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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
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更衣室で囲まれるなんて、初体験である。とりあえず、囲まれた半円の中にアイラとティナがいないことを確認。うん、大丈夫。


「あんた、精霊つかってアイヴァンさまの気を引こうなんてずるいのよ!」


「アイヴァンさまはあんたが気軽に話していいような方じゃないんだから!」


「ディストくん、なんて気安く名前で呼ぶんじゃないわよ!」


おお、女子3人集えば姦しいというけれど・・・いや、それはなんか違うか。なかなかの迫力なんだろうけれど、魔物や魔人と渡り合ってきた私がこの程度で動じるわけがない。しかし、どうやって切り抜けるのが一番穏便だろうか?

考え込む私を見て、怯えていると思ったのか無視していると思ったのかはよくわからないが、彼女たちは徐々にヒートアップしていく。もちろん私はそれを適当に受け流しているわけだが。

アイラとティナが心配そうにこちらを見ている。大丈夫だから、と伝えて巻き込まれないように避難してほしいのだけど・・・


『レイ、アイラとティナに離れるように伝えて?』


『わかったわ!』


持つべきものは話せる精霊様。ふわふわと飛んでいったレイがアイラの肩に降りると、伝言はしっかりと伝わったのだろう、そのまま2人は更衣室を出ていった。


「自分の精霊に見放されてるじゃない!

やっぱりアイヴァンさまとは格が違うわよね〜」


「ふふ、ひとつも言い返せないなんて。

全部ほんとのことだもの、仕方ないとはいえちょっとかわいそうかしら?」


別に友達を馬鹿にされているわけでも、レイを馬鹿にされているわけでもないので、特に何を言い返す必要もない。自分のことなら何を言われたところで痛くも痒くもないのだ。ただひとつ気になることはといえば、どうして彼女たちがここまでディストに心酔しているのかという、それだけ。

しかし下手にそれをつついて長引くのも嫌なので、理由を聞いたりはしない。


Aクラスの女子からもBクラスの女子からも視線を集めている。その目はひどく同情的だ。たぶん更衣室から出たら、「あの子かわいそう」とか話題になるのだろう。目立つのは嫌なんだけどなあ。


「これ以上アイヴァン様に近づくんじゃないわよ!」


気が済んだようで、彼女らはそう釘を差して去っていった。まるで嵐のようだった・・・しばらく呆然としていると、Bクラスの女の子たちが心配して声をかけてくれる。


「大丈夫?」


「あの子達、こわかったね・・・」


一方Aクラスの子たちは、私を遠巻きに見ているだけ。目をつけられて可哀想、とひそひそ話す声が聞こえるが、彼女たちだって巻き込まれたくはないだろうし、巻き込みたくもないので距離感としては丁度いい。


「別に気にしてないから、大丈夫よ。みんなありがとう」


実際全く気にしていないし、考えてみればアイラとティナ以外のみんなと話すきっかけをくれたようなものだ。このチャンスはありがたく活用させていただくことにする。

こうしてクラスの女子たちとも親睦を深め、私はようやく更衣室を出た。



カバンを取りに教室に戻ると、アイラとティナ、そしてアレンが心配そうな顔で待っていてくれていた。


「なんか、絡まれたんだって?」


現場を一人見ていないアレンが、女子って怖いな、と肩をすくめた。うん、女子のコミュニティってとっても怖いんだよ。


「まあ、別に何かされたわけじゃないから、大丈夫」


アレンに対して私も肩をすくめて返した。

アイラとティナは、心配そうな表情であると同時に、なんだか申し訳なさそうな顔をしている。


「ごめんね、ティエラちゃん・・・」


「助けに入ってあげればよかったんだろうけど、怖くてできなかったよ・・・」


心優しい2人は、私を置いて更衣室を出ていったことを気にしているようだ。


「気にしなくていいのに。

それに私、これでも結構強いのよ?」


冗談めかして言うと、レイがふわりと私の肩に戻ってきて、続ける。


「そうそう、カナデは強いから大丈夫っ」


レイに、伝言ありがと、とお礼を言うと、いつもの笑顔が返ってくる。

うん、レイが馬鹿にされるようなことがあれば多分怒ってしまうだろうな。だけど、彼女たちはそれはしなかった。アレンを馬鹿にしたのはディスト本人だし、彼女たちに対する怒りは特に湧いてこない。ディストラブの理由は気になるけれど。


「カナデ、って、ファミリーネーム?」


そういえば、私は自己紹介でもフォルティエラという名前しか名乗らなかった。別に隠し事をしているわけでもないので、素直に首を横に振る。


「え、じゃあもしかして転生者なの!?」


こくり、と今度は首を縦に振る。3人はそれを見て、なんだか興奮したような表情に変わった。


「は、はじめてみた!転生者ってほんとにいるんだ・・・!」


「前の記憶があるってどんな感じなの!?」


「レイちゃんが喋るのも納得だねぇ・・・でも2人とも、ティエラちゃんを困らせちゃだめだよ」


ティナがアイラとアレンを諌めてくれて2人はすぐに落ち着いた。この3人はいい組み合わせなんだな、きっと。ちょっと抜けたところのあるアレンと、面倒みがいいけど時々やりすぎるアイラ、それからおっとりしつつもはっきりと物を言うティナ。

なんだか3人が微笑ましくて、幼馴染という関係が羨ましくもある。


いつか、ロキにも3人を紹介できる日がくるだろうか。

私はなんとなく、幼い少年の心を持った世界樹のことを思い出していた。

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