絆の証明、夕焼けの約束④終
広い道場のような場所で、私は本物の刀を握っている。その刀で人の首を斬ろうと思えば斬れるし、かすれば簡単に傷がつくだろう。
「文月京、どうして君はこの決闘に挑んでくれたのかな?」
「怖くなったのか?戦うことが」
「私はこの暗黒街で殺すことには慣れている。だが君はただの一般人だ。人を殺すなどということには抵抗があるんじゃないか?」
「生憎、私は覚悟はできている。貴様を殺す覚悟がな」
そう言い、私は刀を振るって暗黒の刀へぶつけた。
殺しはしない。刀さえ折れば戦いは終わるはずだ。
私が振るった刀は暗黒の刀とぶつかり合う。刃の部分が互いに少し欠けた。想像以上に脆い、これなら早く決着がつく。
刀と刀を交え合う中、暗黒は呟いた。
「そういえば、この刀で南愛佳に傷をつけたっけ」
こいつ、何を言っているんだ。
暗黒は私と距離をとり、刃こぼれした刀を見て言った。
「なあ文月、お前の作戦はバレバレだ。刀を折って決闘を終わりにしようとしているんだろ。だが決闘はそれじゃ終わらない。どちらかが降参するまで、もしくはどちらかが死ぬまで行う。そうでなくちゃ意味がない。だからさーー」
暗黒は私のかたなを側面から打つように刀を振るった。その瞬間、私の刀はその中心に折られた。
刀身が床に突き刺さるのを、私は無言で見ていた。
「なあ文月、私はお前を利用して全知の学園を支配する。お前がいれば今度こそ学園を支配できる。死ぬまでお前を使ってやるよ」
暗黒は私の左腕を目掛け、刀を突き刺すーーその寸前、私の中で何かが壊れた。
私はーー文月は左腕の一振りで暗黒の刀をへし折った。その後、飛び上がって暗黒の刀を手から蹴り飛ばした。刀は宙を舞い、遥か遠くの壁に突き刺さる。
その後、どういうわけか文月は暗黒の首目掛けて刀を振るおうとしていた。
「文月……そうか、まだお前の中に他の人格はあったのか」
文月が暗黒へ刀を振り下ろした寸前、折れている刀に銃弾が直撃し、その反動で文月は刀を手離した。刀は弧を描いて宙を舞い、床に転がる。
「危ないところだったね。暗黒」
そう言いながらそこにスナイパーライフルを持って現れたのは、十器聖の頂点に立つ少年ーー全知全夢。
「全知……」
「暗黒、惨めになったな。同じ相手に二度も負けるなんて」
「ちっ。最初から見てやがったのか」
「そりゃあ僕の仲間の南に接触した時点で、君が何かを企んでいるということは予期していたよ。だけどまさか真剣同士の殺し合いを挑もうとしたのは、さすがに君には腹が立ったよ」
全知は鋭い目付きでしりもちをつく暗黒を見下ろしていた。
その目には明らかな殺気が込められている。
「まあ良いや。とりあえずこの決闘は君の負けだ、暗黒」
「まだ勝負は終わっていない」
「いいや終わりだ。僕が止めに入っていなければ君が死んでいた。だから暗黒、奴隷の首輪は全て外しておいた。まあ行き場のない者はここに残りだろうが、多くの者がここから去るだろうな」
「全知ぃ」
怒りを込めてそう言うも、全知は暗黒の言葉を無視し、文月のもとへ向かった。
「多重人格。薄々勘づいてはいたが、君の中にこのような人格があるとは」
暴れる文月を見て、霞ヶ崎は数時間前のことを思い出していた。
ーー私の中にある人格が他人を傷つけるかもしれない。
その人格は今暴れている彼女なのだと分かった。暴れる文月を見て、霞ヶ崎は彼女のもとへ行こうとするも、一人の女性に腕を掴まれた。
「生徒会長、それ以上進むのは危険です」
彼女の腕を掴んでいたのは、十器聖ーー冬待来無であった。
さらに彼女の後ろには、同じく十器聖の結城小袖と青黒薔薇黒龍がいた。
「十器聖がこんなに……」
「暗黒、もう君は弱いからそこで尻をつけたまま這いつくばってなよ。その方が面白いからさ」
暗黒はそう言い放ち、文月の両腕を掴み、床に押し倒した。
「文月、しばらく眠っていてくれ」
文月の首に注射器を刺した。その後、眠気に襲われた文月は暴れるか力を徐々に失い、そこで眠る。
「では帰るとしようか。そして決闘を始めよう。寝起きの文月との、最初で最後の決闘を」




