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綺麗な星に還るまで  作者: 鈴川掌
山梨編
19/30

第六話 代償は

 本日はこの小説をご観覧いただきありがとうございます。

 クロが死んでから三日経った、世界は相変わらず滅びかけていて僕達は生存圏の内の約10%をバケモノにくれてやる事で何とか今日まで生きながらえている。

 クロという猫はたった一か月だが僕を癒してくれた、君を失い生きるとは何かを自分に問いかける。クロは逃げようとしていた車に轢かれて死んだのだ、それはあの骨折した子供の証言でわかっている、人々が逃げ惑う喧騒の中、車を使い逃げ出した人間が居てなんとか人々は避けようとしたが運悪く、子供とクロだけが犠牲になった。

 君の命を僕から奪ってでも生き残る人類は必要なのかと問いかける、そして結論は今日も同じ結論に至る。

「そんな人間は要らない」

 そう口に出した瞬間僕はクロの首輪を部屋の壁に投げ捨てる。

 ダメだ、こう考えてはいけないのにこの考えが脳裏に焼き付き支配する、人間嫌いが少しずつ日を追うごとに悪化している気がする。毎日考えてはいけない事を考えてしまうアイツを殺してしまおうと隣で囁く自分が居る、誰かはわかっているんだからとそう囁き続ける。

あの戦いから一週間経った今日もまた亀裂が入る、僕らは必死に応戦して街に少し被害は出た物の結界を小さくすることなく、何事もなく敢えて言うのであれば僕はもう一度解放を使った。

 10月も終わりを迎えついに日中も冷え込んできた今朝、またバケモノ共が大量の軍勢を引き連れ、戦いを挑んでくる。前回の戦いでわかっていた事だが僕の使う解放は一度使うと天成も解けてしまう、そのクールタイムは気合で短くは出来たのだがその事を失念していた。結果扇に怪我をさせてしまい彼女を悲しませてしまう。でもふと僕は思う何故扇の心配をしているんだっけ?なぜ心美君を僕が気遣わなくてはならないのだっけ?と。

11月上旬に地球からの代弁を伝えられる少しの間は休めるであろうが、下旬に巨大な敵との防衛戦が待ち受けるであろう事を伝えられた。どうにかできないモノかと彼女は聞こうとしてくれてはみたいだが返答は無いそうだ。そして僕の解放についての話が出た。しっかりとは彼女もわからないと前置きが置かれたが内容は確信を付いているように思えた。

「この部分はよく聞き取れなかったので冗談半分で聞いてください」

「構わないよ、解放という天成とも違う全くの未知の力について少しでも理解を深められるならそれに越した事はない」

 僕がそう続けると彼女は意を決したのか言葉を綴る。

「天成は令華先輩そして扇君の二人に、地球自ら力を与えているという事は少し前に話したと思います」

「それ俺聞いてないんだけど?」

 そうかあの時には彼は居なかった、だから彼は彼女の説明を聞いていないのか。

「つまりはね、僕達の天成と言う力も心美君の地球の発する言葉の代弁同様、地球産のものってことだよ。あの絶望的状況の中、僕と君以外が天成出来ていないのは何処かでバケモノに喰われたのかそれとも、そもそもあの状況で覚悟を決めて動けたのが僕と君以外居なかったのか。そこはまぁ、どうでもいいがつまりはそう言う事だよ」

 わかったかな?お馬鹿さん、心美君の地球の言葉を聞くって言うのが地球由来とわかっているのだから、僕らの力もそう考えるのが妥当だろと続けると彼は顔を真っ赤にしているがなんとか、心美君がなだめている。

「そして解放の話です」

 その単語が出てきた瞬間、僕も彼も黙り心美君の顔を見る。

「解放というのは、地球含む九つの惑星この場合冥王星も入っていますが今は気にしないでください」

 なるほど証明とは、自分である証明ではなく、その惑星に証明したという事か。

「この九つの惑星が出した命題?と言えばいいのでしょうか、それともそう考え行動したものに与えられる褒美と言えばいいのでしょうか?それが解放です」

「少し違うよ、心美君」

「わかるんですか?令華先輩?」

 ああ、今の心美君の話を聞いて納得というか合点がいった。

「といっても僕自身説明するのが難しいんだが…」

 しかし僕だけでこの説明をするのは少々の手間だが手っ取り早く説明を理解させる事のできる人物がここに一人いた。

「おい、そこで首を傾げている馬鹿」

「なんだと?ならお前がわかりやすく説明しろってんだ、地球やら惑星やら出てきてこっちは少し授業しているみたいで頭が痛くなってきた…」

「今はその地球も惑星も関係なく出さずに、解放の原理を説明してやると言っているんだ」

 わかったか能無しと続けると彼はまた心美君に抑えられている、最近何故か他人への当たりが強いのも解放が原因なのであろうか?いや考えすぎだな。

「つまりだね、君。初めて天成した時に証明する事を誓って天成しただろ?」

 僕は心美君の願いを叶える、それが人類を救う事ならば救って見せると言って天成をする事ができた。

「そんなの事言ったかな?よく覚えてないんだけど」

「思い出せ早く」

 彼は頭を捻りそのままねじ切って見せようかとも思いたくなる位考え込み言葉を発する。

「確かにここに居る人だけでも守りたいって言ったかもしれない」

「そうそれだ、僕は心美君の為に人間を助ける事を誓ったそして…」

 クロの死体が脳裏に浮かぶ考えたくないが結論を出すためには考えるしかない。

「令華先輩?」「忍野?」

「いや大丈夫だ、すまない。そして僕は心美君の望みを叶えるという事を誓った、例えクロの命を奪ったのが人間だとわかってもね」

 動悸が激しくなり、額からは脂汗が止まらないが伝えるんだ彼女らにこの力の真実を。

「つまり僕は心美君の為に大嫌いな人間を守るという事を誓った、それがクロの死によってその行為がどこかの惑星の意志と合致し力を引き出す、それが解放の真実だよ」

「ですが、それでも他惑星も基本的には太陽系を守る事を優先しているとおっしゃっていました。それなのにそんなネガティブな意志を持たなければならない。条件なんて存在するのでしょうか?」

「確かに仮に忍野の言う事が真実でも、そんな趣味の悪い考えを持っている惑星が居るとは信じたくないな」

 確かに、このような証明させる奴は頭がおかしいと言っても彼ら惑星に僕らのような意志があるのかも僕達にはわからないが。

「解放の条件というものはわかりましたが、私が本当に話したかった事は条件ではありません」

 解放へと至る為の条件じゃない?てっきり地球とやらは戦力アップの為に扇にまで解放させようとする為にこの話を心美君に話したものだと思っていたが、それはどうやら違っていたらしい。

「私が話したかった事それは、解放の代償についてです」

 僕は二回解放を行ったが、代償なんて大それた物を犠牲にした事すらないしそれこそ解放のきっかけとなったクロの死が代償と言うのであれば納得もできるが、彼女はこちらの瞳をじっと見る。なんだろうか?そうではないらしい

「令華先輩は既に二度の解放をしていますよね?」

「ああそれがなにか、特に僕は何も犠牲を払っていないよ?」

「地球の言葉曰く代償には2パターンあるとの事です。惑星の私利私欲によって解放の力を貸す場合と惑星の私利私欲なんてなく、ただ太陽系の存続を望んでいる惑星達の2パターンが」

 私利私欲のある惑星ってなんだか下世話な話だが、しかしよく考えてみたら地球が僕達生物の生存を願い、バケモノに滅ぼされる事をよしとしていないのは傍目から見れば地球の私利私欲と言ってもいいのか。

「それで僕はどっちのパターンなんだい?」

「恐らく後者だと思われます、前者は代償として何かを奪いますが後者は代償としてなにかを与えるとおっしゃっていました」

「与える?ならそれは良い事なんじゃ?」

 珍しくまともな事を言う扇だが心美君は首を横に振る。

「例えばそれが、暴力的感情を一方的に解放した者の頭に植え付ける行為だとしてもそれは良い事と言えますか?」

 つまり僕はどこぞの惑星に暴力的思考に改造されているという事だろうか?いやそれはない、少なくても本気で暴力に訴えるつもりなんて毛頭ないそれでじゃあ大嫌いなアイツらと同じになってしまう。

「これは例えです、例えば嫌いな者余計に嫌いになる感情と言うのはどうでしょうか…令華先輩」

 それは、少しだけ覚えがあると言ってもいい。いや恐らく彼女の言う通りなのだろうそれが代償どこの星かはわからないが、僕の行動原理を気に入り力を与えその代償として嫌いな者達を更に嫌いにしようとしている訳だ。

「凄いな、心美君は僕の事は全部お見通しかい?先輩として嬉しい限りだよ…」

 精一杯の愛想笑いを浮かべながら質問に答えるが、それもそうかこの態度を心美君にもしているようじゃバレるのも、解放の代償なんて話にならずとも、時間の問題であったのであろう。

「令華先輩は案外態度に出ているんですよ、頑張って私の前では取り繕うとしていたんでしょうけど…それでも違和感はありましたから」

「それは…すまなかったね、それとバレた事だ、君にも謝っておく、すまない」

「なんで俺に謝るんだ?」

 気づいていないのか、この男は…僕の人間に対する怒りのはけ口として少し利用されていたという事にも、だがこの鈍感さが彼の良い所であり心美君も惹かれたのであろう。いい機会だ少しだけ話を聞こうじゃないか。

「ところで心美君」

「なんですか?令華先輩」

「君と扇との中は何処から始まりどこまで進展したのかな?」

「えぇ―…それはぁ…そのぉー…」

 いきなりどもってしまう彼女だがこの好機を逃す僕ではない、少し前惚気話を大量に聞かされた僕の精一杯の仕返しだ。

「扇からの告白だったのかな?」

「っつ、なんでそれを」

 口は災いの元、彼はそれを体現するに相応しい反応を見せてくれる、そうか心美君に鎌をかけるよりも彼を言葉巧みに操った方がポロポロ簡単に話してくれそうだ。

「へぇー君からだったのか、意外だな。恋愛に無頓着で取り合えず告白されたら了承を出しその頭の出来と鈍感さからすぐに別れを切り出されそうな人間だと思っていたが…以外と見る目があるじゃないか」

「なんでそれまで…お前俺のストーカーか?」

「いーや?君の普段の善人的な行いを、学校でも男女問わず誰にでもしていたら勘違いする女性も出るだろうと思っただけさ」

 それに僕はそれを考えた事はないが3Kだったか?高身長高学歴高収入、彼に2つは当てはまらないがこの男の身長と顔であれば言い寄る女性は多かろう。

「扇君!」

「はい、なんですか?」

「少し黙っていてください、プライバシーの侵害を私まで被る可能性がでてきます」

「黙ってって言ったって、忍野が全部言い当ててくるんだからしかたないだろ?」

「顔に出すぎなんです」

「痴話喧嘩とは感心感心」

 その後も彼と彼女の言い争いは続く、そしてその結果僕は居ない者として扱われ勝手に情報が入ってくる。キスもうしてるとか、僕に隠れて一緒の布団で寝たとかetc…etc…ともう心美君も何が何だか分からなくなっていそうだがこの日はよくわからないが心から笑えたと思う、こんな関係がずっと続けばいいのにと心からそう思う。


―11月下旬―

 ついにこの日と言うべきか、それともこの時期と言うべきか、まぁどちらでもいいが秋も本格化してきて、炬燵をだし家の中で寒さを凌ぎたい季節だが僕らはそうもいかない。寒い季節の中もこの役場隣のグラウンドで模擬戦を続けている。

「そこでガードしないで避けろ」

 そう喧騒が寒空の下響く。

「そう簡単に言ってもなっ!」

 カウンターに小さな竜巻が起こされ僕はそれに巻き込まれるが、機動力に力を振り切り竜巻から逃れた次の瞬間僕の足元から火柱上がる。

「っやるようになったじゃないか」

 恐らく小さな竜巻をずっと用意して、竜巻から出た時の対策としてここに置いておいただろう、彼も大分成長してきてる、が僕もかなり成長をしている、彼を助ける時に使った瞬間移動の様に動く技を使い彼の背後に回り彼の背中を蹴とばす。

「ぐわっ」

 数メートル飛んだ後、彼は動かなくなり天成も解ける。やりすぎてしまったかと思い急いで駆けつけるが彼は、急に起き上がる。

「んが」「痛ったー」

 初めて彼から一撃を貰ったかもしれないと感心していると、彼は地面を叩く。

「くっそぉぉぉ、勝てねぇぇぇぇぇ」

 悔しさを全面に出し続ける彼を見て少し嬉しくなる、これが親心というものだろうか、弱々しかった雛が親から離れつつある姿を見て、つい頬が緩んでしまう。その姿が気に要らなかったのか彼は反抗的な目をこちらに向けてくる。

「なんだよ?」

「いや、嬉しくてね…最初は嫌々やっていた君がここまで真剣にやってくれるなんてさ」

「俺は別に最初から嫌々はやっていねーよ」

「いーや、嫌々やっていたね今は相性差で勝てない事を理解しつつも勝てるように努力しているが、始めたころの君はこの時間を僕に蹂躙されるだけの時間だと思っていただろう?」

 口では違うといえても本人にとってこの時間は楽しい時間ではなかったはずだ、これほどまでに身長差のある女性に負け続けるのだから、武器の扱いにもなれ能力の扱いにどれ程なれようと、僕と言う存在がそれを否定しているように思えたかも知れない。

「確かに最初は小生意気なチビが…うるせえなって思ってた」

 彼はまだ僕の身長煽りを懲りていないのかと思い刃を首元に突きつけようと思ったその時、けどと彼は続ける。

「忍野の言う事はいつも的確なアドバイスをだったって気づかされてからはそんな感情無くなったよ」

「嬉しい事言ってくれるじゃないか、それに免じて先ほどの身長煽りは許そう」

 すると彼は水を得た魚の様に起き上がり天成をすると次の言葉を発する。

「マジでじゃあチ―――ビ、あっはははは」

 そういい彼は全速力で逃げていくもう子供らしいな君は本当に出来の悪い子供を持った気分だ、僕が実際に子供を持つ事はないであろうここまで昔であれば僕の性格と合致する人間も現れるだろうと思っていたがここまで人間嫌いが悪化してしまってはそれも恐らくない。だから君と心美君の幸せだけは守るよ、必ず。

「それを僕が許すと思っているのかーーーー」

 全速力で逃げる彼を追いかけあともう一息で辿り着きそうな時だった、その時は突然来た。


 空に亀裂が走る、覚悟はしていたがその時は来てしまう覚悟を決めて亀裂に少しずつ近づく、最近は毎日心美に朝言いたい事を言ってから外へ出るようにしている、自分が生きて帰れるか分からないから。

 だからといって生きて帰る事を諦めている訳ではない、もう一度帰ってまた三人で食卓を囲んでふざけた話をしたい、三人で人生ゲームでもしながら年を越したい。そんな多くの人から見たら大した事ではない、願いを掲げ俺は今日まで戦う覚悟を示してきたがそれでも怖い物のは怖い、あのバケモノ達が怖い、前は少し村を切り捨てる事でどうにかなったが、俺達が死んでしまえばこの村全員が死ぬことになってしまう。それだけは回避しなくてはならないから。

「準備はいいかい?扇」

 彼女は俺の隣でそう問いかける、何故彼女は自分で大嫌いな者の為にそこまで命を張る覚悟があるのだろうか?答えは言わずもがなであろう。俺にとっての富士心美が特別であるように、彼女にとっての富士心美も大切なのだ、俺との違いは自分自身でこの村を守りたいと思っている訳ではなく、彼女が守りたいとそう思っているからだからこそこの村を守るという覚悟を持っている。俺には理解できない感情だが彼女にとってそれは命よりも重い事なのであろう。

「ああ、いつでもできてるよそれこそ、証明する事を決めたあの日から」

 亀裂に入っていくとそこには人型が多数中型も多数そして奥にはオシドリを思わせる風貌の二匹の巨大な鳥が佇んでいる。

「今回は…確かに…」

 忍野は固唾を呑みながら身構える、彼女が言いたかった事は恐らくこうであろう。結界を縮小させた日と同様否、それ以上に多い数のバケモノどもうじゃうじゃと居る。

「覚悟は決めてきたつもりだったけど、現実は残酷だな」

「それでも、戦うと決めたんだろ?君も」

「ああ、そうだ戦えるよ」

 そうして先陣を切ろうとした矢先の事であった彼女から提案を言い渡されたのは。

「扇、最初から僕は解放を使って中型小型問わずに倒していく君はその後起きる天成出来ない時間から戦闘に介入してほしい」

「なんでだ?最初から二人で行った方がいいんじゃ?」

「それじゃあ仮に両方同時に深手を負った時にカバーできないだろう」

「ああ、そういう事か」

 それじゃあ行ってくるといい、解放と唱えると衣装が少し変わり、盾が分離してまるで意志を持つかのように動き始める一先ず俺は敵の情報を集めに徹する事にしたがそんな暇ないレベルで敵は押し寄せてくる、あの強大な力をもってしても大多数の敵には相性が悪そうだった。

「忍野俺も参加する、流石に敵が多すぎる」

「すまない、そうしてくれると助かる少し敵を甘く見過ぎていた…」

 人型の対処は簡単だ、軍配の周りに生み出した水を圧縮し長い長い一本の太刀とする。そしてそれを全力で横に振り切るそれだけでかなりの数が消滅していくが中型の敵には一切刃が立っていないらしい。

「扇、一瞬で良い竜巻を起こして敵を一か所に固めてくれそれを一網打尽にする」

「了解だ」

 巨大な竜巻を起こし敵を一か所に纏めると彼女の自身と二つの盾が縦横無尽に駆け回り敵を倒していく一体また一体と倒していったその時だった異変が起こる。

「クソッ!済まない少し離脱する、解放が解け始めた」

「わかった後ろで休んでいてくれ」

 解放してから数分と言った所で解放は解け始めてしまった、強大な力はやはり長い時間続いてはくれないらしい。

 火の海を作りモグラをおびき寄せそれと同時に時間稼ぎをする軍配の太刀を少し短くして構えると予想通り火の海ではない(おび)き出す空間に出てくるのでそれを斬る、爆発効果を持っている奴には軍配、土で厚みを作った軍配を用意しガードしていきモグラの相当は終わるが、空には蝙蝠型が多数飛んでいる。

「待たせたね、上は任せてくれ」

「待ってたよ、速く切り刻んてくれ」

 空中戦に置いてはこれ以上ないスペシャリストがもう一度駆けつけてくれる。

「俺は下に集中する、また纏めて欲しかったら言ってくれ」

「頼りにしているよ」

 そう話しができるくらいに順調に雑魚と中型は倒しきれるが如何せん数が多すぎて一行い数が減らない。

「少し離れて」

「了解」

 そう伝えると巨大な竜巻をもう一度起こし、その後その竜巻を火に変換し火柱をあげるこれで大分数が減ってくれればいいのだが、現実はそう甘くなく第二第三と次の軍勢が次々と休む暇もなくやってくる。

「もう一度真ん中で解放を使うそれと君は下を火の海にして敵を炙っていてくれ」

「わかった、無理はするなよ?」

「わかってるさ、死ぬ気なんて毛頭ないよ」

 そう唱えまた彼女は解放と唱え敵陣に突っ込んでいく。そして今回は俺も岩石を生成し足場を作りながら軍配で敵を叩き割る。

「扇後ろ!」

 そう言われ後ろの敵を水を圧縮させた太刀で斬る。

「忍野も後ろに付いてきている奴がいるぞ」

「わかっている僕は大丈夫だ、前線には余り近づきすぎるなよ」

 そう答えると後ろに付いてきている敵は自由自在に彼女自身が操る盾によって粉微塵に切り捨てられる。

 敵の数もかなり減ってきて、忍野の解放もまた解かれ、俺が前線を張っている時だった、考えるべき最悪な事が起きたのは。番の様な巨大な敵が動き始めるそしてその大きな羽を広げる度に大きな突風が起こり立つのもやっとな状態となるがそれだけであればよかったが一体は大量の雑魚もお構いなしに攻撃してくるのに対してもう一体は確実にそして、着実に忍野の元へと進んでいる。

「忍野逃げろ!」

「すまないが、まだ天成が…」

 忍野が上を見上げ絶句している自分よりも10倍以上はあるという鳥が自分の前に佇んでいるのだ。

「間に合え」

 間に合わない、このままじゃ間に合わない。

「助けるんだ」

 助けられない、このままじゃ絶対に死なせてしまう。嫌だ嫌だ嫌だと言う言葉が頭を駆け巡るその時だった。

 景色が変わる周りには巨大な円が佇んでいる、まるで自分を中心に回るようにそんな景色が見える、そしてその場と不釣り合いな少女がこちらを見ている。初めて天成した時に出会った彼女だしかしあの時とは違い朧気ではなく確実に見えているならば。

「頼む俺に力を貸してくれ」

『すみません、私が貴方に力を貸すことはできません』

「じゃあどうしろっていうんだよ?今大切な友人が死にそうになっているお前が地球なんだろ?どうにかして力を貸してくれ」

『私は地球ではありません、地球であって地球では無い物いわば地球という体から分離してしまった地球の意志のようなものです』

「なにが違うのか全くわからねーけど、なら元居た場所に戻してくれ」

『いいんですか?助けられませんよ?あの少女を…』

 お前が力は貸せないと言ったんだろうがと文句も言いたくなるがそれを言わないでおく。

『私が貸せないだけで貴方は力を得る証明をしています』

 だからお行きなさいという言葉共に元居た場所に戻される、成程忍野が言っていた証明することで解放ができると言っていた意味が少しわかる気がした。

 九つの球体が自分の周りを回るそして俺は6つ目の球体を取るそれが自分に合うと直感的にわかったから。

俺は守りたいと思ったものを守るとあの時に誓っただから、既に今この現在に置いても証明は完了している。

「力をくれ!『解放』」

 そう唱えると俺のオレンジの服装に白と黄色とオレンジといったようなグラデーションがかかるが武器には見た目の変化は無いようだった。

 しかしできる事は既に理解している、足に風を溜め一瞬で解き放ち忍野の目の前に立ち軍配でガードするが鳥の爪は余りに大きく軍配で防御する事は出来ず、俺の体を切り裂いた。


 天成ができない間に目の前で、巨大なオシドリの雄も思い出させる風貌の敵がやってくる。そしてオシドリの風貌から想像もできない巨大な足が、僕へと少しずつ少しずつ迫ってくる。もうダメだ、あと少しほんのもう少し時間があれば天成をし回避を取れるかもしれないが今の自分では動いたところで体が裂かれるのが一秒遅くなるだけだ、その瞬間であった解放と唱えた扇が僕の目の前に現れるのは。

僕事を運べばいいものを僕必死を防御しようと、彼はしてしまいお腹に深手を負ってしまう次の瞬間僕は天成し彼を抱きかかえ亀裂の外へでる。

「扇!扇!しっかりしろ」

「大丈夫、かすり傷だよ」

 そんな血が出てくるかすり傷は無いとつっこみたくなる気持ちは抑えて急いで役場まで直行する。

「賀水!心美君!どちらかいないか?」

「ここに居ます貴方が来た理由も既に把握いたしました。こちらで彼の処置をいたしますので大丈夫です、それより」

「ああ心美君を一先ず待ってから話そう」

少し遅れて心美君が来る。

「扇君は大丈夫なんですか?」

「大丈夫です、血は出てはいますが傷は決して深くはないとの事でした」

「それは、よかったぁ」

 彼女はへたり込むように安堵するが、今は安堵している場合では無いのだ。

「心美君僕はもうすぐ戦闘に戻るだから先に言っておく」

 彼女はもう理解しているのであろう、申し訳なさそうな顔とどうする事も出来ない現実を前に下瞼に涙を溜めている。

「全員は助けられない、結界をどこまで縮小するかは君達二人に任せる、そしてその責任も僕に移してくれて構わない、だから頼んだよ」

 そういい僕は空へと飛び立つ、数々の場所から悲鳴が聞こえるそれもそのはずだ巨大な二対の鳥が村を荒らしているのだから、だが助けられるべき命は助ける、彼女の涙はそんなに軽いものじゃないのだから。

「解放」

 そう唱え盾を分離させ一体の元へと寄せる一体はこれに相手をしてもらおう、まずはこの扇を傷つけた一体を解体する。更に上空へと飛び立ち光を圧縮し剣を長くする。

「まずはお前だ!」

 鳥と言う事であれば羽を斬りおとせばある程度不自由になるだろうと予測を立て、羽に向い攻撃を開始するが突風が邪魔してきてそちらに近づけない。

 どうするべきかこう考えている間にも時間制限は近づいてくる、ならば1回の解放中に2体倒すのではなく一度の解放で一体としよう、犠牲が増えるかもしれない、生存圏の縮小を更に広げる事になるかもしれないだからと言って僕が無理をしたところで全員死んでしまうなら意味が無い。

 盾を呼び戻し突風に負けない勢いで盾二枚を突っ込ませ鳥の羽に穴を開ける。これで自由は奪ったもう一度突風が来てもいいように自分も光を圧縮させ高速で移動する、自分の体との勝負になるがこの状態でも戦う事は可能なはずだ。

「今度こそ墜とす!」

 高速で移動しながら羽を切り刻んでいき鳥を落とす事に成功し、落ちた先にあった家が潰れてしまう、この家に誰も居ない事を願いながら僕はこの鳥に最後の一撃を入れる。

「これは心美君の涙と彼の痛みだ、思い知れ」

 移動に割いていたエネルギーを全て刃に集中させそのまま敵の腹をきった。

 それと同時に解放が解けるがその時僕が見た物は、鳥のもう一対ではなく、僕の事を人間では無いような目で見る人の視線だった。




第六話 完


 本文を読んでいただき誠に感謝します

 ここまで読んでいただいた皆様、ここまで読まなくても本文は読んでくれた皆様、そして前書きで読むのを止めた方や途中でつまんないと思ってブラウザバックされた皆々様全てにこの作品を一度開いていただいた事を感謝します。

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