第四十五話 四月二十八日(日)少女は友人と料理をした
もう少し地の文の語彙力を増やさないとかな…と思ってはいます。
「ただいま戻りました。こちらが今日お世話になるお友達です」
「お帰りなさいカレンさん。可愛い方々ね」
玄関を通るとそこにエプロン姿の女性が立っていた。カレンとは似つかない容姿をした女性に不思議がる二人は挨拶をした。
「初めまして、佐倉ユウと言います」
「初めまして、的場リサです」
「あらあら、ご丁寧にどうも。私はこの家で家政婦をしています佐々木と申します。今奥様は不在にしていますので、何かありましたら私に言ってくださいね」
((家政婦……))
二人は心の中でそう思ったが、口には出さなかった。カレンの家が裕福な家庭なのは外観の時点で想像出来ていたので、そういう人がいてもおかしくはないと思ったからだ。
「では早速中に入ってもらいましょうか。荷物はリビングで大丈夫ですか?」
ユウ達は案内されるままリビングへ向かった。ソファに荷物を掛けると、カレンに案内されてキッチンへと入っていった。
「なんか緊張してきたよ」
「流石にここまでの規模は想像してなかった」
家について外観に圧倒され、中に入ってからも家政婦や家具の質に戦々恐々とする二人。カレンは二人の緊張を解そうと話題を探す。
「ふふ、そこまで大したものではありませんよ。両親は仕事が出来ても家事は全く出来ませんので、二名ほど雇っています」
「そうなんだ?じゃあ料理は佐々木さんともう一人の方が?」
「えぇ、そうですよ。普段は八坂さんという方が担当していますが、佐々木さんが料理することもあります」
「二人雇ってることに驚きなんだけど」
(八坂さん?それに佐々木さん……まさかね)
ユウは聞き覚えのある名前に一瞬疑問に思うが、すぐに考えを振り払った。そしてそのまま会話を続けていく。
「それでカレン、お昼ご飯は何作るとかって決めてるの?」
「いえ、まだ特には。二人は苦手なものなどありませんよね?」
「うん。基本的になんでも食べれるよ」
「私も平気よ」
「分かりました。なら私が作れるもので作りましょう。アドバイスお願いできますか?」
そう言うと、カレンは冷蔵庫から材料を取り出して調理を始めた。その間、ユウとリサは一歩離れたところでカレンの作業姿を眺めていた。
要所は押さえているようで、ちょっとしたところしか口を出すところが無く手持ち無沙汰になっていた二人。
「見てると作りたくなるのは僕の性分なのかな」
「そうね。あなたの世話好きは昔からよ。カレンなら私が見てるからあなたも好きに作ったら?」
「いいの?」
「えぇ。私もユウの料理食べたいもの」
「そっか。それじゃあ遠慮なく」
ユウはカレンの隣に立つと、話を通して被らないようにして冷蔵庫の中身を見る。材料を見て作るものを決めたユウが淀みない動きで料理を始めた。そしてその横顔をリサがチラリと見る。
(生き生きとしちゃって……やっぱり格好良い。あの可愛い顔立ちに面影を感じるのは私の錯覚かしらね)
そんなことを思いながらリサはユウの横顔に見惚れていた。すると視線を感じたのか、不意にユウと目が合う。
「どうかした?」
「うぅん。なんでもないわ」
「そっか。カレンはまだかかりそうだから、よろしくね。僕のはお楽しみってことで」
「分かったわ。期待して待ってる」
リサは頬を緩ませて微笑むと、カレンの後ろについて手元を確認していた。じっと見られて慌てふためくカレンの様子にクスッと笑いつつ、ユウは自分の作業を再開させた。
そうして三十分程経った頃、二人の料理が完成した。途中からやってきた佐々木の手を借りてテーブルの上に並べられたのは、オムライスとコンソメスープだった。
「おぉ!美味しそう!」
「見た目も綺麗ですね」
「ありがとうございます。冷めないうちにどうぞ召し上がってください」
三人は席に着くと早速頂くことにした。佐々木は先に食器を洗うと言ってキッチンに消えていった。
リサがスプーンを手に取り一口食べると、目を見開いて驚く。
「凄い、卵がフワトロだわ」
「それは良かったです。このチキンライスも自信作なので是非味わって食べてください」
「じゃあ、いただきます」
ユウもリサに続いて口に運ぶと、同じように驚いた表情を浮かべた。カレンは二人が喜んでくれたことに安堵しつつ、自分の分を口に運んだ。
「うん、美味しい」
満足げに呟いたカレンの言葉に、二人は笑みを見せた。それからは三人で談笑しながら食事を楽しんだ。食後は佐々木が入れてくれた紅茶を飲みながらまったりとした時間を過ごした。
「ふう……。カレンの料理の腕は想像以上だった」
「ありがとうございます!ただ、あの料理だけは数十回の経験の成果ですけど」
「それでも凄いわよ。スイーツも余裕そうなのにね」
「恥ずかしながら、家では店売りの甘味なので教わるタイミングがないんです」
カレンは照れくさそうに話す。リサはそれを聞いて少し考える素振りを見せる。
「ねぇ、私は簡単なものなら教えられると思うんだけど……流石に店売りレベルは無理よ?」
「え!?全然普通ので大丈夫ですよ!」
家の規模からして出てくる甘味のレベルが高そうだと懸念するリサに、慌てて否定をするカレン。一度引き受けてしまった手前、断るにも断れず困っていたリサがホッと息をつく。
「それならよかったわ。でも本当に私で大丈夫?」
「はい。リサさんさえ良ければ是非お願いします」
「分かったわ。じゃあ早速これから始めましょうか」
「ありがとうございます」
二人を微笑ましく眺めていたユウは、話に区切りがついたタイミングで口を挟んだ。
「僕、何作るか聞いてないんだけど。何作るの?」
「あら、言ってなかったかしら?ケーキを作るの」
「へぇー。じゃあ僕はお菓子作り用の器具を用意しとくね」
「助かるわ。ありがと」
「え、もう器具の配置を把握したんですか」
驚くカレンを余所にユウは先にキッチンへと向かった。そして慣れた手つきで棚を開けると、必要な道具を取り出していく。その様子を見たカレンは感嘆の声を上げた。
「話には聞いてましたが、凄いですね」
「まぁね。これくらいなら余裕だよ。覚えるだけだからね」
(ユウの暗記能力は羨ましいわ。レシピ覚え放題じゃないの)
昔を思い出していたリサだが、ふと我に帰ると隣にいるカレンに声をかける。
「さ、じゃあ早速作りましょうか。とりあえず基本的なことからね」
「は、はい!お願いします!」
こうしてリサ主導の元、スイーツ講座が始まった。そうして穏やかな時間が過ぎていき、時計の針は午後六時を指し示していた。
「よし、こんなもんかな」
「たくさん作りましたね。この量どうしましょうか?」
調理台の上に並ぶ複数のケーキが乗った皿を見て、カレンは苦笑いを浮かべた。
「うーん……流石に全部食べるわけにはいかないよね……」
「一応こっちのは冷蔵保存効くから明日までは大丈夫だと思うわ」
「あ、リヒト甘いものもいけるからあげてもいい?」
「はい。むしろ無駄にしたくないので是非渡してください。感想を貰えると助かります」
「ありがとう!伝えておくよ」
ユウは笑顔を見せると、お礼を言った。それから三人で後片付けをして、解散することにした。
佐々木に送ると言われてお言葉に甘えた二人は車で送迎してもらっていた。カレンはお留守番で、先にユウの家へ向かう最中にユウは佐々木に話しかけた。
「今日はありがとうございます。送迎までして頂いて」
「いえいえ、私の方こそお礼を申し上げたいですよ。カレンさんがお友達をお連れしたなんて聞いたら奥様が大喜びしますよ」
「私はユウの繋がりで仲良くなっただけですから」
「流石は佐倉さんですね」
納得して頷く佐々木さんの態度と言い方に、ユウは確信を持って訪ねた。
「あの、佐々木さん。もしかして娘さんいますか?」
その問いに対して佐々木はしばらく考えるような仕草を見せると口を開いた。
「はい。ご想像通り、生徒会に入ったユキナから貴方の事は聞いていました」
「もしかしてですけど、もう一人の八坂さんも……」
「はい、ミチルの母です。お気づきになっていたとは思いませんでした」
「なんとなくですけど、雰囲気が似てるなって思ったんですよ」
「そうですか。それは嬉しい限りですね」
「ユウの反応が少し変だったのはこれが理由だったのね」
「そうだね。あ、あそこで大丈夫です」
お願いして車を停めてもらうと、ユウは改めて挨拶をした。
「改めまして、本日はありがとうございました」
「こちらこそ感謝しています。今後ともよろしくお願い致しますね」
「では、失礼します」
「また明日ね、ユウ」
「うん、またね!」
車が見えなくなると、ユウは家へと入っていった。すると玄関先で様子を伺っていた母が声をかけた。
「おかえり」
「ただいま。これ、友達の家で一緒にケーキ作ったんだ。―――」
ユウは今日あったことを話しながらリビングへ向かった。
作中時間で夏になるまでに、現実の夏は終わりそうですね




