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世界樹は夢を見る  作者: 深月
幼少期
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2回の戦闘を経て夕方たどり着いたのは、既に放棄された集落の跡だった。

規模は小さくはあるが、そこまで古く朽ちた印象はない。ヴォイドによると、15年前にここを訪れたときはまだ人が暮らしていたそうだ。つまり最近まで人が住んでいたわけだ。

なぜ廃墟と化してしまったのかはわからないが、有難く今夜の宿として利用させてもらう。


「それにしても、こんなにも魔物がいるものなのですか?」


これがアルディアでは5日の日程で1度しか魔物とは遭遇しなかった。それがここ数日立て続けだ。ちょっと不自然なくらいに。


「ここまで魔物に遭遇する旅は、俺もはじめてだ」


護衛として旅をすることの多いマティスが私の疑問に答える。

アルディアやアイゼストが特別魔物が少ないという可能性もある。魔物が出たときは国主導で討伐隊が組まれるし、そうして討伐を繰り返しているうちに全体の数が減ったのかもしれない。だが、


「15年前にも同じルートで果てに向かったのだが・・・

往復でも2回ほどであったな、戦闘をしたのは」


ヴォイドの経験から言っても、この遭遇率は異常である。この街も魔物の急増により捨てられたのだとしたら・・・魔物の急増には世界の果ての異変が関わっていると考えるのが自然だろう。


「我々が考えているよりも、重大な事態が起こっているのかもしれませんな」


バイゼル将軍の言葉に皆が頷き合う。だとするならば、今回の調査はなんとしても成功させなくてはならない。打つ手があるのならば早いほうがいいのだから。

しかし、魔物に襲われては撃退してを繰り返しているせいで、私達の移動は確実に遅くなっていた。ザルツが魔物を回収してくれるおかげで死体の処理が無いため多少マシではあるのだが、それでも気が急いている分もどかしい。西の果てまで、あと2日程度はかかるだろう。


「少なくとも西の果てには事前調査の兵士たちがいるはずだ。

果ての調査と合わせて彼らからこの辺りの情報も集めよう」


この国に駐在している兵士であれば、いつ頃から魔物が増え始めたのかもわかるかもしれない。

情報の伝達手段に乏しいというのはなかなかに難儀なものだ。事前に危険を知ることができなかったために、私達の備えは万全とは言い難い。夜や移動中に武器の手入れを行ってはいるが、あまり頻繁に襲撃があるとそれも十分にはできない。魔物の血液と脂は剣の切れ味を鈍らせるが、予備の武器を持っているのはバイゼル将軍とマティスくらいだ。私やヴォイドが頻繁に戦闘に参加することが既に想定外なのである。


「・・・果ての異変が原因とは限りますまい」


タリムが口を開いた。

ちら、と私を見て言い放った言葉は、私の許せる範囲を、超えていた。


「最近、変わったことがありましたな。

()()()()()()()()()()()()ということが」


「つまり、私が原因であると仰りたいのですか?」


尋ねる私の声は、感情を押し殺しすぎて冷徹に響いた。


「いえ、私は可能性の一つを述べたにすぎませんとも」


してやったりとニヤニヤとした笑いを浮かべるタリムの姿が目に映る。

怒りが込み上げて来る。冷静でいようとすればするほどに。


「タリム殿。いささか悪ふざけが過ぎるのではないですかな」


バイゼル将軍が顔に浮かんだ不快感を隠そうともせずに口を挟む。それを援護するようにタリムに向けて批難の声が次々と掛けられた。


「お姫さんに守ってもらってる立場で、よくもまぁそんなことが言えたもんだ」


「タリム様よりもカナデどののほうがよほど人間として真っ当だと思うけどね」


ふん、とタリムの鼻を鳴らす音が響く。


「無自覚に力を振るっている場合もありましょう?

皆様勘違いなさっておいでだが、私はただそういう可能性もあると申し上げているだけなのですがな」


「可能性というならば。

カナデ様は世界の異変に対抗するべく現れた救世主様かも知れませんね」


ザルツがにこにこと微笑みを浮かべて言う。


「こんな小娘が救世主などとは、笑い話にもなりませんな」


「おや、タリム様。僕は可能性の一つを述べたに過ぎませんよ?」


救世主説を否定するタリムに、ザルツは首を傾げて先の理論をそのまま返す。この切り返しは見事だなぁ、ザルツに助けられてしまった。昨日あれだけ啖呵を切ったばかりなので、ありがたいながらもちょっと気恥ずかしい。

しかし、この私を標的にするタリムと庇ってくれる皆という構図、完全にデジャヴだ。


「タリム殿もザルツ殿も、なかなか面白い推論をするものだな。

調査から帰ったらこの話題を酒の肴にさせてもらうとしよう」


わざとらしく笑い声をあげるヴォイドの目は、まったく笑っていなかった。タリムは完全に完膚なきまでに、ヴォイドを敵に回してしまった。仏の顔もなんとやら。この話は帰還後確実にミュール王の元へと届くだろう。


さすがにタリムとてここまで言ってしまえばヴォイドを、そしてアルディア国を敵に回すことはわかっていたはずだ。にもかかわらず、そんなものお構いなしに私を攻撃する理由がわからない。恨まれるようなことはしていないつもりなのだが。

理由がわからない以上その場その場で対処するしかできないのがもどかしい。これほどに粘着してくるのだから、何かがあるはずだとは思うのだが・・・


とりあえず、レイ。

イライラするのはわかるけど、肩の上で私の髪を引っ張るのはやめてほしい。

地味に痛いんだからね!?

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