表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/69

50 シウタと3枚のお札

シウタ


ならず者の拠点を叩くべく出撃した道中、すぐに連合のモガ大将が立ち塞がってきた。


待ち伏せとも思えるその状況で、なぜモガ大将は自分達が通る事を知っていたのか。

何者が情報を漏らしているのか?


まぁ、いい。

ここでモガ大将を捕らえて情報を聞き出し、さらにならず者の拠点で大勢を確保しよう。

古代アステカでは捕らえる事が目的で、戦うのは代表の戦士だけで十分だった。

血が流れる事を最小限で押さえる。 これも 『繁栄』 の掟じゃないかな。


各自のヴォルテクスへ足早に乗り込み、それぞれのコクピットで戦闘準備を進める。


「ハハッ、『銀河の英雄』 をご指名です。お望み通りに華やかなネオンビームでおもてなしを致しましょうかね!」


「まさか戦闘の方のシウタ君をご指名だなんて、モガ大将も物好きね。じゃあ私たちも、歓待するとするかな。熱いヒートソードを受け取って貰うわ!」

「ふーん、エースって看板が欲しいだけじゃない? 目がチカチカするぐらいの歓迎のビームを撃ち込んであげよっか!」

「シウタ王子の指名料でしょ? 払えないと思うな~。 破滅する未来しか見えない、ラーメンの時にスパチャ機能あったら、全財産イッたと思うし」


なんて心強い戦友だ。

ラーメンネタを引っ張るのやめてくれない? 放送事故の類でしょ。


『νノクターン』 の機体が黒の装甲で覆われ、その隙間の部分がまばゆい青白いエネルギーラインが輝いている。

背部には新型のビームウィングが光を放ち、静かに待ち構えていた。


ノクターンに飛び乗りコクピットに身を沈め、スティックを握りしめると、なんとなく新型のケミカルな匂いを感じる。

目の前の巨大なハッチが ガコン! いう音とともに動き始め、真っ暗な宇宙への通路が開いた。


「シウタくん、こっちはオールグリーン。いつでも行けるわ!」


「「「了解! 出ます!」」」」


ブースターが唸りを上げ、光を引きながら暗黒の宇宙へ飛び出していく。


スクリーンには敵反応のマークが浮かび上がっていた。

そこには、モガ大将の名が表示されている。


「フン、出てきやがったか、銀河の英雄め!」


通信にモガ大将の声が割り込む。

装甲マシマシの機体。背部のエンジンから吐き出されるプラズマの輝きが、その姿を照らし出していた。


「戦艦の急襲とは、やりますね。気に入りました。おごらしてもらいます。後ろの隕石群に奥に伏せている3機も出て来てもらっていいですか。たっぷりと弧状ビームを堪能してくださいね」


軽口を叩きながらも、ノクターンの操作パネルを叩き、ビームウィングのエネルギー充填を開始する。

背部から放たれる弧状のビーム。

翼を展開するように光を放つと、宇宙空間に虹色の反射が走った。


ホログラム越しに見える光景が美しすぎて、脳が震えている。


「派手に行きましょう。ハハハッ! モガさんと言いましたか、その気概にお答えし、木っ端みじんにしてやります、宇宙に漂う藻屑となるがいい!」


「あの、シウタ君。あのゴメンね。派手にやると私達がアーレ大佐に怒られるのよ。これも放映されるよ、ほどほどにね」

「キラキラお星さま、闇に煌めくお星さま。子供の時に読んだ、王子様はビーム兵器で夜空を彩るみたい。どうみても残虐騎士よね」

「早く終わらして、王子様ゲームで遊ぼう。さぁ、ゲームをしよう。」


ソウだった、ほどほどにしないと怒られてしまう。


ノクターンの背部から弧を描くビームが散らばり、モガ大将の機体を捕捉していく。

散開するビームが相手の回避を強要する。


モガ大将の機体が回避行動をとるが、トリガーを引きビームライフルを撃ち込んだ。


「ぐあっ!?」


モガ大将の苦悶の声が混線して入る。

それでも機体を見事なカスタマイズをしたのか、装甲に大きくヒビが走っただけで、轟沈する様子はない。


「大金をかけて、それでもこんなもんか!? 荒稼ぎして新型にしたのだろう!」


おいおいおいおいおい、煽りよるわ!


「ハハッ、素敵なセリフだ。 『負けたけど負けてない』 と言うのが対戦ゲーの基本! いさぎよくなく、素晴らしい強がりですね!」


そうだよね、負けた事なんてない。レーバーが悪いかキャラ相性が悪い。


連射を続けながら、小惑星を爆破して隠れていた敵三機を炙り出す。

その機体達にフェリシア先輩の近接、イーリス先輩が狙いを定め、ミラグロ先輩は相手の死角に回ってけん制のビームを放つ。


その連携の間に背部ウィングの充電の光量が増大し、螺旋の光をを放った。

ビームウィングから繰り出される弧状レーザーが、モガ大将の機体の装甲を削り取る。

光と衝撃が交錯し、相手は大きく体勢を崩す。


「ちっ、仕方ねぇ! 今回はここまでだ!」


と、不利を悟ったのか、背を向けて逃げようとする。


「ハハッ、どこへ行こうと言うのですか? 逃がすと思います? この銀河に散れぇええ!「「「シウタ君!!」」」


トリガーを引きかけた瞬間、先輩たちの声が重なる。

ハッと我に返る。

螺旋状のビームの色が狂気に駆り立てる、自分のせいじゃないと思う。


モガ大将の機体はプラズマブースターを全開にして闇の中へと姿を消す。

装甲の破損からの火花が残りながら、通信越しに「次は負けない、覚えてろ!」という声が聞こえた。


貴重な対戦相手だ、あの頃を思い出す。

もう少しで勝てそう! と、見せ場を与えてやらないと連コインしてくれなさそう。

大いに、反省して次回に活かそう。


「どうやら退却したみたいですね」


「シウタくん、ナイスファイト! 戦闘終了、相手は退却しました。破損被害は軽微。モガ大将の機体を無力化こそできなかったけれど、当面は脅威にはならないでしょ」」


フェリシア先輩が管制に向かって通信を開く。


「よーし、みんな休憩しよ!」

「さあ、帰ろう! みんな、無事に帰艦するよ!」

「急襲に成功したのに、相手の戦意が低くかった。何か違和感を感じる」


そう、戦意が低い。全力で倒しに来ていない。向こうがやった事と言えば、挑発と時間稼ぎだ。

メインキャラじゃない時の謙虚さがあった。


――


戦闘宙域を抜け、資源惑星の拠点に着陸してみたものの、そこには誰の気配も感じられない。

先輩達に拠点の探索を願い出るが


「お願いだから、シウタ君。ここは待機をお願いできないかな?」 「ごめん、王子様。悪いけど、今は待機をお願いしたいの」 「王子に何かあったら、銀河の灯が消えてしまう」


と断られた。

先輩たちのホログラムリアルタイムで見てみると、作業用のコンテナが散乱し、急に人々が姿を消してしまったかのようだ。

静寂だけが漂う、もぬけの殻の拠点になっていた。


拠点急襲作戦失敗と言う事か。


「撤退の手際が良すぎるわね」


もんもんとした気分を味わいながら、帰りの戦艦で王子様ゲームをやりながら帰投した。

敵が逃げた以上、ひとまず任務は終了か。


未来の王子様ゲーム?

おままごとだった。王子様になった人が王子様をやる。

これさ、イメージクラブ。イメクラじゃない? 今じゃこの言葉なくなったけど。

言い変えると、メイド喫茶か。 えっ、メイド喫茶も古い?

そうか、時代はヴィチューバーだ、君に会ったヴイチューバ―に会いに行こう。

言い変えると、2次元イメクラよな?


――


戦艦が軍事拠点に戻り、任務が終了した。

先輩たちと 「何か軽く食べようか」 という話になって、拠点の物資が並ぶ露店を一緒に歩くことになった。


お洒落な店なんて望めないこの場所には、この銀河女性たちがガッツリ食べそうな露店だそうだ。

そんな雑多な通りを歩いていると、先輩たちが足を止めて、やや困ったような表情で声をかけてきた。


「シウタくん。ホットドッグの中身だけ買ってくるから、悪いけどここで待ってて。ここなら見つからないから、この箱の中に隠れていてね」

「ごめんね、王子様と一緒に露店で食事してたら、絶対絡まれて、殴り合いの争奪戦になっちゃいそうだから。ハンバーガーのパテだけ買ってくるから、箱の中で待っててくれない?」

「大人しくしててね。シューマイの中身だけ買ってくるから」


そう言い残し、先輩たちは、左右を警戒し足早に露店のほうへと向かっていく。

鋼で作られた小麦粉部分へ対し、男性への配慮が行き届いてる。

つまり、ソーセージ、ミンチ肉、肉。

最近、暮らしが長いせいか肉の違いが判る様になってきた、住めば都と言う事か。


置き去りになって、なんだか妙な気分で木箱の陰から、賑やかな露店街を覗いていた。

ふと視線を向けると 『宇宙花と雑貨のお店』 と書いてあり、この軍事拠点に花屋のホログラム看板があった。


日用品には、酒は無かった。もしかしたら、高嶺の花の枠で花屋に酒が置いてあるか、雑貨として扱われているかもしれない。

感が働いた自分はこっそりと襟を深く持ち上げ、身バレしないように花屋へ足を延ばす。


その色とりどりな、サイゲデリックな花のお店には、緑髪のリューラーさんがいた。


「いらっしゃい~・・・、いやいやいや! ウチのお店は、これにて営業終了です! 店内の奥に行った所、逃げられないようにシャッター閉めないと! これが、近距離の残虐騎士様! 脳がおかしい、愛され愛したいと脳が囁くのは絶対おかしいですよね、マジやばっ!」


どこかで聞いたことがある台詞。

この逆転銀河で、男が来たらシャッター閉めるのはやってんの? 犯罪ちがうんか?

まぁ、いい。本題に入ろう。


「お酒ありませんか」


「あの? 先日、ウチと商談しませんでしたか? ここ、お花のお店ですけども?? お取り扱いしてませんてば。 そうだ、騎士様、お花買いませんか? 騎士様にお花貰ったら、女性達の脳が爆発すると思います。 鬼に金棒、残虐騎士様にビームライフル、王子様には花の最強コンボですよ。お花どうですか~? 騎士様なら誰に渡しても、ドンッと吹き飛ぶと思いますよ」


お花を進めて来る、リューラーさん。

違う違う、そうじゃない。


「失礼致しました。雑貨にお酒ありませんか」


「ううん? 商談がクロージングしていない?? あの、聞き方を変えれば、出るという商品では無いのでは、ありませんか。お酒の様な匂いがする花ならありますけども。サボーテンの花なんていかがでしょうか」


「それ、全部下さい」


「毎度ありぃいいいいいいいい!」 と、イソイソと花を包むリューラーさん。

商売が上手だな。


店を出てすぐに、包装に包まれた花の匂いを嗅ぐ。

騙された、テキーラの匂いがかすかにするが、全然違う。

でも、少し安らいだ気がする。


そして、箱の周りに集まっている先輩3人。

花を少し買いすぎた、差し上げよう。

女性には花。女性には、パスタ。女性には、ショッピングデートだ。

あぁ、ステレオタイプの感覚が古いかな?

今だと、デートコースの字プリが夏ウォーズの監督に変ったのは、知ってる。


安易なプレゼントかもしれないが、花を貰って瞬間ぐらいは、いい気もする事だろう。


「ありがとうございます。お肉の代わりです、どうぞ」 と、花を渡そうとすると。


「グハッ!」 「ガハッ!」 「ウハッ!」 と全員が吹き飛ぶ。


よろけながら起き上がる3人。


そして、周囲の軍人女性達に気づかれたのか、色めいた声が周囲から聞こえる。


「王子様がお花持ってる! 私の物よ!」 「ちょっと、王子様。そのお花と王子様、今すぐ私のものにしていいよね? え、ダメとか言わせないから!」 「あら、王子様、お花なんか持って歩いて。もうれーぷしていいって事?」 「あらあら、残虐騎士属性とお花でギャップで〇しにきてるわね」


と、何かに火が付いた。

花が良くなかったか? これからの危険な展開を察した先輩たちが、慌てて声を張り上げる。


「シウタ君! 逃げて! 相手もプロの兵だから、抑えきれないかもしれない! 捕まりそうになったら、その花を3回に分けて、投げるのよ! 必ずだよ!」


「王子様、ダッシュで帰って! 敵は訓練されている、このままじゃ食い止められない。ヤバいと思ったら、その花を三回に分けて投げるのよ、絶対に!」


「王子! 退避して! 相手はプロ級。もし限界を感じたら、その花を三回に分けて放り投げてね。それが、生存の合図だから」


まさに未来に生きる、三枚のお札ではなく、3回のお花。

急に怖くなってきた。 その選択を三回を間違えると、即〇しそうで怖い。

サウンドノベルのカマ―インたちの夜もそんな感じだった。


すぐさま女性達が瞳を光らせてこちらを狙い、で素早く距離を詰めてきた。

命の危険を感じ、思わず背を向けて全力ダッシュで逃げ出す。


――


逃げ帰った居住区の門前には、金色の瞳を光らせたアーレイン大佐が待っていた。

大佐を見た瞬間、助かったと実感して胸を撫で下ろす。


「シウタさん、お帰りなさい。三人もまだまだね、あなたをちゃんと守り切れるほどには鍛えられていないわね。もっと強くなってほしいところだけれど」


そう言いながら大佐が近づき、耳元へとそっと唇を寄せる。

吐息交じりの囁きが誘惑のように聞こえる。


「内緒話よ。どうやらここの情報が外に漏れてるわ。あと二、三日あれば突き止められると思うけど、シウタさんも用心して任務を続けてね。わかった?」


「承知しました」


心の中で思う。

連邦の情報管理はゆるいんじゃないか。戦争の時も、拠点以外ゆるゆるだったし。

戦闘の様子だってリアルタイム配信されているし、大丈夫なのか?

でも、大佐が着任しているなら大丈夫か。


しかし今は、無事に帰れただけでも十分だ。

そんな考えが頭をよぎりながらも、また次の戦いの事を考える。



いつもありがとうございます。


犯人は、みきもと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ