↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
131/201

130

六の月に入り、東の迷いの森の探索日程がついに決定した。

メンバーは私達のチーム4人と、伝承研究チームから1名、遺跡発掘チームから1名の合計6名。

出発は7日ウルの日の昼。これはザルツの講義日程に合わせた予定で、高等学園前でザルツと合流してそのまま昼食を兼ねた最終ミーティングを行い、東へ向かうことになる。調査は進展が全く無ければ一週間を目処に帰還、進展があれば続行。続行の場合ザルツの講義は休講になる。


そんなわけで、今日は顔合わせと、結束を固めるための食事会・・・という名の多分飲み会である。今回はダメな大人が量産されないように願いつつ、まずは我が研究室の共有スペースを使っての顔合わせ。


遺跡発掘チームから参加するのはゲインという名の30代くらいのおじさま。体を鍛えるのが趣味な上、熊の獣人というアドバンテージのある肉体派だ。おじさまの頭の上にリアルなクマ耳が乗っているのはちょっとシュール。


伝承研究チームからはカルラというお姉様が参加。あまり探索が得意そうには見えないが、回復魔法が得意であることと世界樹研究が専門であることから参加が決まったらしい。ロキについての研究内容が聞けるかも知れないし非常に楽しみだ。


2人とも私の歓迎会に参加してくれていて、顔合わせと言ってももはや全員顔見知り。通過儀礼みたいなものだろう。

そんな会合が長く続くわけもなく、私達は食事会へ。会場となるのは料理がおしゃれで女性ウケがよく、尚且つボリューム満点で男性も満足、という大人数でのパーティ向けのお店。勿論お酒の種類も豊富。大人たちめ・・・


別にお酒を飲んではいけないという法律があるわけではない。ただ成長期の飲酒がよろしくないということは一般に浸透しているらしく、12歳まではお酒は勧めないのがマナー。勧めてはいけないわけではなく、控えましょうねという感じ。


私は転生前からお酒が好きだったわけでもないので、普通にジュースでいいんです。乾杯はグレープフルーツジュースで。


「カナデちゃんは体力大丈夫?結構ハードになりそうだけど」


「毎日トレーニングはしているので、多分」


多分、カルラさんよりは体力があると思う。


「もっと鍛えたほうがいい!腕なんかほっそいじゃないか!」


「ちょっと!ゲインの美的感覚押し付けないでよ、カナデちゃんは今のままがいいんだから!

この細い四肢、スレンダーな体。儚げで素敵じゃないの・・・」


なんで最後のほうちょっとうっとりしているんでしょうか。


「まぁカナデは少食だよねー?」


「お前と比べるなよウルド、人並みだと思うぞ・・・」


賑やかなスタートだ。遠慮しあって喋らないよりよっぽどいいけど。


「でもまぁ小柄なのは確かだよなぁ。8歳だっけ?」


「先月9歳になりました」


「えっ!?」


声の主を見る、皆の冷めた目。


「なにお前、えっ、てどういうこと・・・」


「やっだ信じらんない!ザルツって意外とサイテーね」


「俺ですら嫁の誕生日は覚えてるぞ・・・」


「ザルツさいてーだねー」


ゲインさん、結婚してたのか。奥様がどんな方なのか気になってしまう。

責められるザルツは完全にへこんでいる。これ以上無いくらいにへこんでいる。

まあ、ザルツの名誉のために言っておくならば・・・


「そういえば教えたことなかったですね」


それが理由になっているかどうかはともかく。

しかしザルツは我が意を得たとばかりにうんうんと頷く。

・・・イラッ。


「まあ、聞かれてもいませんけどね」


再び撃沈するザルツ。


「ちなみにカナデ、ザルツの誕生日いつか知ってる?」


「九の月5日ですね」


「やっぱザルツさいてーだねー」


その後ぼそっと呟くように言ったカルラさんの言葉が、ザルツにトドメをさした。


「うわ・・・マジ無いわぁ・・・」


沈黙がその場を包む。


「すまんザルツ、さすがにフォローできかねる」


「よくもまぁそんなんで独占しようとしてたもんだな・・・」


「カナデ、これおいしいよー、食べなー?」


「あ、いただきます」


ウルドが取り分けてくれたピザを頬張る。トマトの甘みと酸味がおいしい。


「おいしいですねこれ」


「ねー?美味しいもの食べて元気だしなー?」


へこんでいるのはザルツであって私ではないのだけれど。

そうしているうちにふらふらと立ち上がったザルツは、まるで魂が抜けたように一人、店の外へと消えていった。


「大丈夫ですかね?」


いじめ過ぎただろうか。


「カナデちゃん、優しすぎでしょそれは。

ああいう馬鹿にはガツンと言ってやらないと!

あれがあたしの彼氏だったらぶん殴ってるわよ!!」


「カルラさん落ち着いてください・・・」


「いや、あれはザルツが悪い。カナデが気にする必要はない」


「カナデ、これも食べなー?」


しかし、探索はもう明後日からだ。あんな状態で参加するのは危なくないだろうか。

・・・まあ、何かあったら体張って守ればそれでいいか。

心のケアは苦手なんだ。自分のも、他人のも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。