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クラス転移

新ジャンルなので面白いかわかりません。

一話なのでメチャメチャ長く書きました。

楽しんでいただけると幸いです!

はぁ……

朝、俺、八雲 架糸(やくも かいと)の教室の1番左後ろ席、窓側だ。

俺はいつもの様に机に片肘をついて外を眺めている。

人生はつまらなさすぎる。


ダンジョンの様な探究心をくすぐられるものはない。


モンスターの様に戦闘を思う存分できない。


ラノベの様にチョロインはいない。


俺がこんな考えに至ったのも数年前から、読み始めたラノベの所為である。


「よぉ〜、八雲ぉ〜どうした? 眠そうじゃねぇか……あっ! 徹夜でオナッてたのか? まっ、そんなことしても本番は訪れねぇよ〜、ガッハッハー!」


コイツは何かと俺に絡んでくるジャイアン体型の剛力君だ。

べつに憎たらしくて剛力と呼んでいるのではなく、単純に本名なのだ。


「えー! 八雲、徹夜でシコってたの? キモすぎなんですけど」


「ウケるー」


いつもの様に朝はこうやってからかわれる。

それも、俺がオタクなのだからなのだ。

それもこれも、この高校の入学式の日、クラスでの自己紹介で、俺は盛大にやらかしてしまったことが原因である。

俺は、気でも迷ったのか、盛大にオタク宣言をしてしまった。

その瞬間、クラスでは大爆笑が起こったのを俺は未だに忘れることができていない。


「ダメだろ君たち、そんなことを言っちゃ!」


クラスのリーダー的存在、剣崎 光だ。

成績優秀、スポーツ万能、さらに人望も厚く、名前なんて正にザ・主人公って感じだ。

彼のこの言葉は、救いに感じるだろう。

しかし、次の瞬間、彼の真面目な顔から哀れむ様な笑みに変わる。


「彼はきっと、エロゲか何かの発売日について、絶賛脳内会議中だっただろうからね」


上げて落とす、これはもう慣れた、最初の頃こそ、心に深刻なダメージが与えられたが、毎日繰り返していると、いつものパターンだな……と思う程度になった。


「ガッハッハ、違いねぇ!」


クラスでは大きな笑い声や、バカにする様な嘲笑が響きわたっている。

しかし、これも慣れた。

俺が最も恐れるのは心だけではなく、身をも滅ぼすのだから……

教室のドアがガラガラっと小気味いい音を立てて開く。

ああ……来た……


「みんなおはよう!」


彼女は、甘川 凛花。

うちの高校で、ミスコン優勝確実と謳われている。

要するに学校のアイドル的な存在なのだ。

べつに彼女に裏の顔があるというわけではない。

むしろ、この学校では数少ない、俺に普通に接してくれる人の一人だ。

ではなぜ、この子が俺の恐怖なのかというと……


甘川さんが俺を見つけるなり、クラスメイトが彼女に挨拶をしているのにもかかわらず俺に手を振ってくる。

さらに俺に近寄って来て、ニッコリと微笑む。


「おはよう、八雲君」


クラスの空気が変わる。

俺を睨みつけたり、舌打ちをしている男子もいる。

この瞬間、俺の昼休みのリンチのフルコースは望んでもいないのに注文された。


「お、おはよう甘川さん」


朝の最初の個人挨拶が俺だということだけでも大事件なのに、彼女は頰を赤らめてこんな爆弾発言をする。


「あ、あのね……私、お弁当作って来たんだけど……食べてくれない?」


そう、友達の少ない俺に同情でもしているのか、やたらとフレンドリーに接してくる。

しかし、その神々しいご好意の所為で、たった今、リンチが放課後にもうワンセット追加注文された。

ここはクラスの男達を刺激しない様に無難に返事をしたいところだ。


「あ、ありがとう、でも、今日は自分のを食べるよ」


そう言って俺は最近のマイブーム、カロリー○イトをバッグから取り出す。


「ダメだよそんなものばっかじゃ! 絶対に食べてもらうからね!」


甘川は優しいが、やたらと頑固だ。

俺の撃退作戦はまんまと失敗に終わった。


生物の時間、俺の最も苦手な科目だ。

この生駒 美琴先生は俺たちの担任だ。

コイツは実験の初めに、俺を使う。

しかも達の悪いことに、直接被害を煽るのではなく、心やプライドを傷つける様なことばかりしてくるのだ。


「じゃあ、八雲君、ここに立ってね。 ウフフ……」



ああ……散々な目に合った。

俺は顔を洗い、タオルで拭いている。

隣では、甘川さんが心配そうに見ている。


「ごめんね、止められなくて。 あの先生、酷いよね」


「気にしないで、ありがとう。 お陰で助かったよ」


俺は生物の時間、蜘蛛を顔に垂らされた。

蜘蛛は俺の顔で巣を作ろうとしていた。

それを止めようとしたのは甘川さんだけで、他はただニヤニヤとしていた。

俺たちは教室に戻り。

今は昼休みなので、すごく憂鬱な気分だ。

きっと俺は今から、甘川さんに食事に誘われた腹いせとして、ボコられるだろう……

俺が先に着くと、甘川さんが俺から見て正面に移動する。

手には大きな弁当。

二つないということはこれを二人で食べるということ。

ヤバイ、憎悪の視線だけで殺されてしまいそうだ。


「ねぇ、甘川さん」


「ん? どうしたの?」


彼女は俺の方は見ずに弁当の風呂敷を解いている。


「ありがとう、もういいよ。 俺みたいなやつと関わってると甘川さんまで嫌な目にあうよ」


それはないだろう。

それほどまでに甘川さんは人気だ。

現に俺に関わっているのも同情なのだろうと皆も思っていると思う。

でも、俺はもう限界だ。

甘川さんも俺から断ったらもう、話しかけないと思う。

瞬間、甘川さんが凄い勢いで立ち上がる。

その反動で椅子も思いっきり倒れた。


「嫌だよ! なんでそんなこと言うの?!」


クラスがざわざわと騒ぎ出す。


「だって、甘川さん、俺といると辛いでしょ?」


「辛くなんてないよ! だって私は! あなたのことが……!」


甘川さんが何かを言おうとした瞬間、足元から光が上がる。

下を見ると、光るラインが引かれている。

ラノベに出てくる魔法陣に似ている。

まるでラノベに出てくる転生のような……


「みんな! 早く教室から出るんだ!」


剣崎が叫ぶ。

しかしもう遅くあたりは真っ白になった。

俺は何もできずにただ硬直していた。



それから10秒ほどたつと視界が回復してくる。

視界がハッキリすると、あたりはただ、真っ白、大理石のような石で覆い尽くされただだっ広い空間だった。

俺たちは混乱してあたりを見渡したら、友達とくっつき、寄り添いあったり、怒鳴ったりと騒いでいる。


「甘川さん、大丈夫?!」


俺はそう言って尻込みしている甘川さんに手を貸す。


「あ、ありがとう……っていうかここどこ?!」


「俺にも分からない、どうするべきか……」


俺が考えていると一つの声が上がった。


「みんな、落ち着こう!」


「そうね、ここはとりあえず集まりましょう」


先に冷静さを取り戻したのはやはり剣崎と生駒先生だ、剣崎はここでも率先して皆をまとめあげている。

クラスのみんなも、落ち着き、剣崎と生駒先生の元に集まる。

俺と甘川さんもそれに便乗する。

剣崎が何かを考えているときだった。


「皆さん、こんにちは」


俺たちは一斉に振り向く。

そこにはこの世のものとは思えない絶世の緑の髪の美女が立っていた。

一体どこから来たんだ?

この部屋にはドアなんて一つもなかったぞ。


「遅れてすみません、私は女神ケミル。 突然ですが、あなたたちは異世界召喚されることになりました。」


クラスの皆がざわつき始める。

突然そんなことを言われて信じろという方が無理だ。

しかし、俺は違った。

異世界召喚、夢にまで見た王道ものだ。

ここで主人公は圧倒的な力を与えられて、数人の美少女とともにチーレムするというテンプレ。

ここで興奮せずいられる方が不思議なくらいだ。

しかし、俺に発言出来るような立場にはおらず、場の流れに任せようと思う。


「おい、ふざけんなよ! 早く帰せよ!」


剛力が叫ぶ。


「生憎ですが現状それはできません。 これは神のご意向です。 貴方達はこれから異世界に行って魔族と戦ってもらいます」


「おい、どうでもいいからとっとと……ムグ!」


突然何かに遮られたかのように剛力は口を閉ざした。


「ちょっとうるさいです。 黙ってて貰えますか?」


皆が息を飲む。

たった今、剛力に起こったのは間違いなく、人の力ではないことだからだ。

そこで剣崎が手を上がる。


「あの、戦うって言っても僕たちは戦ったことがありません。行ったって無駄死にするのがオチですよ」


正論だ、しかし、俺は知っている。

ここからは魔力検査や、潜在能力を計り、異世界の人たちと桁違いの能力を持っているのが判明する。

これもテンプレだ。

そんなことを考えていると、女神が再び語り出した。


「ご安心を、貴方達は地球という世界の中で、最も優れた能力を持った集団です。 これから、貴方達のステータスを計ります。」


女神が後ろに手をかざすと、台座に乗った水晶が一瞬で現れる。


「今からこれに手を当ててください。 すると貴方達のステータスが浮かび上がるようになっています」


ほらな!

きたきた!

これで俺の能力は規格外でチーレムだ!


「よし、みんな! 出席番号の順番に並ぶんだ!」


出席番号の順番になれば俺は最後から2番目なので最後尾から2番目に並ぶ。

俺は待ち時間、どんな能力なのか、詠唱はどうしようかとか無限に妄想を繰り広げていた。

俺の頭の中では一瞬でヒロインたち魔王を倒すとこまでを想像できた。

最初は教師である生駒先生からだ

生駒先生は水晶に手を当てる。


「おお、これはすごいですね。 いきなりBランクの能力がきました」


「この〈生物操作〉ってのがそうなの?」


「はい。 能力のランクはAからEまであります。 Aに近ければ近いほど強く、強くEに近ければ近いほど弱いです」


クラスの中で「おお!」と驚きと尊敬の声が上がる。

生物に関係するあたりやはり先生らしい。


「それじゃあ、次は私の番だね」


甘川さんはアから始まるので1番だ。

甘川さんが水晶に手を当てると水晶の真ん中から赤い閃光が灯った。

バリッ

という音がしてヒビが入り、ヒビの隙間から炎が溢れ出す。

先ほどまで無表情だった女神が人が変わったかのように喜び出す。


「うわ! すごいです! Sランクですよ! 魔力が炎になって溢れ出ています! 〈焔魔法〉ですね。 〈火魔法〉の最上級版ですね」


「Sランクって何ですか?」


「SランクはAランクのさらに上の最強ランクです!」


「えっ! ほんとですか? やったー!」


甘川さんが俺の方に振り向いてサムズアップしてくる。

すげえ! 俺もあんな感じにほてはやされたいな。

その後も、水晶に生徒が手をかざし、Bランク、Cランクばかり出ていてDとEはまだ出ていない。

次は剣崎の番、剣崎が手をかざすと、またヒビが入り、今度は真っ白な光が溢れ出す。


「おお! これは伝説の勇者と同じ〈聖魔法〉ではありませんか!これも〈光魔法〉の最上級版です!もちろんSランクですよ。」


「は、はあ……」


やっぱりこんなところでもあいつは勇者なのか……


「へへっ、次は俺の番だぜ」


剛力の番だ。

例のごとく水晶に手を触れる。

するとパキッという音を立てて水晶が割れた。


「おっ! やっぱり俺様はSランクか!」


「いえ、これはAランクの〈強戦〉ですね。 ただ力が馬鹿みたいに強いっていう能力です。でもすごいですよ。 Aランクなんてあっちの世界では1000人に一人くらいですから。 というか戦闘系の能力なんてものがまず珍しいのです。」


「ま、いっか。 それより八雲……」


並んでいる俺にニヤニヤとした剛力が近づいてくる。

突然腹部に衝撃が走る。


「ガハッ」


気づくと俺は宙を舞っていた。

なにもできずに地に落ちる。

死ぬほど腹が痛い。

後頭部でも打ったのか頭もガンガンする。


「なにやってるのよ!」


甘川さんが大きな声で止める。


「ガッハッハ! 見ろよこの力、手加減したのに人一人すっ飛んだぞ!」


「やめて!」


甘川さんが火の玉を打ち出す。

それを剛力はギリギリ避ける。

さらに甘川さんは火球打ち出す。

剛力は避けれず着弾し、吹っ飛ぶ。


「いってぇー、おい、ふざけんな……くっ!」


「うぐっ!」


突然争っている二人の動きが鈍くなった。


「やめなさい」


どうやら止めているのは女神様のようだ。

すぐに二人は立っているのもままならなくなり、膝をつく。

十秒ほどして、ふっと、今まで押さえつけられたかのように膝をつっぷしていた二人の表情が柔らかくなった。


「貴方達はランクが高い。 だから今ここで止めるだけにしました。 次したらSランクやAランクでもすぐに死の回廊に落とします。」


「し、死の回廊ってなんですか?」


辛そうな甘川さんが尋ねる。


「死の回廊は文字どうり、この場で必要ない、もしくは害となりうる人を、あちらの世界の洞窟の最下層に落とします。ちなみに生きて地上に生きて帰った人はいません。」


「ちっ、わかったよ」


女神は俺に近づき、手をかざすと、緑色の霧のようなものが漂ってきた。

まもなく、体から、邪魔者が取り除かれるような、軽くなるような感覚になる。

気づくと腹の痛みや、落ちた時の擦り傷は治っていた。


「ありがとうございます。」


「いえ、気にしないでください」


女神は微笑み、再び水晶のある場所へと帰った。


「大丈夫?」


「うん、ありがとう甘川さん、守ってくれて。 甘川さんこそ大丈夫?」


「うん、平気だよ」


俺はまた甘川さんに助けられてしまった。

悔しい。

早く俺も能力を発現させて甘川さんを守れるくらい強くなってやる。


「次はあなたの番ですよ」


「はい」


そう言って俺は水晶に手をかざした。


おもしろいと思ったり、続きが気になったらポイント評価、ブクマ、感想、お願いします!

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