表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして僕らは…  作者: マジコ
6/33

そして僕らは… その6

その日はフレイとやらはあっさり帰って行った。明日、また来ると言い残して。アークは困り果てていた。このままではアルフィーの策略に流される。何だかアルフィーの思惑通りに動くのは癪である。しかし、この流れのままで行くとアークはアルフィーの計画に加担させられるだろう。抵抗は無駄なのかなと思う自分がいた。

椅子に座り溜め息をすると気分が幾分か落ち着いた。フレイは必ず明日来る。何故ならアルフィーの指示だからだ。アルフィーは有言実行の女である。小さい時も子供は参加禁止の夜の祭りにこっそり見に行こうとした時はアークとドニーが反対しても強引に行ったことがある。その時は結局見つかり大目玉を喰らった。今になればそれも思い出だが、それをまたやろうとは思わない。

コップに水を入れて飲む。椅子の背にもたれながらアークは昔を思い出していた。どうしたものかと考えた。協力するかどうかではなく如何にトラブルにせずに断るかであった。時期女王と関係があるとなれば今まで通りに安定した人間関係を築くことは出来ないだろう。研究室の人にも下手すると変な気の使われ方をされるかもしれない。特別扱いというのは一面的には良いかもしれないが、高度なことを要求されることもある。静にしているのにああだこうだ言われることもある。平穏無事に生きたいアークにはそんなリスキーなことはしたくないという思いがあった。だが、心のどこかでふと、にやけている自分もいた。がぶりを振りその気持ちを押さえ込む。もう、あの頃とは違うんだとアークは自分に必死で言い聞かせる。今は立場がある。特にアルフィーはお姫様だ。父親でもある王の意向を無視して城から脱走し、王国がなかったことにしたいアルフィーの母親が住んでいたところに行くなど許されるはずがない。もしばれたらアーク程度の庶民なら死罪や幽閉されることも考えられる。折角、研究員に向けて良いスタートを切り、順調に進んでいる今を棄てるのは忍びないと思う。それもまたアークの本心であった。

何にせよ如何にして断るかがアークにとっての喫緊の課題であった。折角、明日は講義がなくてのんびり研究室で論文を読もうと考えていたのに天国から地獄へまっ逆さまである。研究室で過ごすことにしていたアークはふと、一つの案を思い付いた。それは大学の研究室に避難することであった。あそこなら場所を特定されることはないだろうと思ったが、すぐにその案は危険だとアークは判断した。何故ならあのアルフィーのことである。調査してあのフレイとかいうのを派遣してくるだろう。そして、大学に怪しまれる。そうなればことなかれ主義で生きているアークにとっては致命的である。怪しいということで目立ち変な目で見られる。アークにとっては最悪である。そのように陥らないようにするにはどうすれば良いか。深夜まで考え込んでいった。

気づくと次の日の朝となっていた。寝落ちしていたようだ。またあいつが来る。取り合えず朝食を食べていると誰かがドアを叩いてきた。もう誰が来たかは分かるアークは溜め息をしながらドアを開けた。そこにはやはりフレイがいた。早朝の町にはいつもの町人の喧騒の中で大人しめの町人の服装をしていた。近所の奥様方が家事をしている。フレイのことを見られるとどんな噂話を流されるか不安になったアークは取り合えずフレイを家の中に入れた。そして、アークは言った。


「もう、来ないでくれよ。」

「アルフィー様の願いを叶えてください。」

「俺には無理だ。」

「いえ、アルフィー様がアーク様ならやってくれると仰っていたんです。今、アーク様の力が必要なのです。親友だったのでしょう?」

「それは言うな。」

「す、すみません。」


咄嗟にアークはきつく言ってしまった。女の子相手に男らしくない。アルフィーとの関係は否定したいというほどでもないが、あまり強調されるのは嫌だった。だからついついフレイの言葉に強く反応してしまった。


「俺は協力する気はないからな。」

「そうですか。」

「分かってくれたか?」

「明日、また来ます。」


アークはやはりなと思っていた。アルフィーが送り込んで来た人間がこんなので引き下がるわけがない。こりゃ長期戦になるなとアークは予感した。というよりも確信した。


「いくら来ても了承はしないぞ。」

「アルフィー様の願いを叶えるためなら無理にでも協力してもらいます。」

「そうかい。まぁ、頑張れ。」

「はい。」


フレイは挨拶をして部屋からまた出て行った。

フレイが去った後、アークはちょっと気晴らしに市場の方に行こうと考えた。外出の仕度をして、アパートから出た。アークが階段を降りてアパートの玄関口から出た時であった。近所の奥様方がフレイと思われる人について噂をしていた。これは非常に不味いとアークは思った。外からはアパートの中は分からないから今のところはアークの部屋にやって来るとは知らないようだ。しかし、アパート内の人に見られたら変な噂をされるかもしれない。あまりトラブルを起こしたくないアークには困ったことであった。どうしたものかと考えながらアークは市場へと向かった。

市場を彷徨いている時もフレイやアルフィーのことが頭から離れなかった。結局、大した息抜きにもならず家に帰った。市場の元気一杯の喧騒も遠くに感じていた。

アークは戻った部屋で水を一気飲みををし、溜め息した。もう、協力した方がしつこく付きまとわれるよりはましかもしれない。そうアークは思い始めた。いや、アークは分かっていた。理由をつけて拒否したいと思うのと同時に助けてやりたいという気持ちもあるのだ。しばらく黙考した後、もう一杯水を飲み意を決した。


「やるか。」


そうと決めたらアークは立ち上がった。フレイは明日、また来ると言っていた。今すぐ行動を起こしたいと思ったが、王室のことは分からない。ここは明日フレイが来たら色々と聞こうとアークは思った。アルフィーは母親の住んでいたところに行きたいと言っていたらしい。そこがどこか分かっているのか知らないのかそういったことも話し合わなければとその日は色々と思いを巡らしていた。

明朝、フレイと約束した場所へと向かった。


アルフィーの朝は早い。既に起床している侍女たちに着替えを手伝ってもらい、朝の仕度をする。アルフィーは現在王位継承順位一位であるが、それにしては部屋の中は質素であった。あまり物を置くのは趣味ではなかった。。さっぱりしている方が落ち着く。王位継承順位が一位でもあるので贈り物はよくもらっている。だが、物を部屋に置くのをあまり好きではないアルフィーは貰ったものは大抵物置部屋行きとなる。朝食を食べ終えるとアルフィーは教育係による女王になるための勉強が始まる。勉強は神学、魔法学、国文学、理科学の四つが主な科目である。小さい頃は勉強はほとんどしたことがなく、王位継承順位が一位となり、王都へと連れてこられた最初の頃は嫌だったが、今では楽しんでいたりする。しかし、彼女には今でも心残りがあった。それは母親のことを知ることであった。

母親との記憶はほとんどない。どんな人でどんな顔かなど知らないことばかり。そのあまりにもの知らなさに泣きたくなることもある。母親のことは屋敷に仕える人が噂をしているのを聞き耳を立てて聞くことぐらいしか情報は得られなかった。昔住んでいた町や王都の屋敷の使用人の中には母親を悪く言う人もいた。こどもの自分には反論しようにも材料がなく、ただ言われるがままであった。記憶にあると言えば、優しくあやしてくれたあの声だけであった。それもあやふやであった。人生において母親がこどもに果たす役割は大きいだろう。母親がいなかったアルフィーも例外ではない。ただ、幻のような存在なのである。アルフィーにとっての母親というのは。

教育係が来るまでまだ時間があったので、少し読書をすることにした。魔法と剣の冒険小説を読むことにした。その本は分厚く、全三巻の大作であった。アルフィーはこのような本が好きだった。自分とはまったく関り合いのない世界に興奮を覚える。地方に住んでいた時は毎日遊びに出掛けていた。それがアルフィーにとっての冒険であった。近所の森に行ったり、他のグループといがみ合ったりなど、毎日が楽しかった。しかし、王位を継承することになり、ここ王都に来てからは退屈であった。いや、確かに始めは窮屈な王室のしきたりに四苦八苦していやでいやで堪らなかったが、今ではそれなりに楽しく過ごしている。変身魔法を使って城から抜け出したりなど。アルフィーが抜け出す度に小さい頃からの侍女のフレイと王都に来てからアルフィーの世話係の執事になったガリクソンが王に謝っている。フレイは王に怒られると泣きながらもうやめてくれと言ってくる。フレイが可哀想に思えるアルフィーはしばらくは言われると自粛する。しかし、しばらくするとまた脱走や問題を起こす。懲りてくれない主人にフレイは溜め息をする以外に出来ることはなかった。一方、ガリクソンは軽く注意して済ましてくれる。アルフィーは分かっていた。ガリクソンは王室の都合で地方に捨て置かれていたのに身勝手にも王室の都合で今度は王の手元に置くという王室に振り回される一人の少女に同情しているのだ。アルフィーはそういうガリクソンが好きだった。ガリクソンは決してアルフィーのことを馬鹿にしているわけでも下に見ているわけでもない。身分の差はあれアルフィーのことを一人の淑女として大切に思っている。それが分かるから他の媚びを売る連中とは違うとガリクソンを信頼しているのだ。フレイとガリクソン。アルフィーにとって王宮にいて信用が置けるのはこの二人しかいない。朝の束の間ののんびりとした時間を過ごしていると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。


「誰か?」

「ガリクソンです。」


このダンディーで講談も出来そうな渋い声はガリクソンで間違いない。


「入れ。」

「失礼します。」


ガリクソンは静に入ってくると臣下の礼を行なった。彼がこの時間に来るとは面倒なことが起きたかとアルフィーは思った。その予想は当たっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ