その後
スタジオの外。
夕方。
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収録が終わる。
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あっけなく。
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さっきまでの空気が嘘みたいに、
ただの帰りの時間になる。
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白瀬は、バッグを肩にかける。
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「お疲れ様です」
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普通に言う。
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「お疲れ」
誰かが返す。
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それだけ。
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神谷は、少し遅れて出る。
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廊下。
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白瀬が前を歩いている。
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追いつける距離。
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でも、追いつかない。
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エレベーター。
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ボタンを押す。
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並ぶ。
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沈黙。
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白瀬が言う。
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「さっきの、よかったっすね」
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軽く。
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神谷は少し遅れて答える。
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「……どっちの意味で?」
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白瀬は考える。
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「普通に、やりやすかったっていうか」
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それだけ。
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神谷は、小さく笑う。
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「そっか」
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エレベーターが来る。
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扉が開く。
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乗る。
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二人だけ。
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数字が減っていく。
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神谷が言う。
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「さっきのさ」
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白瀬が見る。
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「“上手いじゃ届かない”ってやつ」
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白瀬は少し困る。
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「……ああいうの、よくわかんないんですよね」
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正直に言う。
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神谷は頷く。
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「だろうな」
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一拍。
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「俺も、たぶんちゃんとはわかってない」
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白瀬は少し驚く。
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「え、そうなんですか」
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神谷は笑う。
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「なんか、わかった気になっただけ」
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沈黙。
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でも、
さっきまでの重さはない。
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ただの会話。
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エレベーターが止まる。
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扉が開く。
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外に出る。
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夕方の空気。
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少し涼しい。
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「じゃあ、お疲れ様です」
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白瀬。
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「おう」
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神谷。
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白瀬は歩いていく。
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振り返らない。
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神谷は、その背中を見る。
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思う。
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結局、
何もわかってない。
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でも、
さっきの声は嘘じゃない。
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その両方が、
同時にある。
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「……めんどくさいな」
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小さく笑う。
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ポケットに手を入れる。
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歩き出す。
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理解しきれなくても、
続く。
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それでいい。




