委員会全面戦争⑤
ーー十器聖の城の二階
最上と暁を筆頭にする委員総会メンバーは三階へ続く階段へとたどり着いていた。
そして階段を上ろうとした瞬間、一斉に矢が放たれた。
「またトラップか」
最上は倒れている部活動総会メンバーを盾にし、そのまま三階へ駆け抜けた。
最上と暁率いるメンバーは五十人ほど。城に入ったのは五百名ほどだったが、五十人ほどにまで分散されていた。
階段のトラップを抜け、三階に駆け上がった最上たち。
三階は何の部屋もなく、ただ二階から上がってきたものを遮るような長い柵が張られていた。
そこではまるで長篠の戦いのように、柵越しに多くの部活動総会メンバーが鉄砲を構え、最上らへ銃口を向けていた。
「ようこそ。最強の砦へ」
柵越しに氷上は笑みを浮かべ、舌を出してやって来た最上らを嘲笑う。
「和国によって改造された一階と二階はかなり厄介だっただろ。おかげで数が分散してくれてるね。これなら君たちをここで一網打尽にできるというわけさ。ノコノコとここまで来てくれてごくろうさん」
氷上は狂ったように笑みを浮かべ、手を振り上げる。
「それじゃあいっちょ、いってみようか」
氷上が手を振り下ろすと同時、一斉に部活動総会メンバーらは引き金を引いた。瞬間、粘着性のマシュマロの弾丸が放たれる。
それらは委員総会メンバーらを壁や床に貼り付けにし、身動きをとれなくした。
「残念だったな。これで全員さよならだ。しゃしゃっしゃっしゃ」
特徴的な笑い声をあげながら、氷上は貼り付けになっている委員総会メンバーを見て面白おかしく見下していた。
「全員さよなら?残念だが、将は最後まで護るのが、将をお護りする脇役の務めだ」
暁は最上へ放たれる全てのマシュマロ弾丸を受け止め、最上を無傷で護りきった。
「秒速333mのマシュマロ弾丸を……よく倒れずに受け止めたものだな。だが今、勝敗は決した。暁、お前は護る相手を間違えたな」
最上は振り返り、何かを言おうとした。その瞬間、階段を駆け抜けて颯爽と現れた女性は最上の頭を踏み台にし、柵へ勢いよく蹴りを入れた。
彼女は足の部分だけが短い浴衣を着、着地した時に下駄の音を響かせて現れた。
柵が倒れたことで、その下敷きになる部活動総会メンバーらを見て、彼女は冷酷に言う。
「てめえらには、柵の下敷きがお似合いじゃボケ」
そう叫び、赤髪は揺れる。
彼女の冷たい表情からは、威圧感を感じられる。
彼女が柵を蹴り倒したことで、氷上は怒りを露にすると、両手の袖から蛇がにゅるにゅると顔を見せる。その首を掴むや、氷上はその蛇を向けて彼女へ言う。
「いきなり現れて何してんだよ」
「うるせえ。お前こそ、早乙女様の通り道になんてもん置いてやがんだボケ」
怒る氷上と謎の女性。
そんな中で、美しい浴衣を着、髪も整え化粧をし、二人の幼い少女に傘で護られている女性が桜の花びらが散る中で現れた。
「騒がしいな、次から次へと。てめえら一体何者だ?ああぁ?」
威圧する氷上に煽られることなく、彼女はいたって落ち着いた様子で言う。
「わらわは早乙女女女。決闘委員会委員長を務めさせていただいておる者です。よろしゅうお願いします」
部活動総会メンバーを柵の下敷きに!?
たったひと蹴りで柵を倒した謎の女子生徒。さらに明らかに戦う格好ではない浴衣を着た謎の女性まで。
この戦いは一体どうなるのか。