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突然ですがあなたは今日から死神ですよ!?  作者: 来栖槙礼
禍津御霊編
32/34

第32話 岩鬼来訪

 ―――黄泉国 神庭宮 東屋


「そろそろ戻る頃っも良いのじゃが……」


 一人座り込み黄泉国の配置図を広げ眺める八十禍津日神。彼は決戦へと赴くイザナミを送り出し黄泉国の防衛を任される形となった。待っているのは今回の防衛に置いて中心となる二人の神族、ヒノカグツチとヤマタノオロチである。


「八十禍津日神様。戻りました。」


 そう言って入ってきたのはアメノウズメだった。


「どうであった?状況は見れたか?」


「はい。東は神木の森がある為、進軍を諦めたようです。西と南に現在は敵の戦力は集まっております」


「報告、ご苦労。……うむ。やはりみなみ商業区とその西は障害になるものが無いからのぉ。ここいらが妥当なところか」


「なら、13柱隊のうち、5柱隊ずつを南と西に振るか?」


「カグツチ。それとオロチも戻ったか」


 カグツチとオロチは中へ入ると八十禍津日神の正面に配置図を挟み座る。


「ヤソ様、途中で第1部隊の奴らと合流してきたんだが少し治療をお願いしたい。あと、一人は呪じゃねぇと思うんだが昏睡から目覚めないんだ。頼むわ」


「吉備津のところの部隊か。激しくやられたようだな。相手は聞いたのか?」


 やれやれと八十禍津日神は立ち上がり準備を始める。


「八十禍津日神様、もう少ししたら来ると思いますのでお待ちになって頂ければ結構ですよ。それに少し気になることがありまして……」


 八十禍津日神は手を止めてオロチの方を向き直る。


「聞きたいことじゃと? 道中何かあったのか?」


「まぁな。今はヤソ様に聞くしかないってところだからな。それもあって一番隊の奴らよりも先行してきたんだよ」


 カグツチはそうそうと言った様子で手をひらひらさせている。八十禍津日神も再び座り事の内容を尋ねる。


「そうか。この時期にワシに聞くことと言えば敵の事か……それも過去に何があったということかの?」


 カグツチとオロチは頷く。


「名は?その者の名はなんと?」


「温羅。鬼の一族の生き残りのようです。鬼の末裔が細々と人間界に住んでいるのは知っていますが力はそう強くないはずです。今となっては人間との混血によりその力も殆どないはず。ですが、温羅のそれは話を聞いた限り聞いたことも無いほど大きな力……」


 八十禍津日神はオロチの話を静かに聞いて目を閉じる。


「そうか。温羅と言ったのか……」


 八十禍津日神は温羅の鬼の一族は元々、天津国に住まう神である事。その邪悪さゆえに追放され暴れていたのを吉備津彦命が討伐した事を話した。


「桃太郎伝説か。でも、退治されたんならあの温羅はその子孫てことか?」


「違うじゃろうな。温羅は倒しきれず封印されたのだ。その力を奪われてな。桃也の額額当ての赤い宝石があったじゃろう? あれが温羅の力の源であり、やつの目じゃ」


「桃也の額当て? オロチ、あいつら回収した時、あったかそんなもん?」


 オロチは首を横に振る。


「なんじゃと!? なかったのか!?」


 八十禍津日神は声を荒らげた。


「ちょっと待てよ! 気づかなかっただけかもしれねぇから! それにあいつらも着いたようだぜ?」


 外から数人の足音が聞こえてきた。足音は戸の前で止まり、足音の主の一人が戸を叩いた。


「第一部隊の御影 式です。第一部隊帰還致しました」


「入りなさい」


 八十禍津日神がそう返事すると第一部隊の面々が入ってきた。最後に角が日本生えた褐色の肌をした男が入ってきた。それを見るとカグツチとオロチは身構え臨戦態勢に入る。


「待つのじゃ! カグツチ、オロチ。この男、戦う意思はないようじゃぞ? それに御影達が連れて来たのなら何かあるのじゃろう? なぁ?御影」


「はい。この男は名を岩鬼、温羅の部下で鬼の一族です。そしてこの男から有益である情報を聞きましたのでこうして直接八十禍津日神様に聞いて頂きたく連れて参りました」


 式が話終えると八十禍津日神、カグツチ、オロチは顔を見合わせる。カグツチとオロチは八十禍津日神にお任せしますと目を伏せ頷いた。


「話は分かったが、先ずは桃也じゃが……傷そのものはイザナミが治癒を施したのかの。ほぼよかろう。後はこの呪いのようなもの……ももの時とにているな。見たことの無いものじゃ」


「八十禍津日神様! 桃華も同じようなってことは敵の……温羅の攻撃によるものなんでしょうか!?」


 八雲が心配そうに胸を抑えながら聞く。


「いや、ももはまた別の禍津御霊との交戦中じゃからな。温羅の攻撃そのものでは無いじゃろ」


 その時、横になった桃也の手が微かに動いた。


「!? 隊長!? 大丈夫ですか!? 」


 式が呼びかけると桃也はゆっくり目を開けた。吉備津家の回復力には全く頭が下がると八十禍津日神は天を仰ぐ。


「あの傷で簡易の治療でこうも動けるのかよ……すげぇもんだな。オロチ」


「全くです。カグツチも無理するのであれくらい出来たらどうです?」


 カグツチとオロチも呆れながらその様子を見ていた。


「迷惑をかけたな。みんな、話をするぐらいは出来そうだ」


 桃也は横になりながら部下を労う。


「途中から話は聞こえていたんだけどな。喋ることが出来るまで時間がかかってな。そうだ、八十禍津日神様にはこの呪……もとい吉備津の特異封印術式をお話しないと……」


「今なんと!? 吉備津の特異……!? ならば桃のあれは呪ではなくお主と同じように危機に晒されて発動したと!?」


 八十禍津日神は呪だと思っていたものが違うと聞いて驚く。


「はい。面目ない次第です。まさか、桃華のやつの封印術式が解術状態になるとは思ってもなかったので……これは自分の場合、こういう時の為、自己治癒力を高める力を術式にして体に刻印してあるのです」


 桃也は申し訳なさそうに笑う。一同は呪いとは違うと知り、少しほっとする。


「しかし、術式が呪いに近いようじゃが……」


「そうですね、吉備津家、門外不出の秘術なので、詳しい事は言えませんが呪いと同じ性質なので知らなければ呪に見えますね」


「なら今は聞くまい。ただもものはどう言った内容なのだ?」


 八十禍津日神の問いに桃也は残念そうな顔で遠くを見て、深呼吸してから答えた。


「桃華のは桃華の能力を抑えるというものです。実はあの子は自分よりも遥かに強く、大きい神気を宿しています。小さいあの子が抑えることなど出来ないほどに。本来なら桃華こそ吉備津の次期当主でした。ただその才能故にどんな子に成長するか分からないと、力を封じたのです」


 何とも言えない空気が流れ僅かな時間、沈黙がながれた。


「とは言っても、桃華はそんなことは知らないと思います。かなり幼い時の話ですから。その前にいなくなった桃華も探したいし、温羅の件をどうにかしないとですね」


 話をしているうちにさらに回復したのか桃也はフラフラと体を起こし壁にもたれる。


「おぉ……そうじゃったな。岩鬼とやら、どんな話なのか聞かせてくれまいか?」


 岩鬼は八十禍津日神に頭を下げ話を始めた。


「改めて名乗る。俺の名は岩鬼。鬼の一族であり温羅様の部下だ。温羅様は俺たちを部下と思わずただの同胞だと思ってくれている。そして、そんな俺たちとともに叶えたい夢があると言っていた」


 岩鬼の話を八十禍津日神は目を閉じ黙って聞いている。カグツチも睨みを聞かせてはいるものの大人しく聞く。ただオロチはそうではなかった。


「夢だと!? どんなものか知らないですが多くのものを傷つけ、壊し、奪い得るものなのですか!?」


 オロチは声を荒らげて問う。


「それが勘違いだという話だ」


 飛びかかりそうになるオロチをカグツチは止める。オロチはカグツチを振り返り止めるなと言いかけるがカグツチの今にも燃えだしそうな目で真っ直ぐ岩鬼を睨みつける様子を見て座り直した。


「今から話すことはお前達の知らない真実。そして、我が一族にとっては忘れてはならない悪しき記憶。どうか、最後まで聞いてもらいたい」


 岩鬼は静かな口調でゆっくりと語り始めた……


 ―――続く





物語が二極化してるので簡単に説明します(*´ω`*)


①禍津御霊国……


イザナミと伊邪那美が対面、ももが何やら動いている模様


②黄泉国……


八十禍津日神が指揮をとり防衛戦、カグツチ、オロチ、一番隊が帰還。

鬼の一族、岩鬼が温羅の計画を止める為、八十禍津日神に会談←今ここ


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