第二十五話 四月十六日(火)少女は思いを打ち明けた
執筆が追い付かないので更新頻度が落ちます。
週に一,二回程度になりますがご了承ください。
下校時刻となり、活動を終えたユウはリヒトに連絡を入れようと生徒会室を出た。
「よう!お疲れ!」
「リヒトッ!?」
生徒会室から出て直ぐに前から声を掛けられた。驚いて駆け寄るユウの頭を一撫でしたリヒトは悪戯っぽく笑う。
「部活終わったから迎えに来たぜ。帰ろう」
「うん。じゃあ行こう」
ユウの返事を聞いてから歩き出す。後ろで生徒会メンバーが騒がしくなったのをユウは聞かないふりをした。
「そういえば、ユウは今朝カナとリサに抱き着いたよな。もしかして会長にもした?」
「え?なんでばれたの?……結局、リヒトが特別だったんだよね」
「やっと自覚してくれたみたいだな」
「気づいてたの?」
「ユウから向けられるものが男の時と違ったしな。お前が時折女の顔になってたのを見れば普通に気付くさ」
「え!?」
唐突に核心をついた返答をされ、うろたえるユウにリヒトが笑う。
「それと、俺以外のハグ対象が女なのに気付いてる?」
「……ホントだ。昼休みはタイチもいたのにしようとは思えなかった」
「まあ、してたら俺がみっともなく嫉妬するだろうけどな」
彼の口から出た予想外の言葉にユウは目を丸くした。程なく理解して彼からの好意にまごついていると、『嫉妬』のワードから連想して一つの懸念が浮かんだ。
「嫉妬……。ねえリヒト、僕が昨日の帰りにしたこと覚えてる?」
「ああ、ユウが豹変して撃退した奴?」
リヒトの言葉から、豹変した自分がどう見られていたか不安になりながらもユウは肝心の懸念される問題を口にする。
「あの時、リヒトの腕に絡みついた女性に嫉妬してあんな感じになっちゃった。どうしようもなく嫉妬に狂うあの姿が今の僕だよ。ホントにいいの?」
「ああ、驚きはしたけど別に気にしない。ユウが俺だけを見てくれればそれで十分だ」
「リヒト……」
ユウは思わず頬を染める。自分を見てくれればいいという独占欲に似た言葉に胸が高鳴った。
「……僕は嫉妬深くて重い女になる自覚あるよ?それでも良いの?」
「ああ、構わない。ユウがどんな感情を抱いても俺は受け入れる」
「……良かった」
ユウが安堵している間にも、リヒトは言葉を続けた。
「だから俺から離れるなんて言うなよ?お前がいなくなるのは耐えられない」
「……それは僕のセリフだね。僕だってリヒトが離れるのは嫌だ」
「なら俺と付き合ってくれ」
「うん」
ユウは素直な気持ちを口にすると、リヒトは安心させるように優しく微笑む。そしてユウの手を握って自分の方へ引き寄せるとそのまま抱きしめた。
突然の行動に驚いたものの、リヒトの温もりを感じて幸せそうな表情を浮かべるユウ。
「ふふっ、嬉しいなぁ」
「これからは我慢しなくていいよな」
「うん、むしろ僕からしちゃうかも。あぁ、リヒトに包まれてすごく落ち着く……」
お互いを抱きしめ合いながら、しばらく二人はその場に留まっていた。
***
「……いきなり後輩に彼氏が出来た場面に遭遇した時どうすればいい?」
「……男の方昨日運動部で騒がれてなかった?」
「事情を知る私としてはうれしい限りだ」
生徒会室の外で二人が抱き合っている状況に遭遇したシズク含めた数名は角から覗き見していた。
「あっ、こっちに気が付いた。どうしよ……」
「えぇ!?佐倉ちゃんめっちゃ笑顔なんだけど?あんな風に笑う子だったっけ?」
「ほら、二人とも。邪魔しちゃ悪いし帰るぞ」
シズクは二人の襟首を掴んでそそくさと退散した。
***
「見られちゃった……明日からかわれるかな?」
「顔、緩んだままだぞ」
どちらかともなく体を離したユウとリヒト。
先ほど先輩達と目礼した時もにへらと緩んだ笑みを浮かべていたことを指摘したリヒトだったが、その顔は優し気に微笑んでいた。
「だって、こんな感情初めてで、想いが溢れるってこういうことなんだね」
ギュッとリヒトの手を握るユウの顔は今もだらしなく笑っていた。
そんな彼女の様子にリヒトもつられて笑う。
「じゃあ帰ろうか」
「うん!」
お互いに笑い合ってから、自然と手を組みなおす。指を絡めて繋いだ二人は、仲良く帰路に着いた。
道中、言葉を発することが無かった。互いに余韻に浸り、今この瞬間を噛みしめるように無言で歩く。
やがてユウの自宅へと着いた。ユウは手を放すと、名残惜しそうにリヒトを見つめる。
「また明日な」
「……うん、また明日」
玄関先で別れの挨拶をする二人。リヒトがユウに背を向けた時、彼女が呼び止めた。
「待って」
「ん?」
振り返るリヒトの目の前にはユウの顔があった。
チュッ 軽いリップ音が鳴り、ユウの唇がリヒトの頬に触れる。
「おやすみなさい」
照れ臭さから顔を真っ赤にして告げるユウ。呆然と立ち尽くすリヒトを置いて彼女は家に入った。
「……不意打ちは卑怯だろうが」
残されたリヒトは、ユウと同じように耳まで赤く染めて呟く。
ユウにしてやられた彼は赤みが引くことなく自宅に帰り母親に散々からかわれたのは差し置いて、家に入ったユウは玄関でしゃがみ込んでいた。
(気が付いたらあんな……体が勝手に!)
リヒトとのキスを思い返して悶えるユウ。まさか自分があそこまで大胆な行動を取るとは思わなかった。
恥ずかしさに身もだえていると、リビングの扉が開いた。
「あら?ユウちゃんおかえり。どうかした?」
「……ただいま母さん。自分に振り回されてちょっと疲れただけ」
母親のサユリは娘の様子を不思議に思ったが、すぐに理解する。
「リヒト君と何かあったの?」
「……えっと―――」
サユリがにやりとした表情で問いかけると、ユウは弱々しく今日あったことを答えた。
「まぁ、良かったわね。恋が実って」
「うぅ……」
「それで?さっきはなにしたのかしら?」
サユリに問い詰められると、観念したように白状した。
「……キスした。頬だけど、僕から」
「溢れた想いが暴走したのね。懐かしいわ」
あなたも私の子ね、と過去に同じようなことをしていたサユリは我が子を撫でる。
「今日はもう何やっても手につかないだろうから休んでなさい」
「ありがとう母さん」
自室に戻ったユウはすぐにベッドにダイブした。まだ鼓動が落ち着かない。
(明日ちゃんと普通の顔出来るかな?)
リヒトの隣にいる想像だけで頬が緩みそうになるユウは、明日の学校で友人にいじられないか心配になる。
(祝福はしてくれると思うけど、からかわれそう。そしたらいっそ惚気ればいいか)
一周してオープンにさらけ出していこうと決意を固めると、自然と浮ついた心も落ち着きを取り戻してきた。
「よしっ!」
気合を入れなおしたユウは平常心を取り戻してリビングに向かった。いろいろと応援してくれた家族にちゃんと報告するために。
見切り発車の為、終着点がわかりません。
とりあえず今後もイチャコラさせます。
目指せ十万文字を目標にします。




