表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/42

第17話:【大バズ】国王をヘドバンさせてみた




重低音の効いたバキバキのデジタルミュージックが響き渡る中央広場は、今や完全に異次元のダンスフロアと化していた。


最初は恐怖で怯えていた一般住民や衛兵たちも、ネオンピンクのレーザービームが降り注ぐ中、今では無意識のうちに両手を掲げてリズムを刻んでいる。


ステージの真ん中で、私はダボダボのパーカーの袖をぶんぶんと振りながら、浮遊するドローンカメラに向かって最高の笑顔を届けていた。


画面の右上の同接カウンターは【11,000,000】を記録。


もはやこの世界の常識では測定不可能な規模の「熱狂(魔力)」が、私の全身からピンクのオーラとなって立ち上っている。



▶:『異世界野外フェス盛り上がりすぎて草』


▶:『国家の非常事態宣言とは一体何だったのか』


▶:『てか広場の入り口、なんかもの凄い豪華な馬車が突っ込んできたぞ!?』


▶:『ゴールドに輝く鎧を着たおじいちゃんが乗ってるwww』



「ん? ライブの途中だけど、なんか会場の入り口に、無駄にギラギラした金ピカの馬車が停まったね。誰かVIP席の予約でもしてたのかな?」



私がステージの上から視線を向けると、馬車の扉が勢いよく開け放たれ、中から白い髭を蓄え、頭に豪華な王冠を戴いた、いかにも「私がこの国のトップです」というオーラを放つ老人が現れた。


この国の最高権力者――国王その人であった。


彼の周囲には、これまでに登場したエリート魔術師やS級冒険者とは格が違う、国に数人しかいない最高位の『王宮鉄壁騎士団』が、ガチガチの重装甲の盾を構えて一斉に広場へと乱入してくる。



「……なんという悍ましい暗黒の儀式だ! 街の民どもが全員、謎の妖しい光と不気味な重低音によって精神を操られているではないか! 災厄の魔女、マッスルろいでよ! これ以上の国家転覆行為は許さん! 騎士団よ、その魔女を今すぐ捕らえよ!!」



国王の怒号と共に、百人を超える王宮騎士団が、一糸乱れぬ動きで私に向かって突撃を開始した。


彼らが構える大盾は、一国の城門すらも粉砕する絶対的な防御力と突進力を誇る。



▶:『うわあああ! ついに大ボス(国王)直々に乱入してきた!!』


▶:『マッスルろいでって呼ぶのやめて差し上げてwww』


▶:『ろいでちゃん大ピンチじゃん! どうするのこれ!?』



『あああ! ろいでちゃん! あれはこの国で一番硬い「対城壁騎士団」だよ! 正面からぶつかったら、いくら神権でも物理的に押し潰されちゃうよ! 音量3%の僕じゃ防ぎきれないよぉぉぉ!!』



ヘッドホンから、りーくんが案の定のパニック大絶叫をあげる。


けれど、突進してくる最強の騎士団を前にして、私はフッと口元を吊り上げた。



「大ピンチ? なんで? 国王様自ら、こんなステージのド真ん前の一等地まで会いに来てくれたんだよ? だったらさ、新しい『最前列の観客』として、もっとライブを楽しんでもらわなきゃ失礼じゃん」



私がニヤリと微笑んだ瞬間、同時視聴者数は驚異の1150万人を突破。


私は空中に向かって、萌え袖の手で「ボリュームのツマミを限界まで右に回す」ジェスチャーを取った。



【神権:ライブステージ・強制演出拡大】発動。



私の視界が激しいデジタルノイズで点滅し、突進してくる騎士団の足元のソースコードが瞬時に書き換えられていく。



【オブジェクト:王宮鉄壁騎士団(突撃陣形)】



【実行アクション:対象を押し潰す(物理ダメージ)】



【変更後実行アクション:重低音に合わせて強制的に『最前列でヘッドバンギング(ヘドバン)』を執行する】



――ドォォォォォン!!!



スピーカーから、今日一番の超重低音のベースが炸裂した。


その音波が騎士団に直撃した瞬間、彼らの突進の勢いは完全に相殺され、突如として全員がその場に直立不動でピタッと静止した。


次の瞬間、百人を超える重装甲の騎士たちが、一斉に「ブンッ! ブンッ! ブンッ!」と、音楽のリズムに合わせて、猛烈な勢いで頭を上下に激しく振り始めたのだ。



「な……何だと……っ!? お前たち、何をしている! 早く魔女を捕らえんか! ……くっ、何を……我が、我が頭が、勝手に前後に……っ!?」



最後尾で見守っていた国王までもが、神権による強制エフェクトの範囲に巻き込まれ、王冠をガタガタと揺らしながら「ブンッ! ブンッ!」と、全力で首を振り始めた。


ゴールドの鎧を纏った国王と騎士団が、ステージの最前列で狂ったようにヘドバンを決めている。


そのシュールすぎる光景に、広場全体がどよめき、チャット欄は過去最大の爆笑の弾幕で完全に埋め尽くされた。



▶:『国王と騎士団が最前列でヘドバンしてて腹痛いwwwww』


▶:『どんな暗黒魔法よりも凶悪なライブ演出www』


▶:『国の最高戦力がただの限界オタクになってて草』


▶:『魔王(公式):……フハハハ! 人間の王よ、なかなか良いキレの首振りではないか。我が軍も負けてはおられぬな!』



「あ、魔王様から国王様にチャット欄でエールが届いてまーす! よーし、最前列もバッチリ温まったところで、記念ライブのラストスパート、一気にいくよーーー!!」



私がステージの上で大きくジャンプすると、1150万人の熱狂が弾け飛び、広場全体に眩いばかりのピンクの桜吹雪が吹き荒れた。


指名手配の容疑をかけにきたはずの国王たちを、文字通り「最前列のファン」へと調教してしまったパーカー女子のゲリラライブは、いよいよ世界の歴史に刻まれるレベルの伝説へと昇華していくのだった。



(つづく)

ご視聴ありがとうございました。

国王をヘドバンさせてみました。

次回18話!【このあとすぐ10分後】投稿します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ