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第二十六話 四月十七日(水)少女は再び噂された

10000PVありがとうございます。

想像以上に見てくれる方がたくさんいたことに驚いています。

思いを通じ合った翌日。


「もどかしかった感情がすっきりすると目覚めがいいなぁ……」


普段より早く起きたユウは伸びをして眠気を覚ます。

昨晩、ユウとリヒトが付き合い始めたことを家族に伝えると、『よかったわねぇ』『よくやった』と自分のことのように喜んでくれた。特に母親に至っては『孫の顔を見るのが楽しみだわ!』と言い出し、父親が咳き込んでいた。

朝の準備を終えたユウがリヒトを迎えに行くため家を出ると、玄関の前に人影があった。


「ユウ。おはよう」


「お、おはようリヒト。どうして……」


お互いに挨拶を交わすとユウは戸惑った様子でリヒトに尋ねた。


「……待ちきれなかった。早起きしてまで会いたかった」


「そっか」


ユウは嬉しさに頬を緩ませると、自然と手が重なり合う。


「行こうぜ」


「うん!」


こうして二人は手を繋ぎながら学校へ向かう。道中、何度も手を離そうとするがその都度、リヒトが握り直してくるので結局そのまま繋いで登校した。

流石に昇降口で履き替える際に一度放してほっとしたのも束の間、ユウは再度リヒトに手を繋がれた。

嬉しさと羞恥で慌てふためくユウは、結局教室に着くまで放されることはなかった。


「おっはよー!」


教室に入ると、クラスメイトの女子達が駆け寄ってきた。


「おめでとう佐倉ちゃん!」「お幸せに~」


キャイキャイとはしゃぐ女子達にユウは嬉しそうにはにかんで礼を言う。


「ありがとう」


「「「えッ!!?」」」


女子はユウに視線を寄こしたまま硬直した。その反応にユウは首を傾げる。何かおかしなことでも言っただろうか。


「あの……どうかした?」


「いや、なんでもないんだけど……。佐倉ちゃんがそんな柔らかい笑顔でありがとうって言うからびっくりして」


「いつもなら口角が辛うじて上がっているくらいの笑みだったのに、その花咲くような可愛らしい顔は刺さるわ」


「もう完全に恋する女の子の顔してるわよ」


「うぇっ?!そ、そうかな?」


言われてみると確かにそうだ。自分としては今まで通りに接していたつもりだったのだが、周りから見ると違うようだ。


(でも、リヒトと付き合ってからは自分に素直でいたいな)


彼の前では飾らずありのままの自分を曝け出すことにしているユウは自然と頬が緩む。


「あぁ……これは彼氏さん大変ね」


「こんな可愛い子が彼女だなんて、羨ましいわ」


女子達は感嘆の声を上げると、ユウはリヒトの様子をチラ見する。彼は彼でクラスの男子達にもみくちゃにされていた。


「なぁ、お前どうやって佐倉を落としたんだ?」「俺もそれ聞きたい」「俺も」


「どうやってって……普通にしてただけだけど」



「……あれが普通?意味が分からん。もっと詳しく」「そうだぞ。あんなに楽しげに話す佐倉初めて見た」


リヒトの回答に男子達は食い下がる。その様子を見ていたユウは苦笑いを浮かべた。


(リヒトは人気者だな)


ユウが前を向くと、視線の先を追っていた女子達に気付いた。ニヤニヤとした顔で更にからかわれたのは言うまでもなかった。

予鈴が鳴り、渋々解散していくクラスメイト達。二人はそっと息をついくと、席についた。


「お疲れ様」


「ああ、ユウもな」


「ふふ、僕はそこまででもないかな。みんな祝ってくれてたから」


「俺はこういうのは苦手なんだ……」


「まあ直ぐに落ち着くでしょ。我慢してね」


「善処する」


ユウはリヒトの背中をポンと叩くと、丁度担任の矢吹が現れ、朝のHRが始まった。


***


昼休み。ユウはリヒトの分の弁当箱を取り出して手渡すと、リヒトはジッと弁当箱を見つめている。


「リヒト?」


「ああ、ごめん。関係が違うとこれも違って見えてくるというか……」


「今日は初カノの手作り弁当になるから張り切って作ったよ!」


「マジで!?もしかして読んでた?」


リヒトの言葉を聞いてユウはクスッと笑って頷いた。そんな二人の後ろから弁当箱を持ったカナとリサが現れた。


「ほら二人とも、一緒に食べよう!」


「サンキュー」


「いいの?ありがとう」


ユウとリヒトは机を寄せると、後からタイチも合流して五人で昼食を取ることにした。

食べ終えた五人はのんびりとしていると、ユウが姿勢を正してリサの方に体を向けた。


「リサ、お蔭様で付き合うことになりました。色々とありがとう」


「おめでとう。何もしなくても時間の問題だったけどね」


深々と頭を下げるユウにリサが微笑んだ。一方で事情を知らないタイチは理解できずただ困惑していた。


「え?どういうこと?」


「ユウおめでとー!」


カナは嬉しさのあまりユウに抱き着いた。タイチの疑問はスルーされてユウは照れくさそうに頬を掻いている。


「カナもありがとね」


「リヒトが羨ましい!あたしもこんな可愛い子が欲しい!」


「……?」


未だに展開に追い付かないタイチがそろそろ見かねたのか、リサが彼の肩を叩いた。


「ユウに彼氏が出来たのよ。噂聞かなかった?」


そう言われてタイチが朝教室を賑わしていた噂を思い出した。


「そういえば今日、俺のクラスで話題の生徒会役員が付き合い始めたって噂か?」


ユウとリヒトは互いに顔を合わせて苦笑した。話を聞く限り、昨日の帰りに手を繋いで帰っていた所を見られていたらしい。

ただ、タイチの話は終わらなかった。


「なんでも男の方は運動部の助っ人部員でプロさながらの動きをする化け物ルーキーにそっくりだったとか」


「へぇ、助っ人部員ね」


「その男は昨日一昨日ってバスケ部で部員達を蹴散らしたって一部の女子が騒いでた」


(あー……)


リヒトは心当たりがありすぎて思わず頭を抱えた。四人の視線が集中する。気まずそうに眼をそらすリヒトに、ジトっとした目でユウが問いかける。


「リヒト、何したの?」


「いや、中学の俺を知ってる先輩がいてな。部員を煽って勝負を持ち掛けられて……」


「バスケ部の先輩……荒木先輩ならやりそう」


「そんな名前だったな。それで部活中ずっと相手をしてた」


「やっぱり。リヒトは相変わらずだなぁ……三人ともどうしたの?」


微妙な笑みを浮かべる三人の反応を見てユウは首を傾げた。自覚のないユウにリサがため息をつく。


「ユウの記憶力は健在なのね」


「僕から記憶力取ったら特技がなくなっちゃうよ」


「いや、ユウはそれでも十分すごいと思うけど」


「えぇ……そうかなぁ?」


(むしろその天然さが怖いわ)


「……話が逸れたけど、要は助っ人部員の男がイケメンだってことだろ」


「タイチ、まだ気が付かないの?」


不思議そうにするタイチに、リサとカナは信じれない気持ちで一杯だった。首を傾げて考えるが思い当たる節がない。


「どういうことだよ」


「噂の正体がリヒトよ。話の流れで気づきなさい」


「えぇっ!?そうなのか?全然分からなかったぞ」


心底驚いた様子のタイチにリサは呆れ果てた。先ほど答えをリヒトが言っていたのに何故重ならないのだろうと疑問に思う。


「リヒト、タイチはどうして分からなかったのかな」


「多分噂話にそんな興味ないからだろ。俺とてそういうのに疎いからな」


「ああ……」


納得したようにユウが声を上げる。タイチはその言葉に少しショックを受けた。


「なんだよ!俺にも教えてくれてもいいじゃないか!」


「ごめんごめん。今朝散々問い詰められて疲れたから後でいいかなって」


「……それじゃ仕方ないか」


タイチは渋々諦めると、ユウはホッとした表情を見せる。そこでリサは何か思い出したのかポンッと手を打った。


「あ、そうだユウ」


「ん?何?」


「実はね、ユウにお願いがあるんだけど」


無理がない範囲でいいんだけど、と前置きをしてからリサが話す。


「生徒会が落ち着いたらユウも部活でどこかの支援に入るでしょう?その時になったら教えてほしいのよ」


「いいけど、リサの入ってる部に何かある感じ?何部に入ったの?」


「スイーツ部よ。初心者が多くて手が回らないの」


「了解。予定分かったら連絡するね」


「ありがとう」


ユウは二つ返事で了承すると、リサは嬉しそうに微笑んだ。

ユウは隣で嘆くタイチをなだめているリヒトを眺めて間もなく予鈴が鳴った。

去り際に祝福の言葉を投げて自分のクラスへ帰っていくタイチに、四人は仕方なさそうに笑った。

この話、全然筆が進まなかった。

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