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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
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自己紹介の後に配られたのは、3冊の教科書。

魔法の基礎、初めての算術、文字の世界、というタイトルがそれぞれに書かれている。今更読み書き計算かぁ、と思うが、考えてみれば本を読むことはあってもあまり書き物をした経験はない。せっかくだから、きれいな字を書けるように励むことにしよう。

計算は、はっきりいって今更習う必要はない。元日本人の計算能力を甘く見てもらっては困る。とはいえ、一般にはそういった授業は必要だろうし、1年生のカリキュラムに計算があるのは当然のように思える。

魔法の基礎、という教科書だけは、この世界ならではだ。ぱらぱらとめくってみると、「君にもある!精霊の力」とか「精霊の力を感じてみよう」といったサブタイトルが並ぶ。

当然その中に付与魔法の話が出てくるわけもなく、この1年間は友達づくりをがんばれってことだな、うん、と結論を出し、教科書を閉じる。

教科書以外の配布物は保護者向けのものばかりだった。ガルヴァがした諸注意の説明だとか、魔法の練習をするにあたって、怪我した場合学園ではどうするとか、その同意書だとか。


そういった諸々を受け取って、オリエンテーションは終了。

明日から授業だからなー、遅れるなよー、と言い残してガルヴァは教室から出ていった。

生徒たちが残された教室は、途端にざわざわと賑わい始める。既にできた友達と話し合う子、そそくさと帰り支度を始める子、渡された教科書を眺める子・・・


私はカバンに渡された教科書類をしまうと、きょろきょろと辺りを見回した。まだ教室を出ていった生徒はいない。このまま帰ってもいいのだけど、今のうちに誰かと話せるようになっておくべきだ。学校生活は最初が肝心。いや、もう既に出遅れているわけだけれど。


ぐるりと教室を見渡すと、私の方を遠巻きに見ているグループがいくつかあるのに気づいた。その中で最初に自己紹介をした女の子と偶々目が合う。標的は決まった。


カバンを机の上に置いたまま、その子に近づくと、私はにっこりと微笑んだ。彼女の傍には女の子が一人と、男の子が一人。確か・・・カルディナさんとフェイアレンさん、だったかな。


「あの、はじめまして」


標的を決めたはいいものの、なんて話しかければいいか全くわからなくて、ただの挨拶になってしまった。・・・どうしようか。


私が話しかけると、カルディナさんがアイラさんの後ろに隠れてしまった。怖がらせてしまったのだろうか。退散すべき?


「こら、隠れることないでしょ!

ごめんね、ティナは人見知りなの」


アイラさんが説明してくれたおかげで、会話が続いた。これはカルディナさんの人見知りに感謝だ。


「ううん、驚かせたみたいで、こちらこそごめんなさい」


こちらも謝罪すると、恐る恐るといった感じで、カルディナさんが顔を出した。


「い、いえっ・・・ごめんなさい・・・」


小さな声だったが、いきなり嫌われたわけではないらしく、私は安堵する。


「フォルティエラちゃん、だよね?

精霊が具現化するなんて、すごいのね!」


「ティエラって呼んで!

すごいのはレイであって、私じゃないわ」


そう言って私は笑った。


「私のことはアイラって呼んでね。

後ろに隠れてるのがティナ、そこの能天気な顔したのがアレンよ」


「能天気・・・ひどい言われようだな。

よろしく、ティエラ。僕はフェイアレン、アレンって呼ばれてる」


「よろしくね、アイラ、アレン。

カルディナさん、私もティナって呼んでもいい?」


カルディナさんを見ると、顔を真っ赤にしながら私の言葉にコクコクと頷いてくれた。


「よろしくね、ティナ!」


これで、無事友達ゼロ状態は脱した。


「それにしても、みんな友達を作るのがうまいのね。

私、取り残されたと思ってすごく不安だったの」


正直に白状すると、アイラは笑いながら種明かしをしてくれた。


「ティナとアレンは幼馴染なの。

それ以外にも、精霊の泉に行くときに一緒だった子たちもいるから」


そうか、普通は精霊の泉ツアーで友達を作るのか・・・それを考えると自前の馬車を用意するのは一長一短だ。誕生日にすぐ行けて、泉で順番待ちをする必要はなくなるけど、友達作りはできないからなぁ。


「あの・・・レイちゃん、喋れるの・・・?」


ティナがおずおずと言う。アイラの後ろからは出てきてくれたようだが、仲良くなるには時間が必要かも知れない。


「喋れるわよ!アイラ、アレン、ティナ、よろしくお願いするわ!」


相変わらず偉そうな口調のレイだが、3人が気を悪くした様子はない。

それよりも会話する具現化精霊に興味津々のようで、実は話しかけるタイミングを狙っていたの、というのはアイラの言葉だ。


「多分、他の子たちも狙ってると思うけどね」


籐巻きに私をチラチラ見ていたグループはそういう子たちだろうか。レイの存在のおかげで友達作りの苦労はだいぶ緩和されそうだ。

最初に話しかけた相手がアイラたちで良かったな、と思う。3人とも感じが良くて、何よりレイに変に執着したりしない。触らせて!とか言い出す子が絶対居ると思うから。

明日からの学校生活が楽しみになる、いいスタートを切れたと思う。

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