文月を救い出せ、紅たちの恩返し①
文月は全知によって学園へ連れていかれた。どこでとある部屋に入れられた文月はそこに閉じ込められ、出られることはなかった。
窓はなく、逃げられるような場所はない。
その頃、十器聖のみが入れる部屋で、全知は十器聖全員を集めた。
「現在、文月を拘束している」
「文月を!?」
卓城は声を出し、驚いた。
「明日、文月と決闘を挑む。そこで彼女を敗北させ、この学園から追放する」
「全知、なぜそのようなことをする」
「卓城、僕はね、退屈なんだよ。その退屈を唯一払ってくれる可能性を持っている人物が文月京だ。だけど僕は退屈でいたい。退屈の方がずっと良い。だってもしここで退屈から解放されたら、これまで抱いてきた退屈が馬鹿みたいだろ。僕は天才だから、馬鹿にはなりたくないんだよ」
「そんなの自分勝手過ぎる……」
「僕はこの学園の支配者だ。僕の言うことはこの学園では絶対だ。だから僕は文月を追放しよう。
これでも僕は優しい方だよ。戦わずして追放することもできるのに、戦ってあげようとしているんだ。だからさ、感謝してほしいね。それに文月が勝てば追放は免れられる。万が一にもあり得ないけど」
「理不尽な決闘でもしようというのだろう」
「大正解。絶対に勝てる勝負こそ退屈なものはない。だから僕はそれを好む。じゃあというわけで、十器聖と文月との決闘は明日を以て終了する。皆、これまでありがとう」
全知は卓城らへ振り返った。
「じゃ」
最後、全知は卓城の闘志に目を見て笑みを浮かべ、その部屋から立ち去った。
廊下を歩く卓城の横を宿木先生がすれ違った。その際、両者は足を止め、互いに向き合うことはなく宿木は訊いた。
「良いのか?」
「ええ。それよりも宿木先生、十器聖の誰が裏切ると思いますか?」
「裏切りか。卓城は文月を好いている。だから彼女は裏切るだろうな」
「いえいえ。もっと面白い展開になると思いますよ。だからそれを徹底的に潰し、僕は退屈を守り抜く。この学園至上最も面白い決闘が、大決闘が始まると、そう理事長に伝えておいてください」
「お前は何をするつもりなんだ」
「さあ」
そう言って、全知は宿木のもとから去っていく。
掴み所のない全知を宿木は無表情に見つめていた。その後、理事長のもとへ向かう。
それから一時間後。
卓城は紅のもとへ行き、その経緯について話した。
文月が全知に囚われていること、文月が明日学園から追放されること……。
「卓城は味方だよな」
「でなきゃお前にこんなことを教えていない」
「ではすぐに文月を助けに」
「いや、恐らく全知は残りの十器聖を従え、俺たちを迎え撃つ。だかたもっと数がほしい」
しかしこの学園自体人数が少ない。どうすれば良いというのか。
紅と卓城が顔をしかめていると、背に生徒会メンバーを率いる女性が彼らの前に現れた。
「紅、卓城、話は聞かせてもらった」
そこにいたのは生徒会長、霞ヶ崎小雪。
「人員ならばここにいる生徒会メンバーとお前らで十分じゃないか」
「ねえ、私も付き合って良いかな。その決闘に」
そこへさらに、蒼青明とその弟の青太郎、さらに霞ヶ崎の暴走族時代の仲間が数十人ほどいた。
「どうやってこの学園に入れた?サバゲーの時は決闘があったから入れただろうが、今は別だ。それにどうして来てくれた?」
霞ヶ崎は驚き、蒼青明へ訊いた。
「宿木先生が教えてくれたんだ。文月がピンチだから助けてやってくれと。一応私たちはこの学園の附属の学園の生徒だからここ本校にはイベントや行事がない限りはないれば入れないけど、宿木先生特権で入れてくれた」
「宿木先生が……。彼女も何か隠しているようだが、今は後だ。これから文月を救い出すため、十器聖の城に乗り込む。覚悟はできているか」
全員が手を掲げ、叫んだ。
その返答に圧倒され、卓城は驚いた。誰もがやる気になっている。その事実に卓城は勝てると、そう思った。
「では乗り込むぞ。十器聖を俺たちの手で討つ」
革命の火種が狼煙をあげた。
今この学園に革命が起こる時。それを密かに察していた全知は十器聖という駒で迎え撃つ。
「任せたよ。十器聖」
革命者たちを迎え撃つため、十器聖は牙を研ぐ。
「さあ退屈の妨害者たちを潰せ。この学園の支配者は我々十器聖だ」




