こどもにしかみえない 1
1-Aの教室にて
放課後、司馬未来と土屋咲があそこの店のたい焼きがうまいとか、
どこそこの店の服を買うことが多いとか、そういった女子高生的な会話をしていた。
彼女たちはそれぞれ、家庭菜園部という部と新聞部という部に入っており、
いわゆる運動部のような時間に追われる部活ではないので、
こうやって放課後のんびりする時間も確保できるのである。
まぁ廃部寸前の新聞部とは違い、家庭菜園部は一見のんびりしてそうな部活だが、
実際には日中夜問わず現場待機状態の、ブラック部活なのであるが…。
そんな穏やかな時間に髪の毛が勢いよくビュンビュンしている隣の席の少年が話題を吹っかけてきた。
「ちょっとお前ら聞いてくれよー、
昨日ミステリー部の方で話になったんだけどさ、
校門のところにある童子みたいな人形?置物?わかるか?」
こいつはよく女子二人の談笑に入って来れるなと思ったが、
もちろん司馬未来は口には出さない。顔には少し出ていたかもしれない。
「ああ、この学園に初めて来た時からなんだろうと思ってましたねぇ」
「うんうん」
少し隠し事をするように周りの様子を伺い、顔を近づける。
「あれってさ、実は霊的な存在らしいぞ」
「えっ」
「当たり前にあるから何かの置物かと…」
「どうも見えるやつと見えないやつがいるらしい。
うちの部でも泉ちゃんには見えるけど、水神先輩には見えないみたいだ」
「ほ~」
「何か条件でもあるのですかねぇ、私の推理脳がビンビン来てますよ!」
ビンビン来てるのは咲の脳みそでなく髪型だろうと頭の先を見つめる。
つい先日も、その推理脳とやらは全く役に立ってなかったというのに。と、未来はため息をついた。
そしたら鳥居も咲ちゃんの髪型について同じことを考えていたようで、頭の先を見つめていた。
土屋咲という生き物は、髪を葉が育った玉ねぎのように、頭頂部で髪を束ね、そこから上にまっすぐ伸ばしている。
なので未来と同じくらい身長が低いが、こんな奇抜な髪型をした人物は他にはいないので非常に目立つ。
待ち合わせの目印としては重宝しているが、髪型で身長をごまかしているのは正直いただけない。
自分だけちびっこに見られることになるのは、まるでアンフェアである。
「その条件って言うのが気になりますね、先輩方にも聞いてみましょうかねぇ」
「さんせーい」
「部で研究してみるみたいだからよー、データ集まったら教えてくれたらうれしいぜ」
「りょかーい」
人に話を聞くのは嫌いではないし、
興味のある話題でもあるし、もしかしたら家庭菜園部の管轄の案件になるかも?と思い、
司馬未来は調査をすることにした。
おそらく鳥居も、無意識だろうが未来の顔の広さを使って、聞いてほしかったんだろうし。
・ケース1 小倉杏の場合
「校門のところの?ああ、そういえばいつの間になくなっていたなぁ
一年の時の途中まではあったような…?え、まだある?」
「いつなくなったかはわかりますか?」
「いや~わからないな~。覚えていないや、ごめんね。あ、なんか飲む?いらない?」
喫茶店部の小倉先輩は口をとんがらせて残念そうにしていた。
・ケース2 森野拓の場合
「あ?校門に置物?そんなんあったか?
いや、見たこともないな」
・ケース3 霧島梨菜子の場合
「ん?私もないな。というか何のことだかわからん。
あ、もしかして新聞部の取材か?」
「そうなるといいんですが…」
咲ちゃんは申し訳なさそうにしている。
(残念ながら、何か事件だったらこちらがもみ消すのですよ…)
「おい未来、なんだその気持ち悪い笑顔は?」
「しっ」
まったく拓先輩は、ばれたらどうするんですかね!
↑二人おなじところにいたため一緒に聞いた。
・ケース4 廊下で偶然出会ったおはよう先輩の場合
肌がつやつやしていた。ようやく制服作りから解放されたのだろうか。
「いやーやっと落ち着いてきたよ、もうすぐ司馬さんのも取りかかれるから楽しみにしていてね。
せっかくだから直接採寸するし、準備できたときに呼ぶね。
え、校門の人形?ごめんごめん、裁縫部に入ってから記憶がだいぶ抜け落ちちゃってて。
今朝やってたことですらいつだったっけって思うことがちらほらと。
あ~・・・でもうっすら見たことあるような?
あ、白髪発見!」
そう言うと、自分の前髪の白髪を引き抜いた。
き、記憶障害…!?でも見たことがないなら、まったく反応しない、と思う…。思いたい!
・ケース5 副会長の場合
「ほう、そんなものがあるとは、いや、前に耳に挟んだことがあるな」
・ケース6 会計の場合
「私は見たことがありますね、というか今でも時々見かけます」
時々?これがどういう事を指しているのだろうか。
幽霊博士(ミステリー部の水神のこと)ならわかるだろうか?
というか、あの人のことだから大体の予測は立てているとは思う。
「ミステリー部のデータ集めか?」
副会長が何かを察したようだ。
「そうです~。わかりますか?」
「ああ、去年少し在籍していたからな」
「えええ!」
あの幽霊博士とこの風光明媚の副会長がミステリー部に!?
まさに頭脳と頭脳のぶつかり合い、突き出し押し出しのごっつぁんです。
未来は予想外すぎてパニックになっていた。風光明媚はなんとなくかっこいいから使いたかった。
頭脳担当が二人もいて、喧嘩になったりしないのかしら?↑のはこういう事が言いたかったらしい。
それとも意外と意見が合うのかな。
「二人は定期試験で学年主席をいつも争っているんですよ、
そういった理由かは分からないですがたまに話しているのを見かけますね」
会計さんがこっそり教えてくれた。
頭がいいとは思っていたが、二人ともそんなにすごかったのか。
しかもその上、副会長は学校の取りまとめをやっていて、
水神先輩はちょいちょい深夜に幽霊探しとかやっていたけれども、
お互いいつ勉強しているのだろうか?
同じ人類なはずなのに、根本的に頭の作りが違うのかもしれない。
これで副会長さんの眼鏡が実はコンピュータでできていると言われても信じてしまう。
そう思ってまじまじと副会長さんの顔を見ると、
長いまつ毛に、整った顔立ち。
横を振り向くと、奇抜な髪型で、愛嬌はあるが美しさとは縁のない友人。
・・・頭の作りどころか、顔の作り、いや、体型もなので全てにおいて作りが違う。
これが生まれ持った格差というやつなのだろうか。
もはや人と宇宙人くらいの違いなんじゃないかと思った。
- - - - -
そうして集めた情報を、水神に持っていった。
ちょうどミステリー部には部員の三人が集まっていたので、簡単に報告会がなされた。
鳥居と泉ちゃんも他の人たちから聞き込みをしていたようだ。
「ふむ、そうだな。
せっかくだから今回は自分抜きでやってみろ。危険もなさそうだし良い勉強になるかもしれない」
と、鳥居と泉にそう言った。
「でも、今まで安全だったのが急に危険になるとかそういうことは無いのか~?」
「どうかな、あるかもしれないな」
「私が思うにですが、二パターン考えられると思うんです。
一つ目が妖怪的な存在の場合。この場合はある種人工的に発生したものなので、
存在する目的があると考えると、急に性質が変わるとは考えにくいかと思います。
二つ目が幽霊から派生したものの場合。幽霊は人の自我や各々の意志を持っているので、
自由な行動が可能になるかと思いますね」
「ほ~、泉ちゃんも色々考えてますね~」
「えへへ、ミステリー部に入って水神先輩に色々教えてもらってますから!」
「そうだな、大体それでよいと思う。
危険になる可能性としては、仮にその妖怪的な存在だった場合に、
数多くの人間が、危害を加える存在じゃないかと疑ってしまった場合だな。
そうしていくと段々とそのようなモノに変貌するかもしれない。
どちらにしても人の意識に浸透するなど長い年月を要するが。
あと自分は見ていないので何とも言えないが、
“それ”はおよそ人間から幽霊になった風貌ではないんじゃないか?
だとすれば付喪神や妖怪的な存在と言っていいと思う」
「えーと、つまりは安全ということですね!」
「まぁ簡単に言えばな」
「それなら安心だな、じゃあ早速追加の聞き込みに行くか」
「あ、私は新聞部の部活があるのでこれで」
「こちらも家庭菜園部の作業をするので」
「なんだよつれないなぁ」
「まぁまぁ、二人ともわざわざありがとうございました」
「いえいえ解決したら教えてくだされば」




