第31話 会遇
俺は田上と俺の部屋にいる。
今日は日曜日。
そう、異世界に行ける日だ。
クラスメートみんながガチっている球技大会が明後日に迫る中、ここでスキル選びを適当にするわけにはいかない。
その球技大会の朝練のために毎朝可愛い妹に殺されるリスクをおい、寝不足で授業中寝るという生活を送ってきたのだ!
……正直授業中寝るのはいつものことだし、殺されかけたと言ってもあの可愛い妹のうまい朝飯が食べられるという特典付きだけどね!
あんまりにも寝ているようで、本人いわく田上は授業中ガスガス蹴って起こそうとしているらしいのだが、まぁ、俺にはVITがあるしな。
俺を本気で起こそうと思ったらどっかの妹さんみたいに首や息子を狙うしかない!
鈴音さん1度だけ息子を狙って蹴り放とうとしてきましたからね!
自分でも驚きの未来予知並みの反応でよけたけど!
「……宇宙人、早く」
「ごめんごめん」
田上はもうスキル選びを終えたようだ。
まさか使うことになるとは思わなかった通信機能で俺は田上と通信を行っている。
ちなみに通信相手のチートの数は2つらしい。
取り敢えず前回取ってないことで後悔した《アイテムボックス》とメイがいるので《言語理解》は確定だな。
《絶倫》はとりたいが、今は必要なさそうだし、もっと重要なものがあるだろう。俺はTPOをわきまえた男だ。
サッカーで使えそうなのは、
《ウィンド》くらいかな。
***
《ウィンド》LV.1 MP3
風魔法、弱い風を吹かせる。
***
この風を操ればボールを狙い通りの場所に動かせるかもしれない。
LV.MAXになったら相手を殺せるような代物になりそうな気もするが……
んー、この前失敗した《状態異常耐性》とこの《ウィンド》でいっか。
「田上、ガチで異世界いっちゃうからな?」
「……うん、楽しみ」
「そんな意味で確認したわけじゃないんだけどな……」
田上の能天気さに少し振り回されながらも俺はもう一度あの異世界に向かい合う覚悟を決めてスタートボタンに指を置く。
「……リンクスタート」
俺は飽きて言わなくなったセリフが隣から聞こえた。田上って異世界とかにも明るいし、若干オタク入ってんのかな。
そんなことを思う俺の視界が暴力的な光で塗り潰された。
〜〜〜
俺たちがやってきて初めて見たのは空。
若干曇った空がパノラマのように広がる。
足元を見ればメイ。その下には魔の町が見える。
透明度の高い氷の中に閉じ込められているメイは恐怖か寒さかとにかく震えているようだ。
俺はメイを救うために拳を握り、殴りつける。
「痛え!」
殆んど砕けたが人が通れるような穴ではない。しかも俺の力で尖った氷に刺さればダメージがはいる。
音に反応したのかメイが目を瞑ったまま涙で濡れた顔を上に向け俺を見る。
「シューヤさん……!」
俺の言う通り目を開けてなかったのか。
俺はその言葉には答えず、足を使って氷の牢獄を壊し、中に入るとメイを抱きしめた。
「泣くなよ、メイ」
「シューヤさん、だって、だって優しいシューヤさんが笑いながら魔物を殺すんですよ?私の側を魔法らしきものが通ることもあったし、なんだか持ち上げられたりもして……」
「ごめんメイ。もう大丈夫。心配かけたな。俺はもう、必要のない殺しはしない」
目を閉じたままあんだけ連れまわされて、聞こえるのは魔物の断末魔と俺の笑い声。
さぞかし怖かったのだろう。
「衝撃的な光景を見ることになるかもしれないが、開けたいならもう目を開けてもいいぞ」
メイが恐る恐るといった感じで目を開ける。
「キャッ!な、なんで浮いてるんですか⁈」
「おいおい、よく見ろよすげー透明な氷の上だよ」
「こ、氷?確かに冷たいです」
「……ねぇ、私は?」
「田上、悪りぃな。とにかくメイを落ち着かせないとと思って……」
「だ、誰ですか‼︎その髪、もしかして恐怖の魔物サダコ⁉︎」
「いや、違うよ?俺の仲間?友達?みたいなものだな。苗字が田上で名前が煌」
というか、この世界にもそんなのがいるのかよ!しかも魔物!
「なるほど!つまり、コウさんはシューヤさんの召喚魔ってことですね!」
「いや違うよ!ディスイズ人間!これは人間です!魔物じゃない」
「やだなぁ。だって顔隠してますし、シューヤさんならサダコをテイムしててもおかしくないですし」
なんなんだろう。メイの中での俺のイメージは。
俺がテイムしたと言えそうなのは鳩のハットンくらいだ。
この世界の人間には考えられないくらい健全だと思う。
「田上、顔見せてやってくれないか?」
「……?やだけど?」
なんでだよ?お前が顔見せればこの面倒な状態解決されんじゃん!ちゃんと話聞いてんのか?
「とにかく!人間だから!」
「でも人間だとすると女の子に見えるんですが?」
「いや、女の子だけど?そうだよな田上?」
「……失礼」
田上の蹴りがスネに当たるが、痛くはない。
「悪りぃ悪りぃ、そんなことで怒るなよ」
ガスガス
まだ蹴り続けるつもりらしい。
ん?蹴ってるのは田上じゃない?
「私というものがありながらハレンチです!2人でラブラブの旅ができると思ってたのに!」
あー鈍感系の主人公ならちゃんと聞き逃すところなのだろうが俺の耳には届いてしまった。
マジか、本当にそういう感じだったのか。
「えっとゴメンなメイ?」
「別に私をもらうとか言っておきながら女の子連れてることなんて全く怒ってませんよ?私より貧乳ですし?顔隠してますし?」
あーさっきまで泣いてたのが嘘みたいに怒ってる。
ガスガスガスガス
ん?増えてる?
「……貧乳の何が悪い」
俺のスネは女子2人のサンドバッグになってしまったようだ。
ありがとうございます!
評価してもらったようでありがとうございます!
この先異世界がしばらく続くと思います!