策の激突、戸賀狂嫁VS霞ヶ崎小雪②
そこは十器聖のみが入れる部屋。
その部屋に置かれたソファーの座り、全知は呟く。
「生徒会選挙の候補者同士の争いは終結したと思っていたけど、戸賀の奴はまだ火が収まっていないみたいだね」
「止めなくても良いのですか?どうやら戸賀が負ければ十器聖から降り、霞ヶ崎が敗北すれば生徒会長から辞退するようですけど」
宿木は言う。
しかし全知は動揺はしていなかった。むしろ楽しんでいるようだった。
「面白いじゃん。で、その決闘の審判は誰が務めているのかな?」
「冬島理緒という教師です」
「へえ。彼が審判を務めるのか。珍しいね。彼はあまりそういうことに興味はなく、引き受けないとばかり思っていたけど。やっぱ今回は別か。十器聖の座と生徒会長の座がかかった勝負、見物だね」
「そうですか……」
「そういえば、暗黒は?」
「もう学園には来ていませんね」
「そう。そりゃ退学処分にして二度とこの学園に来れなくなるように処置をしておいたんだ」
全知は微笑みながら言った。
「全て計算通りだったのではないですか?」
「さあ。それはどうかな」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
木やこけなどを生やし、まるでジャングルのように見立てた施設ーージャングル。
木々が倒れていたりして歩きづらく、こけがあるせいで走ると滑りやすくなっていた。
「ねえ文月、それで作戦って?」
「ここに来て思ったのだが、やはり見通しは悪く、敵がいても早期発見は難しいだろうな。問題はそこだ。だが逆にいえば、その問題さえ解決できればこのジャングルを利用して私たちは簡単に勝つことができる」
「でも、そんな方法あるかな」
「相手が出した決闘の内容は曖昧だ。なぜそんなにも曖昧なのか、それは相手も私と同じようなことを考えているから。だがそれを逆手見取れば、私たちは勝てるというわけさ。だが人数が足りない……」
「こんなところで何をしているんだ?」
そう言い現れたのは、十器聖ーー卓城晃太郎であった。
「卓城、良いところに来た。少し協力してくれないか?」
「良いけど……何させるつもりなんだ」
「十器聖の一人、戸賀狂嫁の行動を監視してほしい。そして逐一報告をしてくれるか?」
「今回は戸賀との決闘か?」
「ああ。そういうところだ」
「なら任せておけ」
私は卓城へトランシーバーを渡した。
「これで報告しろと?」
「Great」
「まじかよ……」
「任せた」
「任された」
卓城は躊躇いながらもトランシーバーを握り締め、この施設を後にする。
これで戸賀の状況が確認できる。
「明日のサバゲーまで時間がないな」
「勝てる?」
「この決闘は圧倒的な理不尽そのものだ。だが実際、社会に出てから理不尽というものに何度もぶつかるだろう。その度にその理不尽を乗り越えるか、それとも逃げるかの選択肢を迫られる。
私はさ紅、そういう時に笑顔で理不尽に立ち向かえるような人になりたいんだ。何度も壁にぶつかってきたから分かるんだ。もう二度と後悔はしたくない。だから勝とうぜ。この決闘、敗北は私たちには似合わないだろ」
「相変わらず、文月はかっこいいね」
「そりゃ、格好良く生きているからな。自分に誇れる生き方以外はしないのさ。私はいつだって私であるから。ありのままでいたいからさ」
もう大敗は味わっている。あの過去は未だ消えず、私の脳裏に強く焼き付いている。消えないんだよ、あの敗北が。
そんな時、私の前に彼は現れたんだ。
「何でもかんでもデメリットととして考えてはいけない。全てをメリットとして考えることこそが、世界を生き抜く術になる」
「本当に君はかっこいいね」
「そりゃ当然だろ。俺は、格好よく生きているからな」
あの過去がなければ、あの経験をしていなければ、今頃私はこの舞台にも立つことは許されなかっただろう。
敗北をしたから今の私はここにいる。
もう彼には会えないだろう。そんな奇跡は簡単には起きないのだから。奇跡など、私は今まで一度でも味わっただろうか。
結局最後に必要となるのは、自分自身の実力だけ。
実力がなければ何もできず、ただ敗北するだけで何も守れなくなる。
ーーそんなの嫌だ。
「紅、この決闘、絶対勝つぞ」
「ああ。勝とう」
私は誓った。
もう二度と負けないと。
だから私は、戦うんだ。この決闘に、正々堂々と戦うんだ。
「戸賀狂嫁よ、私が相手になってやる」




