3 「私」と「フィレーネ」
連日投稿する難しさを実感しております。
目を覚まして初めに聞いた音は、誰かが喜ぶ声だった。
意識がはっきりして、周りの状況を理解できてきた頃には、それから一年経っていた。
「フェルちゃん、パパだよ!」
今私を抱っこしてニコニコと笑っているのは、この世界における私の父、ラベルト公爵家家長のベルト・デン・ラベルト公爵。まだ年若く、壮年というより青年という言葉の方がしっくりくる容姿をしている。それも当然、まだ二十代後半らしい。明るい茶色の短髪に濃いめの碧眼、貴族のたしなみとして剣術を習い程よく鍛えられている身体はとてもバランスよくしっかりしている。端的に言ってイケメンというやつである。
私はいつも通り、父に向かって手を伸ばす。
「ぱー、ぱー」
まだ一才の誕生日を先月迎えたばかりで、一音ずつしか発音することはできない。多少気恥ずかしさはあるが、かといって焦って早く喋れるようになる必要性も感じないため、人並みの成長速度である。
ちなみに、この世界で使われている言語は日本語と似て非なるもののようだ。母音と子音で構成されているようだが、言語としては英語に近い。言語チートとかは難しそうである。
私が手を伸ばすと、父は私を片手で抱き、空いた手で手を握ってくれる。そのことに安心感を覚えて、私は父の腕の中で眠ってしまった。
父は終始私に笑いかけてくれていた。
次に目が覚めたときはベッドの上だった。近くに人の気配はない。
「あー、うー?」
自分の声が出ることを確かめて腕を動かすと小さな手が視界に入る。握ったり開いたりすれば、思った通りにその手は動く。
うん、自分の手だな。
意識がはっきりしてから何度も確認してるが、起きると必ずやってしまう。まだこの体がしっくり来てないみたいだ。
この体、というのは先ほどの公爵様の娘であるフェレール嬢のことで、金髪碧眼の正真正銘お嬢様のことである。将来はすらっとして出るとこは出る美人系美少女になる予定だ。
じゃあこの今喋っている私は誰なのかというと、実はわからない。
分からんってなんだ、フィレーネなんじゃないのかと思う人もいるかもしれないが、本当に名前が分からない。まだ体が子供で頭があまり動かないせいかもしれないが、とりあえず「私」としとく。フィレーネではないことは確かだと思う。
なぜなら、私の記憶に「フィレーネ」についての情報があるから。とある物語のキャラクターである「フィレーネ」は第三王子婚約者候補筆頭の公爵令嬢。アルベルト国随一の公爵家ラベルト家長女にして最強のライバルとして物語に登場する。
なんの物語なのか、名前、それら全て判然としない。なんとなくわかる、そうとしか言えない。自分の名前も含めて、まだはっきりとしてないことばかりだ。
その中でも、しっかり覚えてることは「私」が「フィレーネ」になる前のこと。
とても美人で気さくな女神様とのつかの間の会話のことは、今はしっかりと思い出せる。その時に感じた違和感が、それまでの記憶が無いことだということも含めてしっかりと思い出せた。
とある記憶なんて実はないというお話。
固有名詞は必要に応じて。
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