紫白(しはく)の光
えぇ……今回はちょいと無理に押した感じになってしまいました。重要な部分の描写が苦手です……orz
一応馬鹿であろうが、稚拙であろうが大事な部分に変わりは無いので、読み込んでくだされば、と思います。
えぇ、相変わらず進歩しない身でありますので、誤字脱字不適切な表現が多々あると思われますが、どうか苦笑いか大爆笑でスルーしてくれれば……と。
「というわけで、予想外の猛抵抗を喰らったあいつは、そのまま『変なの』を逃がしてしまった、というわけだ」
「え……え、えぇ……!? んで、それが僕を狙ってるって?」
「そういうことだ。飲み込みが早いな」
「え、え、え、ちょ、冗談じゃないッ! どうして僕がそんな……」
祥吾は口の中で悪態をついた。やはり諭すのには大分時間が掛かりそうだ。全く、あいつも余計なことしれくた……。
二人が走っているのは、深夜で人気が全く無い農園地帯である。この時期に働かせると、土地が痩せるということで、今は使われては居ない。臨時の戦闘場所としては優秀である。
殺し損ねてそこに居ないということは、遅かれ早かれ追いつかれることは間違いない。人間の虐殺を目的としているなら、とっくに凛を殺しているはずだ。だがそうしないということは、あくまで目的は遼太にあるということ。そして、凛がてこずるだけの強敵を送り込んできたということは、遼太のこの義手は相当の能力を秘めているということである。
どの道、戦うことは免れない。それも、遼太を守りつつである。不可能ではないが、かなり困難であろうと思われる。
祥吾は乾いた口腔を舐めて湿らせ、ふいに足を止めた。遼太も釣られて止まる。
「……来たぞ」
「え……?」
祥吾が呟いたのを聞いて、遼太は空へと視線を配らせる。だが、電線がかすかに見えるだけで、異物の気配も見られない。周囲を模索してみるも、ただの静かな畑が広がっているだけである。
遼太が真偽を問おうと口を開きかけた刹那、祥吾が遼太の腕を掴むと、思い切り放り投げた。
「ぇっ!?」
しかし、さっきから「え?」しか言っていない遼太である。彼は綺麗な放物線を描いて、夜の畑へとヘッドスライディングする。ぽふんという感覚の後、土が顔に容赦なく降り注ぎ、目を白黒させる。
土を払い落としつつ、遼太が振り向くと──先ほど遼太が居た辺りの地面が裂けて、触手の様な物が覗いていた。否、触手ではなく、『何か』の頭部だ。先に頭と思しき球体がついている。
祥吾は遼太が無事なのを確認すると、その頭部に向けて走り出す。『それ』は祥吾に気づいたのか、その赤い目をこちらに向けた。一つ左側の目が潰れている。凛だけではこれが限界だったらしい。
祥吾は『それ』の胴体が完全に露出する前に、素早く『それ』との距離を詰めると、その頭部に鋭い回し蹴りを仕掛ける。見事にローファーの踵は『それ』の頭部についている中央の目に激突、アイロンの起動音の様な音を上げて、その目が閉じられた。残るは右側の目だけ……。
だが、相手もそう甘くは無い。すぐに反撃だと言わんばかりに、祥吾の死角から前足が鞭の様に撓る。祥吾は間一髪で反応し、その前足を素手で受け止める。洗剤で濡らしたようなぬるりとした感触が、掌を伝う。だが、こんな気色悪い経験など、武器を持たない祥吾にとっては日常茶飯事である。気にせずに、親指に力を込める。ギチギチ……と、脊髄を捻ったような音が鳴り、数瞬後に前足は途中でぽっきりと切断されてしまった。切断面から赤黒い液体が噴出する。
祥吾は、その折った前足の先端部分をその手に握ったまま、一歩あとずさる。そして、信じられない話だが、その前足を地面から這いずり出るのに苦心している『それ』に投擲した。『それ』は当然のことながらそれをもう片方の前足で弾き飛ばす。祥吾の剛肩によって放たれたそれは、決して気休めではないのだ。
無論、そんなことを予想していた祥吾は、軽軽しく地面を一蹴し、跳躍する。そして、投擲された前足を弾いたことによって生じた隙をついて、『それ』の頭部に重重しい跳び蹴りを喰らわせた。『それ』が咆哮を上げる。
祥吾が上手く着地すると、すぐにその衝撃から立ち直った『それ』が胴体を構成する管の一本を乖離させて、それを触手の様に伸ばしてきた。祥吾が反応する間もなく、それは祥吾の足首にからみつく。すぐさま祥吾は転倒し、ずるずると『それ』に引き寄せられていく。
「……クソッ! だから俺はタイマンは苦手なんだよ……!」
祥吾は悪態をつき、思い切り触手が絡まった足首を振り上げる。蜜柑の木の枝が折れるような音がして、祥吾の足首を支配していた触手が根っこから千切れた。その恐ろしい筋力を以ってすれば、これくらいのことは朝飯前なのである。が。
『それ』の同時攻撃はどこまでも意表を衝いてくる。祥吾が立ち直る間も与えずに、前足での斬撃を加えてきた。祥吾はそれを確認すると一瞬瞠目し──素早く左足で地面を蹴ると、転がった。
だが、それでも『それ』にとっては十分すぎた。その前足は、祥吾の脇腹を抉りとり、そのままその下の地面に突き刺さる。
「ぐっ……!」
脇腹に途方の無い焼けるような痛みを感じ、祥吾はうめいた。
そんな祥吾を嘲笑うかのように、『それ』は前足で打撃を加える。祥吾は吹っ飛び、近くの畑に前のめりに倒れ、そのまま動かなくなってしまった。
「へ……?」
遼太はそれを見て、そんな間抜けな声をあげた。祥吾はたった今、あの怪物に倒されて、凛は今この場に居ない。
今、ここに居るのは自分だけ。そして、祥吾たちの話によれば、『奴』の標的は自分……。
「ひっ……」
恐怖が胃の底からせりあがってきた。負の感情が具現化して、背筋を駆け抜ける。
『それ』が遼太の方を向いた。一つしか残っていないその赤い目で、遼太を直視してくる。その焦点の合わさっていない瞳。遼太はどうすることもできず、ただそこに呆然として佇むのみ。
『それ』はやけに緩慢な動きで、地面から這いずりだすと、改めて遼太の方を向き直る。そして……舌なめずりでもするかのように、腹部のぱっくりと開いた場所から舌のような臓器を覗かせた。
(どどど、どうしろってんだよ……これ……)
『それ』はそんな遼太の反応を嘲笑うかのように、凛が削り取った頸の傷口から、イカの足の様な無数の触手をびちゃびちゃと召還させる。免疫の無い常人なら、そのまま失神してしまうレベルの不気味さである。
遼太はそれを見て、真っ白になった。無論、遼太も免疫の無い常人に含まれているのであるから。
『それ』はその触手を用いて、遼太の自由を拘束しにかかる。脇に触手を絡ませ、ぐるぐる巻きにして、こちらに手繰り寄せる。遼太はもはや恐怖で悲鳴を上げるのもままならないようだ。
『それ』は勝機に確信を持ち、その顎で遼太の右腕に噛み付いた──!
遼太は、迸る激痛に顔を歪めたが、襲ってきたのは痛みだけではなかった。
熱。気が狂いそうな程の熱さが、腕を這いずりあがってくるように伝わってくる。それは顎が深く食い込むにつれて、あからさまに加速してきている。
痛みとその熱さで三度目に意識が削ぎ取られそうになった頃──弾けた。熱は紫色の閃光となって具現化し、遼太と『それ』の間で煌いた。ふいに体の拘束が解かれ、畑の湿った土に落とされる。
埃にやられた喉を堰で保護しつつ、顔を上げると、まだ『それ』はそこに佇んでいた。様子を見ているのかその頭部は、小刻みに揺れている。てっきりそのまま浄化できていたのかと思っていた遼太は、改めて戦慄を覚える。
だが、すぐにその戦慄は疑問符へと変わる。そして、その疑問の矛先である、右腕に目をやると──義手が光っていた。あの時見たような、白みを帯びた紫色の光……。
再び熱気が右腕を支配する。呼吸するのが困難なその熱に、遼太はどうすることもなく、ただ悶えるのみ。
やがて、その熱さが限界を迎えるとき──その辺り一帯に閃光が迸った。『それ』は慄くように、その巨体を竦ませる。
そして、その声がなり響いた。
「──起動完了。以後常時流用体勢を保つ」
機械の様な無感情な声。だが、機械にしては声紋に特徴がある。遼太はその声の持ち主を捜し出さんと、周囲を見渡すものの、遼太と『それ』以外周辺に確認できない。では誰が──
「主。指示を」
声がまた響き、遼太は飛び上がって驚いた。今度は、首を回す速度を速めて周囲を見渡す。が、相変わらず人っ子一人居ない、目の前の不純な生物が居なければ閑静な農業地帯である。
『それ』が威嚇するようにか、それとも自分の存在を忘れられまいと思ったか、甲高い咆哮を上げた。
もはや遼太の精神力は限界だった。学校帰りにいきなり腕をもぎ取られ、気がつけば見知らぬ場所に拉致、監禁されて本当は腕は素のものではなく、義手だったと聞かされ事情を聞く間もなく意識を削ぎ取られ、最終的に辿り付いたここでは、グロテスク極まりない不純生物が動き回り、守ってやると言っていた人物たちがいとも簡単に倒されてしまい、挙句妙な声に苛まれている──全くをもって支離滅裂な展開。こんな経緯をリアルに体験し、平静を保っていられる方がおかしいのだ。
遼太の理性は糸が切れたかのようにあっという間に勢力をなくし、パニック状態に陥った。
「ど、どーでもいいから、誰でもいいから……助けてくれッ!」
遼太の悲痛な叫びは夜空に流れ、誰に届くことも無く哀れに四散に意味の無い空気の波となって消えた。が、かといって誰にも届かなかったというわけでもなかったようだ。
「了解」
刹那、右腕が唸りを上げた。不吉な音ではなく、機械のモーター音のような──。
「状況を把握。最善の方法として、主の中枢神経を暫時拝借する。許可を」
遼太は驚いて、右腕を見下ろした。いつもの腕に、紫じみた球体が嵌めこまれ光っており、手首肘諸々の関節部から蒸気が噴出している。
パニックを通り越して狂って精神が崩壊してしまいそうな様だったが、何故か遼太は安心感を覚えた。そして、返事をしてやる。
「た、頼む……」
「了解。承認取得。感覚神経及び交感神経を除いた全ての神経の暫時支配に移る」
その機械音声が聞こえた刹那、体が自由に動かなくなった。まるで、誰かの体に眼球だけはめ込まれたような感覚だ。その上自分の意志とは関係なく体が反応し動く。
「支配完了。戦闘を開始する」
口が勝手に動いてそう言った。声は遼太のものと全く同じだが、質が全く違う。腹の奥底の憎悪を源流としているような暗さが含まれている。
先に攻撃を仕掛けたのは、意外にも『それ』の方だった。痺れを切らしたのか、既に生え変わっている前足と合わせて、両前足を交差させて斬りつけてきた。それを見た『遼太』は無造作に土を蹴り後ろへ跳びそれを躱す。『それ』の前足は空を斬り、畑の土を抉り、刺さった。
『遼太』はそれを見て、即座に反応し右腕から何かを飛ばした。光の筋が実体化し、ひも状になったようなそれ──その根源は、『遼太』の右手の中にある。──は、神々しい光を帯びて『それ』の前足へ真っ直ぐ飛んでいくと、左前足に絡まった。そして、『遼太』はそれを確認すると、右腕を振り上げた。
すると、ゴキブリの足を千切ったかのように、いとも簡単に左前足がもげた。累計で三回目である。『それ』は体勢を崩したものの、大して動揺もせずに再生を始めようとした。
が。
『遼太』は千切ったその反動を遠心力に変えて一回転すると、その左前足で同じく右前足も根元から切断した。トマトを叩き潰したような音が鳴り、赤黒い液体が切断面から吹きだす。『それ』は前のめりに倒れ、悲鳴の咆哮を上げた。
『遼太』はその顛末を一瞥し、右腕から伸びている光の帯を収納した。伸ばしたメジャーを回収するような、金属がこすれあう独特の音が響く。
無論、『それ』もただで負けるわけではない。後ろ足だけになって尚、前足を再生させんと胴体の管を分解し始める。更にその作業を行いつつ、大きく裂けた腹部から例の臓器を射出する。ついしがた凛に先端を切裂かれていたが、傷口の癒着が尋常ではないペースで進み、既に傷口は塞がっている。恐ろしい生命力である。
『遼太』はいち早くその臓器の襲撃を察知し、右腕を変形させる。ガチャガチャと凝縮しては膨張してを繰り返し、最終的に筒状で、先端の十センチほどを更に細くしたような形に変形した。そして、その先をその臓器に向けて──撃った。その先端から、紫を帯びた光線が発射された。その光線は真っ直ぐに臓器に的中、臓器はそのまま本体とは隔離され、瞬時に黒い塊と化した。貫通はしなかったようで、まだ『それ』の本体は無事である。
今度は『遼太』が仕掛ける番になった。再びその腕を変形させる。凝縮。拡散したとき、その腕は紫の妖気を帯びた剣に変形していた。凛の大剣を縮小したような形である。が、雰囲気は全く違う。
『遼太』は地面を蹴ると、人間離れした跳躍力で『それ』との間隔を一気に詰めると、その右腕を横に思いっきり薙いだ。それはそのまま『それ』の頭部に命中し、直撃を喰らった頭部はビンタを喰らったかのように、大きく揺れた。
だが、その威力の甚大さに比べると、『遼太』のなぎ払いは序撃に過ぎない。すぐさまに第二撃がその剥き出しになった首に向けられる。その動きに機敏に反応した『それ』の首に自生していた触手がうなり、『遼太』に向かって総突進をし掛けた。
『遼太』は興味無さそうにそれを一瞥する。単純な問題だ。攻撃の矛先を変えればいい。
右腕が閃いたと思うと、『遼太』に狙いを定めていた触手がばらばらと地面に落ちた。『遼太』はそれに構わず突撃を続ける。三撃目をその首に振り下ろすために。
だが、そのころには『それ』の前足は再生を終えていた。よろよろと立ち上がると、『遼太』の位置を確認し、今度は前足で防御の体勢に入った。だが、またも斬撃が入ると、その前足は重力の虜となり、あっけなく地面に落下した。
前足を切り落とすと、一旦『遼太』は地面に足をついた。靴の裏が畑の土を踏みつける。そして、瞬時に目標を補足すると、その足を軸に回転し跳んだ。──『それ』の頭部に向かって。
『遼太』は跳躍し、風を頬に感じつつ右腕を後方に引いた。突きの体勢である。
そして、そのまま──無防備な『それ』の最後の目玉にその剣を突き刺した。乳白色の眼漿を撒き散らしながら、『それ』は大きく首を振った。ぼたぼたとその眼漿は地面に垂れ落ちる。
『遼太』は目玉が効力を失った眼窩から素早く右腕を引き抜くと、悶え苦しむ『それ』の顎を蹴り再び距離を開ける。そして、再び右腕を変形させ始めた。
凝縮。そして、再び膨張すると、先ほどの舌のような臓器を撃退させた銃身の様な形になる。そして、その先端を光を失って混乱する『それ』に向けて──撃った。
先ほどとは少し違う、青白い光を帯びた光線が、『それ』を真っ直ぐに射貫き、浄化させる。金属が塩酸に入れられて熔けるような音がし、『それ』の輪郭が曖昧になっていき──消えた。
『遼太』が銃身を変形させて、普段の腕の『形』に戻したとき、その農園地帯はまたいつもと同じ閑散とした風景に戻っていた。
「任務完了。中枢神経支配権を主に還元させる」
そこで、漸く戒めが解けたかのように、体の自由が戻ってきた。それと同時に、途方も無いほどの疲労も襲ってくる。遼太はうなだれ、その場にへたり込んでしまった。疲労もあるが、それ以前に自分のしていたあの行為の感覚が自分の中で渦巻いていたからであり、また一層混乱を深める結果となったのだ。
「ご苦労。久しぶりの戦闘だった故、負担を過剰に掛ける結果となったことを詫びる」
そんな中、右腕がそう言った。さっきよりもより鮮明な、男の声である。
「な、なんだったんだ……今のは……」
遼太が呆然として、そう呟くように義手に訊ねる。
「我の活動思考基盤と主の中枢神経を繋ぎ、暫定的に主の体を我の物とした」
「……ごめん、もっと砕いて説明してくれないか?」
「我が主の体を操作した」
「へぇ……」
幾分砕きすぎのような気がしたが、今までの行為と現象を考えれば、当たり前かもしれない。
「今の現象を我は『一体化』と呼ぶ」
「なんとまぁ……単純な……ねぇ……」
そこでようやく遼太は右腕を見下ろす余裕ができた。何気なく右腕を見下ろし──絶句した。
遼太の右腕の外見は、正真正銘の義手になってしまっていた。遼太は瞠目して、同様の色を浮かべる。
「我が覚醒した証。弊害は存在しない」
「え……えぇ……そんな事言ったって……」
そこで遼太ははっと気づいた。自分の腕と何気なく会話している。この非常識な現象をあたりまえの様に享受してしまっている。もう自分は戻れない位置に居るのかもしれない。
何もかもが唐突すぎた。自分はただ、帰宅していただけなのだ。その途中でこんな妙な境遇に誘われてしまった。しかも夢ではないときている。逆にここまでリアルな夢だったら、喪失感を覚えるだろう。
「どうした」
「……いや、別に……」
義手が再び話し掛けてきた。意外と饒舌な奴なのかもしれない。
「お…………おい……大丈夫か……?」
そんな時、かすれて今にも消えてしまいそうな声が聞こえてきた。遼太が視線を上げると、そこには脇腹を手で抑えてこちらに歩み寄ってくる祥吾の姿があった。その指の隙間からはおびただしい量の血が流れている。
「え、ちょ、大丈夫か、なんて訊ける立場じゃないじゃんっ!」
遼太は再び驚いた顔で立ち上がると、そんな祥吾の下へと走っていく。そんな遼太を見て、祥吾もまた驚いたような表情を見せた。それはそうだ。自分よりも弱い、何もできない一般人がぴんぴんしているのだ。
「……あいつは?」
祥吾は怪訝そうな顔を作って訊いた。
「……倒したよ」
遼太はしれっとして言う。
「そうか……本物だったか……お前がな……」
そう言って祥吾は再び畑の土の中に崩れ落ちた。そして、血の池を作っていく。遼太はそれを見て、改めて危機感を感じ始めた。
「あっ……えっ、うわ、どうしよう……」
「困りか」
そこで義手が話し掛けてきた。遼太はそんな頼れそうで頼れなさそうな右腕を見下ろし、駄目もとで事情を話してみる。
「こ、この人、見ての通り怪我してるんだけど、どうにかできない?」
「治療なら容易。二十秒戴く」
遼太はぽかんとした表情で右腕を見下ろした。




