33 王様に謁見
「これで全員です」
隊長さんが大声で招集をかけたので、何事かと驚いて駆けてきた騎士たち。
その様子を気にすることもなく隊長さんは整列させると、こちらを見て招集完了を告げてきた。
「わかりました、ちょっと待ってくださいね」
私は馬小屋の大きめに作った扉を開け、全体に洗浄魔法をかける。
これで馬も騎士たちも清潔になったでしょう。
「今のは洗浄魔法でしょうか?」
「そうですよ。 ずっと移動していて汗かいたままだと、気持ち的に不快になりますからね。 あとはしっかり休んでください」
「何から何までありがとうございます。 お前たち、馬の世話をしたらすぐに就寝だ、明日に疲れを残すなよ!」
隊長さんは私に頭を下げた後、騎士たちに指示を出していく。
洗浄魔法にお礼を言っていたが、騎士たちや馬に洗浄魔法かけたのは、汗かいたままで数日一緒とか絶対に嫌だからだ。
もしかしたら自分で洗浄魔法使ったりできるのかもしれないけど、使えるかわからないのと、馬にまで使うかわからなかったのでまとめて洗浄した。
さて、やる事はやったので、私も家に入る。
騎士たちは洗浄魔法だけだったけど、私はゆっくりお風呂に入ってから寝るよ!
翌日朝。
寝ていた私は、いくつもの足音で目が覚める。
ステータス画面で時間を見てみるとまだ4時だった。
寝るのが早めだったのでそこまで眠気は残っていない。
まあ眠くても馬車で寝ればいいんだけど。
自分に洗浄魔法をかけた後、身支度を済ませて外に出た。
そして周りの様子を確認する。
壁にのぼって周りを見に行く人や馬の世話をする人、出発の準備をする人などみんな忙しそうだ。
「ユリア殿、おはようございます」
様子を見ていた私に横から隊長さんが話しかけてくる。
「おはようございます」
私も普通に挨拶を返す。
「先程起床したばかりですので、出発はもう少しお待ちください。 すぐに準備しますので」
「わかりました。 私も朝食を済ませて待ってますね」
私は家に戻り朝食後はのんびり待つことにする。
のんびりと言っても、それほど待つことなく隊長さんが家をノックしてきた。
「準備ができました。 いつでも出発できます」
「ではこの壁は解除しちゃいますね」
解除しなくても収納しておけば明日も使えるかも?
まずは地面の下の固めた部分を解除する。
これをしないで収納するとくっついてる地面も収納され、空間ができて地面が落ちてしまう。
解除し終わった後は、壁と内側の屋根と建物を収納する。
床を解除したからか、壁と内側の屋根は別物扱いでまとめて収納できなかった。
あまり手間は変わらないけど。
収納した私は馬車に乗り、退屈な時間が始まる。
途中で何度か休憩を挟み、暗くなったところで収納していた壁と屋根と建物を順次出して今日も野宿?をする。
昨日からさんざん収納したり出したりしてるので、騎士たちももう驚かなくなった。
そんなこんなで特に盗賊などに襲われることもなく、出発から2日後の夜に王都につく。
まあ騎士が護衛してる馬車なんて政治目的以外で襲わないか。
夜だったこともあって王都の門は閉まっていたが、隊長さんが門にいた兵士となにやら話をした後、門が開いて私たちは中に入る。
王都に入った私たちは広い道をそのまま進み、王城だと思われる大きな建物に入って行く。
やっと着いた。
大半は寝ていたが、私は今退屈過ぎて死んだような表情をしていることだろう。
さすがにそのまま人に会うわけにもいかないので、馬車から降りて人前に出る前に伸びなどをして気持ちを切り替える。
「お疲れさまでした。 謁見の予定はわかり次第お知らせしますので、本日はメイドの案内でお泊り頂くお部屋にご案内いたします」
隊長さんが私をお城の中まで案内すると、そこからは案内をメイドさんに交代して私を部屋まで案内してくれる。
通された部屋は豪華な天蓋付きベッドと装飾の施された椅子とテーブル。
部屋の装飾も豪華だし落ち着かない。
この部屋は個人用のお風呂とトイレもあるので、お城内を探し回ったりする必要がない。
お城に慣れてない人が泊まりやすい部屋なのかもしれないけど、逆に言えばここから出るなと言われているような気もする。
特にうろつく気分でもないので、お風呂に入って寝てしまう。
翌日はスッキリ起きられた。
部屋は落ち着かないけど、ベッドはふかふかで気持ちよく寝ることができたからだろう。
呼ばれるまで特にやることもないので、椅子に座ってボーっとしている。
「ディアと畑は大丈夫かな・・・・・・私が何日もいなかったらサクラは1人で森に行っちゃわないだろうか・・・・・・」
考え出すといろいろと不安になってくる。
早く帰りたい。
そんなことを考えていたら簡単な朝食が運ばれた。
メイドさんの話では朝食後に謁見が始まるようだ。
「いよいよか。 何を言われるのか・・・・・・人間相手ならメイスはなくていいかな?」
既にもめる前提の思考になってるね。
謁見の間へは騎士が同行していた。
目的の部屋らしい大きな扉には槍を持った騎士が2人立っていたが、私たちに気が付くと中と何やら話した後、扉を開けて通してくれる。
部屋は体育館をさらに奥に伸ばしたような大きな部屋だった。
正面奥の少し高くなった場所には豪華な椅子に座った40台くらいのおじさんが座っていた。
多分この人が王様だね。
通路?の両サイドには、貴族なのか街では見ないような服装の人たちが何人か並んでいて、その周りには多くの騎士たちが槍を持って待機していた。
その中には迎えに来ていた隊長さんもいる。
私は案内の騎士の後についていき、王様と少し距離を開けた辺りに立たされた。
裁判所で被告人が立つ場所にいるみたいだ。
「よく来たな、冒険者ユリアよ」
「こちらの予定も関係なく急に連れてこられただけですけどね」
もめるだろうと思っていたので、最初から少し喧嘩腰になってしまったが、私がそう言うと王様の口元が少し緩んだ気がした。
私が少し首を傾げていると、横から怒声が聞こえてくる。
「キサマ! なんだその口の利き方は!!」
並んでいる貴族の中にいたおじさんの一人が憤慨している。
そちらを見ると、周囲の人たちは驚いた様子もなく、我関せずと言った様子で私を見ていた。
「口の利き方と言われても普通に話してるだけですよ? この国に特別な話し方があったとしても他国育ちの私は知りませんので、気に入らないというなら話は中断して帰ります」
「陛下の前で失礼だとは思わんのか!?」
「失礼というならその陛下が話してるのに横から口出しするのも十分失礼じゃないですか? 王様が怒ってそれに便乗してるならまだしも、今怒ってるのはあなただけですよ? 内心では他の人たちも怒ってるかもしれませんが、話の腰を折ってまで怒ってるのは少なくともあなただけです」
「私はみんなを代表して注意をしているのだ! さっさと謝罪をして跪け!」
私がその貴族にいイラっとしてると
「はあ、話が進まん。 誰かそいつを黙らせてくれ」
ため息とともに王様が騒ぐ男を黙らせるように言う。
そのまま近くにいた騎士に口を抑えられてしまった。
「騒がしくてすまんな。 ユリアの話し方で話してもらってかまわない。 そもそも冒険者だしな。 礼儀作法に文句言っても仕方ないだろう。 それで、本題に入りたいんだがいいか?」
「どうぞ」
「今回の謁見がこの前のチーズという物の件について呼ばれたのは理解していると思う。 私が知りたいのはチーズという物が本当に食べ物なのかどうかという事だ。 報告ではカビに覆われていて腐っている物だと書かれていた。 だが連行に行った騎士たちから聞いた話では、カビは取り除いて中を食べる物だと説明された、と言っていた。 本当に食べ物なのか?」
「ちゃんと報告してくれたみたいですね。 本当に食べ物ですし、すでに私も孤児院の子供たちも私がここに向かう前に食べてます」
チーズを食べた話をすると、王様が眉を顰める。
「チーズを食べたのか? 騎士の話では販売しないように言っておいたらしいが」
「買ってませんよ? 冤罪を庇ったお礼に貰ったんです。 銅貨一枚渡してませんよ」
「フフ、なるほど。 貰ったから買ったものではないという事か」
王様は愉快とばかりに笑っている。
何が面白いのかわからないけど、王様は面白い人だ。
近くにいたおじさんに何やら注意されて、咳払いをした後、また普通に話し始める。
「そうなると現物が見てみたいし、食べているところも見てみたい。 本当に安全なのか・・・・・・おい、チーズの現物は村から持ってきているのか?」
独り言を言った後、私を迎えに来た騎士の隊長さんに聞いている。
「いえ、今回はユリア殿をお迎えに行っただけで村には寄っていませんので・・・・・・申し訳ございません」
王様に聞かれた隊長さんが頭を下げる。
チーズならあるけど?
「チーズなら私が持ってますよ。 誰か食べてみますか?」
「持ってきているのか? そういえば収納持ちと報告にあったな。 よければ是非頼みたい」
村にいた騎士たちに収納見せたっけ?って思ったけど、迎えに来た騎士の人たちには普通に見せてたわ。
まあ収納自体は隠してないからいいけど。
私は土魔法で作った木のテーブルを出してチーズを取り出す。
「これがチーズで、表面の白いところがカビですね。 現物見るまでは何のカビかわかりませんでしたけど、これは白カビを使ったチーズですね。 さすがに細かい種類はわかりませんが。 で、この白いのを取り除くと黄色い中身が出てきますので、ここを食べるんです。 そのまま食べてもいいですが焼くともっとおいしいですよ」
「そうなのか? 調理法を教えてもらえれば城の料理人に作らせるが」
「簡単なので、ここで作っていいなら作りますよ?」
「ここでできるのか? できるなら見てみたいな」
「じゃあ準備しますね。 作るのは・・・・・・前に作ったチーズパンでいいですね。 まずは材料のパンとジャガイモとお肉とさっきのチーズ・・・・・・」
私が材料を出してると王様が反応する。
「ちょ、ちょっとまて。 ジャガイモと言ったか?」
「そういえばこの国の人はジャガイモの食べ方を知らないんでしたね。 ジャガイモは芽の部分と緑色に変色した部分に毒があるので、そこをちゃんと取れば美味しくて栄養価も高い優秀な食材ですよ」
「それは本当か? それが本当なら村での食糧問題が一気に解決するが・・・・・・」
王様の表情が少し変わった気がする。
そんなに食べ物無いの?
「チーズより前から孤児院では食べてますが、今の所何ともありませんよ」
「ほう・・・・・・」
王様は真剣な表情でこちらを見ている。
「調理を始をめますね。 パンを切ってスライスしたチーズをのせて、同じくスライスしたジャガイモとお肉を乗せて焼きます。 火魔法使いますけどいいですか?」
「かまわん」
王様が許可を出すと、騎士が数人私と王様の間に集まる。
隊長さんもそこにいた。
「じゃあ焼いていきますね」
私は前回作った時と同じように加減しながら表面を焼いていく。
だんだんチーズの香ばしいかをりが漂う。
「できましたよ、誰が食べます? ・・・・・・不安なら先に私が食べますね」
誰も何も言わないので私が最初に食べる。
うん、ちゃんと焼けてる。
おいしい。




