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第33話 鑑定

「『逃げてください』?いや、そんな場合じゃ無いでしょ!とりあえず詠唱を途中で止めて一緒に逃げよう!」


メイの発言の意味が分からず、俺はゆっくりとこちらに傾いてくる塔からの避難を促す。

避難といっても少し塔を回れば逃げられるので、大した距離では無い。


「え、詠唱はお、終わっていますで、でもこれがなんなのかわから無いんです」


メイは光を放つ両手に力を入れて歯を食いしばりながら話す。

辛そうなのは分かるが要領を得ない。俺は仰向けの体を起こしてメイに問いかける。


「なんなのかわからないって、メイが詠唱したのはヒールなんだろ?」


「え、詠唱はそうだったのに、魔力の集まり方が全然違います。い、今はなんとか詠唱維持していますが、この量の魔力が暴発したら危険です!」


「じゃあどうするんだ?」


「こ、この呪文は行使します。ただし、対象はシューヤさんでない何かにしないといけません」


「大体の魔法は効かない自信があるから、最悪俺に向かってかけてもーー」


話をする俺たちの上に影がかかる。

影とはいっても夜が迫る今の時間、そんなに濃いわけではない。

それでも俺を見上げさせるには十分で、それを見た俺は不覚にも硬直してしまった。


「メイ、マジで逃げよう」


圧倒的な質量の氷が俺たちに向かってあと数秒もないうちに倒れてくる。


「シューヤさん!な、何か生き物を!対象を下さい!」


「俺がいる!俺に使え!」


「シューヤさんになんか使えるわけありません!早く!」


いや、《ヒール》だしな。

そんな、殺せって言ってるわけじゃないのにな!

そして残念ながら、世界中の魔素をしまえるようなデタラメボックスでも、生き物だけは入れられない。

氷の塔はすぐ上まで来ていて、俺のAIG出なかったらもう逃げることもできないだろう。

メイを騙そうか。


「メイ!後ろにスケ……サダコがいるぞ!」


スケルトンと言おうとしたが、あれは生き物と言えるか微妙だと思ったので、先程聞いたばかりの名前を出す。

俺が名前を知っている魔物はドラゴンとスケルトンとサダコだけだ。あ、ドラゴンの腹で刺さったトゲの持ち主の魔物ジャイアントもそうか。俺は根に持つぞ!



そして俺はメイの背後に回ろうと移動を開始してーー


「《ヒール》!!」


メイは俺が後ろに行く前に《ヒール》を発動してしまった。


当然、そこに生き物はいないのでメイの《ヒール》は対象を取れず、不発になってメイが危ないーーはずだった。


しかし、《ヒール》の光はメイの手から離れて、氷の塔に当たると、まるで伸びた時の映像を逆再生したように塔が凄い勢いで縮み始めた。


塔は縮み続け、俺たちに当たる前にはそこにはなにも残っていなかった。


呆然と立ち尽くす俺たちの元に田上が駆けつけた。


「キャー!」


メイが悲鳴をあげる。

田上を見て。

やってきた田上の目は光っていて、俺でさえ、一瞬、擬態する魔物か何かかと思ってしまった。

だって髪で顔を隠し、その隙間から目の位置に光とかホラーじゃん!


どうやら田上は《鑑定眼》を取っていたらしい。


田上は俺とメイを鑑定すると、一言。


「……なにこれ、キモい」


「いや、お前に言われたくないから!」



〜〜〜



謎の塔消失の原因もわかるかもしれないので、田上に3人のステータスを聞くと、話すのが面倒なのか、石畳の地面に意思で引っ掻き傷をつくって書いていく。

俺は値を読み上げながら確認していく。

ちなみに田上は何もないタッチパネルの操作を目を光らせながら行なっている。

俺もあんな風に見えるのか……

見にくそうだし、髪切ればいいのに……


***


LV28

HP:92/94

MP:0/0

STR:67

VIT:94

INT:67

MEN:175

AGI:67


***


うちゅーじん


LV3527

HP:21151/21169

MP:35/35

STR:7067

VIT:7067

INT:10591

MEN:3539

AGI:10591


***


さかな


LV865

HP:2590/2605

MP:4273/4333

STR:877

VIT:3469

INT:2605

MEN:3469

AGI:877


***


なんかおかしい気がする。


「メイってこんなに強かったの?」


「何言ってるんですか!そんなステータス持ってたら、冒険者ならSSランクの中位に入れますよ!

というか、強いと思ってましたけど、シューヤさんの強さが人類最強とかそういうレベルじゃないですよ!

高位のドラゴンより圧倒的に上ってあり得ないです!

見間違えじゃないですか?」


「やっぱり?田上、俺のとメイのは見間違えじゃないかな?」


メイが凄いテンションなので白々しく乗っておく。


「……宇宙人、大陸を滅ぼしたって言ってた」


やっぱり無理があった。だって田上には全部話したんだもん。


ん?俺はこの町で虐殺する前から魔物を大量に殺してたってことか。

そいつらのことは考えもせずに、あの大陸に人がいなかったことだけ願って、目の前に死体が残った時だけ後悔か。


つくづく俺はクズだな。


とにかく後味の悪いここにいる死体はできるだけ供養したいな。

この話が終わったら取り掛かろうと心に決めて少し下がったテンションで口を開く。


「メイも俺と旅してる時に結構魔物倒したし、それでじゃないか?」


「そういうことですか……確かによく考えれば大量のスケルトンと魔族と神速の魔王、この町の魔物に氷結の魔王って結構な数ですもんね」


「そういえば今回は魔族って奴がいなかったけどあれは?」


「魔族を知らないで魔王を倒そうとしてたんですか?

というよりニッポンって相当お気楽な国なんですね。

魔族は魔王と魔人を総称したもので、魔人は魔王の眷属にあたります。

魔物が長く生き、強化を続けると人の形に近づき、知性の高い魔人になると言われていますが、正確なことは分かっていません。

魔王も基本は魔王が死んだ時にその眷属の魔人が後を継ぐことで受け継がれると言われていますが、魔人も個体数は多くないので、眷属にいないことも多いそうです。

ちなみに勇者様は魔王を倒す時に眷属も倒したそうなので、三大魔王のの後を継ぐ魔王は出ませんでした。

そうして人族が支配するようになったのが人大陸アンティスです」


なるほどな。人大陸には魔王はいないのか。

そして忘れていたが俺はメイにニッポンを故郷として話していたんだ。


「田上、俺はニッポンっていう辺境の国に住んでいてこの世界の知識に明るくない設定だからよろしく。

ニホンだと勇者の故郷と同じらしいからニッポンな。

諸事情でニッポン人は素っ裸で生活してることになってるから田上もちょっとその服を、ね」


ちょっと下心を出してみる。もちろん冗談だよ?


「……やだ、変態。頭の中も見た目も」


あんなことを言ったし、頭の中を変態と言われるのは健全な男子高校生なら当たり前のことなのでなんとも思わないというか名誉だが、見た目はちょっと傷ついたよ!


「見た目は言い過ぎでしょぉ田上さぁん冗談じゃないですかぁ」


「……まともな服を着てから言うべき。話し方ウザい」


あ、俺、今海パンにおしゃれなドクロ帽子でした。


「……あとそのドクロ、呪いの装備」


「マジか!どんな効果かわかる?」


いや、薄々感ずいてたけどね!

全然抜けないし!


「……ちょっと見て」


そういうと、メイは再び石を手に取り、文字を書いていく。

こんな地面なのに字が綺麗!


***


緑竜の頭蓋骨


グリーンドラゴンが戦いに破れた時の怨念が魔力とともに宿ったもの。

魔法に対する高い抵抗をもち、あらゆる魔法から装備者を守る上に、風の魔法に補正をかけるが、AGIがさがり、さらにどうやっても外れない。


***


うーん、なんか呪いと言う割には思ったよりマシだった。

命を削るようなやつがあったら怖かったけど、AGIは高いし、気にならない。

こいつのおかげで《ウィンド》のコスパが異常に良かったのか。


問題は見た目か。


「メイ、この格好で普通の町に入れるかな?」


「無理だと思います。地上人の町だと、体は隠さないといけないでしょうし、その頭蓋骨も被ったままでは店などの中には入れないでしょうね」


そうすると格好をどうにかしないといけないらしい。


「あのー、他の町の話の前に、私のスキルについて知りたいんですが、レベルだけであんな風に変わるのでしょうか?」


〜〜〜


「えっとつまりは《ヒール》が2種類あるってことですか?」


「そういうことらしい。正確には元々使えた回復魔法の《ヒール》と、レベルが上がったことで覚えた時間魔法の《ヒール》って事らしい」


メイに田上に質問するように促されて田上に聞いた内容を俺が伝える。

さっきの少しの時間でそんなに仲が悪くなってしまったのだろうか?


「時間魔法、ですか?」


「えっと、田上?」


「……《時間魔法》、時に関する魔法を使うことができる」


これは田上とメイの話を聞いていて初めて分かったことだが、この世界の住人ーー少なくともメイの知る限りでは、《回復魔法》といったスキルを持っていて、その中で個々に使える魔法があるらしい。

スキルのレベルが上がれば、新しい魔法を覚えられるってことだ。

チートを使っている俺たちの方が不自然なのだろう。


「時に関する魔法を使うことができるスキルらしい」


いいな〜カッコイイな〜。


「そうですか、それは難しそうですね」


そこでメイが考え込んでしまい、会話が途切れる。

田上も役割を終えたとでも言うように目の光を消す。


俺もそろそろ供養を済ませて最悪の思い出を清算し、この町を出たい。


ありがとうございます!

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