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突然ですがあなたは今日から死神ですよ!?  作者: 来栖槙礼
禍津御霊編
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第33話 天津国と鬼の一族

 岩鬼はこれまでの鬼の一族が受けた不当な扱いと温羅が何を成そうとしているのかを八十禍津日神達がに話をした。


「そうか……我ら天津国の神が過去にそんなことを。岩鬼、ワシが謝ってどうなることでもなかろうが、鬼の一族には申し訳ないことをした」


 八十禍津日神は岩鬼に深く頭を下げた。


「八十禍津日神殿、顔を上げてもらえないだろうか。俺もわかってはいる。ここに今生きるものが我らの憎むべきもの達では無いことを。しかし、史実としてあなたがた天津国の神々は謂れなき一族をマガモノとし、消しさろうとした行いは無かったことにはしないで欲しいのだ」


 岩鬼はそう言うと八十禍津日神に話を聞いていただきありがとうございますと言って頭を下げる。

 周囲にいた皆が一様に言葉を失いただ俯く。1人を除いて。


「岩鬼って言ったか? 俺はその話信じるわ。んで、どうすりゃいいのか一緒に悩む。納得いく答えが出るまで何度も付き合うし、力にもなる。鬼の一族のお前らと仲間になれたらと思う」


 カグツチは悔しそうな顔をしながら、己の為のように岩鬼に言葉をかける。


「お前は……?どうして俺の話をそうも簡単に信じそんなに力強く言い切るんだ?」


 初めてあったこの赤い髪の男が何故そうも親身に語るのか岩鬼は全く得心がいかない。


 オロチと八十禍津日神はカグツチの心中は理解している。それがヒノカグツチを受け継ぐものであるが故であり、カグツチ自身の過去に重なるものがあるからである。


「そうだな。俺の事もお前には簡単に話そう。俺は火之迦具土神(ヒノカグツチ)。その名を継承した者だ。そして、ヒノカグツチは生みの親である神を生まれたと同時に焼き殺し、その咎で神により殺されたものだ。ヒノカグツチの体は神の炎その物。触れた全てが灰になる」


 岩鬼もまたカグツチも己の意としない力の為に不当な扱いを受けたものだと理解した。これで得心が言ったのかカグツチに右手を差し出す。


「カグツチ。よろしく頼む」


「応よっ! 絶対に温羅を止めてやろうぜ!」


 互いに固く手を結んだ。



「八十禍津日神様。先程の温羅の話はどうしますか? 事情は分かりましたが……そのような者をイザナミ様を欠いては対処がなかなか……」


 ずっと黙って話を聞いていたアメノウズメが不安そうに問う。


「そうだな……。確かに岩鬼の話では温羅はイザナギ様と同等……それ以上の力を有しておるようだのぉ。力でどうにも出来るとは思わないが」


 八十禍津日神は具体的にはどうしたものかと思い悩む。今までこのことを造化の三神をはじめ、イザナギが知らないわけがない。という事は今回の事をどうするのか彼らを頼る事は無駄だと考えていた。


「岩鬼。もう一度、俺を温羅と対峙させてもらえないか?」


 桃也が岩鬼をまっすぐに見据え言葉をかける。


「吉備津……お前に何が出来る?」


「何が出来るかは分からない。それでも温羅に真摯に向き合わなければいけないのは俺じゃないのかと思ってな。因縁は俺が、吉備津が断ち切らなければならないと思う。自分本位なのは分かっている。それでも始まりが吉備津ならその終りも吉備津がやらなければならない」


 桃也の目には自分の命をも厭わない覚悟が見える。岩鬼も数々の修羅場を見たが故にその覚悟が真偽を問うまでもないことは桃也を見て分かる。


「そうか……だが……いや、そこまでの覚悟があるのであれば俺はお前に何も言えない」


 岩鬼は桃也では到底、温羅を止め説得する力はないと伝えようとした。しかし、吉備津の当主が覚悟をしているのにそれを止める事はしてはならないと言葉を一瞬詰まらせた。


「すまない。ありがとう。それで皆には俺が温羅話ができるように温羅の周りから戦力を削いでもらいたい。岩鬼には申し訳ないがその時は俺と温羅だけにしてもらいたいんだがいいか?」


 岩鬼は疑問を抱いた。何故こうも力の差があるのにこの男は正面から温羅に挑むのか、理解出来ないでいる。怪訝そうな顔の温羅に八雲が横から肩を叩く。


「岩鬼! うちの隊長あれで結構、根に持つのよね〜。だからさっきの風穴も腹ん中は煮えたぎってんのかもよ?」


 そう言いながら笑う八雲を見て岩鬼はそんな理由でと驚く。


「そう。そんな理由よ? だから温羅とサシで構える必要は無いんだけど、そうする理由もきっと大したことないのよ! あの人の場合はね!」


 岩鬼は何を考えているのかさっぱり分からない。温羅に力が及ばないのであれば数の有利を唯一の可能性として、そこで気を失っているもう一人の鬼、真鬼(まき)と自分が鬼の力を解放し皆で止めるのが最善だと思っているからだ。それを大きな勝算がある訳でもなく感情論に近い理由で動く天津国の者たちに驚きを禁じ得ない。


 あんたも分かっているはずよと八雲は岩鬼の背中をバンと叩いた。


 それから八十禍津日神は桃也を軸にどう布陣するのかという事を皆で話合うことにした。


「それにしても今、この状況で温羅に全ての真実を黄泉国で語られては……黄泉国どころか天津国を本当にに分してしまうな。これは何としても阻止しなければ!」


 未曾有の危機が訪れようとするなか、黄泉国での争いはさらに激化して行くのであった。



 数日が経ち、八十禍津日神らの策も纏まりつつあった。そんな時、睨み合うように拮抗していた前線が崩れ禍津御霊が中央へと進撃してきたとの連絡が入る。


「守りが薄くなってる! 東の2班と3班は中央へ救援急げ!東の補強にはウズメの部隊が回ってくれ! 戦線を下げないようにだけにし、被害は最小限に抑えろ!」


 カグツチは神庭宮の前に築かれた本陣内で各戦線へと指示を出しながら目まぐるしく動く戦況に対応していた。


「カグツチ。どうですか? 戦況は思わしくないと聞き西を織姫たちに任せこちらに戻りましたが」


 オロチが本陣に戻るなりカグツチへと駆け寄る。口調こそ落ち着いてはいるがかなり慌てているようでいつもきちっと着ている軍服の襟元が乱れている。


「オロチ戻ったのか!? ならここはお前に任せんぞ! 俺は中央の戦線を押し戻しに行く!」


 カグツチはそう言うと額当てと手甲を締め直してながら本陣を出ようとする。


「カグツチまだダメだ! 今いなくなったらお前の指示が変わり、戦線が不安を感じてしまう!」


 オロチは慌ててカグツチを止める。


「だけど俺が出れば押し返せる! 今ならまだな!」


「だから、私が行くって言ってます!」


 オロチがカグツチを壁に押し付け残るように強く訴える。


「ちっ。だったら最初からそう言えよ……オロチ頼むぞ。怪我して泣いて帰んじゃねーぞ!」


 少し照れながらオロチを心配するカグツチは横を向いてハッとする。


 オロチとカグツチ以外の本陣の武官と給仕をしている女性職員は動きを止めてホクホク顔で二人を眺めている。


 陣内の各所で「尊い……」と聞こえてくる。カグツチは体中に鳥肌がたち青ざめながら叫ぶ。


「オロチ〜〜〜!! もう、いいからいけぇっ!! いつまで俺の前にいんだっ! この、ド変態っ!!」


 オロチはふふふと笑いながら本陣を出ていった。


「いつもだがカグツチは何故あんなに私の事を唐突に避けることがあるんだ?」


 そう言いながらオロチは前線へと向かっていった

 。


 カグツチは周囲の職員達を見回し咳払いをする。蜂の子を散らすようにそれぞれの持ち場へと戻る。


 全くと言いながら先程まで指揮を執っていた場所まで戻る。中央にオロチが向かったことを頭に入れて再度戦況を見直す。


「……これだと西側が少し補強が欲しいな。回せる戦力は前鬼と後鬼か」


 カグツチが二人を呼ぼうかと考えていると通信が入ってきた。


「カグツチ! 聞こえますか!? 中央の敵戦力が後退したのですが、大きい何かが商業区上空に出現したんです!」


 は?大きい何か?なんの事だオロチ?状況が全く伝わらない。


「オロチ。それはどんなもんだ?」


 カグツチは冷静に問いかける。


「何だか白い……繭のような物が現れた……し……る? ……が……」


「あん? 切れやがった。何だ? 今のノイズは?」


 カグツチがよく分からないうちに通信が切れた。そして再び通信が入る。


「どうした!? オロチなんか妨害されてんのか?」


 カグツチがそう言うと意外な人物からの通信であった。


「カグツチか!? オロチじゃなくて悪い!! 倫也だ! いきなりだけど神庭宮の人達連れて逃げてくれ! 東の神木の方へ!八十禍津日神様もいるんだろ!? 早くしてくれ!」


 カグツチは突然の倫也からの通信に驚き戸惑う。


「どこにいるんだ倫也!? お前、禍津御霊に行ったんだろ!?」


 さらにカグツチが返すと聞いたことの無い声が聞こえてきた。


「カグツチさん!? 初めましてだけどそれはまた今度!! ももちゃんです! 今話してる時間ないの! 早くして! このままじゃイザナミ様が黄泉国を壊しちゃう!!」


 吉備津桃華!? なんで倫也と一緒に!?カグツチは状況が整理出来ないでいるが、一先ず倫也達の話の通り神庭宮からの避難を直ぐに指示した。


「倫也!! イザナミ様がなんかあったのか!? 後でちゃんと説明しろよな!! 」


 乱暴に通信を切るとカグツチはウズメに東の神木へと誘導を指示し、八十禍津日神へ避難する旨を伝える。


「どうなってんだ!? くそっ!! オロチ無事に戻れよ……」


 ―――続く

次はまたまた禍津御霊でのお話になります(*・ω・)ノ


行ったり来たりで疲れてしまうかもしれませんがもう少々この流れにお付き合いお願い致します┏○ペコッ

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