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③
停留所でバスが止まる。
妊婦さんが乗り込んだ。
席はない。
代わろうか?
目を伏せた
「得するわけではない。知らないふりをしましょ」頭の中で言い訳をする。
「良かったらどうぞ」男の人の声が聴こえた。
何故か敗北感を感じ顔を上げる。
父と同じくらいの年齢だろうか?背筋が伸びてかっこいい紳士に見えた。
私と同じくらいの人と乗っているようだ。
娘さんが通路側に移動して妊婦さんが窓際に座った。
「子供が立てよ」心の中で呟く
次の停留所では杖をつきながら「あ!いつも意地悪婆さんだ」
紳士が声を掛ける。。。「可哀想に嫌な思いするのに」(心の声)
お婆さんは拒否しているようだった。「やっぱ。ね」(心の声)
紳士が何かを老婆に耳打ちをしている。