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世界樹は夢を見る  作者: 深月
幼少期
56/201

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ここまでで一章は終わりです。

明日からは二章に入りますが、更新は今まで通りか少し増やすかもしれません。

お付き合い頂ければ嬉しいです。

季節は本格的に冬。雪が降るほどではないが、外はそれなりに冷える。

この道は、夏は涼しいが冬はあたたかい・・・なんてことがあるわけもなく、日差しが遮られてやっぱり寒い。木々に風が遮られている分すこしだけマシなのかも知れないが。

肩の上に座るレイは、見るからに暖かいコートを着ていた。旅の後、厚手のスカーフを巻き付けたレイの姿に目ざとく気づいたシエラが、予想通り嬉々として縫い上げたものだ。背中の部分が開いていて、羽の邪魔にならないようになっている、お手製ならではの品だ。しかもこのコート、一着だけではない。私が持っている数枚のコートと同じデザインで色違いのものがしっかりと揃えられている。

始めこそ抵抗していたレイだったが、おとなしく従ったほうが拘束時間が短くて済むことに気づいてからは、言われるがままきせかえ人形として振る舞うようになっていた。


そんな日常を、私達は満喫していた。旅の報告も案外早くまとまって、調査団の面々は自分の国へとそれぞれ帰っていった。

レイに対する質疑応答の場も私が成人してから、ということになった。質問に答えるのはレイなので私は本来関係ないのだけれど、会場にレイが行く以上私も同行することになる。そういった公式の場に成人前の子供を招くのは酷だ、とヴォイドが主張してくれたのだ。



さて、今日レイと一緒に訪れているのは、精霊の泉である。

事前に、今日は泉への子どもたちの送迎の予定がないことは確認済みだ。ロキとは念話で話をするので、傍から見ればただ単に泉のほとりに佇んでいるだけ。この寒空の中でそれはあまりに不自然だ。


『ロキ、ロキ聞こえる?』


世界樹の根がどこにあるかわからないので、泉の近くまで来てすぐに呼びかける。


『ティエラ!?聞こえるよ!遊びに来てくれたんだね!』


西の果てで聞いた声よりも、若干遠くから聞こえるようには感じるが、話をするのに支障が出るほどではない。辺りを見回して手頃な大きさの石を見つけ、腰を下ろす。


しかし、ちゃんと話ができそうでよかった。泉の近くで私の声が届かなかったら、約束を破ることになっていた。


『あれから傷は大丈夫?痛くない?』


『うん、もう大丈夫だよ。ティエラが治してくれてから元気になったから、周りの草や花たちも喜んでくれてる』


それはつまり、西の果ての植物が復活しているということだろうか。


『初めてのともだちができた場所だからね!きれいな花畑にしたいんだ!』


あの西の果てが一面花畑になったら・・・うん、そのときはもう一度行きたい。


『素敵ね。そしたらきっと遊びに行くわ』


想像して、思わず微笑みがもれる。


『でも、初めての友達って・・・精霊たちとは話さないの?』


『話ができる精霊なんて、いないよ?』


レイを見る。世界樹にとっても、レイのような精霊は今までにいなかったようだ。


『ここにいるわよ!』


レイが念話に参加してくる。泉にいたときはどうして話さなかったのだろう?


『あたしはレイよ、よろしくね!

・・・泉にいたときから、あなたの声は聞こえていたわ』


『レイ・・・?きみは精霊なの?どうして話せるの?』


『カナデに宿って、話せるようになったわ!』


すると、ロキは少し考えをまとめているのか、しばしの沈黙があった。


『かなで、っていうのはティエラのことだよね?

ティエラは転生前の記憶があるの?』


その疑問に答えるように、私は転生したときのこと、赤ちゃんになって戸惑ったことを、懐かしく思いながらロキに話した。


『そうなんだ・・・普通の人は全部忘れちゃうのに、どうしてだろうね?

でも、そのおかげでふたりと話せるんだから、ぼくは嬉しいけどね』


言葉通り嬉しそうに話すロキに、今日は言わなくてはいけないことがある。私達の訪問を喜んでくれるロキにはちょっと言いづらいのだが、仕方ない。


『ロキ、私達しばらく来られないかもしれないの』


冬ももうすぐ終わる。春になれば、私は学校に通わなくてはならない。

そうなれば、今のように時間がいくらでもある、というわけにはいかないのだ。


『・・・しばらくって、どれくらい?』


案の定、悲しげなロキの声。


『時々は時間を作れると思うけど・・・頻繁に来れなくなるのは5年位、かしら』


申し訳ない気持ちが声にも出てしまったかも知れない。

対するロキは、全く気にしていないような声で言った。


『なぁんだ、しばらくっていうから100年くらいかと思った!

改まって言うからどきどきしちゃった。それくらいの時間、気にするほどじゃないでしょ?』


そういえば、相手は世界樹だった。人間にとっての5年と、彼にとっての5年は全くの別物だ。まあ、だからといって何も言わずに来なくなるというのは自分の良心が痛むので、どちらにせよ報告には来ただろうけれど。


気の重い話題はあっという間に終わった。

私達はその後も3人で、世界の果てをどういう場所にしようかとか、他の精霊の泉のこととか、他愛ない話をして楽しく時間は過ぎていったのだった。

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