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主役の視線

スタジオ。


控え室。


――――


神谷は、椅子に座っている。


――――


台本は閉じている。


――――


もう、覚えている。


――――


完璧に。


――――


「……」


――――


静か。


――――


いつも通りのはずだった。


――――


主役として、


中心として、


流れを作るはずだった。


――――


――――


でも。


――――


さっきの収録。


――――


白瀬。


――――


――――


“来た瞬間に変わった”。


――――


それが、引っかかっている。


――――


「……何なんだよ」


――――


小さく呟く。


――――


正しいのは自分だ。


――――


構成も。


流れも。


評価も。


――――


全部、揃っている。


――――


それなのに。


――――


――――


崩れた。


――――


一瞬だけ。


――――


あいつが入った瞬間。


――――


――――


「……」


――――


神谷は、拳を握る。


――――


悔しいわけじゃない。


――――


でも——


無視できない。


――――


「空気が変わるって、なんだよ」


――――


誰に向けるでもなく。


――――


――――


廊下。


――――


足音。


――――


白瀬。


――――


――――


すれ違う。


――――


一瞬。


――――


視線が交わる。


――――


――――


神谷は、止まる。


――――


白瀬も、止まらない。


――――


でも——


神谷だけが、


気づく。


――――


“見ていない目”。


――――


自分を評価していない目。


――――


でも、


軽視もしていない目。


――――


――――


「……お前」


――――


気づいたら、声が出ていた。


――――


白瀬は止まる。


――――


振り返る。


――――


「はい」


――――


短い。


――――


神谷は、少しだけ言葉を探す。


――――


「さっきの」


――――


間。


――――


「なんだよ」


――――


――――


白瀬は、少しだけ考える。


――――


「……わかんねえです」


――――


即答。


――――


神谷は眉をひそめる。


――――


「は?」


――――


白瀬は続ける。


――――


「でも」


――――


一拍。


――――


「邪魔してないです」


――――


――――


沈黙。


――――


神谷は、言葉を失う。


――――


邪魔してない。


――――


それは褒めでもない。


――――


否定でもない。


――――


でも——


一番、刺さる。


――――


「……」


――――


神谷は、目を細める。


――――


「主役だぞ、俺」


――――


小さく言う。


――――


白瀬は、少しだけ頷く。


――――


「知ってます」


――――


即答。


――――


――――


神谷は、息を止める。


――――


「じゃあなんで」


――――


言いかけて、


止める。


――――


白瀬は、先に言う。


――――


「でも」


――――


一拍。


――――


「変わります」


――――


――――


神谷の呼吸が止まる。


――――


「……何が」


――――


白瀬は、少しだけ考える。


――――


「空気です」


――――


――――


静か。


――――


意味が、重い。


――――


神谷は、何も言えない。


――――


白瀬は、軽く頭を下げる。


――――


「すみません」


――――


そして、


歩き出す。


――――


――――


神谷は、残る。


――――


一人。


――――


「……空気ってなんだよ」


――――


小さく呟く。


――――


でも——


答えは出ない。


――――


――――


完璧だったはずの自分の中に、


小さなノイズが入る。


――――


それが、


消えない。


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