Episode 12 駅中の油そば
昨日から雨続き。
今日から週末にかけても雨が続くようだ。
夏の終わりで若干の蒸し暑さも感じるが、一時に比べれば大分マシである。
さて今日はどこのラーメン屋で昼食をとるかな。
ラーメンまでは決まっているが、なにぶん美味しいラーメン屋が多すぎる。
ただ、ランチタイムを過ぎた15時。
空いている店はいくらかしぼられるだろう。
今日は行きつけのクリニックに書類を出す日だ。
動線的には、駅中の油そばがいいかな。
肉を食べたい。チャーシュー増ししちゃうか。
考えながら地下通路を下っていく。
駅直結の地下通路が東口まで延びているのだ。
雨の日や真冬、真夏は便利の極み。
涼しくて快適な地下通路は、同じ考えの人が多いのか、いつもより人通りが多い。
奥のエスカレーターを上がればもう駅中だ。
駅中は両側に店が並び、更に賑やかさがアップする。
その並んだ店のなかに目的の油そば屋がある。
券売機の前までたどり着き、少し悩む。
海苔を食べたかったが、トッピングの海苔は休止しているようだ。
チャーシューも食べたいし、元々海苔が入っている肉盛三昧ってやつにしてみるか。
チーズを前から合わせてみたかったのでパルメザンチーズもトッピングしてと。
交通系ICカードで払い、ピピッと購入音がしたら店員が駆け寄ってきた。
「いらっしゃいませ! 食券をお預かりします」
「真ん中のこれかな、どぞ」
「ありがとうございます。席までご案内いたします」
「はーい」
時刻もあってか、店内の人はまばら。
カウンターの端っこに案内してもらえた。
左利きの身としてはラッキーだ。
カウンターの店はどうしても肘がぶつかりやすいからな。
席につくと直ちに、お冷と卵スープがサーブされた。
「飲み物のおかわりはこちらのコーナーでセルフとなっております。黒烏龍茶もありますのでよかったらどうぞ! レンゲやお箸は引き出しのなかにあります」
「ども」
カフェインをなるべく控えるようにしてるので、今回は水だけ飲んでおこう。
口直しにはとても良さそうではある、黒烏龍茶。
さてさて、お冷を一口飲んで、卵スープをいただきますかね。
レンゲを言われたとおりに引き出しから取り出し、スープをすくって一口。あちち。
卵スープはとろみがあって、旨味もいい塩梅だ。
中華料理屋のチャーハンについてくる、とろとろの卵スープを彷彿とさせる。
ふうふうと、少しずつ冷ましながら夢中になって飲む。
気づけば小さなお椀一杯の卵スープがなくなってしまっていた。
おかわり無料だったよな、たしか。
麺が来ることも予想して、無料トッピングも頼んでおくか。
「すみません」
「はーい! おうかがいします」
「卵スープのおかわりください。あと、にんにくと、たまねぎも」
「お持ちします! お椀お預かりしますね」
「はい」
お椀を洗い場に下げてもらい、新たなお椀に卵スープが注がれた。
またアツアツのスープが目の前に戻ってきた。
これこれ。今度は引き出しにあった調味料を入れてみよう。
七味をとんとんと入れると、スープに鮮やかな赤いかけらが散らばって見た目にも映える。
先ほどと同じくあちあち、としながら飲むと、更に温まりそうな味に仕上がっている。
スープのおかわりに手を付けて、それほど経たないうちに本命がカウンターに届けられた。
「お待たせいたしました! 肉盛三昧パルメザンチーズトッピングです!
こちらトッピングのたまねぎとにんにくです」
ぺこりとお辞儀をして、カウンターに置かれた油そばに向き合う。
トッピングが盛り盛りすぎて麺が見えない。
コーナーごとに綺麗に盛り付けてあり、見るからに食欲をそそるビジュアルだ。
海苔、生卵、チャーシュー数枚、塊コロコロチャーシュー、パルメザンチーズ、ねぎ、メンマ。
とりあえず空いている一角に玉ねぎの山を作ってと。
割り箸を割って、片手に割り箸、もう片方にレンゲ。
最初に下から麺をすくい上げて、全体をタレと絡み合わせる。
無心になってまぜまぜして、茶色いタレを絡めに絡める。
卵も潰れてとろりと混ざっていく。
パルメザンチーズは粉から液体に溶け消えゆく。
さて、ビジュアルがすっかり変わったところで、ここからが油そばの本番だ!
お箸でつまみ、つるりと一束の麺をすすり上げる。
パルメザンチーズがよく効き、醤油のタレとよく合うな。
また一口、と麺を食べつつコロコロチャーシューも一緒に口に入れる。
ロース肉だろうか? 豚の旨味がつよく、脂身が少ないようだ。
ヘルシーでいいな。
油そば食いながら思うことじゃないけれど。
メンマをチャーシューと一緒にコリコリと食べると、ラーメンって感じの味わいだ。
よし、ニンニクを入れよう。
私は数口食べて、早々にニンニクを入れてみた。
生ニンニクだけあって、味がワイルドな感じに引き締まった。
はふつるる、と何口も食べ、合間に具もつまむ。
半分ほど減ったところで卓上調味料のカツオ粉を豪快に混ぜ入れる。
魚の旨味が加わり、いい感じの味変だ。
もともと醤油ダレなんだから相性が悪いわけがない。
カツオ味をまた数口すすって、今度は酢とラー油をとぽりと一周!
混ぜ混ぜ、つるつる。あー、これぞ油そば。
酸味と辛味、複雑な旨味が混ざりに混ざり、とにかくうまい。
どでかいチャーシューを一口食んでは、麺を一口。
繰り返し繰り返し、食べていたら完食だ。
底の方に残っている汁や玉ねぎのかけらをレンゲで食べ尽くしてと。
最後にお冷を飲み干したらごちそうさまだ。
荷物を整え、店を出ると店員が入り口まで見送ってくれた。
なんていい店なんだ。ちょっぴり恥ずかしい気分だけど。
私はクリニックの方へ歩きだし、逆方向だったことに気づき慌ててUターンした。
もっと恥ずかしい気分になってしまった。
まあでも、今日もいいランチタイムだった。




