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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
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敵の正体がわかり証人も連れている以上、相手の出方を見る必要も何もない。できるだけ早く王都に到着して、パーティーの前にバルドを追い詰めなくてはならない。

街道を外れた私達は凄まじいスピードで王都へ向かった。4頭の馬と、車輪に”加速”をかけ続けたのである。幸いサイファが丈夫な馬車を選んでくれていたおかげで、車輪が外れるようなアクシデントも、二度目の襲撃に遭うこともなく、一度の野宿を経て翌日の昼には王都が見えてきていた。半日程度は時間を短縮できた計算だ。


王都まであと少しというところで街道に出て、通常のスピードに戻った私達。門に入るまではこのまま進めばいい。

問題は王都に入ったあとのことだ。私には2つの選択肢がある。このまま急いで王城に向かうか、あるいは一旦馬車や服装の体裁を整えてから王城に向かうか。


このまま向かったほうが、バルドの蛮行をアピールするには有効だろう。しかし、余裕を見せつけるという意味では後者のほうがいい。こういった駆け引きはよくわからない。

御者台のジェーンに声を掛け、意見を求めてみた。護衛の2人にも。


ジェーンは、使者として振る舞うならば見た目にも気を遣うべき、ということで後者。

護衛の2人は、バルドは私が証人を連れているとは思っていないだろうから、それを隠すためにも偽装すべき、ということでやはり後者。


3人の意見が一致したので、王都の中で仮宿を取り、着替えや馬車の交換やらをしてから王城に向かうことにした。



宿を取り、4人の証人も連れて部屋に入った私達は一先ずお疲れ様と労いの言葉を掛け合った。かなりの強行軍についてきてくれた皆には感謝でいっぱいである。もう少し面倒をかけることになってしまうが、ここからは私は動かないほうがいい。

新しい馬車の手配をサイファに、王城へ到着を知らせる早馬の役割をリッドにお願いし、残った私達は着替えたり、髪を整えたり。メイド3人も着慣れたメイド服に安心したようで、再び甲斐甲斐しく私の世話を焼き始めるのだった。


レイにももう出てきてもらって、着替えを終えた私の肩に座らせた。

そうして準備を急いで終えて、リッドもサイファも戻ってきたところで、多めの金額を支払って宿を出る。

用意された馬車はなかなか豪華だった。丸みを帯びたフォルムがかわいらしく、内装もふかふかのソファ。その後ろからもう少し簡素な使用人用の馬車が続く。勿論後方の馬車にはメイド2人の他証人4名が乗っている。こちらはサイファが見張り役兼御者を務めてくれた。


ゆっくりと見せつけるように進む馬車の中から王都の様子を盗み見る。雰囲気はアルディア王都よりも若干近代的、だろうか。建物に使われる石材も、自然のままのものよりも、綺麗に切り出して磨きをかけたような、加工されたものが多く使われている。学術都市を擁することで魔導具職人の数が多いのもトリスの特徴なので、こういった建築にも魔導具による加工が行われているのかも知れない。



リッドが先に到着を知らせてくれていたので、私達は顔パスで王城に入ることが出来た。前方を小さな湖に囲まれた王城は、まるで浮島の上に存在しているかのように見える。実際は後側は普通に陸地なのだけれど。

王城へとつながる跳ね橋を渡り、ようやく馬車は止まった。馬車の前で王城からの出迎えの騎士たちが深くお辞儀をした後、彼らの手で馬車のドアが開けられ、私はそこからゆっくりと降りる。優雅に、できるだけ美しい動きで。


「ようこそいらっしゃいました、フォルティエラ様」


周囲に対し、カーテシーではなく穏やかな笑みだけを向ける。彼らに跪く必要も、意思もないのだ。勿論私の身分からすればそれは失礼にあたる行為ではない。


「お部屋にご案内致します、どうぞ」


騎士の言葉に、笑みを深める私。


「歓迎していただけるとは思いませんでした」


騎士は疑問の表情を浮かべる。恐らく彼は何のことを言っているのかわからないのだと思う。

騎士団と兵士では所属が違う。兵士はトリス国の軍の所属だが、騎士は王城の近衛隊の所属だ。王城の警備などを行うのは兵士の仕事だが、王族や要人の警護やらを任されるのは騎士のほう。


そして、襲撃してきた者たちと、その指示を出したのは軍の人間。襲撃に騎士団が関わってるわけではない。

しかし本来迎えの馬車を寄越すのは騎士団の仕事だろう。それがなかったということは、全てではなくても騎士団にも私達を歓迎しない者がいるか、あるいはバルドに唆された者が居るか。


ザルツに飛ばした手紙は、恐らくきちんと届いているだろう。何らかの陰謀があるような気配はしていたので、ロロに持たせた手紙では現状の報告の他、単独で向かうので心配いらないということと、そしてこのことを周知するのは待ってもらうようにという内容を添えていたのだ。


「いえ。なんでもありません」


にこにことしたまま、私は続ける。


「後ろの馬車には私の使用人と、大事な贈り物が乗っています。

よろしければ先にトリス国王様へ贈り物をお届けしたいのですが」


「は、そういうことでしたらばすぐに連絡を致します。

伝令を」


そうして騎士団の中から一人の騎士が姿勢正しく進み出て、場内へと急ぎ入っていく。ここでザルツや国王がくるまで時間を稼がなくては。


「荷を降ろすのでしたらばお手伝いを」


「皆様を驚かせたいのです。

もうしばし、秘密にさせておいてはくださいませんか」


それはお願いの言葉ではあるが、実質命令である。


「それは失礼を致しました」


そうして、ようやくこの王城の庭先に、王族たちが集まったのだった。

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