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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
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それからしばらくは、平和な日々が過ぎていった。


下校時はディストに遭遇しないように注意していたし、実習のときにはクラスの女子みんなが、ディストが私に近づかないように盾になってくれたのだ。ディストがこちらを見ようものならその視界を遮り、こちらに足を向けようとすれば敢えて私に声を掛けて遠ざけるといったふうに。そのうちどういうわけかその動きは男子にも広がり、私を守る盾が強固になっていくのと同時に、私はクラスメイトたちと親睦を深めていった。

そのうちにディストも私が避けていることになんとなく気づいたのか、あるいはただ単に諦めたのかは知らないが、以前のように頻繁に声を掛けてくるようなことはなくなった。そして、ディストと距離をとれるということは、取り巻きたちを刺激することもないということ。

そうして2ヶ月ほどが過ぎて、私はディストのことを気にすることなく、クラスメイト全員と仲良く学校生活を送っている。


季節は初夏。丁度レイと出会ってから1年位になる。そしてそれは同時に私の誕生日でもある。

7歳。

今年の誕生日は、憂鬱だった。


成人にはまだかなり早いが、学校に入学したことで私はそれなりに一人前と認められた。世間的にも、アルバイトができるのは学校に入学してから、という風に、対外的には入学というのが一つの節目であるらしい。


そんな風に節目をむかえて、加えて末子で女児といえど王族の一員である私を待ち受けていたのは、大々的な誕生日パーティー。いわゆるお披露目であり、社交界デビューというやつだ。

おかげで1ヶ月前くらいから礼儀作法やダンスのおさらいでスケジュールが埋まり、新しいドレスの仕立てでシエラが張り切り、おそろいを用意しないとね、とレイがとばっちりを受け、ろくに魔法の練習の時間も取れない日が続いた。


ついでに言えば招待客の名簿を渡されて、ご挨拶するのだから失礼のないように最低限のデータは覚えなさいと、執事長セルガが直々に指導について、夕食後の時間は貴族家の方々の名前と偉業をひたすら頭に叩き込む日々。

初めて王族の大変さを知った1ヶ月だった。


それも今日で終わり。

このパーティーが終われば、また日常に戻れるはず。それだけを励みに頑張ったのだ、そうであってもらわなければ困る。



そんなわけで、私は最後の準備をしていた。具体的には、招待客のリストとにらみ合いながら、メイドさんに髪を結んでもらっているところである。

薄っすらとメイクもされて、白い肌に淡いピンクのチークが映える。口紅は光沢のあるピンクベージュ。化粧してます!という印象のない、でもしていることはわかる、そんな品のいい色だった。


「フォルティエラ様、いかがでしょう?」


後ろから声がかかった。髪が仕上がったようだ。

メイドさんが合わせ鏡で後ろを見せてくれる。きれいにアップされた髪は左右2本ずつの細い編み込みがお団子を囲むようになっていて、青いかんざしのような髪飾りが挿されている。


「素敵ね!ありがとう」


ちらりと見るとシエラも満足そうに頷いている。

青い髪飾りはドレスに合わせたものだろう。今日のドレスは白地に青い刺繍があしらわれた、少し大人っぽい雰囲気のものだ。大人に近づいた記念のパーティなのに、かわいらしさばかりを前面に出してしまってはだめなのだ。・・・と、セルガがシエラに言い聞かせていた。シエラが最初に選ぼうとしたのは鮮やかなピンク色にリボンがたくさんついたフリフリドレスだったからなぁ・・・



既に会場には招待客が集まっている。遅れて登場する私を拍手で迎える、という流れなので、既に晩餐自体は始まっているはずだ。各貴族家が挨拶に歩き回りやすいように立食パーティーになっていて、ヴォイドは晩餐会の最初から会場にいる。


段取りを頭の中で何度も反芻し、最初の挨拶で噛んだりしないよう唇を動かす。

はぁ、緊張する。

深呼吸をして、会場の扉の前に立つ。ここからはシエラもエスコートしてはくれない。一人前になったアピールで母親に手を引かれて会場入りするわけにはいかないものね。


両脇に立つ衛兵に、お願いします、と頭を下げて、きりりとした表情を作る。両側からゆっくりと開かれる大きな扉。それと同時に、聞こえてくる盛大な拍手。


ゆっくりと歩みを進めて、会場に数歩入ったところで、一拍。

片手でスカートを摘みあげ、右足を引いてカーテシー。優雅に、滑らかに。

姿勢を元に戻すと、今度は会場の前方にいるヴォイドの元へ歩き、ヴォイドの前で再びカーテシーをして、隣へと控える。

うん、スムーズにやれたはず。


あとは挨拶の言葉さえ失敗しなければ・・・!


「皆様、本日はお集まり頂きましてありがたく存じます。アルディア王が末子、フォルティエラ=カナデ=アルディアと申します。

皆様の祝福を受けてこの場におりますこと、これほどの幸福をくださった皆様に、心より感謝を申し上げます」


言い切った・・・!

会心の笑みを浮かべて頭を上げた私の視界にうつったのは、同年代の男の子。

ディスト=アイヴァンだった。

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