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威勢よく啖呵を切ってはみたものの。
実際、そうまでして私がザルツを守る理由は無い。
それでも、もし調査団の内部の不和が原因でザルツが傷つくことがあれば、護衛の4人もバイゼル将軍も、そしてヴォイドも、トリス国からの苦情を受ける可能性があるのは確かだった。
「あそこまで自分にヘイトを集める必要はないとおもうけどね!」
うん、レイの言う通りである。とはいえ・・・タリムははじめから私を目の敵にしていたように思う。私の同行に真っ先に口を挟み、猪の魔物を討伐して、私が一応は使える存在であることを示した後も、タリムの態度が軟化することはなかった。
理由は、なんとなくわかる。
「小さい頃にさ」
「カナデは今も小さいわね!」
話し始めた私の揚げ足を取るレイ。絶対わかってて言ってるけど、一応補足する。
「転生前に、よ。
やっかみの対象になること、結構あったのよね。
私、中途半端に出来が良かったから」
そう、自分で言うのも難だけれど私はそこそこには出来がよかった。但し、あくまでそこそこに。それは決して他者の追随を許さないほど飛び抜けた出来の良さではない。
それが何よりの問題だった。
比べるのが馬鹿らしくなるくらい優秀だったら、素直にあいつはすごいと尊敬を集めもしただろう。しかし、そこそこ程度であれば、手が届きそうな気になるものだ。全然できない人から見れば十二分に賞賛されるほどの優秀さではあるが、ほんの少し実力のある人間から見れば、”頑張れば手が届きそうなのになぜか届かない”相手として認識されてしまう。
圧倒的な差がある相手には生まれない嫉妬心が、その程度であれば芽生えやすいのだと思う。
「多分だけど、今の私はまさにその時と同じ状態なのよ」
そう、現状の私の実力は中途半端なのだ。
もしかしたらポテンシャルは圧倒的なのかもしれない。
魔法の出力という点では文句なしに優秀ではあるだろう。それこそ転生者ですらないタリムから見れば圧倒的に。しかし、魔法の使い方という点では未熟であり、どう考えても経験不足。剣術も人並みにできるくらいで、魔法の力を使って底上げしているだけだし、バイゼル将軍の剣技を見た後では熟練者との差がはっきりとわかってしまう。
加えて、私はまだ幼い。
6歳にして魔物を倒したという実績。しかし魔物を圧倒するほどではない程度の実力。幼いが故に未熟であり、そして幼いが故に伸び代が大きいという事実。
すごいんだけどそこまですごくない、でもそのうちすごくなるかも、みたいな。
そして何よりも、それらの優秀さが私の努力でもたらされたものではない、ということ。これは直接的に嫉妬の原因になりうる。
世間に精霊の力の秘密は公表していない。だから、タリムにとって私はおそらく、”偶々強い精霊が宿ったから”子供らしからぬ実力を発揮する小娘、なのである。自分にレイが宿っていればその力は自分のものだったのに、という嫉妬は容易に想像できる。
「だから私が標的にされるのよねきっと。
護衛の転生者たちだけだったら、多分ここまで拗れてないのよ。
タリム様は私を足手まといだと思っていた。ただ転生者であるだけの子供だと思っていた。
・・・なのに実際はレイの力を借りて戦ってる。
侮っていた相手が自分より活躍していることが、プライドを傷つけたんだと思うの」
「そんなのあいつの勝手な勘違いじゃない。
それにカナデが付き合う必要ないわよ!」
「うん、それはそうなんだけどね。
ただ、私がいなければ拗れていなかったっていうことを、私が許せないだけ。
私を連れてこなければ、なんて言われたくないの。
だってそれは私を同行者に選んでくれたお父様に対する評価になってしまうもの」
この世界に来てレイと出会ってから、私には大切なものが増えたように思う。
自分の存在をずっと自分で否定してきたからだろうか?否定してきた自分を受け入れてもらえて、認めてもらえたことが嬉しかったから?
・・・理由は、どうでもいいか。
ただ私は今、家族のことが大切で。
そう思えるきっかけをくれたレイのことが大切で。
大切なものを守るために、私は私にできる精一杯を、する。




