第10話 最後の絵4
俺は馬車を乗り継ぎ、州都へ移動した。
カミラのメモを頼りに、マフィアのアジトへ向かう。
「ここか」
扉を開けて中に入ると、ロビーで数人の男が会話をしていた。
「おい、リリルは見つかったのか!」
「そ、それが情報が錯綜していまして……。調べれば調べるほど、各地にいるって情報が入ってくるんです……」
「早く見つけろ! 失明する前に身柄を確保するんだよ!」
「は、はい!」
ロビーで男どもがリリルの話をしていた。
失明と言っているし間違いない。
カミラが言っていた話と一致している。
情報の錯綜に関しても、カミラが誤情報を流しているのだろう。
「カミラの奴。なかなかやるな」
「誰だてめえ? 勝手に入ってくんじゃねーよ?」
俺に気づいた下っ端の男が睨みつけてきた。
「おい、ここにリリルの絵があるんだろ?」
「はあ? 何言ってんだ! 殺すぞ!?」
「絵はどこにあんだ?」
「てめえ、どこのもんだ?」
下っ端の一人が、威勢よく俺に迫ってくる。
「見えざる手」
俺はその男をぶん殴った。
鼻が潰れ、大きく吹き飛ぶ。
「ぐはっ!」
背中から床に落ちる男。
後頭部を床に打ちつけて、口から泡を吹いている。
「なっ!」
「て、てめえ!」
「殺すぞ!」
なぜこの手のクズどもは、どこへ行っても同じなのだろうか。
怒声を上げ、武器を握りながら、次々と俺に襲いかかってくる。
「見えざる手」
俺は下っ端どもを容赦なく殴り飛ばした。
三十人近くがフロアに倒れ込んでいる。
「お前、リーダーか?」
血だらけで床に座り込みながら、一人の男が壁に背を預けていた。
この中では最も高そうな服を着ている。
「はあ、はあ」
「まだ殴られてえか?」
「か、勘弁してくれ……」
「リリルの絵はどこだ?」
「ボ、ボスの部屋に……」
「最初から言えばいいだろうが。バカが」
「ぐぎゃっ!」
リーダー格の男から聞き出し、俺は階上にあるボスの部屋へ向かった。
扉に手をかけ部屋の中に入る。
どうやらボスは騒ぎに気づいてないようだ。
「何だ貴様?」
「リリルの件と言えば分かるな?」
「なんだと?」
「リリルの絵で得た金と、今ある絵を全て出せ」
「てめえ、どこのもんだ?」
「いいから出せよ。この部屋にあるって下っ端どもが言ってたぞ」
「おい! 誰かいねーのか! こいつを殺せ!」
ボスが大声で部下どもを呼ぶ。
だが、来るわけがない。
「全員気絶してるわ」
「ふ、ふざけんじゃ――」
ボスが剣の柄に手をかけた。
「罪の清算」
ボスが剣を抜く前に、俺はボスの右耳を手刀で叩き落とした。
何が起こったのか理解できていないボス。
床に落ちた自分の耳を見つめていた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ! み、耳! 耳がぁぁぁぁ!」
「早く出せって。もう一つも落とすぞ?」
「耳が! 耳が!」
「耳がなくなっちまうぞ?」
「ま、待て! 待ってくれ!」
血だらけの側頭部を押さえるボス。
「待てって! 出すから! 出すから!」
「いいから早くしろっての。罪の清算」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」
「あーあー、耳がなくなっちまったな。次は鼻か?」
「お、お願いします! すぐに出しますから! 待って! 待って!」
「初めからそうしてりゃいいんだよ。ボケが」
涙と鼻水と血で顔面をグシャグシャにするボスが、重厚な金庫の扉を開けた。
「こ、この中です!」
包装された絵と、革袋が入っていた。
それを取り出す。
「絵は5枚かよ。もっとあるんじゃねーのか?」
「も、もう5枚しかない……。はあ、はあ……。売れちまって……」
「この金はいくら入ってる?」
「1000万……」
「オークションの代金じゃねーか。足りなくねーか? 売ったのは1枚だけじゃねーんだろ?」
「い、今はもうこの金しか残ってないんだ……。はあ、はあ……」
「ちっ、使えねーな。まあいい。二度とリリルに手を出すなよ」
「ぐぅぅ。ぐぅぅ」
「聞こえてんのかよ?」
両手で両耳があった場所を必死に押さえるボス。
「俺の言葉が耳に入っていないようだな。ああ、耳がねえのか」
「はあ、はあ……」
「痛そうだな。治してやるよ」
「え? い、いや……」
「首を落とせば痛くないだろ?」
「ま、待って! お願いします! お願いします! 絶対に! もう絶対に手を出しませんから!」
血だらけで土下座するボス。
「ダメだ。お前らはすぐに復讐を考えるクズだ」
「絶対にぃぃ! しませんからぁぁぁぁ!」
「罪の清算」
俺はボスの首を手刀で落とした。
「ったく、州都まで来たのに、茶も出さねーとはな」
俺はアジトを出て、すぐにソルレト行きの馬車に乗った。




