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クソ女神


「はい」


俺は水晶に手をかざす。

すると今までにないほどの輝きを放ったかと思えば、まるで何かに抑えられたかのように静まる。


「あの? これなんですか?」


決まっている。

ここまでの輝きは最強の証だのなんだなと敬われるはずだ。

俺が水晶から手を話そうとすると、ツンっと何かが引っ張られて張ったような感触が伝わってきた。

すぐにプツンッと何かが切れた音がする。

見ると俺の人差し指の先に小さな紫色の魔法陣のようなものが広がっており、そこから銀色の糸のようなものが垂れていた。


「チッ」


今、舌打ちのような音が聞こえた。

音の聞こえた方に振り向くと、そこには女神が悲しそうな顔をしていた。

今の、まさか女神様じゃないよな?


「残念ですが、あなたはFランクです」


「Fランク?」


「はい、FランクはEランクより下、100万人に一人くらいの確率でなります。 能力の種類自体は強くても、使いものにならないほど弱体化しており、持ち主の精神も弱いことが多いです。 その意図も簡単に切れてしまったあなたの糸が何よりの証拠です」


「は?」


「つまり、雑魚です。 あなたには死の回廊は行ってもらいます」


女神の目は俺を回復させた時のような慈愛に満ちた目ではなく、まるで汚物でも見るような目になっていた。

いやだ、異世界転移はチートで始まるんじゃなかったのかよ!


「そんな……で、でも! なにか、できることがあるかもしれません! 少しだけでも練習させてください!」


「無理です。 あなたにはすぐに死の回廊に行ってもらいます」


嘘だ、こんなのおかしい!

俺は胸にポッカリと穴が開いたような喪失感に見舞われ、膝を地に着けた。

そんな時、思いもよらない相手が声を上げた。


「待って下さい! それなら私も行きます!」


甘川さんだ。

甘川さんはいつも自分を犠牲にして他人を尊重する。

こんな命がかかっている時も。

ここまで甘川さんには甘えてられない。


「……いえ、行くなら俺一人で行きます。」


「そうですねぇ〜、思ったより、高ランクが多かったので、Bランク半分とCランク全員を死の回廊に送ろうと思っていたのですが、Sランク一人いれば十分ですね」


クラスの全員が息を飲む、優しいと思っていた女神がまさか今まで少ない時間だが、共に過ごした仲間を〈死〉がつくほどのダンジョンに送り込まれようとしていたのだから。

それと同時に安堵の気持ちもあった。

自分たちの代わりに進んで生贄になってくれるものが現れれたからだ。

しかし、いいことばかりではない。

この瞬間、クラスの中で上下関係が確立してしまったのだから……


「おい! なんで甘川がいかなきゃなんねぇんだよ! お前ら雑魚どもが行けよ!」


…………。


皆が静まり返ったのも、無理はない。

いきなり声を荒げて叫んだのは、クラスでは正に空気、架糸ほどではないが、あまりいい印象はもたれず、全くの無口だった、影井 晶魔(かげい しょうま)だからだ。



「おい、影井、お前どうしたんだよ?」


クラスの誰かが問う。


「うるせぇ! 雑魚は黙ってろ!」


「は? 俺はAランクだぞ、雑魚はお前じゃねぇのか?」


「俺様はSランクだ。 お前らなんかとはわけが違う」


「なっ?!」


影井は手の平から炎を灯している。

ただし、色はどこまでも深い漆黒だ。


「くっ……!」


炎を見るだけで気分が悪くなる。

心の底から恐怖心が引きずり下ろされる気分だ。

怖い、ただ、灯っているだけなのに……


「なぁ、わかっただろ? SランクとAランクじゃ次元が違うんだよ」


生徒は黙ってしまった。


「はい、そこまでにしましょうね、あなたも落ちたいんですか? 死の回廊へ」


「ちっ、わかったよ」


流石に影井も女神には敵わないと思ったのか諦めてしまった。


「待って下さい! 死の回廊に落ちるのは俺だけでいいじゃないですか!」


「いえ、毎回、転移者はFランクと雑魚、数人を送らなければならないんです。 今回は雑魚の代わりにSランクが一人志願してくれたので雑魚の代わりに彼女を送るということになりました」


「そんな…」


俺は絶望する。

多分、甘川さんが一緒に来ても、弱い俺を守ろうとして盾になるだろう…

クソッ

どうすりゃいいんだよ!

死ぬに決まってる!


「では、最後に言い残すことはありますか?」


俺と甘川さんの足元に黄色い魔法陣が現れる。

まるで処刑前の囚人のような扱い。

このクソ女神が憎たらしくて仕方がない。

殺したい、どうすればいい?

強くなればいい。

強くなるには?

修行すればいい、バトルものの定番じゃないか。

じゃあ、お前がすることは?

死の回廊を攻略する。

なら、言うことは一つだろう?


俺は満面の笑みで最後の言葉を残した。


「あなたをぶっ殺しに戻ってきます。 絶対に」


瞬間、視界が暗転した。

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