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二章のスタートです。
青春パートと言うか人間関係、それと魔導具作りが主題になっていますので、起伏には乏しいです。
一気に駆け抜けようかと思っています。
今後共どうぞよしなに願います。
王都には3つの学校がある。といってもそれぞれに大きな特色があるわけではない。
この国における学校というのは義務教育みたいなもので、3つに分かれてるのは単純に王都の人口とその広さによるものだ。いわば学区制。どの学校に入るかは住んでいる場所によって決まる。そこに貧富の差や身分の差は関係なく全ての子供が、住んでいる場所から一番近い学校に通うのだ。
そのために、収入が一定以下の場合は国が学費を補助する制度がある。もちろん就学中にどの生徒が補助を受けているとかいった情報が公表されることはないし、仮にそれが知れ渡ったところで差別の対象になったりしない程度には、この国の公共事業は既に国民の間に根付いている。他人の家庭環境を馬鹿にするのは恥ずべきこと、という意識があるのだ。
身分の差については、一応貴族というものも存在する。だが、そのほとんどはなんらかの功績をおさめたとか、国や世界に対して貢献したとか、そういった人に与えられる名誉職であり、一代限りのもの。貴族の子供は一定数いるが、貴族家の子供、というのは極々少数だ。
その極々少数というのは、建国に関わった人たちであるらしい。王族ほどではないけれど、アルディア国の成立に際して決して無視できない存在。例えば他国との調整に奔走した人、国内で人々をまとめる手助けをした人などなど。
しかし貴族家の人間だからといってなにかしらの要職を自動的に与えられたりはしない。ただ単に”由緒正しき家柄”なだけなのだ。
そんなわけで3つの学校どれに通っても大差はない。もちろん地域的にこの辺りは富裕層が多い、とかはあるので、多少の偏りはあるのだが。
王宮は王都の中心から若干北側にあるのだが、この近辺は当然のように富裕層が多い。王宮近辺は兵士の見回りも多いため治安がいい分地価が高いのだ。
王都北にある第一学園、南東の第二学園、南西の第三学園。
私は今日から第一学園の生徒になるのだ。
制服に袖を通す。白いシャツに黒い膝上丈のプリーツスカート。シャツの上には同じく黒のジャケット。細身のジャケットはティエラの小柄な体にフィットするようなタイトなデザインだ。
シャツの襟元には赤いリボンタイを結ぶ。細いタイプのこのリボンタイは男女共通で、各学園で色が違う。校章がないかわりに、タイの色でどこの生徒かを区別している。
「よし」
鏡の前でおかしなところがないかチェック。制服なんて何年ぶりだろう・・・自分が23歳だった意識がある分、気恥ずかしい。
ちなみにレイだが、私の制服と同じデザインの服を着て・・・というか、着させられて少しむくれている。もちろん犯人はシエラである。似合ってるんだけどね。
今日は入学式と、クラス分けをしての簡単なオリエンテーションだけだ。午前中で終わる予定だし、そもそもまだ教科書がない。荷物はほとんどなく、カバンの中に入っているのは筆記用具程度のもので、それ以外はハンカチや櫛といった最低限の身だしなみグッズである。ちなみにカバンも制服同様指定のもので、持ち物に貧富の差が出たりしないように配慮されている。
さて、準備は万端。今日は保護者として列席するシエラと一緒に向かうことになるので、行きは馬車、帰りは徒歩だ。いくら身分の差は関係ないと言っても、それは学生の話。シエラはこの国の王妃だ。さすがに徒歩で向かうわけにはいかなかった。
外に出ると、日差しがきらきらとあたたかい。季節は春。これで桜があったらなぁ、なんて思うのはやはり日本人の性というものだ。馬車でシエラと向かい合って座ると、シエラはふふ、と笑った。
「よく似合ってるわよ、ティエラ。レイちゃんもね」
第一学園はそれほど遠くはない。というか、近い。歩いても15分程度の距離だ。その距離を馬車で移動しているのだから、ゆっくりとシエラと話す時間はなかった。それでもその短い時間で、シエラは私とレイのタイをきれいに結び直してくれて、ティエラが一番かわいいに決まっているわ、なんて言いながらまた笑っていた。親バカである。
学園に着くと、保護者席と生徒の席が分かれるため、シエラとは別行動になる。
講堂に向かう前に、貼りだされたクラス分けを確認しに行く。同じ制服を着た子たちが集まっていたため、その場所はすぐにわかった。
しかし・・・私は小柄だ。人混みに負けてなかなか自分のクラスを見ることができない。まさかこんなところでクラス分けを見るためだけに飛翔の魔法を使うわけにもいかないし・・・おとなしく前に出るチャンスをうかがっていると、レイがふわふわと飛んでいき、掲示板をしばらく見つめた後に再び肩の上に座った。
「Bクラスよ!」
小声で教えてくれる。
具現化した精霊は珍しいため、レイは注目を集めていた。それに気づいて、これ以上目立たないように小声で話してくれたようだ。レイの気遣いがありがたい。初日に、しかも入学式も始まっていないというのにいきなり目立ってしまうのには抵抗がある。そうやって場所を考えて行動してくれるのが、レイの長所である。
「ありがと」
人混みから離れてから、私も小声でレイにお礼を言う。それに対して、レイは得意げな笑顔を返してくれた。
新生活も、レイと一緒ならきっと大丈夫。
そんな風に思わせてくれる、素敵な笑顔だった。




