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楽しい時間とクリスマス

クリスマスイヴ。

17:00定時に仕事を上がり、いつもよりも軽い足取りで帰宅する。


ラベンダー色のニットワンピに着替え、オープンハートのシルバーネックレスを付ける。

髪をアップにし、ヘアアクセで纏めたらコートを羽織り、いよいよ喫茶「Garden」へ向かう。


夕方の喫茶「Garden」には灯りが灯されていて、何とも幻想的だった。


店内に入ると店の片隅に古びたオルガンがキレイに磨かれて置いてあり、幅広い年代のお客さんで賑わっていた。


七絵はいつものソファ席に座り、ブランケットを掛けて寛ぐ。


時間になり、オーナーが声を掛ける。

「今日は来て下さってありがとうございます!お料理を運んだ後、今日は私がオルガンを弾きます!」


お客さんが拍手する。


七絵はアルコールが苦手なので、ノンアルコールのカクテルをお願いし、カクテル、ガーリックトースト、サーモンとルッコラのサラダ、ローストチキンが運ばれて来て、「これはおまけだよ!」とりんごの自家製ケーキを付けてくれた。


オーナーが着席して、いよいよクリスマスパーティーが始まる。


オルガンにゆっくり手を置き、クリスマスの童謡やクラシックを愉快に奏でる。


料理を食べながらゆったりと音楽を聴く時間は、子供の頃の習慣だった。

大人になってからと言うもの、デジタル機器で音楽は良く聴いていたものの、生の演奏なんて聞く機会が無かった。

楽しい演奏会が終わり、食事を終えたお客さん達が帰って行く。


七絵「素晴らしい演奏でした。お料理も美味しかったし、今日は来て良かったです!」


オーナー「ありがとう。所で今日貴女、誕生日でしょ?」


七絵『何で私の誕生日を?』

「はい…実はクリスマスイヴなんです…誕生日。」


オーナー「これ、貴女に上げるわ!」


オーナーは使い込んだレシピ本を渡した。


七絵「えっ!これは…」


オーナー「いいのよ、もう頭に入ってるし、この店もそろそろ終わりなの。今日の明け方孫が産まれたの。私の親は高齢で、何も教えて貰えなかったから大人になって随分苦労したわ。自分の孫には小さいうちからきちんと躾けてあげようと思って。」


「七絵って言うの。良い名前でしょ!」


「貴女に会えて、良かったわ!元気でね。」


七絵「寂しくなりますが、お元気で…。」



次の日、七絵はオーナーにお礼のメッセージを書いたクリスマスカードを渡したくて、喫茶「Garden」へ向かった。


でもそこには店の跡形もなく、一つだけ、錆びついた看板に喫茶「Garden」と辛うじて読める文字が確認出来た。

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