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第三十九話 四月二十六日(金)少女は学校帰りに買い物をした

やばい…更新頻度落ちてる。それ以上に筆の進みが遅い。

彼から打ち明ける勇気を貰い、父親と約束をした翌日。

来週の土曜には今の研究が終わって帰ってくると連絡を受けて肩透かしをくらったユウは、朝の教室で意気消沈しながらリヒトに報告した。


「まあ、あの人も忙しい人だからな」


「でも昨日貰った勇気が持たないよ」


「無くなったらまた貰うんじゃなかったのか?」


「そ、それは……そうだけど……」


もにょもにょと小さく口を動かす彼女に苦笑いを返すと、リヒトはユウの頭にそっと唇を落とした。勢いよく顔を上げたユウは不敵に笑う彼を見て、思わずその胸に飛び込んで顔を隠した。リヒトは胸元にいる彼女の耳が赤くなっているのを見て可愛いと漏らしていた。

そんな二人のやり取りに、カリンがニヤリとした笑みを浮かべながらやってきた。


「お二方、朝から見せつけてますね」


「おはよう、ユウの可愛さが止まることを知らないもんでね」


「それは同意しますけど、ユウの独り占めはズルいですよ」


「悪いな。だが、このくらい許してくれよ」


「……仕方ありませんね」


「二人とも、恥ずかしいからあんまり言わないで……」


ユウは羞恥心に耐えかねると、リヒトからそっと顔を離して二人を弱弱しく睨んだ。その行動に二人は微笑ましそうに見つめると、彼女は気まずさを感じて話題を変えた。


「そ、それより、カリン、日曜の場所は何処にするの?」


「それでしたら、私の家でお願いできますでしょうか」


「いいの?」


「はい。出来たら昼食からお願いしたいのですが、大丈夫ですか?」


「大丈夫!楽しみにしてるね!」


ユウは嬉しそうに返事をする。すると、リヒトが唸りながら首を傾げた。


「俺はどうするかな。ユウがいないとなると暇だしなぁ……タイチでも誘ってどっか出掛けるか」


「リヒトもそろそろクラスの友人を作ったら?」


「そうだけど、既にグループ作られてる仲に入るのはな」


「確かに……でも今度の体育祭で交流するからその時に出来るよね」


「そうだといいんだけど」


リヒトはため息をつくと、ふと思い出したことを口にした。


「ああ、そういえば……ユウ」


「ん?」


「今日の放課後、ちょっと付き合ってくれないか?」


「別にいいけど……どこに行くの?」


「母さんがこれ買ってこいってさっき通知来た。ほれ」


「……あれ?変わった品目だね。何に使うんだろう?」


ユウはリヒトのスマホ画面を覗き込むと、下へスクロールした先に『男性用避妊具』という文字が表示されていた。

ユウは頬を赤らめると、バッと勢いよくリヒトから離れた。


「な、なんで、これってその……えっと!?」


「落ち着け。うちの親のことだ、連絡入って浮かれてるんだろ」


「……アイカさんは隙あれば嫁にしようとしてたのを思い出した」


「一体どうしたらそんな状況になるんですか?」


カリンは呆れたように呟くと、ユウは苦笑いをしながら言葉を返した。


「いつからかは分からないけど、多分僕のことを娘みたいに思ってるんじゃないかなって思う」


「それならユウが女になって最初に来た日だぞ。あの日、ウェディングドレス姿を妄想してたらしい」


「なんで色んな過程すっ飛ばしてそこを想像してるの?」


「いや、なんかユウは洋式と和式ならどっちが似合うって聞いてきたから」


「ユウならどっちも似合いそう!」


「カリン、それ直接言う?」


ユウがジト目で見つめると、カリンは目を逸らす。リヒトはそれを見ながら苦笑すると、ユウに向き直った。


「まあ、そういう訳で、母さんの買い物に付き合ってくれ」


「分かったよ。いつものとこだよね?」


「おう。んじゃ、よろしくな」


「うん」


ユウが了承すると、リヒトは安心したような表情を浮かべた。

カリンは二人の様子を羨ましそうに眺めていたが、気づかれる前に表情を戻してから一声掛けて自分の席へと戻って行った。

ふと、ユウのスマホが振動した。


「あ、生徒会の召集……」


そこには前の活動で言っていた情報の共有の為の資料作成を今日行う旨が書かれていた。参加メンバーはユウを含めシズクとカズヤの三人の作業だった。


「……ちょっと相談してみよう」


ユウは一人、呟きながらトークアプリを開いて送信した。


***


平穏に授業を終えて迎えた昼休み。無理を言ってお願いをしたら快諾を貰った為、ユウは弁当をリヒトに渡して別行動をとっていた。


「失礼します」


そう言ってユウが生徒会室に入れば、シズクとカズヤが既に来ていた。二人とも資料を広げており、ユウも椅子に座って鞄を置いた。


「急に無理を言ってすいません」


「私達としても早く終わるに越したことは無いから問題ない」


「そうそう。それに、俺らならこの量は直ぐ終わるでしょ」


二人は快活な笑顔を浮かべると、ユウも釣られて微笑む。それから十五分程経過すると、小さな資料の山は綺麗に片付いた。


「よし、終わったな」


「お疲れ様です。ありがとうございました」


「気にしないでいいって」


「ああ。それより、二人もまだ昼を食べてないだろう」


シズクがそう言って弁当箱を取り出すと、ユウとカズヤも鞄から弁当箱を取り出した。そして、三人は一緒に食べ始めた。


「あれ?カズヤのお弁当……」


「……気付くの早くない?」


「いや、あの話を聞いてたらそうかなって思うでしょ」


ユウは先々週に公園で話した内容を思い出して、一人の少女の姿が脳裏に浮かんだ。


「……そうだよ。メイの手作りだよ。会長も知ってるでしょ」


「ん?ああ、江本メイか。彼女は不思議な時期に転校していたな。お前を追いかけたのか」


「そうですね。お陰でこうして回復して戻ってきたんです」


「なら一緒にメイもこっちに?」


「ああ、実家に帰ってる。……毎日家に来てくれるけど」


「へぇー。メイの熱っぷり的には一緒に暮らしてるかと思った」


カズヤの言葉を聞いたユウは首を傾げると、びくりと彼の肩を跳ねる。


「ま、まさか!流石にそれは……」


「ふぅーん……まあ、いいけど。今度時間見てメイに連絡取ろうっと」


シズクは内心で苦笑しながらユウとカズヤの話を聞きつつ、食事を進めていた。


「さて、そろそろ行くぞ」


シズクが弁当をしまいながら立ち上がると、ユウとカズヤも後に続いて立ち上がった。


「はい」


「分かりました」


「じゃあ、また来週にな」


「はい。ありがとうございます」


シズクと別れたユウ達は生徒会室を背にした時、人影が飛び出した。そこには息を切らした男子生徒が立っていた。


「いた!カズヤ、ここにいたの……か!?」


彼はユウの顔を見るなり硬直する。何かと思いながらもユウは声を掛けた。


「どうかしました?」


「えっ!?あっいや、その!」


彼が慌てると、カズヤは彼の背中をポンと叩いた。


「大丈夫だって。ユウはそんなに怖くないから」


「カズヤ、知り合い?」


ユウが尋ねると、カズヤは腕を組みながら答えた。


「ああ、クラスメイトだよ。ユウのファンらしい」


「ファン?」


「そう。この間の騒ぎでファンクラブも出来たみたいだし」


「そうなの?」


ユウが困惑していると、一年は深呼吸をして落ち着きを取り戻した。


「は、初めまして!一年D組の松本ケイです!……って、そうじゃない!カズヤ、次の授業で教材の運搬頼まれてただろ!」


「あっ、悪い。今行くとこだった」


「カズヤも松本さんも急ぎでも走ると危ないからね。止まれる速度にしなよ」


「了解、気をつけるわ」


「はい!失礼します!」


カズヤは手をひらりと振って教室へと向かった。ユウは彼に手を振り返すと、松本も彼の後を追いかけていった。


「ファンクラブなんてあるの?」


ユウの呟きは誰にも届かずに消えていった。


***


放課後、無事に仕事を片付けたユウはリヒトと一緒に馴染みのデパートへ来ていた。


「さて、何から買おうか?」


「んー……食材は最後にするとして、こっちの雑貨からかな」


「分かった」


二人はエスカレーターに乗って二階にある小物売り場へと向かう。そこにはアクセサリー類から文房具まで様々な商品が置かれていた。

迷いなくカゴへ入れていくユウをよそに、リヒトは別の棚へふらっと消えていった。


「これでよし。リヒト、どこに行っていたの?」


「これとかどうだ?綺麗な色だろう」


「僕にはちょっと派手じゃない?」


「似合うと思って持ってきたんだけどな」


「そう。……なら着けてみる。明日、頑張って着飾ってくるね」


「期待してる」


そう言って会計に向かった二人は荷物を持って店を後にした。スーパーで食材を確保して外に出れば、日が傾き始めていた。

帰路についてからしばらく歩いていると、ユウは少しだけ緊張気味に口を開いた。


「あのさ……明日の部活してる姿、見学してもいいかな?」


「……俺は構わないが、許可はバスケ部部長に聞いてくれ」


「大丈夫。既に聞いて許可は貰った上でリヒトに訊いたから」


「相変わらず根回し早えな」


ニコニコと笑うユウの姿に呆れた声を出すリヒトは、どこか嬉しそうであった。


「じゃあ、明日はよろしくね」


「ああ。……そういや、お昼はどうすんだ?」


「うんとね、リヒトは時間的にお家で食べるだろうから手抜き弁当かな」


「自身の体なんだから少しは労われよ」


「栄養バランスはちゃんと気を付けてるよ。それじゃ」


「ああ。また明日」


ユウは手を振って自宅へと帰っていく。その後ろ姿を眺めながらリヒトの頬は自然と緩んでいた。

糖分が足りてないのかな…

後でチョコの袋まとめ買いしよっと

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