124 引っ越し準備
ジャスミンに魔石やら家やらをあげた後、ジャスミンがギルドに行くのを見送った。
「さて、今日は何をしようかな」
家に入った私は、ソファに腰掛けながら今後の事を考える。
私がやろうとしてることはいくつかあるけど
・カーミトの街に家や畑を作る
・ジャスミンが人間社会で馴染めるようにする。
この2つが優先事項だろう。
他にもダンジョンに行くとか他の国に食材探しに行くとかあるけど、まずは身の回りの事から少しずつだ。
昨日の感じだとジャスミンが1人でいても大丈夫だとは思う。
何かあればスズランさんも対応してくれるだろうし。
あとは今日依頼を見て、やってみたいものがあれば相談、かな。
「あれ、ジャスミンは文字読めなかった気がするけど大丈夫かな? うーん、スズランさんが何とかしてくれる、かな?」
これは学校を早く作ってジャスミンにも人間の文字を教えないとかな。
あとはお金のことも教えないとだし。
そうなるとジャスミンの事はとりあえず帰ってからでいいとして、今日はカーミトの街に行こうかな。
「今日はカーミトの街に家とか作ろうと思うんだけど、2人もそれでいい? 他にやる事があればそっちでもいいけど」
「わたしとしては、できるなら優先的にママの家と畑の場所を決めてくれると畑の管理がしやすいの」
「わたしはその畑ができないとやることないし、まずはその予定通りでいいんじゃない?」
なら前にサクラたちと話した場所に私の家を建てちゃおうかな。
あとは畑を作って・・・・・・あ、家を向こうにするならゲート系も再設置しないとかな。
問題は街の下水をどうするかなんだけど・・・・・・
この世界での水の扱いとしては。
お風呂や掃除洗濯などに使う水は比較的安価な水属性の魔石を使った魔道具が各家庭にあり、それを使う。
この水は時間経過で消滅するので下水として流す必要がない。
料理や飲料として使う水は、飲料水の魔道具が高いので、普通の家庭では井戸の水を使っている。
まあこれも使う分だけ汲んで来るだけだし、多少余っても家の周りに撒けばいい。
そしてトイレなんだけど、これは普通の家には無い。
公衆トイレのような物があり、自分で布等を持って行ってそこですることになる。
紙は高価だから基本的には古着などを切った布で、使い捨てなんてしないようだ。
高級宿屋や貴族の家など、ある程度お金を持っている人の家には洗浄の魔道具と一緒にトイレが設置してある。
ちなみにうちの家には洋式便器に洗浄の魔石が設置してある。
ただ、うちには問題があって、誰もトイレを使わないのだ。
精霊達はもちろん、なぜか私もトイレを使わない。
いや、誰か来た時やジャスミンは使ってるかな?
私は最初の内は便秘を疑っていたけど、どうやらこの体は食べた物を完全吸収するのか、トイレに行ったことがない。
この体の腸内環境はどうなっているんだろうか?
っと、話がそれちゃったけど、考えないといけないのは街のトイレ事情。
候補としては3つ。
・1つ目が他の街同様公衆トイレにする。
これが一番楽で、数か所トイレを作るだけでいい。
ある程度溜まったら洗浄魔法で奇麗にするだけでいいし。
ただその、周囲の匂いが、ね・・・・・・
・2つ目が各家に設置する方法。
各家を建てる時、トイレも設置してそれと一緒に最初から洗浄の魔石を設置するだけでいいんだけど、問題は費用がかかる事と窃盗の心配だ。
洗浄の魔石はそれなりに高いし、そんな物を家に設置していたら便器を壊してでも持っていく者がいてもおかしくない。
私が作れば壊されないから持っていかれることはないけど、そうすると毎回トイレを部屋ごと私が作ることになる。
便器だけ私が作ったってそれを持っていかれたら終わりなのだ。
壊せないとしても、そのままでも洗浄の魔石自体は使えるからね。
・3つ目は元の世界のように各家にトイレを設置しつつ下水も作る。
これは、水の魔石だけなら洗浄の魔石より費用が掛からない。
しかし一番面倒で、広い範囲で下水用の水路を掘って行かないといけない。
しかも家を建てた時はその下水に繋がないといけないし、地盤沈下が起きないように通路を全部土魔法で固めないといけない。
あとは流す用の水の魔石と、川に戻す前に奇麗にする洗浄の魔石も少量とはいえ設置しないといけないね。
楽なのは1つ目なんだけど、住むとしたら2か3が理想だよね。
どうにか窃盗を防げたら2で私が魔石を作るのが理想ではある。
問題は私が魔石を作ってるのが広まっちゃうのと、高価な物だと余計に窃盗の被害に遭う可能性が高くなる。
私が全部の家を建てるという手もあるけど、そうすると建築系の人たちの雇用が無くなってしまうんだよね。
あー決まらない・・・・・・
私がなやんでいると、ディアが心配して話しかけてきた。
「ママ、大丈夫?」
「うーん、街のトイレをどうしようか考えてたんだよね。 できれば各家に設置してあげたいんだけど、洗浄の魔石を全部の家に設置するのは盗まれるのが怖いし、下水を作って流すにしても、街全体に下水用の水路を作らないといけないから大変だし」
「水路を作るだけなら土の精霊に任せれば作れるの」
確かに水路を作るなら土の精霊に頼んだ方が早いかもしれないけど、問題はそれだけじゃないんだよね。
「水路を作るならどこに家が建つかの詳細が決まらないと作れないんだよね。 大雑把には作れるけど、家を建てる時にまた水路掘って繋げて水の魔石を設置して、ってやらないといけないし」
「じゃあママが洗浄の魔法で魔石を作るのはダメなの? それを設置すればすべて解決すると思うの」
それが一番楽そうではあるんだけど・・・・・・
「だからそれをやっちゃうと盗まれちゃうんじゃないかなって」
「そこは精霊たちに見張らせればいいの。 人間の兵士たちとは別に精霊たちにも見張りを頼めばいいの」
「また契約するって事?」
「今雇ってる12人の精霊たちより軽めの契約で、大量に契約すればいいの」
「精霊契約にもいろいろ種類があるんだね」
ディアたちの契約と精霊12人たちの契約の2種類だと思ってた。
「大きく分ければ2種類なの。 でもわたしとシアが特別なだけで、普通は契約でどこまで精霊を拘束するかで契約の強度が変わるだけなの」
「そうなんだ。 ちなみに拘束ってどういう感じの事をいうの?」
「拘束は、契約者が精霊に対して行動範囲を指定する事なの。 うちにいる精霊達が自由に移動できるのは家の周りと、わたしとシアとママの近くだけなの。 拘束としては少し強めになってるの。 その代わり報酬として食べ物をあげたり、常時実体化する魔力をあげてるの」
「それって精霊側は納得してるの? 自由に動けなくなってるんでしょ?」
精霊の事は詳しくわからないけど、食べ物と魔力貰っただけで行動範囲を制限されるのは私ならお断りだ。
「精霊側が納得しないとそもそも契約できないの。 うちにいる12人の精霊たちは、それでも契約したいと言って来た精霊たちの中から選んだの。 だから誰も文句は言ってないの。 それどころか毎日おいしい物食べられて満足してるの」
価値観がまったく違うのはまあ仕方ないと思うけど、その話を聞いちゃうとさすがにもっとおいしい物をあげないとかわいそうに思えてくる。
あとはもう少し行動範囲は広げてあげたい。
「ねえ、今いる子たちの行動範囲って今から変えることはできる?」
「それを精霊側が納得すればできるの。 一番強い拘束は契約者のそばから離れなくすることなの。 そうすればいつ戦いになっても対処できるようになるの」
「いや、逆に行動範囲は広げてあげようかなって。 今までの作業さえしてくれれば他の時間は自由に過ごしてもらいたいし」
「今の報酬がかなり気に入ってるみたいだから、行動範囲広がるより今の生活を続けたい精霊が多いと思うの」
「あ、報酬は今まで通りあげるよ? ただ自由な時間は好きに過ごしてもらおうかなって。 たまには外に遊びに行きたいだろうし」
「ママは優しいの。 そんなこととしてもママには何の得もないの。 それでもいいの?」
「うん。 もともと作業をしてもらうために雇っただけだし、その作業以外は自由にしてもらっていいよ。 畑が広くなるなら追加で雇ってもいいし」
今までの経験から私は多分何人雇っても問題ないんだと思う。
なら量を雇って近くの精霊や手の空いてる精霊たちに手伝ってもらえばいい。
「向こうの街に畑を作ったらこっちの畑はどうするの?」
「こっちの畑は無くして向こうだけにするつもり。 じゃないと管理が大変でしょ?」
こっちと向こうの両方を管理する場合ディアが行ったり来たりする必要がある。
ディアもゲートが使えるとはいえ、向こうだけの管理でいいならその方が楽でしょ。
今後向こうの土地だけで足りなくなたらその時考えればいい。
「向こうだけにするならとりあえずは今いる人数で大丈夫なの。 収穫と加工の時だけ手伝ってもらってそれ以外は自由。 で、いいの?」
「うん、私としてはディアの負担を軽減するのと加工をしてくれればいいから、それ以外はディアの判断に任せるよ」
「わかったの。 あとは向こうで契約する精霊の話なの」
「あ、そういえばそっちが本題だったね」
今いる精霊の話ですっかり忘れてた。
「ママの作った魔石が持ち出されなければいいの?」
「そうだね。 魔石を設置するなら街にある家には全部設置したいから、持ち出されるとしたら街の外だと思う。 その対処ができるといいかな」
「それは簡単なの。 ママの魔力を精霊たちに覚えさせて、街からその魔力が出て行ったら確認してもらうの。 それがわたしやシアやママ、あとあの魔族が持ってる魔石以外なら報告してもらうの。 それで街からの持ち出しは防げるの」
「精霊はそんなこともできるんだ」
「できるの。 でもそれだと持ち出されたとき以外まったくやる事が無くなっちゃうの。 だから魔石以外にも街の人間を見張らせるのもありだと思うの」
「え、人間を見張る?」
なんか言い方が穏やかじゃないんだけど。
「人間同士がもめてたり問題が起きたときに報告してもらうことはできるの。 なんなら人間の兵士たちを呼びに行くこともできるの」
「あー、そういう事ね。 それならお願いしちゃおうかな。 あの街のサイズでどれくらいいればいいと思う?」
「人間の揉め事をあまり気にしないで、ママの魔石だけを見張るだけなら数人いればいいの。 街の人間がいるところを中心に見張るなら50以上は欲しいところなの。 できれば100人くらいいるとちゃんと見張れるの」
「完全に見張る必要はないからそんなにたくさんいなくてもいいかな。 あ、精霊の方から来たいって要望があったらもっと多くてもいいけど」
常時見張られてるとか息が詰まっちゃうよね。
兵士のいないところで揉め事があって、そこにたまたま精霊がいた時に報告してくれればいい。
「ちゃんと制限しておかないと何百人でも来ちゃうと思うの」
「うーん、逆に自動契約みたいなことってできたりしない? 街の中に入ってきたら契約、出て行ったら解除みたいな」
「ママが条件を指定してくれれば、わたしかシアが代理契約はできるの。 でも完全自動化はできないの。 そもそも普通は1人か多くても小さい精霊2人くらいしかしか契約しないの」
そういえば感覚がマヒしてたけど、普通は1人や2人なんだよね。
すでに14人もいるからいまいちピンとこないんだけど。
「じゃあ条件を決めちゃうからお願いしてもいい?」
「わかったの」
・条件1つ目は、私が作った魔石が街の外に行った時、私の身内以外だった場合は報告してもらう。
・2つ目は街で揉め事があった場合に兵士やディアたちに報告してもらう。
・それ以外は自由。
「こんな感じでいいかな?」
「いいの。 あ、それなら向こうで報酬用の果物も増やさないとなの」
「あー結構な数増やすならリンゴの木も増やしたほうがいいね。 イチゴやビワはそこまでいらないから、リンゴをドカンと増やそうか」
「わかったの」
「じゃあ向こうの家と畑を作りに行こうか。 こっちの畑は収穫次第土を元に戻すって事で」
今日はまだ何も始めてないので、お手伝い精霊たちも家にいる。
というかテーブルの上でわいわい騒いでいる。
声は聞こえないけど。
なのでこのまま精霊たちとは契約を変更してしまう。
精霊たちも契約変更で喜んではいるんだけど、この子たちはいつも楽しそうにしてるから契約変更に喜んでいるかがわかりにくい。
まあいつも楽しそうならこちらとしても嬉しいし、いいか。
ディアを抱っこし、シアと手をつなぐ。
そのまま12人の精霊たちを連れて屋根裏のゲートへ行き、カーミトの街へ。
さすがに街中を普通に歩くと時間がかかるので、コウスラには少し大きいフェンリルになってもらい、皆で乗って移動することにした。
コウスラに乗り、地図を表示したまま私の家の建築予定地である街の北端まで行くと、私はあたりを見渡す。
街壁の森に一番近い場所は出入り口を作るとして、家からそこまでは通路を確保しておきたい。
そうなるとその通路を挟んで畑や果樹園、水田なんかを作ることになる。
まあその辺りはディアにお願いしよう。
畑に関してはそれでいいとして、家は少し大きくして収穫した物を保管する場所と加工する場所を追加したい。
前はディアが土魔法で作った箱に詰めてあったけど、収納できないまま数日放置になるとダメになってしまう。
夏とかあるかわからないけど、あった場合これからもっと温かくなるかもしれないし。
という事でまずは家を建てる。
居住スペースは特に問題なかったので、今まで住んでいた家を元に全体的に横に広げた感じに新しい家を作る。
寝室とお風呂は特に広くしたかったみたいだし。
と言っても、寝室もお風呂も3人+コウスラなら十分すぎるスペースはあったんだけどね。
家が完成したので、今度は収穫した物をしまう冷蔵倉庫を作る。
私の家の間取りは北東にお風呂、その南隣にトイレ、そして南東側に玄関がある。
南西に二階に上がるかね折れ階段(L字型の階段)があり、北西側に台所がある。
台所と居間が繋がっていて、間の壁はカウンターになっている。
そのカウンターにテーブルを繋げて食事スペースとして使っている。
大体いつも精霊が集まって何か食べてる場所でもある。
そして中央辺りの残りの広いスペースが居間として使っている場所だ。
簡易ソファや低いテーブルが置いてある。
今回は家の北側、お風呂と台所の間に冷蔵倉庫へ行くための扉を作ることにした。
まずは扉の先にそこまで大きくない部屋を作る。
あくまでも私が収納するまで保管する場所だからね。
この部屋は気温をあげるわけにはいかないので「瞑想」付きの「氷属性」の魔石を作って壁に埋め、冷蔵倉庫にする。
そして最後にこの冷蔵倉庫の隣にもう1つ部屋を作って、精霊たちの加工部屋として使ってもらう。
必要そうな樽や木箱や枡、テーブルなどをいくつか置いておく。
あとは冷蔵倉庫と加工部屋の両方とも畑側に扉を付ければ、畑で収穫してそのまま持ってこれる。




