第14話 『特務士官』
「ほえー……また随分キレイな所っすね」
「……高級宿に泊まってるみてーで落ち着かなくなりそうだな。つか、汚すの怖え」
シドに、家と土地を含む一切の売却を依頼して、家のカギを渡した……その日の午後。
ハルキ達は、待ち合わせ場所から、防衛隊が寄こした迎えの車に乗って、これから住むことになる『新居』に向かい……そして今、到着していた。
彼らが案内されたのは、フォートの中心部にある『総司令部』。その敷地内。
そこに建っている、まだ新築と言えるであろう新しさの『宿舎』――関係者専用のアパートだ。
その一室に通された2人は、今までとは違いすぎるその生活空間に、まず何よりも先に驚愕させられていた。
彼らが住んでいた部屋、というか家は、古ビルを改装して暮らせるようにした、事務所兼仕事場兼住居、という、それぞれの機能を最低限持たせたにとどまるだけの住処だった。
もっとも、ずっと長いことその家に暮らしており、それより前に、まだ2人の両親が健在だった頃に暮らしていた家も似たような場所だったことから、不満に思ったことはなかった。
しかしそれゆえに、『住む家と言えば』というイメージが、そういった質素なそれに固定されていた彼らは……この部屋の豪華さ、上等さをどう表現していいものか、すぐには思い浮かばなかったのも、致し方ないことなのだろう。
彼らが通された部屋は2人用の部屋で、『家族用宿舎』に分類される部屋だ。複数人で暮らすことを前提にしているため、一般的な宿舎の部屋よりも広い。
具体的には、3LDKで家具も完備、広さもそこそこで、閉塞感なく暮らせるだろう。
簡単にではあるがきちんと前使用者の状態からリフォームされていて、清潔感もある。
とどめに水道やガス、電気設備といったライフラインも一通り整っている。
これがまだ『災害世紀』よりも前の時代の先進国……例えば、2020年頃の日本などであれば、そのくらいは当然の基準、整っていなければおかしいというものだろう。
しかし、今の時代においてこのレベルの生活ができる部屋というのは、文句なしの『高級部屋』に分類される部屋であると言える。
実際、ハルキ達もここまで設備が整った部屋を見るのは、数年前にクライアントの厚意で泊まらせてもらった、上流階級用の高級宿で見て以来である。
一般的な賃貸住宅であれば、3大ライフラインのうち1つあれば十分いい方だと言える。万人に十分にいきわたるほど、今の時代、サービスは量も潤沢とはいえず、質も十分ではない。
もちろん、普通の兵士の宿舎や、軍属だとしても、単なる業者・会社の社員寮などはこうはいかないだろう。
現に、ここヴォーダトロンの兵士宿舎も、風呂やトイレ、キッチンといった水道設備は共用だ。キッチンがそうであることから、ガスもそれに準ずる。電気は各部屋で使うことができるが、それも、冷蔵庫や照明などの生活必需品レベルのそれ以外は、一ヶ月ごとの使用可能量が決まっているため、無駄遣いは決してできないようになっている。
にもかかわらず、ハルキ達の部屋がこうである理由は……その直後に、ある人物によって明かされることとなった。
広々としたリビングダイニングに呆気に取られている2人に、コンコン、と部屋の扉をノックする音が聞こえる。
とっさに『どうぞ』とハルキが言うと、ノックの主は扉を開けて中に入ってきた。
現れたのは……2日前にも会っている、褐色肌の美少女だった。
「どうも、ハルキ・ジャウハリーさんに、アキラ・ジャウハリーさん。一昨日ぶりですね」
「あ、どうも。えーと……ファウーラさん」
「お疲れっす」
部屋に入ってきた少女……ファウーラは、一昨日と同じく、軍服に身を包んでいた。
シミや汚れはもちろん、皺のひとつもなく着こなしている軍服は、この時世から見ればかなり上等で、ともすれば『贅沢』になる部類のつくりをしているのだろう。
よく見るとわかるが、胸には階級章以外にも、前に会った時にはなかった勲章などがいくつかついている。任務中は邪魔になるため、そういったものは常時はつけない、という人は軍人には割と多いため、彼女もその類なのだろう。
そんな服装と微妙に合っていない、割と大きめの鞄――書類仕事用の革製のそれではなく、布製のボストンバッグのようなそれだった――を片手で持っているのが、少し違和感があったが。
ハルキとアキラのだいぶ簡単な、あるいは雑と言ってもいいかもしれない挨拶も特に気にすることはなく、しかし、2人がまだ荷ほどきもせず、リビングでぼーっとしているのを見て、そちらは気になった様子で問いかけた。
「時間通りに到着していたようですが……何か、部屋に気になることでもありましたか?」
「あると言えばあったっすね……」
「ああ、確かに……いや、ただ単に予想以上に広くて豪華だからびっくりしただけなんですが」
「そうでしたか。不備でないのでしたら……喜んでいただけらなら何よりです。設備は通常のものですが、お2人で使うとのことでしたので、なるべく広い部屋を用意させましたので」
「これで設備普通!? 軍の人たちって皆こんないい暮らししてんすか!?」
ファウーラの言葉に驚いて、アキラはつい大声で聞き返してしまう。
それを無作法だと咎めるべきかハルキは迷ったが、今の話を聞いて驚いているのは自分も同じだったため、それよりも呆気に取られてファウーラを二度見してしまっていた。
すると、2人の視線を受けて、はっと気づいたようにファウーラが付け足して言う。
「ああもちろん、一般の隊員まで全員こうではありません。お2人も想像している通りのような……そうですね、一般的な安アパートと同じくらいの部屋ですよ。建物内の設備は司令部で予算を出して整備していますので、多少なり整った便利な暮らしはできますが」
「すると……この部屋は、そういう『普通の部屋』ではないということですか?」
「部屋と言うか、ここの建物がですね。ここは『士官用』の宿舎なので、それ相応の設備になっているのですよ。個室も多いですしね」
その言葉に、ハルキはこの部屋の『特別さ』についてはある程度納得できたが、代わりに別な部分でますますわけがわからなくなった。
『士官用』。
さらりと言われたこの言葉の、というよりも、この単語の意味が分からないハルキではない。
『士官』とは簡単に言えば、軍隊において部下への指揮権を有する『指揮官』となる者達に与えられる上位の階級である。
兵士としての階級よりも上……『伍長』以上がその区分になり、細分すれば『下士官』『准士官』などに分けられる。兵士を掌握して指示を出し、命令を実行させ、何かあれば責任を取るのが役目、という立場だ。
それがこの部屋の説明に使われ、そしてここが自分達の部屋として紹介されたということは……すなわち、1つの事実を示している。ハルキの頭はそれに驚いて、出来れば説明を欲していた。
ちなみに、アキラはわからないようだが、ニュアンスである程度察していそうな表情ではある。
そして、先程の言葉は恐らく確信犯だったのだろう。
ファウーラはハルキの困惑を察して、速やかに追加で説明する。
「お察しの通り、お2人には士官クラスとして軍に所属してもらう形になります。ただ、少々特別というか、特異な扱いになりますので……そのあたりの説明が必要ですね。荷解き等はまだのようですが……今から少し時間はありますか?」
「大丈夫ですけど……どこか行くんですか?」
「着任辞令の交付もかねて、アルフレッド総司令にご挨拶です。その後簡単にですが、総司令部の内部の案内などもできればと。ああそれと……」
言いながら、ファウーラは手に持っていたバッグの口を開くと、中に何かが見えた。
それは、服だった。
奇麗に折りたたまれた上で、アイロンまでかけてあるのだろう、皺ひとつない状態の……新品であることが一目見てわかる、軍服だ。それが2着。
ただ、よく見るとファウーラが来ているそれとはデザインが微妙に異なるようだ。
それをハルキとアキラにそれぞれ1着ずつ差し出してきていた。
また、上着とズボンの他に、中に着るシャツなどの他の必要な衣類、さらには靴も用意されているようだった。新品で皺ひとつないという点については同様である。
「こちらに着替えてください。ここから先は……一応、仮とはいえ軍関係者ですからね」
☆☆☆
30分後。
2人共、一生着る機会などないだろうと思っていた、軍服の上下に身を包み、さらに簡単にだが髪型も整えて、ファウーラに連れてこられた『総司令部』の廊下を歩いていた。
ひとまず荷解きは後回しにし、部屋には鍵をかけて外出となった2人は、徒歩数分で行ける場所に建っている『総司令部』に行き、下町ではまず見ることのない、清潔でかなり広い建物の中を、迷わないようファウーラの後をついて歩いている、というのが、正確な現在の状況だ。
仕方ないことではあるのだが、初めて着る軍服は、いつもの着古して柔らかくなっている、体に馴染んでいるとすら言っていいツナギと比べて、新品であることも手伝って、かなり着心地は硬い。そのため着ているだけで違和感があるのに加え、動きづらく体の駆動がおかしくなっていた。思うように腕や足が前に出ないし上がらない、という形で。
加えて、中のシャツも含めて1番上のボタンまで留めなければならないため、首が苦しい。
いつも仕事中に履いているブーツは、これも足に馴染んで柔らかくなっているのだが、新品の革靴はやはり硬く、歩きづらい。単純な重さではいつもの靴が勝っているが。
とどめに2人そろってネクタイの結び方がわからず、試行錯誤、あるいは四苦八苦していたところに『まだですか?』とドアの向こうのファウーラから尋ねられ、2人共正直に白状して教えてもらった、という経過がある。
しばらく歩いて到着したのは、こころなしか他の部屋よりも立派な扉がついた、1つの部屋。
横の壁に『総司令執務室』と表示が掲げられているのを見て、ハルキはこの部屋がまさに目的地だと悟る。
ファウーラがノックすると、『どうぞ、入っていいよ』と、全員にとって聞き覚えのある声が返ってきた。声に従い、扉を開けたファウーラに続いて、ハルキとアキラも部屋に入る。
部屋の中は以外にも簡素な作りで、真ん中に大きめのワークデスクが置かれている他は、戸棚や本棚、ソファやテーブルなどが置かれている程度だった。
ソファやテーブルは来客対応用も兼ねているようだが、そこまで上等なものには見えない。品質はよさそうだが、上流階級が好むようなきらびやかさは感じられない。
もっとも、それはこの部屋の装飾(と、呼んでいいものか)ほぼ全般に対して言えることだが。
その中心にいる、椅子から立ちがったところらしい彼……総司令・アルフレッドが、一昨日と変わらない、気さくな感じの笑顔で全員を迎え入れた。
こちらも同様に軍服だが、やはりファウーラ同様、以前は見なかった勲章などが胸元にいくつか輝いている。その多くは金色などに輝いていて、装飾も豪華であるあたり、元軍人の彼がここまでくる間に積み重ねたという功績の大きさというものが見て取れるだろう。
実の所、アルフレッドの持っている勲章の類は、この胸についているものはそのほんの一部に過ぎず、自宅の鍵付き戸棚の中で眠っている状態だということを、ファウーラを含む彼に近しい数人が知っているのだが。
総司令だけあって軍服似合うな、などとどうでもいいことを考えているアキラと、まず何から確認すべきかを頭の中で整理しているハルキ。
そして彼らを案内してきたファウーラが横一列に並んだところで、アルフレッドが『では、あらためて』と、口を開く。
「ヴォーダトロン総司令部へようこそ、ハルキ・ジャウハリー君、アキラ・ジャウハリー君。歓迎するよ。もうすでにお互いの自己紹介はしてあるから、そこは省略して、実務的なものを含めた話をしようか。むしろこれからの自己紹介に必要になる情報を説明しないといけないしね」
アルフレッドは3人に座るように言い、全員が接客用のソファについたところで……アキラがソファの柔らかさに感動しているのを微笑ましげに見ながら、落ち着くのを少しだけ待って口を開く。
「ハルキ君、アキラ君。先程言った通り、歓迎する……と同時に、君達には感謝している。よく、この大きな決断を、こうも迅速に下してくれた。そのおかげで我々と君たちは、互いにとって最善と呼べる関係を、最善のタイミングで形作ることができた」
2人の目を正面から見ていったその言葉は、上から目線……という感じはせず、あくまでアルフレッドが、2人の目線に合わせて素直に述べた感想であるかのように思えた。
きちんと自分達を見てくれている、というのがわかり、その人格の大きさというものを、前回と同じで直感的に悟る2人。自然と背筋が伸び、気持ちも引き締まる。
その横で、同じような視線をファウーラもまた向けていた。こちらも恐らくは、純粋に尊敬などからくるものだろう。彼女の場合、ハルキ達よりも長く、多く彼と接してきたのだから。
言葉ではなく態度1つで認識を改めさせたアルフレッドは、机の上、ハルキとアキラの目の前に、持ってきた資料を置いて、『見ながら聞いてくれ』と説明を始める。
「先だって話した通り、君達には『総司令部』の所属として、そして『レックス』のパイロットとして働いてもらうことになる。詳しい仕組みなどはその手引書に書いてあるから、後で目を通してもらいたいが……簡単にさわりだけ私から説明しよう。これも前に言ったと思うが、君達は正式な軍人ではなく、あくまで『軍属』として、軍の関係者、という立場で雇われる」
「はい。それについては、議会で協議の上で決定する、とのことでしたが……決まったんですか?」
「どうにかね、あれだけ議会が白熱したのは設立以来初めてかもしれないが、そのかいあって実ある議論ができたと思っているよ」
何でもないことのようにそう言いながら、アルフレッドは笑った。
実の所、議会は白熱どころか紛糾、あるいは暴走一歩手前まで行っていた。
最初は、あまりに突拍子もない議題だったがために、大半の議員が『そんな馬鹿な』『いくら総司令のお話でも…』と疑問を述べるところから始まり、しかし実際にその機体を見て、アルフレッドが記録していた戦闘の様子を見て、『防衛隊』総隊長のリドリーの所見を含めた報告書類を見て、議員達はどうにか現実を理解した。
そこからは、『危険だから接収すべきでは』『協力できるなら相応の待遇を持って召し抱えるべき』『もっと情報が欲しい』などと、普段はほとんどアルフレッドのシンパですらある面々が、アルフレッドも驚くほど活発に意見を交わしていた。
会議において、私利私欲に走ったり、部外者であるハルキ達を下に見るような意見などは1つも出ず、あくまで『どう対応するのがフォートにとって、そして彼らにとって最善か』という議論に終始したのは、流石に皆、アルフレッドが認めて選んだ議員達ということなのだろう。
その光景を見ていて、アルフレッドは少しも困ることはなく、むしろ議会がきちんと『意見を戦わせる場』として機能していることを嬉しがっていたという。
最終的に意見をまとめる作業も、彼は終始笑顔で、嬉しさを隠しきれない様子でやり遂げた。
「ハルキ君、アキラ君……君達には、『特務士官』という立場が与えられることになる」
「とくむ……しかん?」
「特務士官……というと、確か、たたき上げで兵卒から士官クラスに上がった者のことを指す軍隊用語……でしたか?」
「ほう? 詳しいね、ハルキ君」
アルフレッドは素直に感心した。軍関係者以外で、ましてやこの娯楽も資料も少ないご時世で、軍における階級についての知識があるものなどそうはいない。
これが人類全盛期の2020年代頃なら、世の中に溢れていた創作物や、極端な話、気まぐれに検索してみた、などの理由で、知っている者が多くとも不思議ではなかったが。
実の所、ハルキが知っているのもそれと似たような理由であるし、単なる偶然とも言える。幼い頃に読んだ本に書いてあったがゆえに知っていた、というだけの知識だ。
「その通り。ある特定の分野で、専門家と同等かそれ以上に優秀な知識・技術を持っていて、かつ軍人としての力量や経験も豊富。その実力は士官として任用するに足る、という判断がなされた者に対して適用される階級だ。君たちの場合、いくつか条件に目をつぶったり、出世払いを期待して強引にねじ込んだ部分もあるがね」
「……あたし達、軍人でもないし、経験も何もないっすからね……」
「だが一方で、君達がまさに『たたき上げ』のスキルとして持っている、ジャンク技師としての知識や技術、経験は本物だし、それはお世辞抜きで軍でも役に立つステータスだ。その点に関しては、ムーア氏の報告からもわかっている。加えて、あの『レックス』を操縦できるのは君達だけだ」
それを聞いて、2人はなるほど、と思った。
たしかに、アルフレッドが上げ連ねたものはどれも、紛れもなく彼らの培ってきたスキルである――『レックス』の操縦は少々強引かもしれないが――それを評価されたというのであれば、悪い気はしなかった。
「今言ったように強引な人事ではあるが、君達の重要性は議会でもきちんと理解されたことであるし、その君達を獲得するのに必要とあれば、この程度の特例は問題にもならない。ゆえに、『軍属』として軍関係者の立場を与え、軍関係者で一定のスキルを持っていることから『特務士官』という形である程度の地位を与える、という形に落ち着いた」
「なるほど……でも、わざわざ地位まで与えたのはどうしてですか? 自分達は軍関係のスキルは正真正銘皆無なんですし、ただ単に技師か何かとして雇うだけでもよかったんじゃ? 先程ご自身でもおっしゃっていましたが、正規の軍人とは言えない者に、『特務士官』とはいえ階級を与えるのは、かなり強引な『ねじ込み』だったのではと……流石に問題にならなかったのですか?」
「そのあたりは、言ってしまえば、打算や損得勘定の結果だな。単なる技師をあちこちの現場に引っ張り回したり、戦闘に出てもらうわけにはいかないからね。加えて、君達にある特定の力と立場を与え、君達に命令できる者を少なくする狙いもある」
予想していた質問だったか、あるいはこの後説明するつもりだったのだろう。アルフレッドは言いよどんだりつっかえたりすることもなく、すらすらと答える。
「率直に言うが、私達は君達の戦闘能力にも期待している。そしてそれゆえに、君達に命令を出すことができる者はなるべく絞っておきたいと思っている。極端な例だが、君達よりも階級は上だが力がない者が、保身のために君達に命令を出して『レックス』の力を使わせる……などということがないようにね。ゆえに君たちは正規の軍人にはせず、また軍属としても少し特殊な立場になる」
そう言って今度はアルフレッドは、先程書類と一緒に持ってきていた、小さな箱を2つ、また2人の前に押し出すようにした。
許可をもらって2人がそれを開けると、中に入っていたのは……『階級章』だった。
軍服の肩に着ける『肩章』と呼ばれるタイプと、服の襟につける『襟章』タイプの2種類がある。デザインによって示す階級が違ってくるわけだが、アキラはもちろん、そこまでの知識は流石にないハルキにも、『ちょっと豪華かもしれない』という程度にしかわからない。
「君達には『特務士官』として、『少尉』相当の権限が与えられる。将校の最下位ではあるが、君達への指揮系統は縦にかなり狭いものになっており、実質として直属の上司か、さらにその上役のみが指示を出せる扱いになる。それでその上司だが……」
そこまで行って、ちらりと目配せするアルフレッド。
すると、それを待っていたらしいファウーラがすっくと立ちあがり、アルフレッドの隣に来て、ハルキ達と向き合う形で、気を付けの姿勢で立った。
「彼女がそうだ。今後君たちは、彼女の率いる『特務部隊』所属の『特務少尉』となる」
「よろしくお願いします、ハルキさん、アキラさん」
「父親としてのひいき目は一切なしで言うが、彼女は優秀だ。色々と教えてもらうといい。仕事のことや、軍内部での規定、それにこの施設の案内や……ああ、明文化されていない慣習なんてものもあるしね。差し当たって、そう……『階級章』のつけ方からかな」
ちら、と向けられたアルフレッドの視線の先で……『肩章』を胸にあてたり袖に巻こうとしたりして、『どう使うんだコレ』と顔に書いてあったアキラが、はっと気づいて顔を赤くした。
それにハルキはため息をつき、ファウーラは苦笑し、アルフレッドは微笑ましげに笑っていた。




