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借金1億のおっさん騎士  作者: 犬斗


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第5話 価格変動の原因2

 俺は案件で日当を稼ぎながら、ダリルからの報告を待った。

 その間も小麦の価格上昇は止まらない。

 そろそろレストランの在庫がなくなると、フローシェが心配していた。


 そして一週間後、美人秘書から連絡が来た。

 俺は待ち合わせ場所をフロシェオンに指定。

 ランチ営業が終わる時間帯に待ち合わせした。


「よう、美人秘書」

「ルキウス様。いい加減、名前を覚えてください。カミラです」

「細けーな。分かったよ。カミラ」


 4人がけのテーブルに対面で座る。

 フローシェがコーヒーを出してくれた。


 カミラは砂糖をスプーンで3杯も入れている。

 しかも全ての砂糖を同じ量にするほどの几帳面さを見せていた。


「あら、美味しい」


 コーヒーを堪能したカミラが、バッグから書類を取り出す。


「ルキウス様。調査結果です。結論から申しますと、小麦の価格はコントロールされていました」

「なんだと?」

「いくつかの卸業者が結託しております」

「カルテルか?」

「はい。大地震で一時的に上昇した小麦の価格を落とさないように、カルテルを組んでいました」

「どこだ?」

「ニコロ商会、モレノ商会、ガレード商会です」

「3社か。役所は何してんだ?」

「ガレード商会の子息は議員です」

「なるほどね。汚ねーな。マフィア以下じゃねーか」

「と言いますか、このカルテルを主導するニコロ商会は、マフィアの下部組織です」

「な、なんだと! マジかよ!」

「はい。あまり知られていませんが、事実です」

「なんだ、じゃあ話は簡単だな。ニコロ商会を潰してくる」

「そう簡単ではないのですよ。『見えざる手』」

「あ? どういうことだ?」

「下部組織とお伝えしました」

「つまり上がいるのか。どこだ?」

「ヴィラッヅォです」

「んだと!」


 ヴィラッヅォは国内最大のマフィアだ。

 麻薬、殺人は当たり前で、王立騎士団すら恐れない。

 行政にも多大な影響力を持つという。

 これまで何人もの騎士が殺され、敵対する議員は頻繁に暗殺されていた。

 かといって、手を出すと恐ろしいほどの報復が待っていることで有名だ。


「ヴィラッヅォかよ。面倒だな」

「そうです。さすがにおいそれと手は出せません」


 俺はコーヒーを飲み干した。


「ちげーよ」

「違う? ど、どういう意味ですか?」

「放置すると面倒だっていう意味だ。店が潰れちまうから、やっちまうわ」


 カミラの動きが止まった。

 目を見開いて俺を見つめている。


「ちょ、ちょっと待ってください! ヴィラッヅォに手を出すと、恐ろしい報復が待っています!」

「そんなことはどうでもいいんだよ。俺は俺の店を守る」

「お、怒ってますか?」


 タダ飯が食えなくなること以外にも、俺はこの店が気に入っていた。

 それに、フローシェは一度マフィアに人生を狂わされている。

 本当に努力をして、若いながらも一流のシェフになり、夢である自分の店を持った。

 それなのに、またしてもマフィアに夢を潰されてしまう。


「あたりめーだろ。俺も一応騎士だ」


 俺は書類を手に取り、席を立った。


「待ってください! ではせめて私も!」

「ダメだ。報復でお前ら弱小マフィアなんて簡単に潰れるからな」

「しかし!」

「俺一人なら平気だ。俺がマフィアごときクソどもに、やられるわけがない」


 俺はキッチンにいるフローシェに視線を向けた。

 俺たちの話を聞かないように、気を使っていたのだろう。

 だが、ただならぬ雰囲気は感じ取っているはずだ。


「フローシェ」

「は、はい」

「小麦の価格は落ちるぞ。今はまだ買うな」

「え? あの……」

「それと、新メニュー考えておけ。小麦を使った料理だ」

「は、はい!」


 俺は可能な限り殺気を抑えながら、そのまま店を出た。


 ***


 カルテルはニコロ商会、モレノ商会、ガレード商会の3社だ。


「ヴィラッヅォの下部組織たるニコロ商会が主導で、議員を擁するガレード商会が防波堤ってとこか。モレノ商会は巻き込まれたか、もしくは甘い汁を吸ったか。まあどっちでもいいがな」


 それぞれの組織を個別に潰していくより、トップを潰したほうが早い。

 俺は資料を見ながら、ニコロ商会のオフィスへ向かった。

 街の一等地だ。

 よほど儲けているのだろう。


 人の出入りは多く、中に入ることは簡単だった。

 1階は広いロビーで、打ち合わせや商談などが行われている。

 俺は受付に向かう。


「代表を呼んでくれないか?」

「え? あ、あの、アポイントメントは取られていますか?」

「そんなものはない」

「え? そ、それでしたら、またアポイントメントを取ってから、いらしてください」


 受付嬢が困惑の表情を浮かべると、二人の警備員が俺を取り囲んだ。


「何をしている」

「代表に会わせろ。話があんだよ」

「はあ? 何言ってんだ。無理に決まってるだろ。帰れ」

「おいおい、マフィアのくせに大企業ぶってんじゃねーぞ」

「マフィア? 何を言ってる! 出ていけ!」


 受付嬢も警備員も、この商会の実態を知らないのだろう。


「お客様、風説の流布は困ります」


 ロビーの奥から、スーツを着た男が姿を見せた。


「風説? 事実だろうが」

「お話はこちらでお伺いします」


 俺はスーツの男に別室へ連れて行かれた。

 部屋に到着すると、スーツの男の態度が急変。


「てめえ、どこのもんだ? あ?」

「もう正体を出すのか? 小物くせーな」

「こいつ、いい度胸だな」


 部屋に押し込まれると、男たちが机に向かっていた。

 金を数えたり、武器を磨いたり、まともに仕事をしているとは思えない。


「お前ら、こいつの素性を調べろ。殺さない程度にな」


 スーツの男はそう言いながら、部屋の奥の少し豪華な机に向かった。

 ここのリーダーなのだろう。


 部屋にいた10人の男たちが、俺を取り囲む。


「仕事もしないで暇なんだな」

「てめえ、殺すぞ?」

「殺すなって言われたばかりだろ? アホなのか? これだからクソマフィアは……。はあ」

「てめえ!」


 俺がデカい溜め息をつくと、男たちが殴りかかってきた。


見えざる手インヴィジブル・ハンド


 5人の男の顔面から血が吹き出し、鼻が潰れ、折れた歯が宙に飛ぶ。

 他の男たちが怯む中、俺はそのまま部屋の奥へ進む。


「なっ!」


 スーツの男は明らかに動揺している。


「話の分かる奴を連れてこい。ここがヴィラッヅォの下部組織って知ってんだよ」

「て、てめえ、その名を出したら死ぬしかねえぞ!」


 スーツの男が立ち上がり、ナイフを取り出した。

 だが、俺は見えざる手インヴィジブル・ハンドで、男が構えるよりも早く顔面を殴り潰す。


「ぐはっ!」


 壁に向かって吹き飛ぶスーツの男。

 俺はスーツの男が座っていた椅子に腰を下ろした。


「おい、もっと上を呼んでこい」

「ヒ、ヒィィィィ!」


 残りの男たちに声をかけると、一斉に外へ飛び出した。

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