ部での練習を終えたユウは更衣室で着替えを終えてリヒトの着替えを待っていた。
(部活終わる時間がギリギリだったからなぁ……暇になったけど、どうしようかな)
図書室で本でも借りとくべきだったかと考えていると、不意にカズヤから着信が入った。
「もしもし?珍しいね」
『急に悪いな。ユウ、今リヒトと一緒にいるか?』
「今第一体育館でリヒトを待ってるけど、何か用事?」
『なら、ちょっと待っててくれ!直ぐにそっち向かう!』
「えっ!?ちょっ……」
一方的に切られるとユウはスマホを持ったまま固まってしまった。
「お待たせー」
そんな時、タイミング良くリヒトが現れた。
「あれ、どうした?」
「なんかカズヤが僕たちに用があるって。すぐ来るってさ」
「ふぅん。なら待ってればいいんだな……ってもう来たな」
リヒトの言葉通り、足早に駆け寄ってきたカズヤはすぐに口を開いた。
「悪いな。練習終わって疲れてるだろうに」
「それは別にいいんだけど、どうかしたの?」
「あぁ、それなんだが……。昼に久々に会ったことをメイに伝えたら、二人の写真撮ってきてって言われてな」
「それで、僕らのツーショットを撮りたいと?」
「そういうことだ。頼む」
そう言いながらカズヤはスマホを片手に持ち替えて操作し始めた。
「そういえば今の僕になってから写真撮ってないね?」
「ユウ単体ならサユリさんが激写してるけどな。ユウ、ここ立って」
「ん。どうせならくっついとく?」
「寧ろくっついといて。はい、チーズ……っと。これで良し」
「後こっちのも送ってくれ」
「了解」
そうしてスマホにツーショットの写真が送られるのを確認すると、ユウとリヒトは二人で顔を見合わせて微笑んでいた。
「じゃあそろそろ帰るね。また明日~」
「おう、気をつけて帰れよ」
カズヤと別れた二人は校門まで並んで歩くと、そのまま家路についた。
帰宅後、寝支度を済ませたユウが部屋でゆっくりしていると、スマホに大量の通知が入った。確認すると、メイからの写真に関する感想が沢山送られていた。
メイの興奮を収めて通知が落ち着くまでに一時間ほど用いたユウは、倒れこむようにベッドに横になった。
日常系を書いてる人ってどうやって話を膨らましてるんでしょうね。




