第41話:【新学期編】新学期早々遅刻確定の始業式を「超光速タイムアタック(RTA)」にバグらせて学園ごと置き去りにしてみた
「――で? 夏休みの宿題を視聴者のスパチャ代行という禁断の裏技で力技突破したと思ったら、新学期初日の今朝、案の定『始業式に5分で着かないと即留年』という絶体絶命の遅刻確定状況に陥ってるわけですかぁ……?」
頭の包帯はすっかり取れたものの、寝癖でボサボサになった自慢の派手な髪の毛(シルバー・ネオンブルー・ピンクのゲーミング仕様)をそのままに、不憫な神様(※一応彼は表現と芸能の神様です)ことリデーレ(りーくん)は、通学路の交差点で食パン(ジャム塗り)を口にくわえたまま、魂の抜けた目で叫んでいた。
現在の時刻は、午前8時25分。
神魔統合学園の始業式開始時刻は、午前8時30分。
学園までの距離は、およそ5キロメートル。徒歩ならどう足掻いても30分以上かかる距離である。
夏休み中にチャンネル登録者数が5,500万人を突破した『ろいでch』の早朝ゲリラ配信には、登校前・出勤前のリスナーたちが数千万人規模で殺到していた。
▶:『朝の遅刻確定ゲリラ配信助かる』
▶:『食パンくわえて走るりーくんの昭和のヒロイン感草』
▶:『ろいでちゃん、寝巻きのまま登校しようとしてない?』
▶:『始業式遅刻で即留年は厳しすぎて草』
交差点の真ん中で、通学鞄を抱えてオロオロしているリデーレの横には、案の定、いつものダボダボ萌え袖パーカーを着たまま198円のビニールスリッパを「キュッ……キュッ……」と鳴らしているろいでの姿があった。
「んー、眠い……。始業式とか、校長先生の話長いから行きたくないんだよね……」
「行きたくないじゃないよ! 神魔学園の校長(魔界の元老院)は遅刻に厳格なんだから! 5分以内に体育館の整列に間に合わなかったら、僕たち全員『人間界のへき地に飛ばされて永久留年』の刑なんだよ!?」
「えー、留年はめんどくさいなぁ」
ろいではポテトチップス(ウスシオ味)の袋をパリッと開けると、萌え袖の手でスマホの画面をスワイプ。空中に浮かぶ【神権バグUI】を軽やかにタップした。
「じゃあ、登校ルートをRTA仕様にして、一瞬で体育館にバグワープしよ」
「RTA!? ちょっと待て、RTAってゲームのスピードランのこと!? 登校で壁抜けとかグラフィックのスキップとかやり始めたら、僕の物理身体が分解しちゃうだろぉぉぉーーッ!!」
リデーレの至極全当な悲鳴を完全無視し、ろいでは【神権バグUI】の実行ボタンを小気味よくポチッと押した。
瞬間――。
周囲の景色全体が激しいネオンピンクのグリッチノイズと、ゲームのデバッグ画面のようなグリッド線に覆われた。
【神権:神回】を発動。
私の視界が激しいデータグリッチとともに、朝の平和な通学路を「物理法則を無視して最短フレームでゴールを目指す、登校RTA会場」へとリライトしていく。
【オブジェクト:神魔統合学園への通学路&始業式】
【実行アクション:遅刻しそうな生徒たちが急いで学校へ走る】
【変更後実行アクション:「壁判定の消失・バックダッシュによる音速移動・オブジェクト判定の増殖により、スパチャの加速ノイズで世界線を飛び越えて体育館へ着地する超光速RTA」に強制ブラウザ変換】
ズズズズ……ッ!!
画面の四方に「Any%(ルール無用)/ Current Time: 0:00.00 / Target: 体育館」というRTA風のタイマーウィジェットが浮上。
さらに、ろいでのスリッパが地面を叩いた瞬間――。
ビギギギギギギギギギッッ!!
「ギャアアアアアアッ!? 体が勝手に高速でバックダッシュし始めたぁぁぁーーッ!!?」
リデーレの身体が謎の物理バグを起こし、後方に向かって「秒速300メートル」でカクカクと高速移動を開始! 街路樹や電信柱をすり抜けながら、空間の隙間を強引にすり抜けていく。
▶:『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』
▶:『登校RTAは草www』
▶:『壁抜け(Wall Clip)成功しててお腹痛いww』
▶:『スパチャでノイズ増やして加速させろ!!』
リスナーたちがRTAの仕様を瞬時に理解し、チャット欄には大歓喜の赤スパ(高額スパチャ)が連投され始めた。
チャリーン! チャリーン! チャリーン!
『【赤スパ連投】スパチャ総額が20,000,000円を突破! 特殊バグ「斜めジャンプによる無限上昇」が解放されます。』
「――は?」
リデーレが呆然とした瞬間、後ろ向きに超高速移動していた身体が、突然空に向かって「ドゴォォォン!!」と垂直打ち上げられた。
「宇宙まで飛んでいっちゃってるじゃんかぁぁぁーーッ!! 体育館は地上だよ!! どこ向かってんだよぉぉぉーーッ!!」
「あ、みんなスパチャありがとー。りーくん、ここで角(判定)に頭から突っ込むと、体育館のステージ上に直接ロードされるから我慢してね」
「頭から突っ込む前提でRTA組むなぁぁぁーーッ!! 脳みそ壊れるわ!!」
上空数千メートルから、ろいでとリデーレは一直線に神魔統合学園の体育館の屋根(テクスチャ透過状態)に向かってメテオストライクのごとく急降下!
その頃、体育館の中では――。
厳格な魔界の校長がマイクの前に立ち、全校生徒を前に重々しく演説を行っていた。
「ゴホン。えー、新学期にあたり、諸君に言いたいことはただ一つ。規律と時間を守ることである。特に遅刻などという不祥事は……」
校長が時計に目をやった、まさにその瞬間。
タイマー:【0:04.28(世界新記録)】
ズドドドォォォォォン!!!!
体育館の天井をぶち破り(テクスチャ崩壊)、真上から強烈なピンクのノイズと共に、頭から床に刺さったリデーレと、萌え袖で可愛く着地したろいでが降ってきた。
「ぶへぇっ……! 地面が硬い……ッ!」
「ふぅ、4秒で到着ー。RTA成功だね」
校長と全校生徒数千人が、ポカンと口を開けて静まり返る。
▶:『RTA世界新記録達成キターーー!』
▶:『校長先生の頭の上にりーくん着地してて草』
▶:『始業式秒で終わらせるライバーww』
▶:『チャンネル登録者数5,600万人突破!!』
静寂を破るように、モデレーターのゼノスとセレスティアが「流石ろいで様! 完璧なフレーム回避とタイム短縮ですわ!」「校長の講話をまるごとスキップするとは、まさに神の御技!」と盛大な拍手を送った。
校長は額に青筋を浮かべ、ワナワナと震えながら叫んだ。
「お、お前たちぃぃぃーーッ! 始業式に天井を破壊して惨入するとは何事だぁぁぁッ! 全員反省文100枚と、秋の学園祭の『実行委員』に任命するぞぉぉぉーーッ!!」
「えー、学園祭の実行委員? めんどくさいなぁ……」
ろいでのだるそうな呟きと、リデーレの「だから普通に歩いて登校したかったんだよぉぉぉーーッ!」という絶叫が、崩壊した体育館に虚しく響き渡るのだった。
――新学期早々、大波乱! 次回【秋の学園祭編】出し物決め出しバトルへ続く!
(つづく)
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なんなら小躍りします(嘘です調子乗りました)
次回は41話は【本日07/25】の【16:45】頃投稿します。




