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人間やめても君が好き  作者: 迷子
五章 知恵の迷宮 砂の涙
119/141

地獄で反省してろ

 ガチッ、ガチッ、と。【グプ】は鋏を鳴らす。

 その僅かな動作に、ラッシュの背にザワリとした寒気が走った。


「来るぞ!」


 言った次の瞬間、【グプ】はガパッと大きく鋏を向け、後ろに庇われている術師二人に向ける。すると、その鋏から何かが飛び出した。


「【聖なる盾】よ!」


 反射的にネコタが結界を張る。

【グプ】が飛ばしてきた武器が結界に当たり、パンッと音を立てて弾け飛ぶ。ビリビリと結界が揺れるほどの衝撃に眉をひそめ、ネコタは結界の前で散らばるものを見て叫んだ。


「──砂です! 砂を固めて飛ばしてきてます!」

「砂の【吐息(ブレス)】か。飛び道具まで使い出すとは、厄介な」


 近距離で無敵を誇る【グプ】の、距離を取るという唯一の安全圏を潰され、ラッシュは苦い顔をする。

 しかし、それを嘆く暇もない。【グプ】は単発で終わらせず、ドドドドドドドッと砂の【ブレス】を連続して放った。


「うっ……あああああああああああっ!」


 息も吐かせぬ砂の連撃に、結界が揺れる。機銃の弾幕に晒されたような状況に、ネコタは叫び声を上げた。

 恐怖に負けそうになるが、後ろにいるアメリアとフィーリアを思い出し、なんとか力を振り絞る。激しい衝撃を感じながらも、結界はなんとかその形を保っていた。


「あわ、あわわわっ! 結界がすっごく歪んでますけどっ!?」

「うん、不味いかもね。ネコタ、大丈夫?」

「ぐっ……! はい、なんとかっ! ギリギリですけど、僕の方が上みたいです!」


 今も続く砂の【ブレス】に耐えながら、ネコタは声を絞り出す。結界の維持に力を取られてはいるが、結界の強度の方が上のようだ。


 長くは無理だが、一時的になら防げる。そう判断するネコタに、更なる絶望が与えられた。

【グプ】の尾が高々と上がり、先端がネコタ達の方を向く。次の瞬間、ヒュパッと空気を裂く音がした。


 キィイン、と金属同士が当たったような耳障りな音がする。ネコタは目を凝らしてそれを見た。細長い針が、結界の手前で落ちている。


【ブレス】に加え、こんなに鋭い針が……と、ネコタの顔に焦りが浮かぶ。思った以上に長くは保たないかもしれない。そんな不安からじっと落ちた針を見ていたネコタが、何かに気づきギョッと顔色を変えた。


「ひっ!? ラ、ラッシュさん! 砂! 砂が溶けてますっ!」

「何っ!?」


 言われ、ラッシュも落ちた針を観察する。

 見れば確かに、針の先端に触れたところから砂がドス黒い色に染まり、ドロドロに液状化していた。


「砂が溶ける程の猛毒……! 絶対に針に触れるな! 人が触れたらどうなるか分からんぞ!」

「ふ、触れるなと言われても……ああ!?」


 カンッ、と。針の一本が結界に刺さり、宙に浮いたまま止まる。針の硬度は、ネコタの結界を上回っているようだ。その先端から溢れた毒がポツリと地面に落ち、ジュッと砂を溶かす。間近でそれを見てしまい、ネコタは青ざめた。


 一本の針が突き刺さったのを皮切りに、次々と針が結界に刺さっていく。針の数が増える程、刺さり方が深くなっていった。それを後押しするように、【ブレス】が結界を揺らす。ピシッ、ピシッと、とうとう結界にヒビが生じ始める。


 結界の中に居る三人は、ジワジワと迫る恐怖に背筋を凍らせた。


「あわ、あわわわわわ……!」

「これは……やばいかもね……」

「そんな冷静に言ってる場合ですか! 誰でもいいから、なんとか……!」


「分かってる! エドガー! ジーナ!」

「言われなくても!」


 攻めあぐねいていたエドガーが、大きく迂回して【グプ】に斬りかかる。甲殻に傷をつけたものの【グプ】は気にもとめない。


 ラッシュも矢を放ち、幾つかの【グプ】の目を潰して援護した。しかし【グプ】は潰したそばから目を再生させていく。

 

 攪乱すらまともに出来ないことに、二人の焦りが募る。


「クソが! とことん無視かよ!」

「まずいな。このままだと……ん? ジーナは何をして──」


 いつもなら誰よりも早く殴りかかっている奴が、消えている。

 ラッシュは矢を放ちながらジーナを探し、そして、その姿を見て目を瞠った。


 ジーナは気配を消し、再び【グプ】の真下に潜りこんでいた。腰を深く落とし、体を捩じっている。ぎゅっと引かれている腕が輝いて見えた。渾身の一撃を放つために、練り上げた【氣】を一気に放つ!


「──ぶっ飛べ!!」


 大地を蹴り、その力を乗せ、全力で突き上げる。


 ジーナの拳が【グプ】の胴体に触れた瞬間、ズドンッと、まるで大規模の殲滅魔法を受けたような音を立て、【グプ】の巨大な体を宙に持ち上げた。実戦ではまず不可能なほどにじっくりと練り上げた【氣】による一撃は、さすがの【グプ】すらも無視できぬダメージを与える。


 潰される前に素早くジーナはそこから抜け出す。その直後、ドスンッと盛大な音を立てて【グプ】が地に落ちた。ギギィ……と苦し気な声を漏らしながら、ゴソゴソと身じろぎしている。


 その【グプ】の姿を見て、ネコタはほっと息を吐いた。結界を解き、疲れた表情のままジーナに礼を言う。


「あ、ありがとうございます。あのまま押しつぶされるかと思いました……」

「ああ、よくやったぞジーナ。お手柄だ」


 ジーナの行動に、ラッシュも賞賛する。むやみやたらに攻撃をするのではなく、焦らずに、確実な一撃。あの判断が無ければ、ネコタ達は【グプ】の攻撃に飲み込まれていただろう。


 しかし、二人から褒められてなお、ジーナはしかめっ面を作っていた。


「マジかよ。あれを食らってあの程度で済むのか。身体を破裂させるつもりで殴ったっていうのに、どんな体をしてやがる」

「単純に、お前の威力が足りなかったんじゃねぇの?」


「バカ言え。量はもちろん、練り上げて威力を可能な限り底上げした一撃だぞ? 一人じゃほぼ使えない、時間をかけてとことんまで破壊力を追求した打撃だ。それであの程度じゃあ、さすがに自信を無くすぜ」


 茶化してくるエドガーにムキになりつつも、げんなりとした顔をするジーナ。

 その話を聞き、ラッシュは難しい表情で呟く。


「伊達に姿を変えた訳じゃない、か。まさかここまで強くなるとはな」

「それで、どうする? この場所じゃあ、一時撤退なんて無理だよね?」

「で、ですけど、アレを倒すのも無理なのでは? どうやっても倒せるイメージが湧かないのですけど……」

 

 平静な声で言うアメリアに、不安そうにフィーリアが返す。

 それに、ラッシュは当然とばかりに頷いた。


「もちろん、ここで殺しきるさ。また迷宮に戻るなんてごめんだし、もしアイツが追ってこられるとしたらそれこそ厄介だからな。全体的に強化しているが、やることは変わらねぇ。精々飛び道具に気を付けるだけだ。俺達で攪乱して、お前らがアイツを弱らせる。あるいは……」


 じっと、ラッシュはネコタと聖剣を眺める。

 その視線を意味を受けとめ、ネコタは緊張した声で言った。


「僕が聖剣で斬るか、ですね」

「ああ。聖剣なら、いくら強化しようがそれごとぶった切れるだろう。だが、お前は結界でアメリアとフィーリアを守らなければならないし、近づけばその分、危険も増す。

 お前だけは死なれる訳にもいかんしな。決しては無理は……」

「いえ、僕に任せてください。今の僕ならやれます」


 不安はある。だが、それを乗り越えようとする、強い眼差し。

 その顔つきから感じられる成長を見て、ラッシュはニッと笑った。


「だいぶ勇者らしくなってきたな。それじゃあ任せるぜ。この状況で頼りに出来るのはお前だけだ」

「はい、任せてください! 僕が決めてみせます!」

「おっと、ちょいと待ちなぁ」


 ネコタが頼もしい返事をしたところで、エドガーがゆらりと二人の間に入った。水を差された気分になり、ネコタは嫌そうな顔をする。

 それに気づいていないかのように、エドガーは続けた。


「こいつだけに任せるのは危険だ。珍しく調子が良いからって騙されるな。根っこは変わらねぇポンコツのままだ。きっと、大事なところで致命的なポカをやらかすぜ」

「しないよ! アンタ僕をなんだと思ってんだ!」


「攻め手は何枚あってもいい。保険はあるに越したことはねぇからな」 

「いや、そりゃそうだが……そもそも、ネコタしかトドメを刺せそうにないから頼る訳であってな?」


 困ったように言うラッシュに、フッとエドガーは強気な笑みを見せる。


「確かにあの虫は姿を変えて強くなった。だが裏を返せば、あれが奴の上限だってことだろ? つまり、奴を殺しきれるなら、ここで出し切ってもいいって訳だ」


 エドガーはポンっと手を叩き、精神統一を図る。そして、”ウキュウウウウウウウウウウウ!!”と雄叫びを上げ、真っ黒な姿に変わった。


「【漆黒よりなお暗き黒兎(ブラックエドガー)】。後のことを考えなくていいなら、俺にも奴を殺し切れる手段がある。頼りになるのはネコタじゃねぇ。俺だ」

「断言するな! そこは”ネコタだけじゃない”だろ!? あまり僕を舐めるな!」


「フッ、俺に認めてほしけりゃアイツを倒してみせるんだな。そうすりゃ土下座で謝ってやるよ」

「言ったな!? 見てろよ! 絶対に謝らせてやるからな!?」


「はははっ、二人とも頼もしい限りだ。それじゃあ任せたぜ」


 この状況でもいつも通りな二人に、戦闘中だというのに柄にもなく、ラッシュは気楽な笑い声を上げた。仕方のない奴らだと、他の三人も笑みを見せる。


『ギギギ……リリリリリリ!!!!』


 六人がほどよい緊張状態を作るのと同時に、【グプ】がジーナから受けたダメージの回復を終える。予想外の痛みを受けたからか、怒りの声を上げ【グプ】は大きく鋏を上げて威嚇した。


 その姿に武器を構える六人。しかし、【グプ】は全員の予想を裏切る行動に出た。

 鋏を何度も地に突き刺し、砂を掻く。瞬く間に大きな穴を作ったと思いきや、【グプ】は頭からその穴に突っ込み、砂の中に潜って消えた。

 

 今までになかった行動に、ネコタは呆気に取られ、呟く。


「あ、あれ? なんで……まさか、逃げ──」

「──ジーナッ!!!!」


 エドガーの空気が破裂するような怒声が響いた。叫んだ瞬間、エドガーは走りだす。

 エドガーの行動の意味は分からない。しかし、ジーナは名を呼ばれた瞬間、その声に込められた切迫さを感じ取り、直感的にエドガーと同じ方向へ向かって走った。


 エドガーが向かったのは、後方。アメリアとフィーリアの方である。二人の姿を見た瞬間、ジーナは全てを悟った。


「チッ、仕方ねぇ!」

「エ、エドガー様っ!? 一体何をっとぐふぇぇっ!?」


「掴まれ!」

「わっ、わわっ」


 エドガーは走った勢いのまま、フィーリアの襟元を掴んで引きずる。ジーナはアメリアを横抱きに抱え、全力でその場から離れた。 


 その直後、アメリアとフィーリアが立っていた場所で、ボンッと砂が舞い上がる。見れば、巨大な鋏が砂の下から飛び出していた。そして、またズズズッと砂の下へと姿を消していく。


 それを見ていたアメリアが、小さく目を瞠って呟いた。

 

「砂の中から……危ないところだったね」

「ああ。ウサギ、良く気づいたな」


「砂の中を移動する音が聞こえていたからな。しかし、危ないところだった。気づくのが遅れていたら二人共殺されるところだったぜ」

「私は、今……死にそう、なのですが……」


 襟をつかまれ、首が締まっているフィーリアは青ざめた顔で言った。エドガーに助けてもらえたのは嬉しかったが、何故アメリアさんのように抱き上げてくれなかったのか、と乙女心が思わずには居られない。エドガーの体が小さく、フィーリアが重いから、と真実を伝えるのはあまりにも酷であろう。


「──ッ! 止まるな! 走れ!」

「うわっ! わわわわわわわわっ!」


 次に【グプ】が狙ったのは、離れていたラッシュとネコタだった。いち早く反応したラッシュの指示で、慌ててネコタは逃げ出す。後ろで砂が巻き上げられた音がして、なんとか避けられたと安堵する。


 しかし、ネコタには安心する暇もなかった。


「ぎゃあああああああああ!!!! なんで!? なんで僕だけっ!?」


 逃げるネコタを追いかけるように、ボンッ、ボンッ、ボンッ、と、次々とハサミが砂から飛び出してくる。一番の脅威であるネコタを先に潰そうと決めたようだ。当然ではあるが、最も嫌な手である。


 チッ、と苛立たし気にエドガーは舌打ちする。


「まずいな。いつまでも保つもんじゃねぇ。早いとこ決めねぇと……」


 エドガーは大地に手を付き、新たな人参を引き抜いた。それは今までのもより細長く、ともすればあっさりと折れてしまう心細さがある。しかし同時に、どこまでも研ぎ澄まされた鋭さがあった。


「一瞬でもいい。なんとかアイツの動きを止めてくれ。少しでも止めてくれれば、後は俺が決める!」

「任せて。フィーリア、タイミングを合わせて」

「わっ、分かりました!」


 その時を待ち、エドガーは腰を落とし、グッと足に力を貯める。

 アメリアとフィーリアは、ネコタを執拗に追いかける【グプ】を観察し続けた。


 ボンッ、ボンッ、ボンッ、と。【グプ】が地上に出てくる度に小さく体を振って、タイミングを合わせる。あともう少しあれば、二人は呼吸を完全に掴めていただろう。しかしそれよりも早く、ネコタの限界が訪れる。


「うわっ!? く、くそっ!」


 疲労が溜まり、ネコタは砂に足を取られる。僅かな遅れではあったが、【グプ】がネコタに迫るには充分であった。走って逃げるには間に合わない。


 そう判断したネコタは、残った力で地面を蹴り、その場で高く飛び上がった。


「バッ!? 真上じゃ──」


 ネコタの失敗を悟り、ジーナが思わず焦った声を漏らす。

 ネコタはなんとか鋏による攻撃を躱した。しかし、その身は宙に浮き、死に体の恰好であった。それを察したのか、【グプ】は追撃をかけるべくその身を現した。


『ギギギギギイイイイイイイイイイイ!!』


 獲物を前に悦びの声を上げ、ギョロリと【グプ】の目が宙に居るネコタに集まり、鋏が振りかぶられる。捕まり、ズタズタに引き裂かれるネコタの姿を誰もが思い浮かべた。


 しかし、当の本人であるネコタは冷静であった。

 ただ静かに、自分に迫っている【グプ】の姿を、静謐な眼差しで見据えていた。


(……今の僕なら、出来る!)


 死が迫っているというのに、不思議と心が凪いでいる。

【グプ】の動きが、悠々と考えられる時間があるほど、ゆっくりになっている。

 この戦いで掴んだ自信が、自分の可能性を、取るべき手段を自然と教えてくれた。


「水の上を歩く、女神様の力なら……!」


 試したことはない。だが、出来るという確信だけがあった。

 膝を曲げ、力を貯める。そして、全力で宙を蹴る!


空気中の水分(・・・・・・)だって、掴める!!」


 ────スカッ!!


「あれぇえええええええええ!? 嘘ぉ!? そんなバカなっ──!?」


 誤った過信が、とうとう失敗になってしまった瞬間であった。

 ネコタは【グプ】の鋏をまとも受ける。パリンッ、と何かが割れた音が聴こえて、地面に叩きつけられた。

 

「ネコタッ!? 大丈夫か!?」

「何がしたかったんだあのバカッ!!」


 ラッシュはネコタの安否を気遣い、エドガーはマジギレしていた。とはいえ、気持ちは分かる。


「うっ、ぐっ……ぐぇぇぇ……!」


 まともに食らえば、それだけで死に至る一撃。しかし、ネコタは当たる直前、咄嗟に結界を張っていた。割られはしたものの、衝撃を緩和しなんとか生き延びる。


 だが、そのダメージは小さくない。全身を打ち付けられ、ジンジンと体が痺れる。地面に頭を打ち、グラグラと視界が揺れ、猛烈な吐き気に襲われていた。


『ギリリリ、リリリリリリィ!!!!』

「くそっ! させるかよ!」


 当然、そのグプがこの好機を逃す筈がない。ネコタが居る方に体を向け、大きく鋏を開く。それとほぼ同時に、ジーナがネコタの壁となるようにして、割って入った。


 ──動く様子がねぇ──鋏はこっちを──【ブレス】──逃げる間も──!


 瞬時に飛道具がやってくると判断し、ジーナは苛だたしそうに舌打ちし【氣】を全身に纏った。自分もただでは済まないだろうが、少しでも時間を稼げば他の仲間がなんとかしてくれる。砂の【ブレス】なら、拳で叩き落とせる。


 迷っている時間はない。己が傷つくのを承知で、ジーナはネコタの盾となる覚悟を決めた。そんなジーナの目に、【グプ】の尾が高々と上がるのが見えた。


 針か……と、ジーナの表情が苦いものに変わる。


 触れることも本来は許されない。針の先端を避けて捌き、毒は【内功】で抑えられれば……と、対応を考えていた時、ガバァッと尾の先端が開き、巨大な口が現れた。


「──は?」


 予想だにしなかった光景に、死すら覚悟していたジーナが、ポカンとした目でそれを見上げる。

 あまりに意表を突いた動きだった。巨大な口は目にも止まらぬ速度で伸び、バクンッと一瞬で二人を丸呑みにした。


 外からその流れを見ていた四人も、目の前で起きたことが信じられず、数秒ほど固まった。そして、弾かれたようにフィーリアが悲鳴をあげた。


「んきゃあああああああああああ!? どどどどどどどっ、どうしましょう!? ジーナさんが! ネコタさんが食べられちゃいましたよ!?」

「これは……どうしようもないかもね……」


「ありゃあワームの口か。尻尾じゃなくて、ワームの胴体だったのか。くそっ、まんまと騙されたな」

「冷静に言ってる場合か! アメリア! フィーリア! ダメージを与えて吐き出させろ!」

「は、はいっ! 分かりました! お二人とも、今助けます!」


 ラッシュが必死の形相で二人に指示する。フィーリアは慌てて精霊を集めるが、しかし、アメリアは躊躇うように眉を潜めた。


「……今、私達が魔法を使ったら、食べられた二人にまでダメージが行っちゃわない? それでもいいならやるけど」

「ストァアアアアアアアアップ! 作戦中止! 撃つなっ! 絶対に撃つなよ!? そんなもんぶつけたら中の二人が蒸し焼きになる!」

「あわわわっ! わ、分かりました!」


 ラッシュは怒鳴りつけてフィーリアの精霊術を止めた。危うく二人が焼き殺される未来を回避する。

 だが、そうなるといよいよ打つ手がない。急いで助けなければと焦りがつのり、ダラダラと汗が流れる。


「くそっ! どうすれば……このままだと二人が……! 最悪ネコタだけでも助けねぇと!」

「おい、いくらなんでもその発言はねぇだろ!? ジーナが可哀想だぜ! お前、仲間をなんだと思ってんだよ!」

「黙れ! お前が仲間を語るな!」


 こいつだけには言われたくないと、ラッシュはエドガーを怒鳴りつけた。だが、エドガーの姿を目にし、ハッと表情を変える。


「そ、そうだっ! お前、アイツを殺せる手段があるんだよな!? だったらさっさとやってくれ! 今なら隙だらけだろ!?」

「ん〜、そうだな〜……」


 確かにラッシュの言う通り、獲物を飲み込んでから【グプ】の動きが止まっている。モグモグと、ようやく口にしたご飯をじっくり味わっているのかもしれない。今なら間違いなく、確実に殺しきれるとエドガーは判断した。


 しかし、


「俺の方法だと、中の二人も確実に殺しちゃうけど、それでもいい?」

「いいわけねぇだろ!! 俺がテメェを殺すぞ!?」


 それでは二人に任せた方がまだ望みがある。

 遠慮がちに言い放つエドガーに、ラッシュは本気で殺意が湧いた。この期に及んでその余裕が許せなかった。


「お前状況が分かってるのか!? なんでそんな冷静なんだよ!?」

「いや、なんだろうな。助けようと思えばそこまで焦るんだろうけど、諦めが入ると、全てがどうでもよくなってな……」

「諦めないでぇえええええええええええ!?!?!?」


 ある意味、エドガーの方がショックが大きかったらしい。この冷静さは、現実逃避の一面が潜んでいた。

 しかし、一周回って冷静であるからこそ、エドガーは正確に今の状況を掴んでいた。


「そんな心配せんでも、おそらく二人はまだ生きている。あれがワームで丸呑みしたってことは、歯がねぇんだ。胃液で消化するしか手がねぇんだから、相応の時間がかかる」

「そ、そうだな。言われてみればその通りだ」


「まぁ、ワーム型の魔物の中には腹の中に歯がある奴も居るし、アイツの胃液が強かったら意味がないんだけどね」

「なんだってお前は上げて落としにかかる!? 遊んでんのか!?」


 怒鳴るラッシュを無視して、エドガーは顎を摩りながら、今もじっと止まっている【グプ】を眺める。


「しかし、参ったな。これじゃあ人質を取られたようなもんじゃねぇか。アイツらが腹の中に居るんじゃ何も出来ねぇぞ」

「魔法で二人を巻き込む訳にもいかないしね」

「で、でも、このまま見ているだけでは、二人とも美味しく頂かれてしまいますよ?」


「その通りだ! このまま見ているだけって訳にはいかん! でなければ世界が詰む! そうなったら、あとでどんな責任を取らされるか……!」

「責任も何も、そうなったら世界は滅びてるんだし、些細なことだろ。心配しなくてもよくね?」

「よくねぇよ! その恨みが纏めて俺達に来るんだぞ!? 想像もしたくない!」


 ブツブツと呟きながら考え込むラッシュ。

 エドガーにはそんな彼の姿が、なんとも哀れに見えた。責任に雁字搦めさせられた男の、なんと不自由なことか。せめて、この件で彼が少しでも楽になることを願う。


 まぁ、冗談はここまでにして……と、エドガーは一人心の中で呟き、


「実際のところ、俺達には何も出来ない以上、中に居るアイツらがなんとかするしかない。それを信じて待つしかないだろう」

「そんな悠長なこと言ってられるか! それで本当に死んだらそれこそ悔やみ切れん!」


「じゃあお前がアイツらを助けに中に入ったら? 同じように食われれば確実にアイツらのところに辿りつけるよ」

「そんなの出来る訳ねぇだろうが! 頼むからもっと真面目に──」


 ラッシュが協力を懇願したその時、ボゴンッと【グプ】の尻尾の半ばあたりが急激に膨らんだ。その変化に、ギギ、ギギッ、と、【グプ】は苦しげな声を上げ、体を痙攣させている。


 まるで妊婦のような膨らみを見て、エドガーは察した。


「ネコタの結界か。アイツら、生きてるみてぇだな」

「結界……そうだ、結界なら魔法のダメージも防げるんじゃないか!?」


「止めておけよ。あんな場所で結界を張るだけでも相当な労力だ。いつもどおりの強度が保てるか分からんし、そもそも、そこの二人はネコタの結界なんぞ容易くぶち破るだろ」

「任せて。破壊は大得意だから」

「あぁ……ネコタさんがもっと強ければ、こんな気持ちにならずに済んだのに……!」


 さり気ないネコタへのディスりである。いい加減、ネコタは泣いていい。


「お前らのその余裕はどっからくんだよ!? 必死になってる俺がバカみたいだろうが!」

「落ち着け。俺からみればお前の焦り具合が一番バカに見える」


 宥めているのか挑発しているのか分からないセリフを吐き、エドガーは続けた。


「まだあそこにはジーナが居る。ネコタが生き残って、アイツが死んでいる訳がねぇ。あの女の凶暴さを信じようぜ。アイツは、ただやられっぱなしで終わるほどヤワな女じゃねぇ」




 ♦   ♦




「だ、大丈夫ですかっ。ジーナさん」

「ああ、大丈夫だ……よくやったな。お陰で助かったぜ……」

「いえ、ジーナさんが居なかったら、僕は死んでましたから」


【グプ】の胃の中で、二人はなんとか生き延びていた。

 肉で押しつぶされ息も出来ず、危うく窒息死するところであった。しかし、ジーナがなんとか腕力で隙間を作り、ネコタを冷静にさせて結界を張らせることが出来た。どちらかが欠けても、二人は死んでいただろう。


 しかし、その代償も大きかった。

 

 ジーナはゼェ、ゼェ、と息を大きく乱し、膝をついていた。ネコタを助けるために、必死で力を振りしぼったようだ。普段からは考えられないほどの疲労具合であった。


「チッ、クソが……! 虫ケラ風情が人間様を食いやがって……おまけに臭ぇ液塗れに……ああ、最悪だ!」

「いや、あの、それよりも手と……顔が……」


 飲み込まれた際、ジーナはネコタを守る為に、出来る限り【グプ】に触れぬよう、自分の体で包み込んだ。お陰でネコタは【グプ】の胃液に触れるのが最小限で済んでいる。しかし、その分ジーナの被害が大きい。


 服のあちこちが胃液で溶かされて穴が空き、むき出しの肌が焼き爛れている。腕や足はもちろん、顔も広い範囲が焼けていた。そして、隙間をこじ開ける為に使った両手は、肉が溶け、一部の骨が露出しているほどである。


 それに比べて、ネコタはわずかに触れた服が焦げただけですんでいる。自分は守られ、下手をすれば痕が残ってしまうような傷を女性に与えてしまった。その罪悪感がネコタを責め立てる。


 しかし、ジーナはヘッと強気に笑い、ネコタを気遣うように言った。


「気にすんなよ。後でアメリアに頼めば済むことだ。これくらいでお前を守れたら上等だろ」

「ジーナさん……!」


 トクンッと、ネコタの胸が鳴った。熱い何かが、込み上げてくる。迷宮でアメリアに対して感じたものとはまた違う感情だった。


 言うまでもなく、ジーナの漢らしさによるトキメキである。思わずネコタに乙女心が芽生えるほどであった。完全にこいつらは性別を間違えている。


 ググッ、と。傷を押して、重そうにジーナは身体を持ち上げた。


「さて、と……いつまでも休んでられねぇか。早くここから出ないとな」

「だ、ダメですよっ! そんな傷で動いちゃ!」


「アホッ。んなこと言ってる場合か。今のうちになんとかしねぇと、助かった意味がねぇだろうが。お前も限界が近いんだろ?」


 見透かすように目に、ネコタは悔しげに唇を噛む。

 ジーナの言う通り、いつもよりも聖剣に吸い取られる力が大きいような気がしていた。それは気のせいではない。今も自分達を押しつぶそうとする【グプ】の体から守る為に、結界がより多くの力を必要としているのだ。


「潰される前に、自力で脱出するしかねぇ。キツかろうが、今動くしかねぇんだよ」

「待ってください! 無理をしなくても、外に居る皆が助けてくれるかも……」


「あたしらが中に居たら、アイツらもまともに攻撃なんか出来ねぇだろ。まさか同じようにこの中に来てもらう訳にもいかねぇしな。だから、自力で脱出するしかねぇんだよ。そうすりゃあ、外の連中がこいつを倒してくれる」

「それは……そうかもしれませんけど……」


「それによ、この状況は見方を変えれば好機でもある。頑丈な体だが、流石に中まで硬いって訳じゃねぇだろう。ここからなら、コイツの体に風穴を開けて脱出することだって無理な話じゃねぇ。お前の聖剣なら、それこそ紙切れのように斬り裂けるだろうが……」


 グプの体重を全て支えて居るかのように、聖剣を頭の上に構えているネコタ。

 それを見て、ジーナは小さく笑った。


「お前には結界を維持して貰わないといけないからな。ってことは、あたしがやるしかないって訳だ」

「でも、いくらジーナさんでもそんな傷じゃあ……」

「そんなに心配するなよ。こんなの傷のうちに入らねぇっての。適材適所って奴だ。お前は結界のことだけを考えろ。出口を作るのは、あたしがやる」


 そう、自らの傷は問題ではない。あちこちが痛むが、体はまだ動く。

 重要なのは、自分の攻撃が本当に効くのかということだ。


(さすがに効くだろうとは思うが……)


 頭を過るのは、外から打撃を打ち込んだ際の感触。甲殻の下にある筋肉が、衝撃を吸収していたあの手応え。


 それをぶち抜くことが出来ると頷けるほど、ジーナは自信を持てなかった。この魔物は、それだけ自分にとって相性が悪い。この場所でなら勝機はあるが、なんらかの工夫を入れ、万全を期すに越したことはないだろう。


「……アレ(・・)、やってみるか」


 ボソリと呟き、ジーナは拳を構え、目を閉じて精神統一を図る。

 ポワッ、と。ジーナの【氣】によって拳が光った。いつも通りの、強烈な一撃を放つ為の構えだ。しかし、ジーナの表情は苦しげに歪んでいる。


 何か、違うことをやろうとしていると、ネコタは察した。


「ジーナさん。一体何を?」

「なに、一発勝負になるだろうからな。しくじらないよう、とっておきを食らわせてやろうと思ってな」


 目を閉じ【氣】を操りながら、ジーナはネコタに応える。

 集中を要する技だが、返ってそちらの方が無用な気が紛れるのか、ポツポツと呟きながら、ジーナは【氣】を練り上げていた。


「【氣】の操作には、大きく分けて三つの種類に分かれるんだよ。【放出】、【徹し】、そして【形成】だ。あたしは【放出】と【徹し】は得意なんだが、【形成】はまるでダメでな。師匠(ジジイ)からも才能がないって何度もため息をつかれたもんだ。んで、今はその苦手な【形成】をやっている」


 話を聞いていたネコタは、それを見て目を瞠った。

 ジーナの拳を包んでいた【氣】が、まるで針のように、鋭く尖っていく。


「師匠なら一瞬で作れんだが、あたしは【形成】にバカみてぇな時間がかかるんだよ。これも普段なら絶対に使えねぇ技だが……時間を掛けられる今の状況なら話は別だ」


 針のように研ぎ澄まされた【氣】が、腕の延長のように伸びていく。まるで、それは一本の槍のようだった。


 ネコタがそれに見蕩れていると、グッと結界にかかった重さが増す。潰されぬようなんとか堪えながら、声を絞り出した。


「ジーナさん……ッ! もう、限界で……!」

「ああ、待たせたな。よく頑張った。今楽にしてやる」


 ジーナはカッと目を開き、頭上を睨み上げた。


「”この一撃に僅かな矛盾もなし。万物一切を徹し貫く”──だったかな? へっ、まぁいいか。食らえっ! これぞ、師匠(ジジイ)直伝の奥義──」


 そうして、ジーナは研ぎ澄まされた【氣】を解き放つ。


「──【盾ヲモ貫ク(にのうちいらず)】!」




 ♦   ♦




 ──カッ! と。


 エドガー達の目に、【グプ】の尾から光が放たれたのが見えた。甲殻の隙間から、幾本もの光の筋が漏れる。


 そして次の瞬間。【グプ】の尾を吹き飛ばし、極大の光線が天井に向かって伸びた。肉片があちこちに撒かれ、そのあまりの破壊力に、時が止まったほどの衝撃を受ける。


『ギギギギギギギィイイイイイイイイイイアアアアアアアア!?!?!?!?』


 なによりも、【グプ】のつんざくような悲鳴がその威力を物語っていた。

 体の中から破壊され、激痛に暴れ回る。ひとしきりのたうち回った【グプ】は、動くことも出来なくなったのか、ピクピクと痙攣して止まった。


 穴が空いた【グプ】の尾から、ボンッと何かが飛び出て、四人の元へ向かってくる。それは、ジーナを背負ったネコタだった。ネコタは四人の側に降りると、グシャリとその場に潰れる。


 崩れ落ちたネコタに、ラッシュが慌てて駆け寄った。


「ネコタ! ジーナ! 大丈夫か!?」

「お、遅くなってすみませんっ。なんとか生きて戻ってきました」

「へっ、へへ、ザマァ見やがれ虫けらがっ。一泡吹かせてやったぜ……」


 横に倒れながらネコタは声を出し、ジーナも同じ状態で拳を突き上げて無事を知らせる。

 疲労困憊でボロボロな、なんとも頼りない姿の二人だったが、ラッシュはほっと息をついた。


「無事ならそれでいい。正直、もう駄目かと思ったぞ」

「ご心配をおかけしました。あと、すみません。もう一歩も動けません……」

「あたしもだ……さすがに疲れた……だがその分、とっておきをぶち込んでやったからよ……少しは力になれただろ……?」


「ああ、トドメを刺すには十分だ!!」


 ギリィッと、エドガーは強く歯を噛みしめた。

 待ちに待ったこの瞬間に、二人が作り出した好機に、エドガーの闘志に火が着いた。


「アメリア!! 縛り上げろぉ!!」

「うん、任せて」

「あれ!? エ、エドガー様っ! 私は!? 私もお役に立てま──」


「そこでおすわり! 待てっ!」

「は、はいっ。わかりました……」


 今はおふざけは要らない。容赦ないエドガーの指示に、フィーリアはすごすごと引き下がる。


 喋らせれば気の抜けるフィーリアを黙らせ、エドガーはドス黒いまでの闘志を燃やした。【魔獣化】の影響で凶暴な野生が、殺意が研ぎ澄まされる。シクシクと泣いているフィーリアを無視して、一心に【グプ】を睨みつける。


「【世界よ(こおって)、氷結せよ(うごくな)】!」


 アメリアの氷結魔法が、再び【グプ】を包み込む。一度は力ずくで破ったそれだったが、傷の重さに力が出ず、【グプ】は完全に縛り付けられていた。


 絶好の好機だった。


「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」


 エドガーは咆哮を上げ、ドンッ、と地面を蹴り出す。

 黒い閃光が地面に描かれた。氷の手前まで線を引き、エドガーは高々と跳躍する。


 ──スコンッ!


 天井近くまで跳んだエドガーは、重力に引かれて真っすぐにグプの背中に向かって落ち、細長い人参を突き立てた。スルリと人参が刺さり、耳心地の良い音を立てる。だが、そのあまりに軽い音に、誰もが目を丸くした。


「……え? まさか不発?」

「いや、まさかそんな……あれだけ啖呵を切っておいて……」


 思わず呟いたネコタとラッシュ。まさか、とは思いつつも、次第に不安が湧き出てくる。

 その不安が的中したかのように、【グプ】が痙攣をやめ、ゆっくりと動きだした。それに、全員が絶望を感じた。


 しかし、エドガーはだけは勝利を確信していた。


「まさかこれで終わりだと、本当に思ったか?」


 動き出す【グプ】に、語りかける。


「【魔獣化】を発動し、残った力を全て人参に込め、人参越しに魔物の体内に流し込み、炸裂させる。それこそが俺の切り札の一つ。対大型魔物用奥義だ。つまり、この技はここからが本番だということだ。さぁ、恐怖に震えろ」


『ギッ──ギギギリリリリリリリリリリ!?!?』


 その声から、己の命運を察したのか。

【グプ】は迫りくる死神から逃れるように、慌てて走り出そうとする。しかし、あまりにも遅い。どうしようもなく、彼は詰んでいた。


 意地汚く生き足掻こうとする魔物に、エドガーは無慈悲に現実を突きつけた。


「【人参剣──大豊作】!」


 エドガーの力が、【グプ】に入り込んだ人参を媒介に炸裂する。


【グプ】の背中に刺された人参を起点に、外へと向かって力が伸びる。それはまた新しい人参の形となって、肉を引き裂き甲殻さえも突き破る。【グプ】の体内から、エドガーの体よりも巨大な極太の人参が、何本も生やされた。


 可愛らしくさえ感じる光景だが、その効果はどこまでもえげつない。体内をグチャグチャに掻き回されては、強靭な生命力を持つ【グプ】といえど、耐え切れるはずも無かった。ピクピクと身体を揺らし、【グプ】の瞳からフッと光が消える。


 エドガーは【グプ】から飛び降り、振り返ってその姿を見た。もの言わぬ死体となった【グプ】を眺め、小さく鼻を鳴らす。


「……今までテメェが弄んで来た命の報いだ。地獄で反省してろ」


 こうして、砂漠の地を脅かした魔物との戦闘は終わった。

 砂漠の悪魔と呼ばれ、砂漠の民とっての悪夢の終焉だった。






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