果し合い……23
二人の声を聞いて、総史郎はやっと思考停止から脱出できた。どうやら騎士たちは二人に用事があるらしいので、手持ち無沙汰な総史郎は騎士たちをよく観察する事にした。
「あい分かった。名乗りを立てず失礼仕った。我らは、剣の友騎士会二六合区支部のもである。我輩第四分隊隊長の剣山鷹宗と申す!」
「我は」
と五人全員が同じ方式に則って順番に挨拶を始めたが、三人は聞くことがすでに面倒になり始めていたので、小声で相談してA、B、C、D、Eと名付けた。
「で、なんの用です?」
大あくびをしている座漸では話ができず、鋼は面倒になりすでに業賢の柄を握っている。已む無く総史郎が聞くはめになったのだが、それがよくなかったようだ。
「どこの馬の骨とも知らぬ小娘に説明する義理は無きや! 我らはそこのお二人に話があるのだ!」
「こっ……」
久しぶりにその代名詞が自分に使われて少々戸惑ったが、それでも気を取り直してもう一度何かグダグダと話しを始めた騎士団に語りかける。
「私たちは用事が有りますので、用件は手短に」
「黙らぬか!」
「隊長殿の話は、貴様になど向けてはおらぬ!」
「用事があるのなら、さっさとお前だけで済ませてくればよかろう!」
三段攻撃である。
「で、あなた達の目的はなんですか?」
見るに耐えかねたのか、鋼がやっと動いてくれた。総史郎は本日二回目の思考停止に陥っていた。
「おお。よくぞ聞いてくれた!」
「我々は、剣の普及と、安全を目的に活動している慈善団体だッ!」
「最近では刃物を使った暴力事件が多発しているッ!」
騎士ABCがそれぞれ分担して連携攻撃を仕掛けてくる。なんとウザッたらしい連中であるか。
「我々はそれを憂い、ひいては現状を許す我が国の王を憂い、この国の未来を案じて活動しいるのだッ!」
「そして我々は日々邪悪なる行為を犯す者どもに、鉄槌を下しているッ!」
「しかし、この戦いは苛烈を極めているッ!」
「時に多数により、帰宅途中の我らが同志が夜襲に合うなどもしているッ!」
「これにより、我ら鋼の意志を持った団員は、着々と数を減らそうとしているッ!」
「我らはこの事態を打開すべく、諸君らのような優秀な剣士を選びスカウトしているのだッ!」
見事騎士ABCの準で語られ、丁度三人目の騎士Cで話は終わった。
そして、五人全員で声を重ならせて最後の締めを決める。
「諸君らには、我々に協力できうるほどの能力を有しているッ! 我々に協力する気はないかッ!」
「お断りです」
やはり予想の通り、鋼は即答した。
「で、何の用だお前ら?」
なんと、狂犬嘆外座漸は彼らの熱弁を最初から一切聞いていなかったようだ。
愕然と固まっている騎士団員ABCDE。
話の途中で復活した総史郎は、思わずくつくつと喉を震わせて笑っていた。
「き、貴様! 何を笑っておるか!!」
「この無礼者めが!」
「はてや、貴様ら一同悪しき行いの節があるのだな!」
「なるほど、それで協力を拒むというのだな」
「貴様ら一同、ここを墓場だと思え!」
「ヤーヤー、我らは貴様らに果し合いを申し込むなり!」
なんとしてでも三人で簡潔させたいらしい。
五人が西洋の両手剣を抜刀して構えた。
「乗った!」
「仕方ありませんね」
喜々として座漸は厄神を抜き、鋼は溜息混じりに長大な業賢を抜いた。
「その命、貰い受けます」