緊那羅の災難
「…………」
そこにはあまりの衝撃で何も言えなくなった緊那羅がいた。
「よくやった、南」
坂田がまさに労をねぎらうと言った風情で南の肩に手を置いた。
「ふ……任せろ。自信作だ」
「違和感ねぇな…」
「恐ろしいほど似合ってるな…」
そして4人は一暴れ――もちろん緊那羅の抵抗の為の一暴れだ――した汗を拭う。
南の……いや、彼らの自信作を前に。
「……なな…な…」
正気に返りかけて何か喋ろうとしている緊那羅をしげしげと眺め、ぽつりと一言。
「……しかし何か足りないような……」
「おまえもそう思うか、坂田」
「実は俺も思ってた」
「おまえもか」
うーむ、と考え込む4人。
――と、4人同時にぽん!と手を打ち、顔を見合わせた。
「アレだ」
「そうだアレだ」
「アレだな」
「やっぱり足りなかったな」
「ふ…」とこれまた同時に悟ったような微笑みを浮かべ、――仕事に取りかかった。
「なにするっちゃーーー!!」
「中島! そのまま抑えろ!」
「ラジャー!」
「大人しくしろっての!」
「ここまで来て抵抗すんなって!」
「どこさわってるっちゃーーーー!?」
「おまえが暴れるからだろうが!!」
「ティッシュ! ティッシュ詰めろ!」
なにやらセリフだけ聞いているといかがわしいことこの上ない。
「イヤだっちゃー! 放すっちゃー!!」
「京助!ハンドタオル発見!」
「よっしゃそれも詰めちまえ!!」
「なんなんだっちゃーー!!
やめるっちゃーーー!!」
「バッカ! これがなくてどうするんだ!」
「なんでもできる証拠だぞ!!」
「そうだぞ!」
「ワケわかんないっちゃーーーー!」
緊那羅の必死の抵抗(もはや叫ぶだけ)も虚しく、着々と準備は進んでいくのだっ
た。