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14、問題児クラス

「こっちの草花の名前は?」

 先ほどの夜葬花と花や葉の形は良く似ている。ただ花弁の色は雪のように白く、花粉が微かに黄金色に光っていた。

「うーんと、白夜葬花? いや、夜葬花(白)かな?」

「……正気か?」

 アイザックの顔から表情が抜け落ちた。まず授業で姿形が似た草花を比較するのだから、違いが色だけということは無かろう。ふざけているのかと叱りたいところだが、残念ながらロドリゲスの表情は酷く真面目だ。酷く痛みだした頭を押さえながら、アイザックはもう一度訊ねた。

「……これは雪金草だ。――ブリュット、夜葬花と雪金草は使用用途が違う。説明してみろ」

「えーっと、夜葬花は葬式の際に使って、雪金草は……、何だろう? 大雪の中に植えて金にするとか?」

「お前、なんでこの学園に入れたんだ……」

 アイザックの嘆きが虚しくこだまする。何とも言えない空気の中、ロドリゲスは呑気に答えた。

「まあ、所詮自分は脳筋ですから」

「そんなの知っているが、自分で言うな、自分で」

 アイザックは苛立ちそのままの勢いで前髪を掻き上げた。その力が強すぎたのか、手を放しても癖がついて髪が落ちてこない。変な髪型のまま、アイザックは次の生徒を指名した。


「ハラン、説明できるか?」

 次に指名されたのは、腰まである黒髪の少女だ。たしか、入学試験の筆記は次席、実技を含めた総合でも一桁に入る優秀な成績だったはずだ。

「夜葬花は解呪に、雪金草は重度の熱傷に使います」

「――正解。流石だ」

 ほっとしたように頷くアイザックに、ハランは口元をほころばした。

「見た目は似ていますが、異なる点は使用方法だけではありません」

「ほう、どこまでわかってる?」

 説明を促されたハランは、両手を胸の前で握りしめ、恍惚とした表情で言った。

「2つとも森の中でとれる薬草ですが、最も効能が高い状態で収穫できるのは夜葬花は新月の夜、雪金草はシンと雪が降り積もった日の早朝です。なおこの条件に加え、さらに一定の厳しい条件をクリアすれば、真逆の効果を生むことが出来ると言われ、特に呪術面では――」

「ちょっと待った」

 最初は満足気に頷いていたアイザックだったが、雲行きが怪しくなり、慌ててハランを止めた。

「どうしてそんなことまで知っているんだ? 君が今から話そうとしていることは禁書にしか書かれていないはずだ」

 呪術は一般的に禁術で、使えるものは国内でも片手もいない。書物を探ろうにも、国や王家の厳重に保管された書庫に保管された禁書にしか書かれていない。つまり入学したての一生徒が知っているなど、とうていあり得ない事態なのだ。

「あー、えっと、実家で……」

「ひとまず、授業が終わったら私のところに来なさい」

 何故実家という単語が出てくる、と冷や汗をかくアイザック。慌ててハランの言葉を遮る。たしかハランの奥方は東方の国出身だったはずだが、ハラン自身はこの国の出自だ。ハランが禁術の知識を持っていていい理由にはならないし、一歩間違えると国際問題にもなりかねない。


「次、マンフォードはいないから……、えっと、ブレデル!」

 昨日の爆発事故の件でアーサーは別の教師から事情聴取を受けているはずのため、しょっぱらから授業に出ていない。

 次に指名したアメリアは主席入学。次こそ満足する回答が返ってくるだろうと安心したアイザックを裏切るように、別の生徒が声を上げた。

「ブレデルさんはホームルームの後、戻ってきていません」

 嘘だろう、とアイザックは教科書から顔を上げた。確かに朝一は埋まっていた窓際の一席が、今は空いていた。

――このクラス、問題児ばかりじゃないか……

 新学期始まって早々、アイザックの心は折れかけていた。

久々に投稿しました。気まぐれ更新気味ですが、よろしければときどきご覧ください。

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