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綺麗な星に還るまで  作者: 鈴川掌
山梨編
16/30

第三話 苛立ち

 本日はこの小説をご観覧いただきありがとうございます。

 前にスクエニブックスに応募とか、書いてましたが取りやめました。友人に見せたら、ここがいい、ここはダメと評価してもらいもう一度、ダメな所をよりよくするべくリメイクしている所存です。

 夢を見る、なぜこれが夢だと断言できるのかと言えば、僕にとっての夢とは過去に起こった事を振り返るものだから、だから夢だと分かりきっているからこそこの夢も黙って受け入れる事ができるのであろう。

 小学生だった頃からそうなる運命として生まれて来たのか、それとも僕が自分を変える気が無かったからこうなったのかそれとも、ただ運が無かったのか、僕の周りには人が集まり、周りの子供達には人が集まらない。それを妬んだ子供が靴を隠す、プリントを渡さないそんな些細な事だった。しかし僕は靴を見つけ、プリントが足りないと先生に話しその場を切り抜ける。それが気に入らなかったのか今度は靴に画鋲等の針を刺され、ノート等は落書きをされ使い物にならなくなった。だが靴に針を仕込んでいるならばそれを予め警戒して履けばいいし、何より僕の家庭は裕福そして僕自身もかなり優秀であった為、相手の手が届かない家用のノートと教科書を買い予習復習をしていれば対して学業に問題はなかった。相手の行動が変わったのは中学生の時、彼らは僕に対して暴力に訴えるようになる、だからと言って顔を殴ったりせずお腹だったり足だったり見えない所を傷つける、流石に性犯罪にまで発展したら僕も打つ手は打つつもりであったが彼らはそこには手を出さなかった、ここまでされても何一つ顔を崩さないどころかいつも通りの笑みを浮かべる僕に恐怖を抱いたのかそれとも僕の持つ家柄という物に恐れをなしたのかは、わからないが、ある日の放課後また僕は呼び出され暴行を受けるそのはずだった。だがその日だけは違った前々からおかしいと思っていた後輩が僕の目の前に飛び出し、僕に対する行為を学校に報告すると言い出したのだ、なんて馬鹿な事をしているんだろう隠れてすればいいのに自分から知らせて自分が何をしているのかこの女は理解しているのだろうか?そこから先は自分の予想通りに進んでいく、その女が次の標的になるべくしてなった。でもなぜだろうか、初めて自分を庇ってくれたからだろうか?それとも今まで見て来た人とは何か違う人だったからだろうか?僕はその子を庇う事にした。具体的には自分に今まで行われてきた所業を全部言い逃れできないように公開すると言う事で女の子に行く被害もこれからの僕への被害も完全になくす事に成功した。そんな僕にとっては対した事をしたわけではないが、それが彼女との出会いだったと言う事で頭にずっと残り続けているのであろう。

 最近見る事が無くなっていた夢を見て目を覚ます、少し気分が悪い階段を降り顔を洗いに行き、鏡で自分の姿を見る酷い寝ぐせと彼女の前では見せないであろう酷い眼つきだった。顔を洗いもう一度鏡を見る、そこには先ほどまでいた人間が大嫌いな少女は居らず、人を嘲笑う事が好きな八方美人の少女に変容する。

 今日は朝ご飯を余り食べる気になれなかったので、一つ朝ご飯は要らないと置手紙を残し、外へと出る。

 なんとも景色に合わない赤い結界と日光が覗かせる今日この頃、ふと思う彼は結局あの条件を飲めたのだろうか?と恐らく隣が彼に渡された家であろう、呼び鈴を鳴らしどんな状況下ぐらいは見に行きたいとそう思った。

 ピンポーンとなんとも古めかしい呼び鈴の音がする、返事はなくそして錠も掛かっていない不躾(ぶしつけ)ではあるが、上がらせてもらおう、家の中には即席麵のゴミが転がっている。では恐らく二階に彼は居るのであろう、一段上がる度に軋む階段を上りながら部屋の前に着き戸を開ける。

すると彼は酷い寝相で寝ていた、枕がある場所に足があり体は半分ベッドから落ちかけている。

「おい、武田君起きたまえ」

 声を掛けるが彼は一行に起きる気配はない、まるで知らぬ存ぜぬと言わんばかりに夢の中。

「起きろ!武田!」

「は、はい、すいません、寝てません」

 強い口調で声を掛けると彼は飛び起きる。まるで授業中に教師に起こされた生徒の様に、そして彼は不思議なものを見るようにこちらを見渡す。

「なんでアンタがここに居る?」

「この街の守護者たるものいつまでも眠っている訳にもいくまい」

「だからってなんでこんな朝早くに」

 確かにここまで朝早く伺う必要性はなかったと今頃になって気づく。別に早急にこなさなければいけない案件でもないが早くて越した事はない。

「二つほど、要件がある」

 なんだよとまるで教師に説教を受けるが如く目を逸らしながら答える。

「一つは朝食の時間になったら、隣の家に行くといい恐らく心美君が君の分も作っている。それともう一つは今すぐ話す話題ではないな、役場の隣のグラウンドでも開いていたら使わせてもらおう、それじゃあね待ってるよ」

「あ、おい」

 彼は静止しようとしたが伝えるべき事は伝えきったこれ以上ここで話す内容もあるまい、そうして僕は彼の部屋を後にする。


 朝早くにいきなり家に侵入し、俺を起こして去っていた彼女話すべき事があるからと言っていたがそんなものはスマホにでも連絡入れておけって話だが彼女の言った通り本当に、心美と言う女性が朝食を作っているのであればありがたい事この上ないのでまずはお隣の家に向かうのであった。

 朝食の時間になる前に着替え、隣の家に行き呼び鈴を鳴らす。

「はぁーい」

 ドタバタと慌てたながら近づく音が聞こえ、この家に居るのが本当にあの時賀水の隣にいた女性ならば物凄いギャップを感じざるを得ない。

「どちら様でしょうか?」

 そういい扉が開く、目の前には随分大き目の服を着てズボンは履いていない彼女姿が目の前にあった。

「あ、あの。っそそ、その服装ははは!?」

「え?あ!すみません、まだ寝起きだったもので…」

 彼女は顔を真っ赤にさせ言い訳をしている。それを見た俺も恐らく、このような高校生には過激すぎるサービスショットを見せられては自分ではわからないが顔を真っ赤にさせているのであろう。

「と、とりあえずお入りくださぃ」

 彼女は消え入りそうな声で案内してくれる、言われるがまま家に上がらせてもらうが彼女の事は直視できないので扉に置かれている物の角に机に足をぶつけながら、なんとか座れる場所まで案内され座る。

「あ、あの着替えてきます」

「は、はい」

 ぎこちない会話の後、彼女は階段を駆け上がり部屋に入ったかと思うと布団か何かだろうか、何かに顔を(うず)めて必死に叫ぶ彼女の断末魔の様な声が聞こえた。

 そんな中俺は、これ以上無い程までに背筋を伸ばし彼女が二階から着替えて降りてくるのを待ち続ける事にしたが、ふと彼女の言葉を思い出す「恐らく君の分も作っている」と言っていたが、そもそも彼女は寝起きで料理は作ってすらいないじゃないかと思ったが、それは少し違った、キッチンの方を見ると確かに彼女は料理を作っていたのだ。今の今まで別の事が頭を支配していて気づくことができなかったが、ウィンナーだろうか?それが丁度よく焼けたいい匂いがする事に今更気づく、しかしそれと同時に彼女はあの様な恰好で朝食を作っていると考えるとまた顔が少し熱くなる。

 階段からゆっくりと彼女が降りてくるそれも、ものすごく反省した様子で。

「お見苦しい所をお見せして、申し訳ございません」

 そういい頭を深々と下げる彼女だが、元はと言えばあの女があのような事を言っていなければ、こうはなってなかった訳でと必死に誰に話す訳でもない言い訳を頭の中でし続ける。

「こちらこそごめん。もとはと言えばあの女がいきなり人の家に押しかけて『君の朝食は心美君が用意してある』なんて言ってこなければこんな事になる事なかったのに」

 彼女は居ないだからこそ、彼女に対しての文句も言えるというものだ。しかし目の前に居る彼女は俺の言葉を聞き忘れていたと言わんばかり、キッチンに戻り皿を持ってくる。

「すみません、朝食は確かに作っていたんですけどいつもの癖で寝起き姿のままで作っていました。以後気を付けます」

 そう彼女は答えながら俺の前に皿と白米を置く、オムレツにトマトそしてウィンナーとサラダと白米と言う高校生が朝起きて作る朝食にしては豪勢な気がする。

「本当に作ってくれてたんだ」

「はい、家に来なかったとしても後程持っていこうと思っていたんですけど令華先輩がその手間を省いてくれたんですね」

 態々俺の為に朝食を作ってくれたのは本当にありがたい事だが、それよりも令華先輩?すると彼女の年齢は幾つなんだろうか?

「ごめん、心美さん?って言えばいいのかな?君の学年って幾つ?」

「呼び方は心美でも富士でも、さんでも君でもちゃんでもなんでも構いませんよ、それで私の学年ですか?高校一年生ですけど…それ程違和感ありますか?」

 てっきり同級生かと思っていた。

「えっとじゃあ心美ちゃんって呼ぶけど。その令華先輩ってあのちんちくりんの事を言ってると思うんだけど、彼女は?」

「令華先輩は高校二年生ですね、武田先輩とお呼びすればいいでしょうか?貴方と同級生ですよ?令華先輩は」

 あの背で俺と同級生なのかあのちんちくりん。

「武田はやめて欲しいかな、扇っていう名前で呼んでほしい」

「わかりました、扇先輩。あ、それと令華先輩の事をちんちくりんって本人の前では言わない方がいいですよ、先輩身長だけは凄く気にしているみたいですので」

 いや、それはいいことを聞いたどうせ今日彼女と会う約束も勝手に作られているんだ、精々馬鹿にしてやろう、同級生とわかったし。

 それからは特に会話も無く朝食は終わりお皿を片付けていく彼女。

「なにか手伝おうか?」

「いえ大丈夫です、それより今日何かご予定はありますか?」

 ないと言いたかったが彼女が予定を勝手に入れていた事を思い出す。

「無かったらよかったんだけど生憎、その令華先輩とやらに役場近くの学校に呼び出されていてね」

「そうですか。今日服を買いに行こうと思っているんですけど、サイズとか教えてもらえますか?扇先輩の分も買って置きますので」

 それはありがたい事だ、用意されていた服では少し小さかったので、自分のサイズを伝え彼女と別れる。


 彼と別れ街を歩く、朝も早い事もあってか見かけるのは老人がちらほらと居るだけで周りに人は居ない。快適だ、このような状況になる前から僕は朝早く起き街を散歩する事が多々あったが人が居ない空間ほど落ち着くものはない。

 役場で隣の小学校のグラウンドの使用許可を得て学校に敷居を跨ぎグラウンドに立つ、人が居なくてもここで授業をして、遊んでいたのであろう形跡を見ると少しだけ気分が悪くなる。

 僕はいつからかはわからないが人間という者が嫌いになった、ただ物心ついた時には既にそうだったのか、妬まれ続けた日がそうしたのか、暴力に訴えられた日なのからか、それとも彼女という人間を見てしまったからなのかそれは、わからないが人間が嫌いで嫌いで仕方がない。話すだけで頭がズキンと痛む、手を触れられるだけで身の毛がよだつ、そんなこの世に生を受けた事それ自体が間違いだったように感じる程、僕はこの社会というものに適応できていない。そこで僕は一つの人格を作る事にした、そもそも人格を新たに作ること自体が可能なのかは疑問だったが、作ると言うより演じると言う事で完成させることはできた。

 誰にも本音は話さず、本心のまま話すお気楽な独りの王子様それが僕だと仮定し続けてきた。それがある日急に終わりを告げた、理由は単純だ独りが好きな変人を気味が悪いと遠ざけて居たもの達から僕を庇う者がでてきた。何故そんな事をするのかと、貴方達がただ気に食わないというだけで彼女を傷つけていい道理にはならないと正論を叩きつけて。これが今の僕になった理由、心美君の望みであればなんでも叶えたくなってしまった原因、まさか人嫌いな僕が誰かを()してや人を神聖視する事になるとは夢にも思わなかった。

 これが忍野令華という人間を変えた富士心美と言う存在だ、彼女のお蔭で僕は、本音を話す事ができないが、本音では話す一人の願いを叶えるべく奔走するナイト様となった訳だが、ここで一つ問題が発生した。今までの彼女の願いは酷く善人的であっても聖人的ではなかった、それがこの人類大虐殺ともいうべき悲劇いや僕にとっては対した悲劇ではないのだが彼女にとっては悲劇以外の何物でもない。そのせいか彼女の願いが聖人のそれに代わってしまう、せめて生き残った全てを救いたいという彼女一人では成さない偉業へと、それで僕は彼女の願いを叶えたい僕は大嫌いな人の為に唯一気の許せる彼女の為に人を救えるのだろうか?そんな事をこの悲劇が起こってからずっと考えている、僕が彼女を裏切るつもりは無いが大嫌いな人為に僕はこの身を粉にして動く事ができるのであろうか?

 そんな考えを払拭するように、予め呼んでいた彼が到着する。

「来ましたよっと」

「うん、思ったより早くて安心したよ武田君…」

 頭の中で天成と唱える、するとこの身は白に包まれ両手には盾と鞘が装備される。

「あの何するつもり?」

「この姿を見ても理解できないかい?武田君」

「その武田君って言うのやめて欲しいんだけど名前で呼んでくれ」

 名前で呼ぶ?彼の名前を憶えていない、唯一憶えているのはこの山梨と言えばとも言っていい武田信玄と同じ苗字と言う事だけ。

「心美ちゃんにも行ったけどできれば名前で呼んで欲しいななんて…」

「すまない、君の名前を憶えていないんだなんて言ったかな?」

「憶えていないって、扇だよ」

 わざとらしくうな垂れて見せる彼を見るよくもこう大げさな身振り手振りができるものだと心の中で思う。

「扇か分かった、僕の名前は忍野令華、忍野でいい」

「心美ちゃんが言ってるように、俺も令華じゃダメなの?」

 いちいち感に触る男だなコイツは、僕と仲良くなりたいのだろうか?ただ断るのも面倒だから理由を付けて確実に断ろう。

「そう呼んでいいのは心美君だけだよ。ただそうだなこれからやる事に一度でも僕に膝を付けさせることができたのなら、そう呼ぶ事もいいだろう」

「一度でも膝を付けたらって、それでその今日やる事って?」

 この姿を見てもわからないのか?

「この姿を見て察してくれると助かるんだが…一から説明する必要があるかい?」

「分かった、ようするに模擬戦をするって事ね」

 そうすぐ理解できるのであれば最初からそうしてくれその為にこちらいち早くこの姿になったというのに、もうこの男とは暫く話さなくてもいいぐらいには話をした後で心美君に彼への愚痴でも漏らすとしよう。

「天成」

 彼がそう唱えると彼の姿は光に包まれオレンジを基調とした和装の様な物へと変化する片手には大きい軍配を持って。

「それが君の姿か。それ、どうやって攻撃するんだい?」

「さぁ?忍野みたいに戦った訳ではないからわからないよ」

 ジリジリと緊張感が走り両者はまだ動かない、先に手を出すべきかそれとも攻撃手段がわからない内は観測に徹するべきかを瞬時に考える、僕の導き出した答えは観測に徹する、あのバケモノ共と戦った時も思ったが思わぬ一撃が思わぬ角度から飛んでくる可能性もある、必要最小限の行動で避けて相手を分析するのがこの近距離専門の僕のスタイルにはあっている。

 痺れを切らしたのか彼がその手に持つ大きい軍配言うべきものを大きく振るう、すると目に見えるような竜巻がこちらを襲ってくる。竜巻が相手では上に逃げるのは愚策であろう、だから僕は横に移動し彼の次の行動を見守る、次に彼はこちらに竜巻を近づけると同時に僕の周りを囲うように土の壁を作り出しさっきまで竜巻だったもの火柱となってこちらに近づいてくる更に横に移動し、ここまでくると流石にただ見ていると言うのも恐らく無理だろう、少なくても彼には風を操り、火を操り、土を操るここまで来たら次は植物でも操るのかそれとも水かと考えるしかし、この能力に弱点があるのはすぐにわかってしまった。

「大体君の力はわかった次はこちらから行くよ」

「何を…」

 彼が全ての言葉を発しない内に全開で彼に近づく、彼は急いで自分の身を守ろうとその巨大な軍配を体の前に持ってくる。

「だからそれをした時点で君の負けなんだ」

 僕の全開の詰めに対し彼は防御の体制を取る、しかしその時に首を取られるかと彼は思ったのか、彼は自分の視界も隠してしまった、故に彼の敗北は確定する。

 後ろに周り背中に手を当て光の刃が出ないように意識し、それでいて衝撃は加わるように意識する空を飛ぶ時に噴射するようなそんなイメージをし彼の背中を弾く。すると彼は数メートル飛ぶ。

「痛ってっぇえぇぇええ」

 そう断末魔をあげながら地面でジタバタする姿は少し滑稽だった。

「さぁもう一戦やるだろう?まさか負けたまま今日は終わりにするなんて事ないよね?」

「うぅ、いいだろうそっちがその気なら、やってやる絶対泣かせてやる」

 ほほぅ、それは楽しみだ。どの道君が僕に勝つことは恐らくないだろうが、僕を泣かせるという目標を持って行動するのは良い事ではある。

 結果から話すと僕の20勝負けなしで模擬戦は終わった、彼の敗因は動きの単調さと、一度守りに入るとそこから抜け出すことができないという弱点が露呈した事によって、彼も最初は攻めてこれたものの近距離戦になると竜巻や火を起こす事が出来ない。厳密にいえば起こす事はできはするものの、それだと自分を巻き込んでしまうという危険性から使うのをためらってしまう、その判断は正しい自滅前提の攻撃などなんの意味も無いだがそれでは、防戦になったら彼はなすすべもなくあのバケモノたちに蹂躙されるだろう、それは回避しなくてはならない。

「明日からもこの模擬戦を続けるよ、わかったね?」

「はいはい」

「はいは一回だ」

「……はい…」

 さて僕は帰るとしよう、いつまでも寝そべっている彼を相手にしている訳にもいかない、僕はここに住んでいた訳ではないし、ここの地形を理解しなくてはならない、それこそここすら捨てなくてはならなくなる日が恐らく遠くない内に来るであろうから。


 一回も勝てなかった、自分よりも30㎝も小さい同級生の女子に。俺は運動は苦手じゃない、そしていくら天成というモノで人並外れた力を手に入れたとしても、それでも俺の方が力もあったはずだ、一度目を瞑る。

 目を瞑るとあの光景が思い出す、空に亀裂が入り眩い光と共に辺り一面を焦土に変えたあの光景を。家族が心配になった、向こうには友達の家もあったはずだっただから今すぐ助けに行かなくてはと思ったが生憎な事に自分は瓦礫の下、隣には見ず知らずの赤子とその赤子を抱きかかえる小学生だろうか?その位の小ささの女の子と一緒に完全に閉じ込められた。赤子は泣きだし、女の子も一生懸命に自分も泣き出したいだろうに目に涙を溜めながら必死に「大丈夫、大丈夫」と赤子をあやす。この女の子達を助けなくてはならないと心でそう思った、その時には家族の事も友達の事も頭から消えてこの子達の為に自分が頑張らなくてはと心から思った、それでも体が動かないどれ程この子達を助ける為に動こうと思っても体が竦む。もしかしたらすぐ助けが来るかもしれないと、もしかしたら下手に触って動かそうとすれば自分達同様瓦礫に飲み込まれ今度こそ今は少し人が動ける空間があるがそれすら無くなってしまうかもしれないと、悪い方悪い方へと考え続ける。けれどここで動かないのはこの子達を見捨てるのと同義だ、だから結果が最悪になっても例えもう二度と友達とも家族とも会えなくなる可能性があるとしても動くんだ。

 そう考えた瞬間世界が変わった。見ているだけでとても落ち着く青空、透き通った水にそしてその水の上に佇む女の子がいる。ここは何処だろうか?もしかして先ほどまで見ていたものは自分の妄想で自分はとっくに瓦礫に飲まれて死んでしまっているのではないかと思い声をだそうとするが声を出すことはできない。

 少女はゆっくりとこちらを向き何かを呟いた、その瞬間先ほどまでいた瓦礫の中に戻される。だが今の自分は先ほどまで違うと言う事はなぜかわかる自分はこの子達の為に動けると確信できた、ならば頭の中に浮かぶ言葉を一言いうだけ。

 涙を流す少女の前に立ち、一言ずっと言ってあげたかった言葉を口に出す。

「大丈夫、絶対俺が助けるから」

 そう言うと少女は不思議な物を見るように涙が止まった、先ほどまで恐怖で震えていた奴に何ができるのかとそう心で思っているのかもしれないが今はもうちゃんと動けるから。

「俺の願いは今ここに居る人達を助けたい、それを証明する『天成』」

 そう唱えると服装が代わり右手には大きな軍配を持っている、自分の苗字が如くその姿は武田信玄の様で少し恥ずかしかったが、そんな事は気にしている場合ではない、今ならこの大岩もどかせるはずだと分かっている、軍配を振ると決してこちらに瓦礫が崩れてこないように出口まで一本道ができる女の子を抱きかかえ人とは思えない高度までジャンプすると周りはもう荒れに荒れていた。がそこに一か所だけ荒れていない土地があるのを気づきそこへ向かう、そして女の子を置き家族を探しに行こうとしたその時だった目の前に大きな壁が現れたのは、もうここから先に生きている人は居ないと言うが如く、無慈悲に家族を友達を助けに行こうとする、俺の計画は終わりを告げた。


街を歩く、誰も僕に話しかけてこようとはしない、守護者という存在を恐れ多いと思っているのかそれとも僕自身が助かった人間の中に普段の僕を知っている者が居てそれを言いふらしているのか。それは僕の知った事ではないがこうも歩くところ歩くところで避けられるのは少し傷付く、その傷を癒さんがためとも言っていい可愛らしい女の子が一人トテトテとこちらに向かって走ってくる。

「あ、あの守護者様ですか?」

 可愛らしい女の子はそう聞いてくる、僕達は普段様付けで呼ばれるような存在になっているのかそれは守ってくれた感謝からなのか、あの賀水とかいう男の仕業なのかは一先ずは置いておくとして質問には答えなくてはならない。

「そうだよ、僕が守護者だ」

 一瞬少女が僕の一人称に疑問を抱いたような顔をしたが本題を思い出したらしい。

「あ、あの男性の守護者様にこれを渡していただきたいのですが、よろしいでしょうか…?」

 扇に?こんな可愛らしい少女が何を渡すことがあるのだろうか?

「構わないよ、なんなら彼の所に案内してあげようか?」

 どうせ彼はまだ学校の校庭で寝そべっているだろうから。

「い、いいんですか?お、お願いします」

 本当に裏もなく、やりたい事の為に一直線に進む可愛らしい少女だ、こんな少女が彼に何の用なのだろうか?そう考えながら彼女先ほどまで戦っていた学校へ案内する。


 どれ位物思いにふけっていただろうか、かなりの時間目を瞑っていた気がする、起き上がり周りを見渡すと夕暮れが近づいていた本当に長い間物思いにふけっていたらしい、そして余りにも長く動かなかったせいでお節介な嫌味女がこちらに文句を言いに歩いてきていると思ったがどうやら今回は少し要件が違うらしい、後ろからトコトコと少女が付いてきている。

「今度は俺になにをさせるつもりだよ」

「そう邪見に扱わないでくれたまえよ、今回は私ではなくこのレディーが君のお相手だ」

 そう冗談めかして言いながら彼女は隣に移動するとどこかで見覚えのある少女が目の前には居た。

「君は…」「あ、あの」

 言葉が同時にぶつかりよく聞こえなくなる。

「あ、お先にどうぞ私は大層な事を話に来た訳では無いので…」

「いやいいよ、そっちからで俺の聞こうとしていた事も対した事じゃないし」

 そう言うとどちらも黙ってしまって話が進まない事が彼女には余程気に入らなかったのかそれともじれったかったのか、割って入ってくる。

「おい君、君は扇に会いたいくて僕を頼ったんだろう?それならば早く要件をすませてくれ僕も早く家に帰りたいんだ」

 まだ年端も行かぬ少女になんて言葉を投げ捨てるんだ、この女はと思ったが少女は意を決したように頭を下げる。

「あの時は助けていただいてありがとうございました、あ、あのこれ大した物ではないですが私が作ったハンバーグです。どうか受け取ってください守護者様」

 このような少女に様付けで呼ばれるとなにか嫌な感じだ歳も一回りも離れて居ないだろうから普通に名前で呼んで欲しいんだが、それを伝える前にまずはお礼をしなくてはならないな。

「ありがとう、それと名前はなんて言うの?俺は武田扇、扇でいいからさ守護者様なんて堅苦しく呼ばなくていいよ」

「で、でも私達を助けていただいたものには感謝しなさいと賀水さんが…」

「いいのいいの、で?君の名前は?」

「あ、私の名前は河口(かわぐち)()(もり)です」

「真守ちゃんね、態々礼を言いに来てくれてありがとう、このハンバーグ大事に食べるね」

 そう言うと彼女はペコリと頭を下げて避難所だろうか?それともどこかの民家だろうか?そこに向かうべく走り去って行った。

「よかったじゃないか扇、僕にボロボロにされたかいがあったね」

「どの口が言うかどの口がこのちんちくりん」

「言ったな?君僕に対して言ってはいけない事を言ったな?覚えておけよぉー」

 と本気の殺意という者だろうか?それを見て本気でビビってしまったが、彼女はふと笑いだす、先ほどまでの殺気だった空気はどこへやら本当に優しい表情で笑っていた。


第三話完


 本文を読んでいただき誠に感謝します

 ここまで読んでいただいた皆様、ここまで読まなくても本文は読んでくれた皆様、そして前書きで読むのを止めた方や途中でつまんないと思ってブラウザバックされた皆々様全てにこの作品を一度開いていただいた事を感謝します。

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